礼儀を欠けば名誉も損なう③
正面の鼻ピアスが一歩前に出て彼女をフレームに収めた。
「お話は済んだかいエーリちゃん」
「脱げばいいのね」
「待ってました!」
「一つ注文するね。 そこから動いちゃだめ」
「ボクタチ紳士だから覗いたりしませんてー」
「まあこの後アクシデントが起こるんですけどネ」
浮き足立つ三人組は余計な制約をまったく意に介さない。
言葉通り撮れ高は後に取っておくつもりだろう。
まずは前菜を楽しむ腹づもりらしい。
百春はやれやれといった様子でスカートを摘まんだ。
そして周囲の視線を気にすることなくそのままゆっくりとたくし上げる。
冬一郎しか知らなかった肉々しい脚線美が露わとなっていく。
裾が太ももの半ばあたりまで裾が上がった。
パッと手を離す。
そのままスカートの中に潜り込ませてタイツのウエスト部分を掴む。
そしてゆっくりと白い柔肌を滑らすように下ろしていく。
最後にかかとを外してつま先を抜き、 彼女は問題なくタイツを脱いでみせた。
すらっと伸びた健康的な素足が床の上に立つと一際大きい歓声があがった。
「いい絵ありがとうございましたァーン!」
大満足の三人組がペコペコ頭を下げまくっている。
「調子に乗りやがって」
苛立ちを隠せない冬一郎のところへ百春が寄ってきた。
「はいこれ」
「えっ」
反射的に手を出して受け取ってしまった。
左右の足を重ねて丁寧に折り畳まれた――脱ぎたてのタイツを。
「貴方……」
いつの間にか背後に鴛海がいた。
「ちょっと待って英莉。 なあ待ってってば」
「無くさないようにちゃーんと持っててよね」
任せたといわんばかりの顔が遠ざかっていく。
「いや、 そりゃ勝手に持ち去られたら困るけど、 けどさあ!」
あんなに湧き上がってた外野共がヒソヒソと囁き合っている。
珍獣を見るような三人組の視線がどうしようもなく辛い。
「ねえ」
鴛海が声をかけた。
「わかってる」
「ねえってば」
「わかってるから。 みなまで言うな」
「無様ね」
「俺は今モーレツに恥ずかしい!」
どこまでも深い大きなため息が一つ聞こえた。
お読みいただき、ありがとうございました。
百春無双はまだ続きます。冬一郎の受難も続きます。
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