第五章: 彼女が来なかった日々.
朝の光がカーテンの隙間から差し込む。カーテンは相変わらず閉め切ったまま。だが、隙間からは作業に十分な光が入ってくる。私は膝をつき、濡らした布で低いテーブルを拭いていた。その時、ノックの音がした。
三回のやわらかな叩き。急かすような音ではない。
私はかかとで座り直した。まず思い浮かんだのはひただが、彼女はふつう籠を外に置いてノックはしない。二つ目の考えは、零香が家賃のことを尋ねに来たのかもしれない、ということだった。
立ち上がる。割烹着で手を拭く。戸を開けた。
ひなたが、そこに立っていた。
朝の光が彼女の背にあり、髪の先をほとんど金色に変えていた。彼女はいつもの色あせた浴衣を着ていた。いつものほつれた柿色の紐が手首に巻かれている。今日は籠はなかった。食べ物もない。ただ、彼女がいるだけだった。
**「忙しいの?」**
彼女は私の手にある布と、扉のそばの水桶に向かって首を傾げた。
**「ちょっとね」**
**「手伝おうか?」**
断るべきだった。彼女は子供だ。自分の家事もあるし、自分の家もあり、他にいるべき理由がある。しかし、その言葉は出てこなかった。
**「いいよ」** 私は言った。脇にどいた。
彼女は、まるで自分の家であるかのように歩いて入っていった。
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ひなたは手伝った。
いや、ひなたは手伝おうとした。
彼女は私から布を奪い取り、低いテーブルを拭き始めた。ついさっき私が拭き終えたばかりの同じテーブルを。彼女の拭き方は熱心だが、不正確だった。ここの汚れを残し、あそこの埃を伸ばし、なぜか私が縁に置いてあった小さな塩の壺を倒してしまった。
塩が木の上に散らばった。
**「あっ」**
**「いいよ」**
私は別の布を見つけた。彼女は塵取りを見つけた。二人で並んで膝をつき、塩を小さな山に集めた。肩が触れ合った。彼女からは、すすと何か甘い匂いがした。
**「あなたは、これがとても上手いわけじゃないね」**
**「学んでるの」**
**「何週間も私の家を掃除してきたのに」**
**「まだ学んでるの」**
私は彼女を見た。彼女は塩を見た。口の端から小さな舌が出ている。百回は見た、あの集中する時の癖だった。
私は微笑んだ。わざとではない。
彼女は次に窓辺に移った。村の少女が置いていった薬草はまだそこにあり、今は乾いて、小さな束に結ばれていた。ひなたはそれを手に取り、匂いを嗅ぎ、それから違う順番に並べた。また手に取った。またどこか別の場所に置いた。
**「何をしているの?」**
**「整えてるの」**
**「元の場所で十分だったよ」**
**「今はもっと良くなった」**
違いはわからなかった。しかし、私は元に戻さなかった。
彼女は自分の袖のほつれた糸を見つけ、それを引っ張るのに丸一分費やした。裾の小さな部分をほどいてしまった。私が見ていることに気づくと、彼女は止め、ほどいた糸を中に戻した。
**「それは、手伝いになってないよ」**
**「考えてるの」**
**「何を?」**
**「糸のこと」**
私は待った。彼女は詳しく説明しなかった。
私はまた微笑んだ。どうしようもなかった。
テーブルが拭き終わり、塩が掃き終わり、薬草が整えられ、糸のことが忘れられた頃には、朝は昼前に伸びていた。米鍋はまだ研がれていない。床はまだ掃く必要がある。洗濯物は扉のそばに山積みだった。ひなたがそれを広げ、別の形に畳み直し、それから最初の形の方が良かったと決めたからだ。しかし、今は彼女も確信が持てなかった。
彼女は、解決するよりも多くの仕事を生み出した。
しかし、私は彼女をここに置いた。
彼女がいることで、部屋があまりにも空っぽに感じられなかったから。彼女の小さく、非効率な手が、全てを完璧にしなければならないわけではないと、思い出させてくれたから。彼女が顔を上げ、その黒い瞳が穏やかで動じない様子で私を見た時、私はほんの一瞬だけ、焚き火のことも、子供たちのことも、キリからの手紙のことも、窓を通り過ぎた影のことも、忘れた。
