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「夜になると、子供たちは歌い出す」  作者: アンドリュー・チェン


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第五章: 彼女が来なかった日々.

朝の光がカーテンの隙間から差し込む。カーテンは相変わらず閉め切ったまま。だが、隙間からは作業に十分な光が入ってくる。私は膝をつき、濡らした布で低いテーブルを拭いていた。その時、ノックの音がした。


三回のやわらかな叩き。急かすような音ではない。


私はかかとで座り直した。まず思い浮かんだのはひただが、彼女はふつう籠を外に置いてノックはしない。二つ目の考えは、零香が家賃のことを尋ねに来たのかもしれない、ということだった。


立ち上がる。割烹着で手を拭く。戸を開けた。


ひなたが、そこに立っていた。


朝の光が彼女の背にあり、髪の先をほとんど金色に変えていた。彼女はいつもの色あせた浴衣を着ていた。いつものほつれた柿色の紐が手首に巻かれている。今日は籠はなかった。食べ物もない。ただ、彼女がいるだけだった。


**「忙しいの?」**


彼女は私の手にある布と、扉のそばの水桶に向かって首を傾げた。


**「ちょっとね」**


**「手伝おうか?」**


断るべきだった。彼女は子供だ。自分の家事もあるし、自分の家もあり、他にいるべき理由がある。しかし、その言葉は出てこなかった。


**「いいよ」** 私は言った。脇にどいた。


彼女は、まるで自分の家であるかのように歩いて入っていった。


---


ひなたは手伝った。


いや、ひなたは手伝おうとした。


彼女は私から布を奪い取り、低いテーブルを拭き始めた。ついさっき私が拭き終えたばかりの同じテーブルを。彼女の拭き方は熱心だが、不正確だった。ここの汚れを残し、あそこの埃を伸ばし、なぜか私が縁に置いてあった小さな塩の壺を倒してしまった。


塩が木の上に散らばった。


**「あっ」**


**「いいよ」**


私は別の布を見つけた。彼女は塵取りを見つけた。二人で並んで膝をつき、塩を小さな山に集めた。肩が触れ合った。彼女からは、すすと何か甘い匂いがした。


**「あなたは、これがとても上手いわけじゃないね」**


**「学んでるの」**


**「何週間も私の家を掃除してきたのに」**


**「まだ学んでるの」**


私は彼女を見た。彼女は塩を見た。口の端から小さな舌が出ている。百回は見た、あの集中する時の癖だった。


私は微笑んだ。わざとではない。


彼女は次に窓辺に移った。村の少女が置いていった薬草はまだそこにあり、今は乾いて、小さな束に結ばれていた。ひなたはそれを手に取り、匂いを嗅ぎ、それから違う順番に並べた。また手に取った。またどこか別の場所に置いた。


**「何をしているの?」**


**「整えてるの」**


**「元の場所で十分だったよ」**


**「今はもっと良くなった」**


違いはわからなかった。しかし、私は元に戻さなかった。


彼女は自分の袖のほつれた糸を見つけ、それを引っ張るのに丸一分費やした。裾の小さな部分をほどいてしまった。私が見ていることに気づくと、彼女は止め、ほどいた糸を中に戻した。


**「それは、手伝いになってないよ」**


**「考えてるの」**


**「何を?」**


**「糸のこと」**


私は待った。彼女は詳しく説明しなかった。


私はまた微笑んだ。どうしようもなかった。


テーブルが拭き終わり、塩が掃き終わり、薬草が整えられ、糸のことが忘れられた頃には、朝は昼前に伸びていた。米鍋はまだ研がれていない。床はまだ掃く必要がある。洗濯物は扉のそばに山積みだった。ひなたがそれを広げ、別の形に畳み直し、それから最初の形の方が良かったと決めたからだ。しかし、今は彼女も確信が持てなかった。


彼女は、解決するよりも多くの仕事を生み出した。


しかし、私は彼女をここに置いた。


彼女がいることで、部屋があまりにも空っぽに感じられなかったから。彼女の小さく、非効率な手が、全てを完璧にしなければならないわけではないと、思い出させてくれたから。彼女が顔を上げ、その黒い瞳が穏やかで動じない様子で私を見た時、私はほんの一瞬だけ、焚き火のことも、子供たちのことも、キリからの手紙のことも、窓を通り過ぎた影のことも、忘れた。


