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幽世断ちのカクリ 〜宵町カクリは夜を歩く〜  作者: れんP


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第50夜 「帰る場所」


今日も少女は夜を歩く。


クスクス。


クスクス。


森の奥から聞こえる笑い声。


白い少女は月明かりの下でこちらを見ていた。


逃げない。


消えない。


ただ静かに立っている。


その姿はどこか寂しそうだった。


宵町カクリは巨大断ち鋏を握る。


村の住民達は相変わらず動かない。


ただこちらを見ているだけ。


まるで人形だ。


篠崎冬華も白い少女を見ていた。


「......追います」


総長も頷く。


「この状況で唯一の手掛かりじゃ」


反対する者はいない。


先行班は消えた。


村人は異常。


何より。


あの少女だけが明確な意思を持っている。


カクリ達は森へ足を踏み入れた。


白い少女は一定の距離を保ちながら歩いていく。


近付けば離れる。


離れれば止まる。


まるで道案内だった。


『誘導されてるな』


はっちゃんが呟く。


「うん」


『どう思う』


「わからない」


正直な答えだった。


信用していいのか。


敵なのか。


味方なのか。


何もわからない。


それでも。


進むしかなかった。


森は深くなっていく。


月明かりも届かない。


木々の隙間から冷たい風が吹き抜ける。


不気味なほど静かだった。


その時。


れいなが立ち止まる。


「待って」


全員が振り返る。


「どうしました」


冬華が聞く。


れいなは地面を見ていた。


「これ」


懐中電灯を向ける。


そこには足跡があった。


複数。


最近付いたものだ。


霊能者達も確認する。


「先行班の可能性があります」


冬華がしゃがみ込む。


足跡は森の奥へ続いていた。


そして。


途中から数が増えている。


一人。


二人。


三人。


そしてさらに。


十。


二十。


三十。


異常な数だった。


「こんな人数いるわけない」


れいなが言う。


その通りだった。


監視班は三人。


先行班も数名。


こんな足跡になるはずがない。


『増えたのか』


はっちゃんが低く呟く。


嫌な予感しかしない。


再び歩き始める。


やがて。


森が開けた。


目の前に広場が現れる。


そして。


全員が足を止めた。


そこにあったのは。


巨大な鳥居だった。


高さは十メートル以上。


黒く変色している。


木なのか石なのかもわからない。


異様な存在感。


鳥居の向こうには石段が続いていた。


上には何かがある。


白い少女は鳥居の前で止まった。


「ここ」


初めて自分から話した。


冬華が前へ出る。


「ここに何があるのですか」


少女は少しだけ俯く。


「帰る場所」


「帰る場所?」


「みんなの」


静かな声。


そして。


悲しそうな目。


「帰れなかった人達の」


空気が重くなる。


カクリは鳥居を見る。


妙だった。


見ているだけで頭が痛くなる。


まるで何かが記憶を引っ張っている。


その時。


れいなが顔をしかめた。


「頭......痛い」


周囲の霊能者達も同じだった。


「これは......」


冬華が札を取り出す。


瞬間。


鳥居が震えた。


ゴォォォォォォォォン。


低い音。


地面が揺れる。


森全体が震える。


『来るぞ』


はっちゃんの声が鋭くなる。


次の瞬間。


広場の周囲に無数の人影が現れた。


一人。


二人。


十人。


百人。


どんどん増える。


全員。


村の住民と同じ顔だった。


老人。


子供。


女性。


男。


だが顔だけは全て同じ。


異様な光景。


「おかえり」


一人が言う。


「おかえり」


また一人。


「おかえり」


「おかえり」


「おかえり」


声が増えていく。


広場全体を埋め尽くす。


何百人。


いや。


何千人いるのかわからない。


全員が同じ言葉を繰り返していた。


「おかえり」


「おかえり」


「おかえり」


まるで壊れた機械。


れいなが青ざめる。


「なにこれ......」


冬華も表情を崩さないが緊張していた。


札を構える。


霊能者達も武器を抜く。


だが。


住民達は攻撃してこない。


ただ。


笑っている。


そして。


全員が鳥居を指差した。


「帰ろう」


「帰ろう」


「帰ろう」


「帰ろう」


「帰ろう」


不気味な大合唱。


カクリの背中を寒気が走る。


その時だった。


白い少女が振り返る。


「行かなきゃ」


「どこに」


カクリが聞く。


少女は鳥居を見る。


そして。


震える声で答えた。


「みんなが待ってる」


「......」


「もう時間がないの」


少女の瞳に涙が浮かぶ。


「目を覚ます前に」


またその言葉だった。


目を覚ます。


何が。


何者が。


聞こうとした瞬間。


ゴォォォォォォォォォォォッ!!


山全体を揺らす咆哮が響いた。


今までで最大だった。


木々が揺れる。


地面が裂ける。


鳥居が震える。


そして。


鳥居の奥。


石段の先。


闇の中で。


巨大な何かがゆっくり動いた。


姿は見えない。


だが。


そこにいる。


圧倒的な存在感。


それだけで全員が理解した。


今までの怪異とは格が違う。


夜哭山そのものが目覚めようとしている。


白い少女は恐怖に震えながら呟いた。


「間に合って......お願い......」


そして。


鳥居の奥の闇から。


巨大な何かの足音が響き始めた。

ここまで読んでくれてありがとうございます。

次回もお楽しみに

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