そして、私は微笑んだ。
**「笑ってる」** ひなたが言った。彼女は今、床に座っていた。足を組んで。
**「そうかな?」**
**「そう」**
**「悪いこと?」**
彼女は考えた。頭を手でこすった。
**「ううん」** 彼女は言った。**「良いことだよ。あなたは、それを十分にしてないから」**
私は彼女の向かいに座った。部屋は静かだった。朝の光は移り変わり、より暖かくなり、床の上に異なる模様を落としていた。
**「あなたもね」** 私は言った。
ひなたが顔を上げた。その顔は、動かず、読めなかった。それから、ゆっくりと、彼女の口元が上がった。大きく開いた笑みではない。小さなもの。静かなどこかから来る、あの種類の笑み。
**「練習してるの」** 彼女は言った。
そして、しばらくの間、村はほとんど我が家のように感じられた。
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食料を買う必要があった。
それが言い訳だった。真実はもっと単純だった。朝は静かだった。家は小さすぎると感じられた。ひなたはまだ床に座っていた。私は彼女に去ってほしくなかった。また、自分の考えだけを抱えて黙って座っているのも嫌だった。
**「市場に行く」** 私は言った。**「一緒に来る?」**
ひなたが顔を上げた。すぐには答えず、ただ首をかしげた。何かに時間を費やす価値があるかどうかを決めている時の、あの仕草で。
**「食べ物を買うの?」**
**「それが食料品ってものよ」**
**「美味しいものを買うの?」**
**「さあね。何が美味しいの?」**
彼女は立ち上がった。浴衣の埃をはらった。紐が彼女の手首から揺れた。
**「教えてあげる」** 彼女は言った。
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市場への道は、村の中心部を縫うように曲がりくねっていた。低い屋根。薄い壁。数羽の鶏が土をほじくる。
ひなたは私の隣を歩いた。しばらく黙って、雲を見ていた。
**「好きな食べ物は何?」** 彼女が尋ねた。
考えた。**「卵焼き」** 私は言った。**「母がよく、ちょっと砂糖を入れて作ってくれた。甘いけど、甘すぎない」**
ひなたは真剣にうなずいた。**「それは、朝ごはんの食べ物だよ」**
**「いつ食べてもいいんだよ」**
**「違う」** 彼女は、小さくても重要な間違いを正すかのように言った。**「卵焼きは朝ごはん。お昼を過ぎたら、同じじゃない」**
**「規則があるとは知らなかった」**
**「規則じゃない」** 彼女は言った。**「正しいか、間違っているか、だけ」**
私は笑った。彼女は笑わなかった。
井戸を通り過ぎた。一人の女が水を汲んでいた。先週洗濯物を干していた、あの同じ女。彼女は私にうなずいた。私はうなずき返した。ひなたは、彼女を全く認識していなかった。
**「あなたはどうなの?」** 私は尋ねた。**「好きなものは?」**
**「西瓜」**
**「それは果物だよ」**
ひなたは立ち止まった。私を見るために向きを変えた。その表情は、深く疑わしげだった。
**「西瓜は野菜よ」** 彼女は言った。
**「違うよ」**
**「合ってる。蔓に育つ。野菜は蔓に育つ。果物は木に育つ」**
**「それは……」** 言いかけて、止まった。**「トマトも蔓に育つよ。トマトは野菜なの?」**
**「そう」**
**「トマトは果物だよ」**
**「違う。サラダに入ってる」**
**「リンゴだって……」**
ひなたは私を見つめた。口が開いた。閉じた。また開いた。
**「それ、馬鹿げてる」** 彼女は言った。
**「フルーツサラダのこと?」**
**「わざと果物をサラダに入れること。馬鹿げてる」**
彼女は向きを変え、歩き続けた。私はその後を追いながら、にやついた。
