第三章: 見知らぬ者の優しさ.
焚き火の翌朝、私は零香の扉を叩いた。
霧は早くに晴れ、村は拭き取られたように清々しく、いつも通りの光景だった。鶏が土を掘り、老人が柵を修理している。全ては、いつも通りのままだ。
私を除いて。
ノックをした。
零香は、しばらくしてドアを開けた。彼女の娘はいつも私のところに来てくれるのに、会うのはこれが初めてだった。実際、私は零香よりもひなたの方がずっと馴染みがある。
**「おはようございます、ヒカルさん」**
彼女は言った。
**「何かありましたか?」**
口を開いた。閉じた。歩いてくる途中で何度も練習した言葉、「昨夜、何かを見ました。あなたを見ました」は、明るい日差しの中で、小さく、愚かに感じられた。
**「お伝えしたいことがあります」**
私は言った。
彼女は脇にどいた。中に入れてくれた。
彼女の家は、私の家より小さかった。整然としていた。低いテーブル、まだ炭の輝く火鉢、陶器の瓶が並んだ棚のある部屋。彼女は座るように合図した。
私は座らなかった。
**「昨夜」**
私は言った。
**「外に出ました。日が暮れてから」**
零香の表情は変わらなかった。彼女は火鉢へ移動し、湯を沸かし始めた。背を向けて。
**「角まで歩きました。道が井戸に向かって曲がるあの場所まで」**
まだ、何もない。
**「そして、あなたがそこにいました」**
彼女の手は、ほんの一瞬止まった。それから、彼女は茶筒に手を伸ばした。
**「あなたは、私の腕を引きました」**
私は言った。
**「外に出るべきじゃないと言いました。家に帰って鍵をかけ、朝まで待つようにと」**
零香は、茶を急須に入れた。その動きは、ゆっくりと、慣れた、急いでいないものだった。
**「そして、私は彼らを見ました」**
私は続けた。声は今、震えていた。それが嫌だった。
**「子供たち。火の周りで踊っていた。彼らの足は……」**
**「ヒカルさん」**
彼女は向きを変えた。その顔は、穏やかだった。敵意はない。困惑もない。ただ……穏やかだ。
**「あなたの言っていることが、私にはわかりません」**
彼女は言った。
私は彼女を凝視した。
**「私はそこにいました」**
私は言った。
**「あなたもそこにいました。あなたは私の腕を引きました」**
**「私は眠っていました」**
彼女は言った。
**「私は早く寝ます。みんなそうです。あなたも知っているでしょう」**
老人の言葉。*村は夜、眠る。みんな眠る。*
**「これは、みんながどうするか、ということではありません」**
私は言った。
**「これは、あなたのことです。零香さん。あなたは私に触れました。あなたは私に話しかけました」**
彼女は、ポットに熱湯を注いだ。湯気が私たちの間を立ち上る。かすかに、香り高く。
**「あなたの言っていることが、私にはわかりません」**
彼女は、再び言った。
そんなこと、一度もなかった。いや、あなたは夢を見たのでしょう。と。彼女は言わなかった。まるで、私が熱にうなされて話しているかのように。彼女は、話さなかった。まるで、私が説明している出来事が、別の世界、彼女が決して訪れたことのない世界に存在しているかのように。
**「嘘はついていません」**
私は言った。
**「嘘だとは言っていません」**
零香は返した。
彼女はポットを置き、完全に私の方に向き直った。その目は、いつもと同じだった。親切で、少し疲れている。小さな村で人生を過ごし、世界にあまり多くを期待しないことを学んだ女性の目。
**「確かに、あなたは何かを見たのでしょう」**
彼女は言った。
**「でも、それは、私ではありませんでした」**
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私は自分に言い聞かせた。私は理性的だ、と。もし十分に明確に、十分に詳細に説明すれば、彼女はそれを認めざるを得なくなる、と。
**「あなたは、この浴衣を着ていました」**
私は言った。
**「青い花柄の。でも、そこには汚れはありませんでした。あなたは言いました……」**
**「ヒカルさん」**
**「……あなたは言いました。『見ないで。彼らは見られるのを嫌う』と。その正確な言葉です。覚えています」**
零香は、首をかしげた。嘲笑うようにではない。むしろ、自分には興味のないパズルを理解しようとしているように。
**「それは、怖い話ですね」**
彼女は言った。
**「あなたは、さぞ怖かったでしょう」**
**「そうでした」**
**「そして、あなたは、私ならそれを説明できると思って、私のところに来たのですね」**
**「はい」**
彼女は、ゆっくりとうなずいた。それから、彼女は急須を取り上げ、二杯注いだ。彼女は、自分の向かいの空の座布団の前に一杯を置き、それからそれを示した。
**「お茶をどうぞ」**
彼女は言った。
**「お疲れのようですね」**
それだけだった。