そして、私は微笑んだ。


**「笑ってる」** ひなたが言った。彼女は今、床に座っていた。足を組んで。


**「そうかな?」**


**「そう」**


**「悪いこと?」**


彼女は考えた。頭を手でこすった。


**「ううん」** 彼女は言った。**「良いことだよ。あなたは、それを十分にしてないから」**


私は彼女の向かいに座った。部屋は静かだった。朝の光は移り変わり、より暖かくなり、床の上に異なる模様を落としていた。


**「あなたもね」** 私は言った。


ひなたが顔を上げた。その顔は、動かず、読めなかった。それから、ゆっくりと、彼女の口元が上がった。大きく開いた笑みではない。小さなもの。静かなどこかから来る、あの種類の笑み。


**「練習してるの」** 彼女は言った。


そして、しばらくの間、村はほとんど我が家のように感じられた。


---


食料を買う必要があった。


それが言い訳だった。真実はもっと単純だった。朝は静かだった。家は小さすぎると感じられた。ひなたはまだ床に座っていた。私は彼女に去ってほしくなかった。また、自分の考えだけを抱えて黙って座っているのも嫌だった。


**「市場に行く」** 私は言った。**「一緒に来る?」**


ひなたが顔を上げた。すぐには答えず、ただ首をかしげた。何かに時間を費やす価値があるかどうかを決めている時の、あの仕草で。


**「食べ物を買うの?」**


**「それが食料品ってものよ」**


**「美味しいものを買うの?」**


**「さあね。何が美味しいの?」**


彼女は立ち上がった。浴衣の埃をはらった。紐が彼女の手首から揺れた。


**「教えてあげる」** 彼女は言った。


---


市場への道は、村の中心部を縫うように曲がりくねっていた。低い屋根。薄い壁。数羽の鶏が土をほじくる。


ひなたは私の隣を歩いた。しばらく黙って、雲を見ていた。


**「好きな食べ物は何?」** 彼女が尋ねた。


考えた。**「卵焼き」** 私は言った。**「母がよく、ちょっと砂糖を入れて作ってくれた。甘いけど、甘すぎない」**


ひなたは真剣にうなずいた。**「それは、朝ごはんの食べ物だよ」**


**「いつ食べてもいいんだよ」**


**「違う」** 彼女は、小さくても重要な間違いを正すかのように言った。**「卵焼きは朝ごはん。お昼を過ぎたら、同じじゃない」**


**「規則があるとは知らなかった」**


**「規則じゃない」** 彼女は言った。**「正しいか、間違っているか、だけ」**


私は笑った。彼女は笑わなかった。


井戸を通り過ぎた。一人の女が水を汲んでいた。先週洗濯物を干していた、あの同じ女。彼女は私にうなずいた。私はうなずき返した。ひなたは、彼女を全く認識していなかった。


**「あなたはどうなの?」** 私は尋ねた。**「好きなものは?」**


**「西瓜」**


**「それは果物だよ」**


ひなたは立ち止まった。私を見るために向きを変えた。その表情は、深く疑わしげだった。


**「西瓜は野菜よ」** 彼女は言った。


**「違うよ」**


**「合ってる。蔓に育つ。野菜は蔓に育つ。果物は木に育つ」**


**「それは……」** 言いかけて、止まった。**「トマトも蔓に育つよ。トマトは野菜なの?」**


**「そう」**


**「トマトは果物だよ」**


**「違う。サラダに入ってる」**


**「リンゴだって……」**


ひなたは私を見つめた。口が開いた。閉じた。また開いた。


**「それ、馬鹿げてる」** 彼女は言った。


**「フルーツサラダのこと?」**


**「わざと果物をサラダに入れること。馬鹿げてる」**


彼女は向きを変え、歩き続けた。私はその後を追いながら、にやついた。


---


市場はほとんど空っぽだった。米の商人と、漬物を売る女がいるだけだった。私は野菜を買い、小さな袋の米を買い、湿った布に包まれた豆腐の塊を買った。ひなたは、帳簿を監査する者の集中力で、全ての取引を見ていた。


