表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幽世断ちのカクリ 〜宵町カクリは夜を歩く〜  作者: れんP


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
32/131

第31夜 「夜明けの先へ」



今日も少女は夜を歩く。


「終われぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」


宵町カクリが巨大断ち鋏を振り下ろす。


銀色の刃。


夜を裂く光。


怪異を断つために生まれた力。


刃は真っ直ぐ巨大怪異へ到達した。


「ガァァァァァァァァァァ!!」


絶叫。


巨大怪異の身体へ亀裂が走る。


一本。


二本。


三本。


まるでガラスが割れるように全身へ広がっていく。


『そのまま押し切れぇ!!』


はっちゃんが叫ぶ。


カクリは歯を食いしばる。


両腕が痛い。


肩も痛い。


だが止まらない。


止まるつもりもない。


巨大怪異が暴れる。


黒い腕が無数に飛び出す。


しかし。


女怪異の黒髪がそれを押さえ込んでいた。


「いかせ……ない……」


身体は崩れ始めている。


それでも離さない。


守るために。


最後まで。


「ガァァァァァ!!」


怪異が咆哮する。


鏡の中から無数の顔が現れた。


泣いている顔。


怒る顔。


苦しむ顔。


絶望した顔。


長い年月で取り込まれた感情の残滓。


それら全てが叫んでいる。


だが。


冬華が前へ出た。


「封印術式、第三段階」


大量の札が宙へ舞う。


光の輪が形成される。


霊能者達も続く。


「術式接続!」


「霊力供給開始!」


「封印座標固定!」


巨大な陣が展開された。


床。


壁。


天井。


部屋全体が光る。


巨大怪異が苦しそうに暴れた。


「ガァァァァァァァ!!」


『効いてるぞ!!』


はっちゃんが笑う。


カクリはさらに力を込めた。


巨大断ち鋏が唸る。


銀色の光が強くなる。


そして。


パキン。


小さな音がした。


怪異の核。


胸部奥。


黒い結晶。


そこへ亀裂が入った。


冬華が叫ぶ。


「核です!!」


カクリの目が鋭くなる。


見えた。


終わらせる場所。


怪異も気づいたらしい。


全ての腕がカクリへ向かう。


殺意。


憎悪。


絶望。


全てが押し寄せる。


だが。


れいなが飛び出した。


「カクリちゃん!!」


大量の札を投げる。


光の壁が展開された。


腕がぶつかる。


砕ける。


それでもれいなは踏ん張る。


「行ってぇぇぇぇ!!」


カクリは頷く。


走る。


一直線。


巨大怪異へ。


女怪異が最後の力を振り絞る。


黒髪が広がる。


怪異の身体を拘束する。


「……ありがとう」


誰へ向けた言葉だったのか。


わからない。


だが。


その声はどこか優しかった。


カクリは跳ぶ。


高く。


高く。


巨大断ち鋏を振り上げる。


「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


そして。


振り下ろした。


ザァァァァァン!!


銀光。


夜を裂く一撃。


巨大怪異の核へ直撃する。


一瞬の静寂。


次の瞬間。


核が砕けた。


「―――――」


声にならない悲鳴。


巨大怪異の身体が光へ変わっていく。


黒い霧。


呪い。


憎しみ。


全てが崩壊する。


そして。


消えていった。


静かに。


本当に静かに。


まるで最初から存在しなかったみたいに。


部屋が静まり返る。


誰もすぐには動けなかった。


やがて。


冬華が呟く。


「……討伐確認」


その声で緊張が解けた。


「終わった……」


「助かった……」


霊能者達がその場へ座り込む。


れいなもへたり込んだ。


「つ、疲れたぁ……」


カクリも息を切らしていた。


巨大断ち鋏を地面へ突き立てる。


戦いは終わった。


だが。


まだ一つだけ残っていた。


女怪異。


守護型怪異。


彼女の身体は光になり始めていた。


少しずつ。


ゆっくり。


消えている。


カクリが近づく。


女怪異は静かに微笑んでいた。


もう顔は崩れていない。


どこか人間らしい表情だった。


「……だいじょうぶ」


優しい声。


あの少女へ向けるように。


「こんどは……ひとりじゃない」


誰も何も言えない。


女怪異は窓の向こうを見る。


夜空。


遠くの街明かり。


そして。


何かを見つけたように笑った。


「……あ」


その視線の先。


誰も見えない。


だが。


彼女には見えているのだろう。


昔の少女が。


女怪異はゆっくり手を伸ばした。


そして。


「おまたせ」


その言葉を最後に。


光となって消えた。


夜風だけが残る。


カクリは黙って立っていた。


しばらく。


本当にしばらく。


誰も喋らなかった。


やがて。


はっちゃんが小さく言う。


『……救われたんだろうな』


カクリは静かに頷いた。


「うん」


それだけだった。


でも。


それで十分だった。


窓の外を見る。


東の空が少しだけ明るくなっている。


夜明けが近い。


長い夜だった。


怖い夜だった。


でも。


その夜の先に。


確かに救われたものがあった。


少女は窓の向こうを見つめる。


そして静かに歩き出す。


まだ終わらない。


姉を襲った怪異もいる。


解決していないことも多い。


それでも。


一歩ずつ進むしかない。


夜を歩き続けるために。


夜明けの先へ向かうために。

ここまで読んでくれてありがとうございます。

次回もお楽しみに

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