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ド陰キャ聖女に百合キスは荷が重すぎる!~唇への祝福が最強だとバレてしまい、キラキラ王子様系姫騎士と包容力おばけな女傭兵に迫られています~  作者: 鳥助
第一章

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6.女傭兵シグリッド(1)

「うぅ……今日の祝福業務はいつもより辛かったぁ……」


 誰もいない中庭の隅っこで蹲り、孤独を充実させる。人がいないところは心が穏やかになり、荒れた心が少しずつ回復していくのが分かる。


「隅っこがこんなに落ち着くなんて、やっぱり私はホコリ……。前世はホコリだったに違いない」


 こんなにフィットすると、そう思えてくる。ずっと、この隅っこにいたい。誰にも見つからずに過ごしていきたい。


 気力を少しずつ回復させていると、足音が聞こえてきた。こ、こんなところ人に見られたくない! でも、隠れ場所がない!


 おどおどして体を縮こませる。どんどん足音が大きくなってきて、怖くなって震えていると――壁の角からひょっこりとシグリッドさんが顔を覗かせた。


「あっ、今日はここにいたんだね」


「シ、シグリッドさん……」


「聖女のミレイアに聞いたら、今日は特に酷い顔だったって言って心配してたよ」


 し、心配させないように平常心を保っていたはずなのに、ミレイアさんには気づかれていた!? か、完璧に偽装していたはずったのに!


 まさか、陰キャ特有のオーラが出ていたりとか!? く、臭くなかったかな!? 変な汗とか出てて、変な匂いにならなかったかな!?


「……どうして自分の匂いを嗅いでいるんだい?」


「いや、陰気な匂いが出ているんじゃないかと思って……」


「そういうのは匂いにならないんじゃないか? リアナは時々可笑しくなるね」


 そう言って笑っているが、内心ショックだ。やっぱり、私は可笑しい子……。孤独の似合う女……。ふふっ、意外とカッコいいかも。


 現実逃避をしていると、シグリッドさんが近づいてきた。すると、私の隣に座り込んだ。


 えっ? シグリッドさんも隅っこが好きなの? もしかして、この角はシグリッドさんにお譲りした方がいいのでは?


「なんか、驚いた顔をしているね。どうしたの?」


「いえ、その……なんでシグリッドさんが隣に座ったのか分からなくて、ですね。す、隅をお譲りしましょうか?」


「だって、こういう場所がリアナは落ち着くんでしょ? だったら、その場所で傍にいた方がいいと思ってね」


 こ、こんな場所にシグリッドさんが一緒にいてくれる??? 普通ならこんな場所いたくないと思うんだけど……付き合うメリットなんて……はっ! シグリッドさんも最強の祝福を求めているんだった!


 うぅ、申し訳ないっ、本当に申し訳ないっ! 私があんなことを言ったばっかりに、最前線を守る責任感が強いから、少しでも強い祝福を求めている!


 私の祝福がもっと気軽に出来るものだったら、こんなに迷惑をかけずに済んだのに! どうして、どうして私の祝福が百合キス……。


「なんか、もっと落ち込んでない?」


「……あっ、はい。ちょっと……あ、あはは……」


「今日は何があった? 良かったら、話を聞かせてくれない?」


 今、全然違うこと考えていいたんですけど! 流石にその話は出来ないから、今日……今日あったこと……あっ、思い出したらお腹が痛くなってきた。


「えっと、その……今日の祝福業務がいつもより辛くて、ですね……」


「何か嫌味でも言ってくる人とかいた? それとも、当たりが強い人とか……」


「そ、そうじゃなくて……その……」


 私にとって辛い祝福業務でも精神を削られる、それは!


「ほっぺにキスを希望する人が三人もいたんです!」


「……三人も?」


 シグリッドさんが目を瞬かせる。その反応を見た瞬間、私は胸の奥に溜め込んでいた苦しみを堰を切ったように吐き出した。


「そうなんですっ! いつもは一人いるかいないかくらいなんですよ!? 最初の一人だけでも精神力をごっそり削られて『今日はもう限界かもしれません……』って思ったのに、その次の人が当然のように『私もほっぺにお願いします』って言ってきて、その瞬間に頭の中が真っ白になって『えっ、今日って何かの記念日でしたっけ!? ほっぺの日とかありましたっけ!?』って混乱していたら、さらに三人目まで現れて『私もほっぺで』なんて言うんですよっ、もう意味が分からないじゃないですかっ!」


「急に三人は辛かっただろう。だから、そんなに元気がなかったのか」


「そうなんですっ! 私は毎回毎回ほっぺに顔を近づけるたびに心臓が壊れそうなくらい緊張して、相手の吐息とか髪の匂いとか体温とかが近くて『ひぃっ』ってなっているのに、みんな平然としているんですっ、距離感が近くて余計に恥ずかしいんですっ、近づくたびに『近い近い近い近い!』って頭の中で警鐘が鳴り響いているのに、それを必死に押さえ込んで笑顔を作って、震えないように頑張って、終わったあとには魂が半分くらい抜けているんですよ!? なのに今日はそれを三回もやったんですっ、三回もっ! もう業務終了後には精神が擦り切れていて、歩きながら『私は誰……? ここはどこ……?』みたいな状態でしたし、今こうして隅っこで回復しないとこれから業務に支障が出るレベルなんですっ!」


 二息で言い切って、肩で大きく息をする。はぁ……はぁ……苦しかった。思い出すだけで苦しかった。


 ……迷惑、だったかな? 不安になってシグリッドさんを見てみると――慈愛に溢れた目を向けていた。そうして、私の頭に手を乗せて優しく撫でてくれた。


「リアナが凄く頑張ったのが伝わってきた。辛い業務なのに、真摯に取り組んでいるのが分かったよ。リアナは偉いな」


 優しい声でそう言われて、胸がギュッとなった。いつもシグリッドさんは私の欲しい言葉をくれる、元気になる言葉をくれる、私を見てくれる。それだけで、とても嬉しかった。


 だから、頭を撫でられても平気だ。というか、気持ちがいい。しばらく、慰められるように黙って頭を撫でられていた。

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