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幽世断ちのカクリ 〜宵町カクリは夜を歩く〜  作者: れんP


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第45夜 「報告と違和感」



今日も少女は夜を歩く。


古びた神社に吹く風が木々を揺らしていた。


カクリは鳥居の前に立ち尽くしている。


先ほどまでそこにいた白い少女は消えていた。


まるで幻だったかのように。


だが。


あの異様な気配。


無数の手。


空間の歪み。


そして最後の言葉。


全て現実だった。


「......見つけた」


カクリが呟く。


はっちゃんも黙っていた。


しばらくしてから口を開く。


『気になるか』


「うん」


『だろうな』


神社の境内を見回す。


異常はない。


怪異の気配もない。


呪いの残滓もほとんど消えている。


まるで最初から存在しなかったようだ。


「誰だったんだろ」


『わからねぇ』


「怪異?」


『断言できねぇ』


はっちゃんの声は珍しく重かった。


『だが普通じゃねぇ』


「うん」


『あんな空間干渉ができる怪異なんざ滅多にいねぇ』


カクリは鳥居を見る。


朽ちた木材。


割れた石灯籠。


ただの廃神社。


しかし。


あの少女はここへ導くように走ってきた。


偶然とは思えない。


『今日は帰るぞ』


「......」


『情報が足りねぇ』


カクリは少しだけ不満そうな顔をした。


『焦るな』


「わかってる」


『嘘つけ』


「......」


図星だった。


はっちゃんが苦笑する。


『姉ちゃんの件が絡んでるかもしれねぇんだろ?』


「うん」


『だからこそだ』


夜の闇を見上げる。


『冷静に動け』


カクリは小さく頷いた。



翌日。


放課後。


カクリは学校帰りにれいなと共に霊能者達の拠点へ向かっていた。


長い車。


相変わらず普通ではない高級車。


その後部座席。


れいなが隣で楽しそうに喋っている。


「それでね!」


「うん」


「先生がね!」


「うん」


「昨日ね!」


「うん」


『お前よく付き合えるな』


はっちゃんが呆れていた。


カクリは肩を竦める。


そんなやり取りをしているうちに拠点へ到着した。


館の中。


応接室。


篠崎冬華が待っていた。


いつものスーツ姿。


落ち着いた表情。


「お帰りなさい」


「ただいま」


「ただいまです!」


れいなが元気よく挨拶する。


冬華は微笑んだ。


「何かありましたか?」


その質問に。


カクリは昨夜の出来事を話し始めた。


白い少女。


神社。


無数の手。


空間の歪み。


聞き終えた冬華の表情が少しだけ変わる。


「なるほど」


静かな声。


だが真剣だった。


「心当たりある?」


冬華は少し考え込む。


そして首を横に振った。


「断定はできません」


『おいおい』


はっちゃんが割り込む。


『霊能者の組織だろ』


「だからこそです」


冬華は冷静だった。


「私達が把握している怪異の特徴と一致しない部分が多すぎます」


れいなも首を傾げる。


「知らない怪異?」


「その可能性もあります」


冬華は資料棚から数冊のファイルを取り出した。


机へ広げる。


怪異の記録。


霊障の報告書。


古い文献。


様々な資料だ。


だが。


どれにも一致する存在はいない。


「少なくとも」


冬華が言う。


「私の知る限りではありません」


部屋に沈黙が落ちる。


カクリは少しだけ不安を覚えた。


篠崎冬華でも知らない。


それはかなり珍しいことだった。


『なぁ』


はっちゃんが言う。


『別件の可能性は?』


「あります」


冬華は頷く。


「姉君を襲った怪異と関係ない可能性も」


「......」


カクリは黙る。


正直。


そうは思えなかった。


あの少女は。


明らかに自分を見ていた。


探していた。


偶然ではない。


「カクリさん」


冬華が声を掛ける。


「はい」


「もし再び遭遇した場合」


少し間を置く。


「無理に追わないでください」


「......」


「相手の能力が不明です」


「うん」


「そして」


冬華の目が細くなる。


「私も調べます」


カクリは頷いた。



その日の夜。


拠点の客室。


カクリはベッドに腰掛けていた。


窓の外は夜。


静かな時間。


はっちゃんは机の上で小さな鋏の姿になっている。


『眠れねぇか』


「少し」


『珍しいな』


「......」


カクリは窓の外を見る。


街の灯り。


遠くの山。


暗い空。


「はっちゃん」


『なんだ』


「もし」


少しだけ迷う。


「もし、あの子が怪異じゃなかったら」


はっちゃんは黙った。


「人だったら」


『ありえねぇとは言わねぇ』


「......」


『だが普通の人間じゃねぇ』


それだけは確かだった。


カクリもそう思う。


普通の人間が空間を歪めたりしない。


無数の手を呼び出したりもしない。


しかし。


あの少女には。


怪異とも違う何かを感じた。


「見覚えあるんだよね」


『あぁ』


「でも思い出せない」


『そこが引っ掛かるな』


二人とも考え込む。


その時だった。


コンコン。


部屋のドアが叩かれる。


「?」


カクリが立ち上がる。


ドアを開ける。


そこには。


少し慌てた様子のれいなが立っていた。


「カクリちゃん!」


「どうしたの?」


れいなの顔色は青かった。


いつもの明るさがない。


「今ね」


息を切らしながら言う。


「館の外で」


その言葉に。


カクリとはっちゃんの表情が変わる。


「白い女の子を見たの」


部屋の空気が凍り付いた。


そして。


館の外では。


誰かが窓越しに静かにこちらを見上げていた。

ここまで読んでくれてありがとうございます。

次回もお楽しみに

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