**「それ、豆腐にしては高すぎる」** 商人が背を向けた後、彼女は言った。


**「いいの」**


**「高すぎる。先週はもっと安かった」**


**「値段は変わるものよ」**


**「そんなに変わるべきじゃない」**


彼女は腕を組んだ。一瞬、彼女は小さな、不満そうな祖母にそっくりだった。笑わないように、顔をそらさなければならなかった。


私たちは別の道を戻った。畑の端に沿って。草は高く、風で曲がっていた。ひなたは立ち止まり、一本の茎を摘み、歯の間に挟んだ。


**「あの雲」** 彼女は指をさした。**「何に見える?」**


指を追った。白い形。低く、伸び広がって、午後の光を捉えている。


**「船」** 私は言った。**「小さな」**


ひなたは目を細めた。**「違う」**


**「何に見える?」**


**「猫。寝てる」**


**「猫には見えないよ」**


**「横向きになってる。あそこが尻尾。あそこが耳」**


もう一度見た。それでも見えなかった。


**「あなたは、雲が苦手なのかもね」** 彼女は言った。


**「あなたは、そこにないものを見ているのかもね」**


彼女は茎を口から取り出し、笑った。本当の笑み。広く、無防備に。


**「それが、物を見る一番良い方法なんだ」** 彼女は言った。


---


店に着いた。日は動き、影は長くなっていた。ひなたは店の前に立っていた。


**「入らないの?」** 私は尋ねた。


**「すぐに。雲を見てるの」**


私は中に入った。彼女は数分後に続いた。


その店は小さかった。押入れにカウンターがある程度。棚が壁を覆い、村が自分で作らないものを置いていた。塩。砂糖。数缶の茶。マッチ。ここでは誰も恋しく思っていないらしい、都会からの安物のおもちゃ。


ひなたが私の袖を引っ張った。


**「見て」**


彼女は床の近くの箱を指さした。色とりどりの玉の絡まり。ゴム製。弾む。どこでも買えるあの種類。桃色、青、緑、色あせた縞模様の黄色い一つ。ひなたはしゃがみ込み、桃色の玉を手に取り、両方の掌でそれを抱えた。


**「丸い」** 彼女は言った。


**「たいていの玉はそうだよ」**


**「これは、とても丸い」**


彼女はそれをひっくり返した。握った。耳に当てて、中に何か聞こえないか、聴いているようだった。


私はそれを買った。五十円。カウンターの女は、口の片方だけで微笑んだ。


ひなたはずっとそれを抱えていた。私が支払っている間も。


その時、**首飾り**を見た。


それは、レジの近くの小さな鉤から下がっていた。戸の風でわずかに揺れている。高価なものではない。ただの細い紐と、小さな飾り。三日月。淡い銀色。私の親指の爪より大きい。シンプル。小さなものが可愛いように、可愛い。


なぜそれに手を伸ばしたのか、わからなかった。


**「これもください」** 私は言った。


女はうなずいた。値段を告げなかった。もしかすると、値段はなかったのかもしれない。彼女はただ紐を鉤から外し、私の掌に置いた。


ひなたが顔を上げた。その目が見開かれた。


**「何、それ?」** 彼女は尋ねた。


**「月」** 私は言った。**「あなたに」**


**「私に?」**


私はしゃがみ込んだ。彼女は非常に動かずに立っていた。桃色の玉を胸に抱えて。私は紐を持ち上げ、彼女の頭を通し、それから後ろに回して留め具を留めた。彼女の髪は、すすと甘い香りがした。彼女の首は細かった。細すぎる。いつも気づくように、気づいた。


**「はい」** 私は言った。月は、彼女の鎖骨のすぐ下に落ち着いた。


ひなたは見下ろした。指先で飾りに触れ、その曲線をなぞった。


**「笑顔だ」** 彼女は言った。


**「月だよ」**


**「笑顔の月」**


彼女はありがとうとは言わなかった。言う必要はなかった。その顔が全てを語っていた。静かな喜び。小さな驚嘆。片手で桃色の玉を、もう一方の手で月を抱えている、その仕草。まるで両方が同じように大切であるかのように。