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市場はほとんど空っぽだった。米の商人と、漬物を売る女がいるだけだった。私は野菜を買い、小さな袋の米を買い、湿った布に包まれた豆腐の塊を買った。ひなたは、帳簿を監査する者の集中力で、全ての取引を見ていた。
**「それ、豆腐にしては高すぎる」** 商人が背を向けた後、彼女は言った。
**「いいの」**
**「高すぎる。先週はもっと安かった」**
**「値段は変わるものよ」**
**「そんなに変わるべきじゃない」**
彼女は腕を組んだ。一瞬、彼女は小さな、不満そうな祖母にそっくりだった。笑わないように、顔をそらさなければならなかった。
私たちは別の道を戻った。畑の端に沿って。草は高く、風で曲がっていた。ひなたは立ち止まり、一本の茎を摘み、歯の間に挟んだ。
**「あの雲」** 彼女は指をさした。**「何に見える?」**
指を追った。白い形。低く、伸び広がって、午後の光を捉えている。
**「船」** 私は言った。**「小さな」**
ひなたは目を細めた。**「違う」**
**「何に見える?」**
**「猫。寝てる」**
**「猫には見えないよ」**
**「横向きになってる。あそこが尻尾。あそこが耳」**
もう一度見た。それでも見えなかった。
**「あなたは、雲が苦手なのかもね」** 彼女は言った。
**「あなたは、そこにないものを見ているのかもね」**
彼女は茎を口から取り出し、笑った。本当の笑み。広く、無防備に。
**「それが、物を見る一番良い方法なんだ」** 彼女は言った。
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店に着いた。日は動き、影は長くなっていた。ひなたは店の前に立っていた。
**「入らないの?」** 私は尋ねた。
**「すぐに。雲を見てるの」**
私は中に入った。彼女は数分後に続いた。
その店は小さかった。押入れにカウンターがある程度。棚が壁を覆い、村が自分で作らないものを置いていた。塩。砂糖。数缶の茶。マッチ。ここでは誰も恋しく思っていないらしい、都会からの安物のおもちゃ。
ひなたが私の袖を引っ張った。
**「見て」**
彼女は床の近くの箱を指さした。色とりどりの玉の絡まり。ゴム製。弾む。どこでも買えるあの種類。桃色、青、緑、色あせた縞模様の黄色い一つ。ひなたはしゃがみ込み、桃色の玉を手に取り、両方の掌でそれを抱えた。
**「丸い」** 彼女は言った。
**「たいていの玉はそうだよ」**
**「これは、とても丸い」**
彼女はそれをひっくり返した。握った。耳に当てて、中に何か聞こえないか、聴いているようだった。
私はそれを買った。五十円。カウンターの女は、口の片方だけで微笑んだ。
ひなたはずっとそれを抱えていた。私が支払っている間も。
その時、**首飾り**を見た。
それは、レジの近くの小さな鉤から下がっていた。戸の風でわずかに揺れている。高価なものではない。ただの細い紐と、小さな飾り。三日月。淡い銀色。私の親指の爪より大きい。シンプル。小さなものが可愛いように、可愛い。
なぜそれに手を伸ばしたのか、わからなかった。
**「これもください」** 私は言った。
女はうなずいた。値段を告げなかった。もしかすると、値段はなかったのかもしれない。彼女はただ紐を鉤から外し、私の掌に置いた。
ひなたが顔を上げた。その目が見開かれた。
**「何、それ?」** 彼女は尋ねた。
**「月」** 私は言った。**「あなたに」**
**「私に?」**
私はしゃがみ込んだ。彼女は非常に動かずに立っていた。桃色の玉を胸に抱えて。私は紐を持ち上げ、彼女の頭を通し、それから後ろに回して留め具を留めた。彼女の髪は、すすと甘い香りがした。彼女の首は細かった。細すぎる。いつも気づくように、気づいた。
**「はい」** 私は言った。月は、彼女の鎖骨のすぐ下に落ち着いた。
ひなたは見下ろした。指先で飾りに触れ、その曲線をなぞった。
