コード1191③
そろそろ歩数が百を数える頃だろうか。
意識の片隅に置いていたカウンターをちらりと確認した。
『――ですので実効支配的見地からみれば、 フジワラ滅亡による対抗勢力完全排除の1189。 もしくはガーディアン・ヘッドに続く上位統治機構マンドコロが設置される1191が候補になるかと』
「1189ついたねカマクラバクフってか。 血生臭い語呂合わせだなあオイ」
「この時代は様々な風説がありますゆえ」
「けど1191はどうすんのさ。 イイクイ?」
突如、 通路内に悲し気な音楽が流れはじめた。
トクマツが雰囲気を出そうと勝手に再生しているのだろう。
曲の転調をきっかけに渋声のナレーションが始まった。
『……ビーストに悲しき過去』
「ああ幼少の話だろう。 習ったよ島流し」
『時は1191。 季節は春』
「おっ寄せてきた偉い偉い。 脱線するかと思ったよ」
『鶴岡八幡宮にて大きな法事が行われ、 ビーストは多くの御家人を連れて参詣しました。 夕刻、 行事は無事に終えてビーストも御所へ戻りましたが、 多くの御家人たちは残って話をしていたそうです。 その中に広田次郎邦房という者がおりました』
「なんかめっちゃ流暢に語りだしたんだけど大丈夫?」
『邦房は同僚にこう言いました。 明日、 鎌倉は地獄の炎に包まれるだろう。 八幡宮も幕府もこの運命か逃れることはできないと。 もちろん本気にする者は誰もいませんでした。 しかし翌日、 予言は現実のものとなります。 町も八幡宮も御所も灰燼に帰してしまいました』
「そんな……嘘だろ」
『ビーストは邦房を探しました。 そして炎の中で戦う彼を見つけたのです』
『五常剣・仁義礼智信!』
『カマママママ!』
『クラクラクラ!』
「おい」
『邦房の斬撃を寸で躱す二体の化物。 鎌倉に封じられていた古の大妖怪カマとクラ。 彼奴らこそ大火を引き起こした元凶であり、 邦房は滅殺のため送り込まれた儒学剣士だったのです。 ビーストは助太刀に入ろうとしましたが邦房に断わられました。 そして彼はこう言ったのです』
「ちょっと待て」
『某のことは11。 91なき政をやりなされ。 焼失した鎌倉を復活させるのは貴殿においてほかになし。 さあ早く往け! 往くのだ! ビースト……いやヨリトモォォォ!』
通路内に熱のない無機質なシャウトが木霊した。
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