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ド陰キャ聖女に百合キスは荷が重すぎる!~唇への祝福が最強だとバレてしまい、キラキラ王子様系姫騎士と包容力おばけな女傭兵に迫られています~  作者: 鳥助
第三章

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32.不安な日々

「リアナ、どういうことじゃ。追放は精神的な理由で力が使えなくなったから、じゃなかったか? 原因となる人がいるとは聞いとらんぞ」


「えっと……あまり、言いたくなくて……」


「そんな大切な事をなんで言ってくれないんじゃ! 私はリアナの幼馴染じゃぞ! どんなことでも力になりたいって思っておるのに!」


「ご、ごめんなさい……」


 セレスティアの発言を聞いたアイリスは私を叱った。そうなると思っていたけれど、地味に辛い……。


 だって、アイリスに余計な心配をかけたくなかったから、喋らなかった。でも、こうして余計な心配をかけてしまって、心が痛い。


「まぁまぁ、落ち着いて。リアナにも事情があったんだよ」


 そこに、シグリッドさんが間に入ってくれる。私の肩を持つようなことを言うと、アイリスが苦々しい顔をした。


「……その事情をなんで私に言ってくれなかった。私では力不足じゃったのか?」


「ち、違いますっ。その……アイリスに心配かけたくなくて……」


「そんなのっ、気にしなくてもいいのにっ!」


 アイリスの怒鳴り声に体がすくむ。唯一の親友だったから、心配を掛けたくなかっただけだけど……それがダメだったらしい。


 幼馴染に怒られて、気が沈む。怒らせるために黙っていたわけじゃない。だけど、現実は思うようにはいかない。


「アイリス、落ち着きなさい。リアナも思うところがあったんだ。それを理解した方がいい」


「……はぁ、分かったのじゃ。いきなり怒鳴って悪かったのぅ」


「い、いえ……私も黙っていて、すいませんでした」


 シグリッドさんの仲介でなんとか和解は出来た。でも、まだ微妙な雰囲気は流れている。


「それで、どうしてあの人を嫌っているのか、教えてくれない?」


 その言葉に体がびくつく。それを教えるためには、あのことを言わないといけない。それが、凄く嫌だった。


 だけど、何か話さないと……。そう思って、とっさの嘘をつく。


「えっと、とても厳しくてそれで私が耐えられなくて……」


「……そんな様子じゃなかったと思うけれど。正直に話せない事情があるの?」


 ……ダメだ、シグリッドさんの前では嘘は言えない。まるで、私の心を見透かされている気分だ。


 グッと手を握ると、俯きながら口を開く。


「あまり、言いたくありません……」


「……嫌なことを思い出すから?」


「……それもあります」


 そして、流れる沈黙。とても重々しい空気に耐えられなくなりそうだ。


「だったら、今は言わなくてもいい。だけど、その時が来たら教えてくれない。そうじゃないと、どんな風にリアナを助けれるのか分からないから」


「……はい」


「とにかく、出来るだけリアナの側にいるよ。あの人が近づかないようにする。だから、安心して」


 そう言って、シグリッドさんが頭を撫でてくれる。それだけで、荒れた心が落ち着いてくるようだ。


 ……不思議だ。あの人に触られると嫌悪感しかないのに、シグリッドさんは違う。……それに、フィオナ様も。


 どうして、こんなに差があるのだろう。その答えを知るのは、近くに訪れると、この時は気づかなかった。


 ◇


 魔王軍の攻勢に対抗するため、こちらも戦力を増強し、迎え撃つ作戦が正式に決定した。


 その知らせを受け、王都から騎士団が派遣され、町は受け入れた後、作戦の準備で日に日に慌ただしさを増していく。


 それに合わせるように、私たち聖女の仕事も目に見えて増えていった。


 決戦の日までに少しでも魔王軍の戦力を削るため、騎士団と傭兵団は連日のように討伐へ向かい、その度に戦いへ赴く人たちへの祝福が求められる。


 朝から晩まで礼拝堂には列が途切れることなく続き、心をすり減らしながら祝福を授ける日々が続いていた。


 それだけでも十分につらい毎日だった。……なのに、ここへ来て、私の心をさらに追い詰める出来事が増えてしまった。


 その原因は、もちろん――。


「リアナ、今日も来たよ」


 毎日のように隙間時間にセレスティア様が会いに来た。ただ、会いに来るだけじゃない。その手には、色んなプレゼントを抱えていた。


「これで許してもらえるとは思っていないけれど、受け取って」


 そう言って、無理やりプレゼントを渡してくる。陰キャな私は断ることも出来ず、ただ受け取るしかない。だけど、それが悪かった。


「ふふっ、少しずつリアナの心が溶けていっているのが分かる。リアナは私を許そうと思ってくれているんだろう?」


 全くその気がないのに、勘違いをしてくる。私が許していっていると、そんな風に感じ取られてしまった。


 ……全然そんな風に思っていないのに。ただ、近くにいるのが嫌なだけなのに。何も分かってくれない。


「この後、少し時間があるんだ。中庭で話さないか。今までの埋め合わせをしよう」


 そう言って、手を伸ばしてくる。それだけで、体が震えるけれど――その手をフィオナ様が掴んだ。


「そこまでにしてもらおう。リアナが嫌がっている」


「……嫌がっている? いや、これは違う。久しぶりでどう接していいか分からないだけだ」


「……どこを見て、そう思える? 明らかに怯えている」


 フィオナ様が牽制するが、セレスティア様は――。


「それは、まだ私が許されていないからだ。でも、それももう少しで果たされる。そうしたら、きっと以前のように接してくれる。そうしたら、王都に連れ戻す」


 まるで、自分が私の主導権を握っているような言い方をした。……怖い、この人は変わっていない。


 この人に言う通りにしたから、だから――。


「あと、もう少し。必ず、その心を溶かすから…待っていて、リアナ」


 目を細めて、熱のこもった目で見てくる。そう言い残すと、セレスティア様は去って行った。


 セレスティア様は本気で私が心を開き始めたと思っている。でも、本当は怖くて何も言えず、拒絶することもできずにいるだけなのに、その沈黙さえ都合よく受け取られてしまうことが、どうしようもなく恐ろしかった。


 このまま勘違いが深まれば、きっともっと距離を縮めようとしてくる。そのたびに私は何も言えず、ただ怯えることしかできないのだと思うと、不安で胸が押し潰されそうになる。


 ……お願いだから、もう私に近づかないで。その願いだけが、何度も何度も心の中で繰り返されていた。

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