議論もなければ、弁明もない。*さあ、私が自分のベッドにいたことを証明しましょう*もない。ただ、お茶と、その柔らかく、突き抜けられない静けさ。そして、繰り返される言葉 *(私にはあなたの言っていることがわかりません)* が、私たちの間の空気の中に、私がめくることを許されていないカーテンのように、漂っていた。
彼女の否定は、もし喧嘩になった場合よりも、不気味だった。
もし彼女が怒鳴れば、私は怒鳴り返せた。もし彼女が嘘つき呼ばわりすれば、私は証拠を列挙できた。しかし、彼女はそれらのどれもしなかった。彼女は、ただ、私が説明している現実を認識することを拒否した。敵意を持ってではなく。これを以前に行ったことのある者の、特別な優しさを持って。何度も。
**「もう行きます」**
私は言った。
**「お好きにどうぞ」**
零香は言った。彼女は立ち上がらなかった。彼女は自分の杯を持ち上げ、表面に息を吹きかけた。
**「気が変わったら、お茶はここにありますから」**
私はドアまで歩いた。鍵に手をかけた時、彼女が再び話した。
**「ヒカルさん」**
振り返った。
**「夜は、気をつけて」**
彼女は言った。
**「この村は、古い。時々、人が、そこにないものを見ることがある」**
彼女の目が、私の目と合った。
**「あるいは、そこにあるものもね」**
彼女は付け加えた。
**「そして、あるべきでないものが」**
それから彼女は微笑んだ。小さく、悲しい微笑みを。そして、お茶に戻った。
私はその後、去った。
ドアが私の背後で閉まった。朝はまだ明るく、まだ普通だった。私は零香の階段の上で長い間立ち、乾いた草と遠くの焚き火の煙の匂いを吸い込んだ。
答えはなかった。
ただ、お茶。ただ、零香の穏やかな顔。ただ、暗闇の中で私の腕に触れた彼女の手の記憶と、私の耳の中の彼女の声。*見ないで。彼らは見られるのを嫌う。*
私は自分の家へと歩いて戻った。
籠は、私の階段の上にあった。
ひなたは、もう起きていた。もう動いていた。夜明けと共に私のドアに現れる準備をしていた。
彼女が私に何を望んでいるのか、わからなかった。
私が彼女に何を望んでいるのかも、わからなかった。
しかし、胸の中で冷たい水のように感じられる確信を持って、零香は一つも答えなかった。
彼女は、ただ話題を変えただけだった。
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零香の後、私は別の角度から試みた。
バス停の老人が最初だった。彼をいつもの場所で見つけた。避難所の柱にもたれかかり、石のように忍耐強く、誰も連れて来そうにない道を見つめている。私が到着した日も、彼はそこにいた。私の鞄を運んでくれた。彼は言った。*村は夜、眠る。みんな眠る。*
私は夕方遅くに彼に近づいた。太陽は低く、影は長い。私が近づいても、彼は向きを変えなかった。
**「すみません」**
私は言った。
彼は待った。
**「お尋ねしたいことがあります」**
何もない。
**「昨夜、遅くに、外に出ました。見たのです……」**
**「夜に歩くべきではない」**
彼は言った。その声は、平坦だった。不親切ではない。ただ、**最終的**だった。決して開かれたことのない扉のように。
**「子供たちを見ました」**
私は詰め寄った。
**「火の周りで踊っていました。まるで、足が地面に着いていないようでした」**
その時、彼は私を見た。その目は、古い木の色で、乾ききって、変わらない。彼は、長い間、私の視線を保った。背筋に何かが這い上がるのを感じるほど長く。
そして、彼は道に視線を戻した。
**「夜は、村は静かだ」**
彼は言った。
**「みんな中にいる」**
私はもっと待った。それ以上はなかった。
歩き去った。
誰も、敵意を示さなかった。
誰も、大げさに振る舞わなかった。
彼らは、ただ**答えなかった**。この村でこれまで誰も尋ねたことのない問いに、人は答えないように。何かを隠しているから、というわけでは、正確にはない。むしろ、問いそのものが、はまらなかったからだ。円形の鍵穴にしか見たことのない錠に、四角い鍵を入れようとするように。
私は自分の家へと歩いて戻った。
その沈黙は、零香だけのものではなかった。
それは、**みんな**のものだった。
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雨は、真夜中に来た。
ゆっくりではない。警告もなく。一瞬、夜は動かず、真夜中過ぎに谷を覆う深い静けさ。次の瞬間、空が開けた。それが当たる前に、聞こえた。低い轟き、息を吸い込むかのように。そして、最初の大きな雨粒が石のように屋根を叩いた。
暗闇の中に起き上がった。
数秒のうちに、そのドラム音は轟音となった。許可を求めない、あの種類の雨。田舎だけが知るあの種類。それを遮る建物も、和らげる都市の騒音もない。ただ、水と木と、空の重み。
再び横になった。毛布を顎まで引き上げた。ただの雨だ、と自分に言い聞かせた。
その時、それを感じた。
一滴。冷たい。額の上に。
凍りついた。
また一滴。手の上に。
再び起き上がった。今度はより速く。闇は絶対的だった。何週間も前から、夜に灯りを灯すのを止めていた。村の静けさに慰められて。今、手探りでマッチを探し、一つ擦り、炎を掲げた。