**「笑顔だ」** 彼女は言った。
**「月だよ」**
**「笑顔の月」**
彼女はありがとうとは言わなかった。言う必要はなかった。その顔が全てを語っていた。静かな喜び。小さな驚嘆。片手で桃色の玉を、もう一方の手で月を抱えている、その仕草。まるで両方が同じように大切であるかのように。
私は彼女を見つめた。
そして、一瞬、ただ一呼吸、ただ一瞬の閃き、私は別の子供を見た。より小さく。より新しい。異なる紐。異なる部屋。私が準備できる前に終わってしまった、異なる人生。
**私の娘。**
その記憶は、冷たい水のように湧き上がった。
私はそれを押しのけた。
立ち上がった。微笑んだ。ひなたの手を取った。
**「行こう」** 私は言った。**「まだ西瓜が必要だよ」**
彼女は、私の顔に何が起こったのか尋ねなかった。ただうなずき、私についてきて、日差しの中へ出た。
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最後の店で買った。深い緑の瓜。虎のような縞模様。私の腕の中で重い。店主は指の関節でそれを叩き、満足そうにうなずいた。私は支払った。ひなたは、豆腐の時に持っていたのと同じ厳しい監視で、取引を見ていた。
**「それは、良いやつだ」** 彼女は言った。
**「分かるの?」**
**「音。太鼓みたいな音がしないといけない。石じゃなくて。太鼓」**
私は瓜を腰に抱え直した。**「あなたは、西瓜の専門家なの?」**
**「私は、全ての専門家よ」** 彼女は言った。
私は笑った。
一緒に家まで運んだ。私が瓜を持ち、彼女が野菜の袋を運び、桃色の玉を脇に抱えた。月の飾りが彼女の胸で揺れた。
台所に戻り、全てを低いテーブルに置いた。私は包丁を出した。まな板。種を拭くための布。
ひなたは自分の台に上がり、見ていた。
**「切って」** 彼女は言った。
**「今、切るよ」**
**「遅い。遅くやってる」**
私は切った。
包丁は、満足のいく音を立てて瓜の皮に沈み、瓜は二つに割れた。真っ赤な果肉。黒い種がきらめく。夏の香りが部屋に溢れた。ひなたは小さな声を上げた。息を呑む声と笑い声の間の何か。
**「美しい」** 彼女は言った。
**「西瓜だよ」**
**「美しい」**
私たちはテーブルに突っ伏して一切れずつ食べた。果汁があごを伝った。私は母がよくやったように、くさび形に切った。ひなたは一切れを両手で持ち、小さな動物のようにかじりついた。種が頬に張り付いた。
**「めちゃくちゃにしてるよ」** 私は言った。
**「あなたもめちゃくちゃにしてる」**
彼女は正しかった。私の手はべたべただった。袖は濡れていた。一つ種が床に落ち、また一つ。
私は一つ種を拾い、彼女に投げた。
彼女は、凍りついた。自分の浴衣の上の種を見下ろした。私を見上げた。
**「種を投げた」** 彼女は言った。
**「うん」**
**「私に」**
**「うん」**
彼女は、にやりとした。それから、自分の一切れから種を一つ拾い、投げ返した。
それは私の額に当たった。
二人で互いを見つめ合った。それからひなたが笑った。本当の笑い声。明るく、無防備に。私も笑い始めた。そして二人で笑い合い、テーブルの向こうに種を投げ合った。当たることより、外れることの方が多かった。台所は私たちの声で満たされた。
一つ種が私のお茶に入った。別の一つが壁に張り付いた。
**「これは、ひどい状況だ」** 私はまだ笑いながら言った。
**「これが、一番良いの」** 彼女は言った。
その後、片付けた。上手くはなかった――何日も見つかるような隅っこに種があった――しかし、一緒に。ひなたがテーブルを拭き、私が瓜の皮を洗った。月の飾りが光を捉えた。桃色の玉は窓辺に座って、私たちを見ていた。
**「あなた、楽しそう」** ひなたが言った。
問いではなかった。
**「そうね」** 私は言った。**「そう思う」**
彼女は満足そうにうなずき、拭く作業に戻った。
外では、午後が夕方に向かって移り変わっていた。影が長く庭に伸びていた。空気は西瓜と埃と、私には名付けられない何か甘い香りがした。
