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幽世断ちのカクリ 〜宵町カクリは夜を歩く〜  作者: れんP


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第68夜 「忘れられなかった子」


今日も少女は夜を歩く。


「やだ」


「だって」


「やっと」


「見つけたんだもん」


「かあさん」


少年。


マヨイ。


泣きそうな笑顔。


その笑顔は。


夜禍とよく似ていた。


そして。


黄泉津大神とも。


「……」


黄泉津大神は震えていた。


「ごめんなさい」


「マヨイ」


「ごめんなさい」


「私は」


「あなたを」


「忘れて」


「……」


「違う」


「忘れようとした」


「怖かったの」


「壊れていくあなたを見るのが」


マヨイは首を傾げた。


「?」


「なんで?」


「僕」


「幸せだよ?」


「かあさんと一緒だもん」


「ずっと」


「一緒」


ゴゴゴゴゴ……


その言葉と共に。


無数の腕が増殖する。


最深層が軋む。


冬華が叫ぶ。


「駄目です!」


「存在が暴走しています!」


総長も唸る。


「世界そのものが喰われる!」


『チッ!』


はっちゃんが黄金の神気を放つ。


『坊主!』


「?」


『落ち着け!』


『お前が暴れると全部壊れる!』


マヨイは。


不思議そうに目を瞬かせた。


「暴れる?」


「してないよ?」


『してんだよ!』


『無自覚か!』


「……?」


マヨイは。


本当に分からない顔だった。


ただ。


その笑顔のまま。


周囲の空間は崩壊し続けている。


「僕」


「嬉しいよ?」


「かあさんがいる」


「だから」


「幸せ」


「……」


「なんで」


「みんな」


「怖い顔するの?」


れいなが涙目になる。


「だってぇ……」


「怖いんだもん……」


「……」


マヨイは。


初めて。


れいなを見た。


「怖い?」


「うん……」


「僕が?」


「うん……」


「……」


マヨイの笑顔が。


少しだけ曇る。


「そっか」


「まただ」


「……」


「みんな」


「怖いって言う」


「だから」


「かあさん以外」


「いなくなった」


静寂。


夜禍の少女が。


マヨイを見つめていた。


「……お兄ちゃん」


「?」


「寂しかった?」


「……」


「うん」


初めて。


マヨイの笑顔が消えた。


「寂しかった」


「みんな」


「消えた」


「誰もいない」


「かあさんも」


「いなくなった」


「だから」


「探した」


「ずっと」


「ずっと」


「ずっと」


「……」


「寂しかった」


その瞬間。


無数の目から。


涙が零れた。


ドロリ。


黒い涙。


しかし。


その涙に敵意はない。


ただ。


悲しい。


寂しい。


それだけ。


カクリは。


その姿を見ていた。


「……」


そして。


ゆっくり近付く。


『おい!』


はっちゃんが叫ぶ。


『近付くな!』


「大丈夫」


『大丈夫じゃねぇ!』


「迷子」


『え?』


「この子も」


「迷子」


マヨイが。


目を丸くする。


「……迷子?」


「うん」


「だから」


「帰ろう」


「……」


「帰る?」


「うん」


「みんなで」


「お母さんも」


「夜禍ちゃんも」


「一緒」


マヨイの瞳が揺れる。


「……」


「ほんと?」


「うん」


「僕」


「怖くない?」


「ちょっと怖い」


「え?」


「でも」


「寂しそう」


「……」


「だから」


「放っておけない」


マヨイは。


ポカンとしていた。


「変」


「うん」


「変」


カクリは頷く。


「よく言われる」


「……」


すると。


マヨイは。


初めて。


少しだけ笑った。


「変な子」


「うん」


「カクリ」


「うん」


「……」


「友達?」


「うん」


その瞬間。


ゴゴゴゴゴ……


崩壊が止まる。


冬華が驚愕する。


「止まった!?」


総長も目を見開く。


「なんじゃと!?」


断姫が笑顔になる。


「すごい!」


れいなも飛び跳ねる。


「お友達だぁ!」


しかし。


はっちゃんだけは。


険しい顔だった。


『……まだだ』


「お兄ちゃん?」


『こいつの問題は解決してねぇ』


『坊主』


「?」


『お前』


『なんで生きてる?』


「……?」


『黄泉津大神は言った』


『他の子供は消えた』


『なのに』


『お前だけ残った』


『なんでだ?』


「……」


マヨイは。


少し考えて。


そして。


困った顔をした。


「わかんない」


「気付いたら」


「暗いところにいた」


「一人で」


「ずっと」


「……」


「でも」


「声がした」


『声?』


「うん」


「優しい声」


「ずっと」


「僕に言ってた」


「大丈夫」


「君は消えない」


「君は特別」


「君は選ばれた」


「君は」


「――器だから」


『!!』


その瞬間。


はっちゃん。


断姫。


黄泉津大神。


三人の顔色が変わった。


「……嘘」


黄泉津大神の顔から血の気が引く。


断姫も震えている。


「まさか……」


『あの野郎か……!』


はっちゃんの声に。


明確な怒りが混じる。


「お兄ちゃん?」


『最悪だ』


『坊主』


『そいつの名前』


『覚えてるか?』


マヨイは。


無邪気に笑った。


「うん」


「覚えてる」


「僕に」


「ずっと話しかけてくれた人」


「名前は――」


そして。


少年の口から。


その名が告げられようとした瞬間。


最深層のさらに奥。


誰も知らない暗黒の中で。


ニタリ。


と。


何者かが。


笑った。

ここまで読んでくれてありがとうございます。

次回もお楽しみに

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