↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ド陰キャ聖女に百合キスは荷が重すぎる!~唇への祝福が最強だとバレてしまい、キラキラ王子様系姫騎士と包容力おばけな女傭兵に迫られています~  作者: 鳥助
第三章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
29/37

29.二人への気持ちが分からない

「では、リアナ。祝福をお願いします」


「……はい」


 今日も憂鬱な祝福業務がやってきた。笑顔を張り付けて、次々と祝福を授けていく。そして、ふと、寂しさを覚えた。


 今日はフィオナ様とシグリッドさんがいない。二人がいないと分かると、途端に心が不安になって祝福に障害が発生する。


 ダメだ、ちゃんとしないと。気を取り直して祝福に集中するものの、受けに来た人たちの対応にどんどん精神が削れて行ってしまう。


 そんな時も二人のことが頭を過る。いつも守ってくれたフィオナ様。傍にいて安心させてくれたシグリッドさん。二人の存在が私の中で大きくなっていた。


 以前までとは比べようもないほどに意識してしまう。それもこれも、唇への祝福が最強だと知られたからだ。


 ……いや、今思うと、それはただのきっかけにしか過ぎなかった。それ以前の私の行動が二人の心を動かしていたっていうのが分かった。


 ……わ、私はとんでもないことをっ!


 私はただ、その場で「放っておけない」と思ったから動いただけで、人の心を変えるような立派な人間じゃないし、そんな大それた力なんて持っているはずがありません!


 きっと二人がもともと優しかったからで、私なんてほんの少し背中を押しただけ……いや、それすら思い上がりかもしれません。


 なのに、「リアナのおかげ」なんて言われると、自分には到底釣り合わない評価をもらっている気がして、嬉しいよりも先に「そんなわけありません!」と全力で否定したくなってしまう。


 しかも、二人も……。私には一人でもキャパオーバーなのに、二人も……。一体、どうすれば!


「今日も辛気臭い顔をしておるのぅ」


 こ、この声は!? 無意識で祝福作業をしていると、目の前にアイリスがいた。まさに、今の私にとっては天の助け!


「ア、アイリス! こ、この後時間ありますか!?」


「なんじゃ、なんじゃ。何かあるのか?」


 私は思わず、目の前の幼馴染に助けを求めた。


 ◇


「なるほどなぁ。私が忙しい間にそんなことが起こっていたとはな」


「うぅ……すべて、アイリスが煽てたからじゃないですか。だから、こんなことに……」


「いやいや。私のせいじゃなくて、以前からのリアナの行動が原因じゃろ」


「うっ、そ、それは……」


 幼馴染に助けを求めると、逆に斬られた気分だ。


「わ、私はそんなつもりはなくて……。ただ、少しでも良くしたくて……」


「……はぁ。全く、昔からリアナはそうじゃからな」


 アイリスは呆れたように肩を竦めると、小さくため息を吐いた。


「お主は陰キャのくせに、人が困っていると放っておけん。人と話すだけで疲れると言いながら、自分が傷つく方を選んでまで誰かを助けようとする。そのせいで相手は『自分を大切に思ってくれている』と勘違いするんじゃ」


「えっ?」


 思わず間の抜けた声が漏れた。勘違い? 誰が? 何を?


 そんな顔をしていたのだろう。アイリスは額に手を当て、深いため息をつく。


「ほら、そういうところじゃ」


「えっ、えっ? わ、私、何かしました?」


「その反応じゃ。その優しさがお主にとっては当たり前だから、自分がどれだけ相手の心を動かしておるのか、まるで分かっておらん」


 そんなことを言われても、本当に心当たりがない。私はただ、放っておけなかっただけ。困っている人がいたから、少しだけ勇気を出しただけ。それ以上でも、それ以下でもない。