私は彼女を見つめた。


そして、一瞬、ただ一呼吸、ただ一瞬の閃き、私は別の子供を見た。より小さく。より新しい。異なる紐。異なる部屋。私が準備できる前に終わってしまった、異なる人生。


**私の娘。**


その記憶は、冷たい水のように湧き上がった。


私はそれを押しのけた。


立ち上がった。微笑んだ。ひなたの手を取った。


**「行こう」** 私は言った。**「まだ西瓜が必要だよ」**


彼女は、私の顔に何が起こったのか尋ねなかった。ただうなずき、私についてきて、日差しの中へ出た。


---


最後の店で買った。深い緑の瓜。虎のような縞模様。私の腕の中で重い。店主は指の関節でそれを叩き、満足そうにうなずいた。私は支払った。ひなたは、豆腐の時に持っていたのと同じ厳しい監視で、取引を見ていた。


**「それは、良いやつだ」** 彼女は言った。


**「分かるの?」**


**「音。太鼓みたいな音がしないといけない。石じゃなくて。太鼓」**


私は瓜を腰に抱え直した。**「あなたは、西瓜の専門家なの?」**


**「私は、全ての専門家よ」** 彼女は言った。


私は笑った。


一緒に家まで運んだ。私が瓜を持ち、彼女が野菜の袋を運び、桃色の玉を脇に抱えた。月の飾りが彼女の胸で揺れた。


台所に戻り、全てを低いテーブルに置いた。私は包丁を出した。まな板。種を拭くための布。


ひなたは自分の台に上がり、見ていた。


**「切って」** 彼女は言った。


**「今、切るよ」**


**「遅い。遅くやってる」**


私は切った。


包丁は、満足のいく音を立てて瓜の皮に沈み、瓜は二つに割れた。真っ赤な果肉。黒い種がきらめく。夏の香りが部屋に溢れた。ひなたは小さな声を上げた。息を呑む声と笑い声の間の何か。


**「美しい」** 彼女は言った。


**「西瓜だよ」**


**「美しい」**


私たちはテーブルに突っ伏して一切れずつ食べた。果汁があごを伝った。私は母がよくやったように、くさび形に切った。ひなたは一切れを両手で持ち、小さな動物のようにかじりついた。種が頬に張り付いた。


**「めちゃくちゃにしてるよ」** 私は言った。


**「あなたもめちゃくちゃにしてる」**


彼女は正しかった。私の手はべたべただった。袖は濡れていた。一つ種が床に落ち、また一つ。


私は一つ種を拾い、彼女に投げた。


彼女は、凍りついた。自分の浴衣の上の種を見下ろした。私を見上げた。


**「種を投げた」** 彼女は言った。


**「うん」**


**「私に」**


**「うん」**


彼女は、にやりとした。それから、自分の一切れから種を一つ拾い、投げ返した。


それは私の額に当たった。


二人で互いを見つめ合った。それからひなたが笑った。本当の笑い声。明るく、無防備に。私も笑い始めた。そして二人で笑い合い、テーブルの向こうに種を投げ合った。当たることより、外れることの方が多かった。台所は私たちの声で満たされた。


一つ種が私のお茶に入った。別の一つが壁に張り付いた。


**「これは、ひどい状況だ」** 私はまだ笑いながら言った。


**「これが、一番良いの」** 彼女は言った。


その後、片付けた。上手くはなかった――何日も見つかるような隅っこに種があった――しかし、一緒に。ひなたがテーブルを拭き、私が瓜の皮を洗った。月の飾りが光を捉えた。桃色の玉は窓辺に座って、私たちを見ていた。


**「あなた、楽しそう」** ひなたが言った。


問いではなかった。


**「そうね」** 私は言った。**「そう思う」**


彼女は満足そうにうなずき、拭く作業に戻った。


外では、午後が夕方に向かって移り変わっていた。影が長く庭に伸びていた。空気は西瓜と埃と、私には名付けられない何か甘い香りがした。


静けさに気づくべきだった。


しかし、ひなたは鼻歌を歌っていた。小さな、メロディーのない、幸せそうな鼻歌。


---


午後の日差しがカーテンの隙間から差し込んでいた。暖かく、金色。目を閉じたくなるような光。西瓜はなくなっていた。種は箒で扉のそばの小さな山に掃かれていた。台所は夏と砂糖の香りがした。


