デビルトーク
百春が戻ってくると三人組は挟むように立ち塞いだ。
「用事は終わったかい。 エーリちゃん」
「もういいよ」
「逃げ出さないか心配しちゃったよー」
「逃げる? なんで」
「土壇場で怖気づく子っているからさーアー」
「どんな三下でもちゃーんと相手してあげるから」
「言う言う」
口笛を吹いて嗜虐的な笑みを浮かべる男達。
「てゆーか。 こんなとびきり美味しそうなご馳走を前にね。 辛抱強く待てができるなんて驚きなんだけど」
「物事には順序ってのがあるんだぜエーリちゃん。 なあお前ら」
「ワンワン!」
「わんわん!」
ロン毛の意見と同調するように犬の物真似が返された。
「ふーん」
百春は相手にしなかった。
完全スルーを決め込む。
しかしこちらの思惑が外れたことは気になった。
今の挑発は切っ掛けが目的だった。
なし崩し的にバトルをするためのものだ。
にもかかわらず三人組は乗ってこなかった。
キャラに似合わずへんに律儀なところがある。
不満を込めて見据えると一人の男と目が合った。
鼻ピアスだ。
そして気がついた。
他の二人と違って彼だけは片時も目を離さないでいることに。
「そっかそっか。 なるほどね。 そういえばあなた達は配信中だものね。 今はアンケートとってる真っ最中なのかな」
「せっかちなエーリちゃん正解」
「その猶予がほしくて進行を渋ってたわけ」
「魅力的なお品書きに視聴者迷っちゃってるの~」
「そこがダメ」
百春はビシッとロン毛を指差した。
「なにがダメだ」
「生配信にはイレギュラーが付き物。 いくら段取りを整えても予定通りに進行しないのが常なの。 そこで必要なのが即応性」
「即応性だと」
「そう! 思ってたよりアンケートに手間取ってる……だったらこの空いた時間を無駄に垂れ流さないで何かに活用しなきゃ。 リリィちゃんならトークで繋ぐだろうなー」
「俺達に何させようってんだ」
「面白トークして」
「できるか! オメーがたった今ハードル上げただろ」
「そっかーごめんねー。 んー例えばルールの説明とかなんでどう?」
「説明だぁ?」
「わたし新入生でファイター志望じゃないし」
「オメーに指図されるいわれはねえ!」
「それとも――」
「待て待て!」
百春の言葉を遮った坊主頭はロン毛の腕を引っ張った。
そして撮影してる鼻ピアスの背後へ隠れるようにまわった。
顔を突き合わせた二人は隠す気のない大声で内緒話を始めた。
「なにしやがんだ! 腕離せよ」
「バカかお前。 スカレポで観ただろアレの生体電気を」
「うっ……」
「ルール無用なんてしてみろ。 黒焦げじゃ済まねーぞ」
「クソッ。 確かにそうだ」
「だから俺達のルールで縛るんだろうが」
「その上で……」
「盗撮る!」
二人はにこやかな笑顔で鼻ピアスの後ろから現れた。
そして高らかに宣言する。
「ルールの説明をしよう!」
「はーやっとだよー」
少女の抜けた声が冬一郎の耳に届いた。
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