 きょとんとしている私を見て、アイリスはまた一つ大きく息を吐いた。


「だから悪いと言っておるんじゃ……」


 ぽつりと零したその一言には、長年幼馴染として見守ってきた者にしか出せない諦めと苦笑が滲んでいた。


「お主は自分の優しさを無自覚に配っておいて、いざ相手から好意を向けられると『どうして!?』と慌てふためく。その繰り返しじゃ。自覚がないから余計に質が悪い」


「えぇぇっ!? そ、そんなことになっていたんですか!?」


「なっておる。昔からずっとな……本当に仕方のない奴じゃ」


 あまりにも断言されて、私は言葉を失った。……もしかして私、本当にとんでもないことをしていたのだろうか。


「じゃが、リアナが他人の好意をここまで自覚をするのは珍しいの。それだけ、リアナを大切に思っていると思うぞ」


「そ、そうでしょうか……」


「そうじゃ。……リアナは他人の感情には疎いところがあるからのぅ」


 なぜか、アイリスが寂しそうにそう言った。なんか、含みがあるように聞こえて、どう返していいか分からない。


「私は二人と距離を縮めていくのは賛成じゃ。そして、リアナがこの人だって言える人を決めればいいだけじゃ」


「えっ……私なんかが決めるんですか? いやいや、恐れ多いというか、大変失礼というか……」


「そこまで大切にしてくれる人を逃す手はないぞ。それに、二人ともリアナの力になれていると思う。……私はリアナの力になれなかったから……」


 最後の方の言葉が小さすぎてあまり聞こえなかった。妙に気にかかるけれど、アイリスにはあの二人が私のことを大切にしているように見えるらしい。


「で、どっちがいいんじゃ? 輝剣の姫騎士か? 万敵殺しの女傭兵か?」


「うっ、そ、それは……」


 どっちがいいかなんて、私なんかが決められない! だけど、決めないと二人に悪い……とか? だったら、余計に決められない!


 一人で唸っていると、アイリスは「あっ」と声を上げて、イスから立ち上がった。


「そろそろ、仕事の時間じゃった。リアナには悪いが席を外すぞ」


「あっ、すいません……。無理に付き合ってくれて」


「いいんじゃ。仕事って言っても、出迎えじゃからな。ほら、輝剣の姫騎士が王都から帰ってくるからのぅ」


「あっ、フィオナ様、帰ってくるんですね」


 久しぶりにフィオナ様に会える。そう思うと、自然と心が弾んだ。だけど、それもそこまでだった。


「なんでも、魔王軍の大きな動きに合わせて、こちら側も大きく動くらしくてな。王都から騎士団長がやってくるらしい」


 その言葉に思考が停止した。今、なんて――。


「あの、騎士団長って……」


「リアナも知っているじゃろう。王都で一緒にいた、あの騎士団長――セレスティアじゃ」


 その名を聞いて、体が凍り付いた。私が王都を追放された原因であり――唇のキスをしたくなくなった元凶の名だったから。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新連載!

収納魔法を裏返したら世界最強でした!~極小収納しか使えない無能と辺境に追放されたので、もう好きに生きます~

旧作

転生難民少女は市民権を0から目指して働きます!

転生少女の底辺から始める幸せスローライフ~勇者と聖女を育てたら賢者になって魔法を覚えたけど、生活向上のため便利に利用します~

追放を計画的に利用して自由を掴んだ王女、叡智と領地改革で無双する

転生したら魔法が使えない無能と捨てられたけど、魔力が規格外に万能でした

スラムの転生孤児は謙虚堅実に成り上がる〜チートなしの努力だけで掴んだ、人生逆転劇〜

ゾンビがいる終末世界を生き抜いた最強少女には異世界はぬるすぎる

元社畜はウィンドウで楽しい転生ライフを満喫中! ~ゲームのシステムを再現した万能スキルで、異世界生活を楽々攻略します~

異世界喫茶で再出発ライフ

ゴミスキルだと捨てられた少女たち、実は最強の生活能力スキルだったので気楽なスローライフ冒険旅を満喫する

推し命の転生者、弱小ポンコツな推し神様のために万能な推し活パワーで騎士爵領を大領地にする

過保護なお姉ちゃん系王女を救うために何度も死に戻っていたら、全部バレていて曇らせてしまった

この世に一人だけの錬金術師~物作り好きのゲーマーが家族のためにアイテム革命起こします!~

コミュ障クラフターの私、引き継いだ能力が異世界では規格外すぎて無自覚に無双してしまう件~地味に暮らしたいだけなのに、なぜか注目されて怖いんですが~

スラムの孤児は慎ましく生きたい~大賢者の遺産を継いだけど、救世主にはなりません~

ド陰キャ聖女に百合キスは荷が重すぎる!~唇への祝福が最強だとバレてしまい、キラキラ王子様系姫騎士と包容力おばけな女傭兵に迫られています~

魔力1令嬢と欠陥王女は魔法が使いたい! ~誰も使えない古代魔法で人生逆転します~

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。