表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幽世断ちのカクリ 〜宵町カクリは夜を歩く〜  作者: れんP


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
60/131

第59夜 「神と夜」


今日も少女は夜を歩く。



『……最悪だ』


『完全に目覚めやがった』


はっちゃんの声は低かった。


今まで聞いたこともないほど。


笑いもない。


余裕もない。


ただ純粋な警戒。


空。


そこに月はない。


星もない。


あるのは。


巨大な目。


夜空そのものが生きているように。


いや。


夜そのものが見ている。


「綺麗……」


九条れいなが思わず呟く。


「駄目です!」


篠崎冬華が叫んだ。


「見続けては!!」


しかし。


遅かった。


巨大な目。


その瞳孔が開く。


ギョロリ。


「……あ」


一人の霊能者が空を見上げる。


「母さん……?」


次の瞬間。


その霊能者が自分の武器を地面に落とした。


「帰らなきゃ」


「そうだ」


「家に帰らないと」


ふらふらと歩き出す。


「待ちなさい!」


冬華の札が飛ぶ。


バシィ!


正気に戻る霊能者。


「……え?」


「私は……」


総長が歯を食いしばる。


「精神汚染か!」


『チッ!』


はっちゃんが舌打ちした。


『見た奴の心を読む』


『見てぇものを見せて堕とす』


『夜禍の得意技だ』


夜禍は笑う。


「人は弱い」


「だから愛おしい」


「皆」


「帰りたいのだ」


「なら」


「夢を見せてやればいい」


巨大な目から黒い光が降り注ぐ。


その時。


「……え?」


カクリの視界も歪んだ。


「カクリ!」


ユズキ。


姉の声。


「もう戦わなくていいよ」


優しい声。


懐かしい。


「姉ちゃん……?」


「帰ろう」


「お父さんも」


「お母さんも」


「みんな待ってる」


気が付くと。


そこは家だった。


夕暮れ。


テレビの音。


夕飯の匂い。


「カクリー」


「手洗いなさい」


母の声。


「宿題終わった?」


父の声。


「またゲームしよ?」


姉の笑顔。


「……」


カクリは立ち尽くす。


「なんで」


「こんな」


「当たり前の毎日」


「幸せだよ?」


ユズキが笑う。


「もう怪異なんていない」


「戦わなくていい」


「お化けもいない」


「夜も怖くない」


「だから」


「帰ろう?」


「……」


優しい。


暖かい。


ここにいれば。


誰も傷つかない。


誰も泣かない。


「そう……だね」


カクリが手を伸ばす。


その瞬間。


ガブッ。


「痛っ」


指に鋭い痛み。


見ると。


小さくなったはっちゃんが指に噛み付いていた。


『馬鹿野郎!!』


「はっちゃん?」


『寝ぼけてんじゃねぇ!!』


「でも」


『よく見ろ!!』


景色が揺れる。


夕飯。


家。


父。


母。


姉。


全部。


溶ける。


ドロドロと。


黒い泥になっていく。


「……!」


ユズキも。


顔が崩れる。


「帰ろう?」


「帰ろう?」


「帰ろう?」


無数の口。


無数の目。


「ッ!」


カクリは後ろへ飛んだ。


景色が割れる。


パリン。


現実。


夜哭山。


夜禍。


巨大な目。


『目ぇ覚めたか』


「うん」


『危なかったな』


「……うん」


夜禍が笑った。


「ほう?」


「破ったか」


「神風情が」


『風情じゃねぇ』


はっちゃんの身体が黄金に輝く。


『オレは神だ』


『そして』


『テメェの天敵だ』


夜禍の目が細くなる。


「面白い」


「なら」


「思い出させてやろう」


「神断鋏ノ命」


「お前が」


「何を切ったのかを」


『……』


「誰を殺したのかを」


ピクリ。


はっちゃんが止まる。


「え?」


カクリも驚く。


「殺した?」


『黙れ』


はっちゃんの声。


初めて聞く。


怒りとも悲しみとも違う声。


「忘れたのか?」


夜禍は笑う。


「神々の戦い」


「お前の最初の主」


「そして」


「お前の妹」


「――断姫」


『やめろ!!』


轟音。


黄金の神気が爆発する。


夜哭山全体が揺れた。


九条れいなが目を丸くする。


「妹?」


冬華も驚く。


「主?」


総長も目を見開く。


「神の……戦争?」


『やめろォォォォ!!』


初めてだった。


はっちゃんが。


泣いていた。


怒鳴りながら。


泣いていた。


そして。


夜禍は笑う。


「思い出せ」


「神」


「絶望を」


その瞬間。


はっちゃんの黄金の光の中。


一人の少女の姿が映った。


銀髪。


赤い瞳。


そして。


どこか。


カクリによく似た顔をした少女が。


優しく笑っていた。


「お兄ちゃん」


「泣かないで?」

ここまで読んでくれてありがとうございます。

次回もお楽しみに

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