ひなたは床に座っていた。桃色の玉を膝の上に。月の飾りを胸の上に。彼女はしばらく黙っていた。まぶたが下がり、開き、また下がった。


**「疲れたね」** 私は言った。


**「疲れてない」**


**「あくびをしたよ」**


**「空気が薄いから、あくびが出るの」**


**「空気は普通だよ」**


**「空気は薄い」** 彼女は主張したが、その声は柔らかく、消え入りそうだった。


彼女は桃色の玉を脇に置いた。私のところへ這ってきた。私は壁に背を向けて座り、脚を伸ばしていた。彼女は、尋ねもせず、ためらいもせず、私の隣に丸くなった。彼女の頭が私の膝の上に落ちた。彼女の体は小さな曲線に折りたたまれ、膝を抱え、手を頬の下で合わせた。


私は一瞬、動けなかった。


それから、手を彼女の髪の上に置いた。


彼女は西瓜と埃の匂いがした。すすはまだそこにあった。その下に。そして野草の香り。彼女の髪は柔らかかった。思っていたより柔らかく、私は考えることなくそれを撫でている自分に気づいた。指が、額からうなじまで、ゆっくりと線をなぞった。


部屋は静かだった。


光が移った。


そして、一瞬、ほんの一瞬、私はどこか別の場所にいた。


別の部屋。別の光。私の膝の上の、より小さな頭。私に寄り添う、より小さな体。


**私の娘。**


彼女の重み。彼女の温もり。眠りの中でため息をつき、顔を私の腿に押し付ける、その仕草。


記憶は、いつものように湧き上がった。鋭く。招かれずに。


私は目を閉じた。


*今はやめて*、と思った。*ここじゃない。*


目を開けた。ひなたは、まだそこにいた。まだ息をしている。


私は、髪を撫で続けた。


彼女は、眠りの中で呟き始めた。


最初は、意味のない、柔らかな音、半言葉。子供たちが夢と夢の間を漂っている時に出す、あの種類の音。私は気に留めなかった。光が床の上を動くのを見るのに忙しかった。


その時、言葉が来た。


**「かごめかごめ……」**


私の手が止まった。


**「籠の中の鳥は……」**


見下ろした。ひなたの唇は動いていたが、目は閉じていた。その顔は、穏やかだった。彼女は起きていなかった。


**「いついつ出やる……」**


彼女の声は、途切れた。言葉は柔らかくなりすぎ、不明瞭になりすぎた。私は身を乗り出し、息を止めた。


**「……うしろの……」**


あるいは、それは「うしろの」ではなかったのかもしれない。別の何かだったのかもしれない。呟き。ため息。窓の外の風。


確信は持てなかった。


歌は止んだ。


ひなたの唇は動かなくなった。彼女の呼吸は深くなった。部屋は再び静かになった。午後の、普通の静けさ。眠る子供の。木の床の上の陽光の。


私は長い間そこに座っていた。手は彼女の髪の中で凍りついたまま。


かごめかごめ。

籠の中の鳥は。


*いついつ出やる* ではない。

*うしろの正面だあれ?*


私は焚き火のことを思った。焦げた土。茂みの灰。


私は、音もなく踊る子供たちのことを思った。


私は、まだテーブルの上に折りたたまれた、キリからの手紙のことを思った。


ひなたは眠りの中でため息をつき、顔をより深く私の膝の上に向けた。月の飾りがきらめいた。紐が彼女の手首にゆるくかかっていた。


私は、再び彼女の髪を撫で始めた。ゆっくりと、機械的に。


光は床の上を動いた。


そして、私は再び目を閉じなかった。


---


ひなたはゆっくりと目を覚ました。まぶたの震え。小さな伸び。意識が徐々に戻る。彼女は私の膝の上から私を見上げた。その黒い瞳は、焦点が合っていなかった。


**「寝ちゃった?」** 彼女は尋ねた。


**「少しだけ」**


彼女は起き上がり、頬をこすった。私の浴衣の折り目による赤い跡が、彼女の肌に押し付けられていた。彼女は気づいていないようだった。


