表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幽世断ちのカクリ 〜宵町カクリは夜を歩く〜  作者: れんP


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
63/131

第62夜 「最深層の扉」


今日も少女は夜を歩く。


空の奥で。


三つ目の“目”が開こうとしていた。


それは今までのどれとも違う。


巨大でもない。


禍々しくもない。


ただ。


静かだった。


「……あれは何」


九条れいなが呟く。


誰も答えられない。


篠崎冬華でさえ言葉を失っている。


総長が低く言う。


「夜の……底じゃ」


夜禍は静かに笑った。


「そうだ」


「そこが最深層」


「夜の核」


「人が決して覗いてはいけない場所」


はっちゃんの声が低くなる。


『……そこはやべぇ』


「やばいって何が」


カクリの問いに、はっちゃんは珍しく言葉を選んだ。


『夜そのものの“原因”だ』


『恐怖とか願いとかじゃねぇ』


『もっと根っこのやつだ』


断姫が小さく呟く。


「お兄ちゃんでも?」


『……あぁ』


『オレでも止められるか分からねぇ』


その言葉に場が凍る。


神であるはっちゃんが。


止められない可能性を口にした。


夜禍はゆっくりと腕を広げる。


「では見せよう」


「夜の始まりを」


ゴォォォォォ……


空間が裂ける。


三つ目の目が開く。


その瞬間。


世界が“裏返った”。



音が消える。


風も消える。


重力すら曖昧になる。


カクリの足元が消え。


気付けば。


そこは“何もない場所”だった。


黒でも白でもない。


存在と無の間。


「ここは……」


断姫も周囲を見渡す。


「何もない……?」


夜禍の声が響く。


「ここが最深層」


「夜が生まれる前の場所」


「そして」


「夜が終わった後の場所」


はっちゃんが歯を食いしばる。


『ふざけんな……』


『こんなもん……』


「何もないのに?」


カクリは呟く。


夜禍は答える。


「そうだ」


「ここには“原因”だけがある」


「夜哭山も」


「怪異も」


「恐怖も」


「すべてここから生まれた」


その時。


空間の中心に。


小さな光が浮かんでいた。


それは。


星でも炎でもない。


ただの。


“願いの欠片”。


ユウの声が響く。


「……帰りたい」


ミコの声が重なる。


「一緒にいたい」


無数の声。


「怖い」


「寂しい」


「助けて」


「ひとりにしないで」


その声が集まり。


光になる。


そして。


光の中から“形”が生まれる。


それは人ではない。


怪異でもない。


ただの“概念”。


「これが……」


冬華が震える。


「願いの根源……」


夜禍が笑う。


「そうだ」


「それが夜の種だ」


「人が願いを持つ限り」


「夜は生まれる」


カクリは一歩踏み出す。


「なら」


「止める」


夜禍は首を振る。


「無理だ」


「それは人そのものだ」


「消すということは」


「存在を否定すること」


はっちゃんが低く言う。


『……だから厄介なんだ』


『夜は切れねぇ』


『切ったら人が消える』


断姫が拳を握る。


「じゃあどうするの!」


沈黙。


その時。


カクリが言った。


「消さない」


全員が振り向く。


「え?」


「私は」


「切るんじゃなくて」


「繋ぐ」


夜禍が目を細める。


「繋ぐ?」


「うん」


カクリは光を見つめる。


「みんなバラバラだから」


「夜になる」


「怖いから」


「寂しいから」


「だから」


「一つにする」


はっちゃんが息を呑む。


『おい……まさか』


「夜を」


「ひとつにしない」


「みんなの中に戻す」


冬華が震える。


「そんなこと……」


「前例がありません」


夜禍が静かに笑う。


「面白い」


「ではやってみろ」


三つ目の目が完全に開く。


世界が揺れる。


最深層が動き出す。


光の塊が暴れ始める。


「ぐっ……!」


総長達が崩れる。


断姫が叫ぶ。


「カクリちゃん!!」


はっちゃんも叫ぶ。


『やるなら今しかねぇ!!』


カクリは頷く。


そして。


巨大断ち鋏を構えた。


「はっちゃん」


『あぁ』


「一緒に」


『当たり前だろ』


夜禍が笑う。


「さあ」


「夜を始めよう」


その瞬間。


カクリは叫んだ。


「全部の夜を!!」


「ここで!!」


「繋ぐ!!」


鋏が開く。


黄金の光が走る。


最深層が震えた。


そして。


三つ目の目が。


ゆっくりと。


こちらを見た。

ここまで読んでくれてありがとうございます。

次回もお楽しみに

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