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ド陰キャ聖女に百合キスは荷が重すぎる!~唇への祝福が最強だとバレてしまい、キラキラ王子様系姫騎士と包容力おばけな女傭兵に迫られています~  作者: 鳥助
第二章

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17.私はただの祝福係

 最強の祝福が欲しいから、私に優しくしている。好きにさせるために距離を縮めている。そんな可能性は、最初から頭の片隅にあった。


 口は禍の元というけれど、本当にその通りだと思う。


 フィオナ様は魔王軍との最前線を守る英雄だ。国を守るには力が必要で、そのために最強の祝福を求めるのは何も間違っていない。


 そんなこと、私だって分かっていた。


 だけど、自分で考えるのと、他人にはっきり言葉にされるのは違う。まるで「それが現実だ」と突きつけられたみたいで、胸の奥がずきりと痛んだ。


 ……その通りなのに。傷ついている自分がいる。


 唇へのキスなんて嫌だ、怖い、絶対にしたくない。そう思っていたはずなのに、その理由が「祝福のため」だと言われただけで、こんなにも苦しくなるなんて。


 私は、一体何を期待していたんだろう。もしかして、フィオナ様だけは違うんじゃないか、なんて都合のいい夢を見ていたのかな。


 そんなわけないのに。英雄が、私なんかを特別に思う理由なんて、どこにもない。


 期待して、勝手に傷ついて、勝手に落ち込んで。……本当に、馬鹿だ。


 私なんかが、少し優しくされたくらいで勘違いしてしまうなんて。だから陰キャは駄目なんだ。勝手に期待して、勝手に自滅しているだけじゃない。


 本当に情けない。


 ◇


「はぁ……」


 書類を片付ける手を止めて、溜息が出る。この間から自己嫌悪が強くなって辛い。いや、本当に自分が悪いんだから、自己嫌悪じゃないか……。


 でも、周りに誰もいなくてよかった。周りに誰かいたら、また迷惑をかけてしまうから。今日は一人でする作業があって助かった。


 そう思っていたのに、扉をノックする音が聞こえた。ビクリ、と体が跳ね上がる。


「ど、どうぞ……」


 誰とも会いたくないけれど、訪ねてきたのなら会わないと失礼だ。なけなしの勇気を出してそう言うと、扉がゆっくりと開く。そこにいたのは――。


「やぁ、その後の調子はどう?」


 ……フィオナ様だ。今、会いたくない人がやってきた。ズキズキと痛む胸を抑え、精一杯の笑顔を浮かべる。


「はい、問題ありません。フィオナ様は休憩時間ですか?」


「昨日の事があったからね、リアナが不安になっていないかって心配してたんだよね」


 心配そうな視線が向けられると、胸が痛くなる。私の気を引こうと、絆そうとしていると思うと……素直に喜べない。


 今まではそんな風に思わなかったのに、あんなことがあったから感じ方が変わってしまった。


「今日の祝福には立ち会えなかったけど、問題なかった? 無理強いをしてくる人はいなかった?」


「今日は大丈夫でした。滞りなく進みましたよ」


「そう……それは良かった。いつも一緒にいてあげられたらいいんだけど、そうじゃなくてすまない。時間がある限り、リアナの傍にいるから安心して欲しい」


 ……痛い、胸が痛い。昨日のことが頭の中でグルグル回っていて、辛い。


 この優しさは最強の祝福を得るための行動。そう思ってしまうと、今までの出来事が全部違って見えてしまう。


 抱きしめてくれたことも。お姫様抱っこをしてくれたことも。髪にキスをしてくれたことも。優しい笑顔を向けてくれたことも。


 全部、全部。最強の祝福へ近づくための積み重ねだったんだ。……そんなこと、最初から分かっていたじゃない。


 英雄が国を守るために力を求めるのは当然だ。フィオナ様は何も悪くない。悪いのは、勝手に勘違いした私の心だ。


 「もしかしたら」なんて期待して。「フィオナ様だけは違うかもしれない」なんて都合のいい夢を見て。勝手に信じて、勝手に傷ついている。本当に救いようがない。


「少しでもリアナの気持ちが軽くなるように――」


「……そこまでしてもらうのは、本当に申し訳ないです。そんな価値、私にはありませんから」


 ……駄目、我慢していた言葉が溢れてくるっ。


「……だから駄目なんですよね、私。陰キャだから、少し優しくされただけで舞い上がって……勝手に特別扱いされた気になって」


「フィオナ様は国を守る英雄。私は、ただ祝福を授けるだけの聖女。それ以上でも、それ以下でもないのに……。ちょっと優しくされたくらいで期待するとか……自意識過剰にも程がありますよね」


「こんなこと考えてるなんて知られたら、絶対困らせるだけだと思います。だから、この気持ちは誰にも知られちゃダメだって……私一人で勝手に抱えて、勝手に消せばいいって思っているのに……」


 言っちゃダメって分かっているのに、言葉が零れた。弱い心が耐えきれなかった。本当に私はどうしようもない人間だ。


「私なんてフィオナ様に思ってもらうほどの人間じゃないんです。だから、そんなに優しくしなくてもいいんですよ。祝福は頑張りますから、それで――」


「私は祝福の為だけにリアナに優しくしているんじゃない!」


 私の声を遮って、フィオナ様が叫んだ。ビックリして顔を上げると、とても怒っていた。やっぱり、私が余計な事を言ったから?


 とても辛そうな顔をして、どことなく悔しそうでもある。そんな複雑な顔をしているのが、どうしてか分からなかった。


「……私が最強の祝福をして欲しいからと言ったから、それだけが目当てだと勘違いさせてしまった。だけど、今までの私の行動を見て、本当にそれだけだと感じたの?」


「そ、それは……」


 ……そうは感じなかった。だから、余計に混乱する。最強の祝福が欲しいからという理由の他を――考えたくなかった?


「リアナの事が好きだから、優しくしていたの……気づかなかった?」


 ……私の事が、好き?

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