コード1191②
天井、 床、 壁。
全て金属で構成されていた。
各々プレートの繋ぎ目が青白くぼぅっと照らしている。
冬一郎は連なる灯りの下を歩く。
しばらく道なりに進んだら階段に差しかかった。
上りはなく下りのみだ。
『マスターが開きたいから開いたのでは』
またブン投げてきた。
これでは埒が明かない。
足を止めて少し思案を巡らした。
仕方ない。
強引なキャッチボールを試みてみるか。
「お前の大好きな人間様の歴史から一例を挙げてみよう」
『いきなり飛躍しましたね。 いいですけど』
よしよし乗ってきた。
ニヤリと笑ってトクマツに指示を出す。
「サーチ、 コード1192と1185の衝突問題」
『旧時代のさらに古い、 ビーストサブライ・ミナモトが結成したロック・システム、 バクフウ・カマクラにまつわる表記揺れ案件ですね』
そうそう……そうだっけ? まあいいや。
「ネットスクールで散々習ったけどさ、 人によって年が変わるのホントやめてほしい。 覚えるこっちの身にもなってくれって。 素で間違えたから、 小テストで」
『なるほど。 タイショウグンに任命されて名実共に支配した1192。 それともガーディアン・ヘッドを設置して実効支配した1185。 バクフウを開いた主要因子はどちらがより的確か。 それが知りたいのですね』
「いやそこまで知らんでいいし。 小テストの苦い思い出でおなか一杯だし」
『マスターの懸念は正しいです。 1185は確かに宿敵タイラを滅ぼした年でもあります。 しかし北にまだ独自勢力のフジワラがおり、 後々ウシワカの逃亡先にもなりましたから』
「ビーストの弟ね。 有名だよなあビーストより」
『ククク……そんな体たらくで世の中を手中に収めたなど片腹痛いわ。 よいかビースト、 覇道だ。 覇道を極めよ。 世界が欲しくばすべてを消し去ってしまえ。 目障りな弟諸共にな……今そう思いましたねマスター』
「思ってない。 思ってないよ!」
『そうでしたね。 申し訳ありません』
「わかってくれればいいさ」
『〆の高嗤いを忘れていました。 カマママママとクラクラクラ、 どちらがお好みでしょうか』
「いらんわそんなもん! 悪魔かお前は」
間髪入れずツッコミを入れる冬一郎。
会話のキャッチボールとはかくも難しいものか。
ゆるい余韻を引きずったまま階段を下りていった。
お読みいただき、ありがとうございました。
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