**「さっき、何を歌ってたの?」** 私は尋ねた。声は軽く、何気なく、保った。


**「歌?」**


**「寝てる間に。何か呟いてたよ」**


ひなたは首をかしげた。眉をひそめた。本物の困惑、あるいはそう見える何か。


**「覚えてない」** 彼女は言った。


**「歌。籠と鳥について」**


彼女は首を振った。**「そんな歌、知らない」**


**「確か?」**


**「確かだよ」** 彼女は立ち上がり、浴衣の埃をはらった。月の飾りが揺れた。**「私は、寝てるときに歌ったりしない」**


**「誰でも時々、寝言を言うものだよ」**


**「私は言わない」**


彼女は、ほとんど信じてしまいそうなほどの確信を持って言った。ほとんど。


私は笑い飛ばした。**「じゃあ、忘れて。おそらく、何でもない」**


ひなたはうなずいた。彼女は桃色の玉を拾い、壁に向かって弾き始めた。柔らかく、リズミカルな音。彼女の顔は穏やかだった。無頓着。


しかし、歌は私の心に残った。


かごめかごめ。籠の中の鳥は。


*いついつ出やる* ではない。

*うしろの正面だあれ?*


---


翌朝、私は夜明け前に起きた。


茶を淹れた。戸を開けた。何週間ぶりに、自分で石畳の道を掃いた。


ひなたは、いなかった。


大丈夫だと自分に言い聞かせた。子供には、用事もある。家事があったのかもしれない。母に用があったのかもしれない。ただ、家にいようと決めただけかもしれない。


一人で朝食を食べた。


米鍋は、彼女の小さな手が杓子を握っていないと、より重く感じられた。


しかし、心配はまだなかった。


また一日が過ぎた。


それでも、ひなたは来なかった。


私は、何度も扉の方を見ている自分に気づいた。絶え間なくではない――ただ、時々。皿を洗いながら、肩越しにちらりと見る。洗濯物を畳みながら、一瞬立ち止まる。誰かがそこにいることを期待する、小さな、無意識の習慣。そこにいない誰かを。


彼女のいることを、どれほど楽しみにしていたか、気づいていなかった。


家の静けさは、今は違って感じられた。平穏ではない。**空虚**。


明日、彼女は来るだろう、と自分に言い聞かせた。


ほとんど、信じた。


---


ひなたは、やはり来なかった。


朝は灰色で、霧がなかなか晴れなかった。私はお茶を持って階段に座り、道を見つめた。


何もない。


大きすぎる浴衣の小さな姿も。ほつれた紐も。埃を蹴る裸足も。


その沈黙は、間違っているように感じられた。


家は、いつもより空っぽに感じられた。彼女が来るようになる前よりも。なぜなら、今は、彼女がいる時の音を知っているからだ。箒の擦れる音。杓子のトントンという音。小さな、横柄な質問。


私はお茶を置いた。


立ち上がった。


ひなたの家へ歩いた。


ノックをした。


長い間の後、戸が開いた。


零香がそこに立っていた。私の覚えているよりも痩せていた。彼女の浴衣はだぶだぶだった。ひなたのと同じように。髪は後ろにまとめられていたが、いくつかの束がほどけ、とかされていなかった。その目は赤く、顔は青白かった。


彼女は、疲れ切って見えた。


彼女は、泣いていたように見えた。


腹の奥が締め付けられた。


**「ひなたは、いますか?」** 私は尋ねた。


零香は私を見つめた。一瞬、彼女は私に気づかないようだった。それから、その表情が変わった。最初は困惑。それから、別の何か。**衝撃**。


**「あなた、知らないの?」**


胃が、落ちた。


**「何を?」**


彼女は手を口に当てた。その目が涙で満たされた。


**「ひなたが、いなくなったの」**


その言葉は、空気の中に漂った。


息ができなかった。

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