静けさに気づくべきだった。
しかし、ひなたは鼻歌を歌っていた。小さな、メロディーのない、幸せそうな鼻歌。
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午後の日差しがカーテンの隙間から差し込んでいた。暖かく、金色。目を閉じたくなるような光。西瓜はなくなっていた。種は箒で扉のそばの小さな山に掃かれていた。台所は夏と砂糖の香りがした。
ひなたは床に座っていた。桃色の玉を膝の上に。月の飾りを胸の上に。彼女はしばらく黙っていた。まぶたが下がり、開き、また下がった。
**「疲れたね」** 私は言った。
**「疲れてない」**
**「あくびをしたよ」**
**「空気が薄いから、あくびが出るの」**
**「空気は普通だよ」**
**「空気は薄い」** 彼女は主張したが、その声は柔らかく、消え入りそうだった。
彼女は桃色の玉を脇に置いた。私のところへ這ってきた。私は壁に背を向けて座り、脚を伸ばしていた。彼女は、尋ねもせず、ためらいもせず、私の隣に丸くなった。彼女の頭が私の膝の上に落ちた。彼女の体は小さな曲線に折りたたまれ、膝を抱え、手を頬の下で合わせた。
私は一瞬、動けなかった。
それから、手を彼女の髪の上に置いた。
彼女は西瓜と埃の匂いがした。すすはまだそこにあった。その下に。そして野草の香り。彼女の髪は柔らかかった。思っていたより柔らかく、私は考えることなくそれを撫でている自分に気づいた。指が、額からうなじまで、ゆっくりと線をなぞった。
部屋は静かだった。
光が移った。
そして、一瞬、ほんの一瞬、私はどこか別の場所にいた。
別の部屋。別の光。私の膝の上の、より小さな頭。私に寄り添う、より小さな体。
**私の娘。**
彼女の重み。彼女の温もり。眠りの中でため息をつき、顔を私の腿に押し付ける、その仕草。
記憶は、いつものように湧き上がった。鋭く。招かれずに。
私は目を閉じた。
*今はやめて*、と思った。*ここじゃない。*
目を開けた。ひなたは、まだそこにいた。まだ息をしている。
私は、髪を撫で続けた。
彼女は、眠りの中で呟き始めた。
最初は、意味のない、柔らかな音、半言葉。子供たちが夢と夢の間を漂っている時に出す、あの種類の音。私は気に留めなかった。光が床の上を動くのを見るのに忙しかった。
その時、言葉が来た。
**「かごめかごめ……」**
私の手が止まった。
**「籠の中の鳥は……」**
見下ろした。ひなたの唇は動いていたが、目は閉じていた。その顔は、穏やかだった。彼女は起きていなかった。
**「いついつ出やる……」**
彼女の声は、途切れた。言葉は柔らかくなりすぎ、不明瞭になりすぎた。私は身を乗り出し、息を止めた。
**「……うしろの……」**
あるいは、それは「うしろの」ではなかったのかもしれない。別の何かだったのかもしれない。呟き。ため息。窓の外の風。
確信は持てなかった。
歌は止んだ。
ひなたの唇は動かなくなった。彼女の呼吸は深くなった。部屋は再び静かになった。午後の、普通の静けさ。眠る子供の。木の床の上の陽光の。
私は長い間そこに座っていた。手は彼女の髪の中で凍りついたまま。
かごめかごめ。
籠の中の鳥は。
*いついつ出やる* ではない。
*うしろの正面だあれ?*
私は焚き火のことを思った。焦げた土。茂みの灰。
私は、音もなく踊る子供たちのことを思った。
私は、まだテーブルの上に折りたたまれた、キリからの手紙のことを思った。
ひなたは眠りの中でため息をつき、顔をより深く私の膝の上に向けた。月の飾りがきらめいた。紐が彼女の手首にゆるくかかっていた。
私は、再び彼女の髪を撫で始めた。ゆっくりと、機械的に。
光は床の上を動いた。
そして、私は再び目を閉じなかった。
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ひなたはゆっくりと目を覚ました。まぶたの震え。小さな伸び。意識が徐々に戻る。彼女は私の膝の上から私を見上げた。その黒い瞳は、焦点が合っていなかった。
