表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幽世断ちのカクリ 〜宵町カクリは夜を歩く〜  作者: れんP


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
21/131

第20夜 「怪異の中」


今日も少女は夜を歩く。


昼の商店街。


崩れたアスファルト。


砕けたガラス。


黒い霧。


そして巨大怪異。


宵町カクリは荒く息を吐いていた。


「はぁ……っ……」


胸が苦しい。


頭が痛い。


だが、それ以上に。


脳裏へ焼き付いた光景が離れなかった。


怪異の口の奥。


そこに見えた、姉の姿。


『……おい』


はっちゃんの声が低く響く。


『あいつ、ただの怪異じゃねぇぞ』


カクリは怪異を睨む。


巨大な影。


無数の怨念。


だが今は、別のものに見えていた。


何かを抱え込んでいる。


そんな感じがした。


篠崎冬華が前へ出る。


使役怪異の黒い着物の女が、静かに彼女の背後へ立っていた。


「カクリさん、無事ですか」


「……うん」


だが冬華の目は鋭い。


「今、何を見ました?」


カクリは少し迷った。


でも隠してはいけない気がした。


「……お姉ちゃん」


周囲の空気が変わる。


近くの霊能者達も反応した。


「姉……?」


「怪異の中に?」


冬華は静かに怪異を見る。


「……やはり」


「知ってるの?」


冬華はすぐには答えなかった。


その時だった。


巨大怪異が再び咆哮する。


「ォォォォォォオオオオ!!」


衝撃波。


周囲のシャッターが吹き飛ぶ。


霊能者達が結界で防御する。


「結界維持!!」


「押されるな!!」


怪異の身体から黒い霧が溢れ出す。


地面の顔達がさらに増えていく。


「クルシイ……」


「イヤダ……」


「サムイ……」


呪いの声。


空間そのものが侵食されていた。


冬華が低く呟く。


「……集合怨念型ではありませんね」


「?」


「もっと別のものです」


その瞬間。


怪異の巨大な口が開く。


そして、中から“何か”が落ちてきた。


ドサッ。


人影。


黒い液体まみれの、人の形。


「っ!?」


カクリが目を見開く。


それは女の子だった。


カクリより少し年上くらい。


制服姿。


だが目が虚ろで、身体には黒い靄がまとわりついている。


「た……すけ……」


小さな声。


霊能者達がざわつく。


「人間!?」


「飲み込まれてたのか!?」


怪異が唸る。


「カエセ……」


冬華の顔色が変わった。


「まさか……怪異が人を取り込んでいる?」


『チッ……最悪だな』


はっちゃんが舌打ちする。


『ただの怨念の塊じゃねぇ。“器”を作ろうとしてやがる』


「器……?」


『人間を取り込んで、自分をこの世へ固定するつもりだ』


カクリの背筋が冷える。


怪異は人を喰う。


でも、これは違う。


もっと悪質だ。


冬華が叫ぶ。


「保護を優先します!!前衛、怪異を引きつけてください!!」


霊能者達が動く。


札が飛び交う。


炎が怪異を包む。


怪異が暴れる。


その隙に、カクリは倒れている少女へ駆け寄った。


「大丈夫!?」


少女は震えていた。


瞳の焦点が合っていない。


「く……らい……」


「しっかりして」


カクリが手を伸ばす。


その瞬間。


少女の影が盛り上がった。


『カクリ!!』


黒い腕が飛び出す。


「っ!?」


カクリは咄嗟に鋏で防ぐ。


ギィィィン!!


衝撃。


少女の身体から怪異の腕が生えていた。


「アァァァァァ!!」


少女が苦しそうに叫ぶ。


冬華が目を細める。


「侵食されています……!」


「助けられないの!?」


「まだ完全ではありません!」


冬華は札を取り出す。


「押さえてください!!」


カクリは巨大断ち鋏で黒い腕を押さえ込む。


少女の身体が震える。


「いや……いやぁ……」


『飲まれかけてやがる』


はっちゃんが低く唸る。


冬華が札を少女の額へ貼り付けた。


「封縛」


光が走る。


少女の身体から黒い霧が吹き出した。


「ァァァァァ!!」


怪異本体が絶叫する。


商店街が揺れる。


どうやら繋がっているらしい。


「……なるほど」


冬華が怪異を見る。


「人を核代わりにしているのですね」


霊能者の一人が叫ぶ。


「だから再生するのか!!」


「取り込んだ人間を媒体に……!」


怪異が怒り狂ったように暴れる。


「カエセェェェェェェ!!!」


大量の腕が地面から噴き出す。


霊能者達が吹き飛ばされる。


「ぐぁっ!!」


「結界がもたない!!」


『おいおい、キレやがったぞ』


はっちゃんが笑う。


だがその声にも緊張があった。


カクリは少女を庇うように前へ出る。


怖い。


でも。


目の前で苦しんでる人を放っておけない。


その時。


怪異の口の奥。


また、一瞬だけ見えた。


病院の白い部屋。


眠る姉。


そして。


姉の身体へ伸びる黒い手。


カクリの瞳が揺れる。


「……やっぱり」


怪異が、自分の姉と繋がっている。


間違いない。


『カクリ』


はっちゃんの声が響く。


『多分あいつ、まだ“完成”してねぇ』


「完成……?」


『あぁ。だから人間を取り込んでやがる』


巨大怪異がゆっくり口を開く。


黒い闇の奥。


そこから、無数の目がこちらを見ていた。


そして。


「オマエモ……クル?」


空気が凍った。

ここまで読んでくれてありがとうございます。

次回もお楽しみに

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