**「寝ちゃった?」** 彼女は尋ねた。
**「少しだけ」**
彼女は起き上がり、頬をこすった。私の浴衣の折り目による赤い跡が、彼女の肌に押し付けられていた。彼女は気づいていないようだった。
**「さっき、何を歌ってたの?」** 私は尋ねた。声は軽く、何気なく、保った。
**「歌?」**
**「寝てる間に。何か呟いてたよ」**
ひなたは首をかしげた。眉をひそめた。本物の困惑、あるいはそう見える何か。
**「覚えてない」** 彼女は言った。
**「歌。籠と鳥について」**
彼女は首を振った。**「そんな歌、知らない」**
**「確か?」**
**「確かだよ」** 彼女は立ち上がり、浴衣の埃をはらった。月の飾りが揺れた。**「私は、寝てるときに歌ったりしない」**
**「誰でも時々、寝言を言うものだよ」**
**「私は言わない」**
彼女は、ほとんど信じてしまいそうなほどの確信を持って言った。ほとんど。
私は笑い飛ばした。**「じゃあ、忘れて。おそらく、何でもない」**
ひなたはうなずいた。彼女は桃色の玉を拾い、壁に向かって弾き始めた。柔らかく、リズミカルな音。彼女の顔は穏やかだった。無頓着。
しかし、歌は私の心に残った。
かごめかごめ。籠の中の鳥は。
*いついつ出やる* ではない。
*うしろの正面だあれ?*
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翌朝、私は夜明け前に起きた。
茶を淹れた。戸を開けた。何週間ぶりに、自分で石畳の道を掃いた。
ひなたは、いなかった。
大丈夫だと自分に言い聞かせた。子供には、用事もある。家事があったのかもしれない。母に用があったのかもしれない。ただ、家にいようと決めただけかもしれない。
一人で朝食を食べた。
米鍋は、彼女の小さな手が杓子を握っていないと、より重く感じられた。
しかし、心配はまだなかった。
また一日が過ぎた。
それでも、ひなたは来なかった。
私は、何度も扉の方を見ている自分に気づいた。絶え間なくではない――ただ、時々。皿を洗いながら、肩越しにちらりと見る。洗濯物を畳みながら、一瞬立ち止まる。誰かがそこにいることを期待する、小さな、無意識の習慣。そこにいない誰かを。
彼女のいることを、どれほど楽しみにしていたか、気づいていなかった。
家の静けさは、今は違って感じられた。平穏ではない。**空虚**。
明日、彼女は来るだろう、と自分に言い聞かせた。
ほとんど、信じた。
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ひなたは、やはり来なかった。
朝は灰色で、霧がなかなか晴れなかった。私はお茶を持って階段に座り、道を見つめた。
何もない。
大きすぎる浴衣の小さな姿も。ほつれた紐も。埃を蹴る裸足も。
その沈黙は、間違っているように感じられた。
家は、いつもより空っぽに感じられた。彼女が来るようになる前よりも。なぜなら、今は、彼女がいる時の音を知っているからだ。箒の擦れる音。杓子のトントンという音。小さな、横柄な質問。
私はお茶を置いた。
立ち上がった。
ひなたの家へ歩いた。
ノックをした。
長い間の後、戸が開いた。
零香がそこに立っていた。私の覚えているよりも痩せていた。彼女の浴衣はだぶだぶだった。ひなたのと同じように。髪は後ろにまとめられていたが、いくつかの束がほどけ、とかされていなかった。その目は赤く、顔は青白かった。
彼女は、疲れ切って見えた。
彼女は、泣いていたように見えた。
腹の奥が締め付けられた。
**「ひなたは、いますか?」** 私は尋ねた。
零香は私を見つめた。一瞬、彼女は私に気づかないようだった。それから、その表情が変わった。最初は困惑。それから、別の何か。**衝撃**。
**「あなた、知らないの?」**
胃が、落ちた。
**「何を?」**
彼女は手を口に当てた。その目が涙で満たされた。
**「ひなたが、いなくなったの」**
その言葉は、空気の中に漂った。
息ができなかった。