布団の上の天井が、**泣いていた**。
ひび割れではない。単なる水滴でもない。暗く、広がる染み。周りの木よりも暗い。そして、その中心から、三つ、四つ、五つの別々の点で、水が集まり、滴となって落ちた。
**滴。**
枕の横の床の上に。
**滴。**
毛布の端に。
**滴。**
既に形成されつつある小さな水たまりの中へ。
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私は、次の一時間を、馬鹿げた、実用的な動きの中で過ごした。
**桶**。私は二つ持っていた。一つは野菜を洗う用、一つは井戸から水を汲む用。野菜用の桶を空にして流しに置き、一番大きな漏れの下に置いた。音が変わった。木の上の柔らかなチンという音から、金属の上の空洞のトンという音へ。より大きく。より存在感がある。
小さな漏れは、布で受けた。タオル、次に雑巾、そして捨てようと思っていた古いシャツ。それらを供え物のように床に並べ、暗い染みが広がるのを見て、流しで絞り、また置いた。
**トン。トン。トン。**
雨は、止む気配を見せなかった。
私は部屋の真ん中に立った。裸足で。寝巻きの浴衣の裾は濡れている。そして、自分の人生がどうなったかを見た。質問に答えることを拒否する村の、雨漏りのする家の中の女。濡れた雑巾と、野菜用の桶への水の着実なパーカッションに囲まれて。
それは、ほとんど滑稽だった。
ほとんど笑いそうになった。
笑わなかった。
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雨は、夜明け直前に止んだ。
壁に背を向けて床に座り、最後の滴が落ちるのを見ていた。桶は、ほぼ満杯だった。服は、びしょびしょの混乱だった。天井の染みは、一晩で広がり、淡い木の上の暗い痣となっていた。
首が痛んだ。目は、焼けつくようだった。
しかし、焚き火の夜以来初めて、私の心は静かだった。暗闇の中で踊る子供たちが入り込む余地はなかった。ただの漏れ。ただの屋根。ただの、床を乾かしておこうとする一人の女の、単純で、地に足のついた馬鹿らしさ。
雑巾を最後に一度絞った。桶を外に捨てた。全てを乾かすために階段の上に並べた。
それから、顔を洗い、きれいな服に着替え、零香の家へ歩いた。
彼女は、もう起きていた。もちろん。彼女は、薄い青の浴衣でドアを開けた。髪はまとめ上げ、足は裸だが、きれいだった。
**「屋根が漏れています」**
私は言った。挨拶も、前置きもなく。
零香は、長い間、私を見つめた。それから、彼女は脇にどいた。
**「お入り」**
彼女は言った。
**「お茶を入れます」**
**「お茶は要りません」**
私は言った。
**「誰かに屋根を見てもらいたいのです。直してもらう必要があります」**
彼女はうなずいた。同じ穏やかなうなずき。同じ読めない顔。
**「誰かを遣わすわ」**
彼女は言った。
**「大工を。年老いているけれど、彼は村を知っている。今日、来るでしょう」**
**「ありがとうございます」**
私は、去ろうと向きを変えた。
**「ヒカルさん」**
私は、止まった。
零香は、自分の戸口に立っていた。朝の光が、彼女の髪の縁を捉えている。
**「昨夜の雨は、ひどかった」**
彼女は言った。
**「いつもより、ひどかった。村は古い。物は壊れる。しかし、それらは修理できる」**
彼女は、間を置いた。
**「全てではないけれど」**
彼女は付け加えた。
**「でも、屋根は。ええ。屋根は修理できる」**
彼女が何を意味したのか、わからなかった。あるいは、わかっていたのかもしれない。彼女は屋根の話をしていたのかもしれない。彼女は別の何かの話をしていたのかもしれない。
私は、一度うなずき、家へと歩いた。
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大工は、その午後、来た。
彼は、年老いていた。バス停の老人よりも年老いていた。震える手と、何も見逃さない目を持っていた。彼は、はしごなしで私の屋根に登った。それは、不可能なはずだった。彼は、トントンと叩き、突っつき、私には理解できない方言で、独り言を言った。
それから、彼は降りてきた。
**「直った」**
彼は言った。
それだけだった。
私は天井を見た。染みは、まだそこにあった。暗く、醜い。しかし、水は落ちてこなかった。
お茶を入れた。一人で飲んだ。
そして、次の夜を待った。
---
大工が訪れた翌朝、私は声で目を覚ました。
神社からの声ではない。あの詠唱、歌、間違いではない。ただの声。普通の、人間の。仕事をしなければならない人々の、低い口調で話す声。
ドアを開けた。
道は、彼らでいっぱいだった。
五人。六人。彼らのほとんどに、私は会ったことがなかった。帯に金槌を挟んだ女。束ねた竹の薄板を担いだ若者。道具のようなカチカチという音のする布の袋を肩にかけた、年老いた女。大工もいた。年老いて、しかし確かに。そして、その全ての背後に、小さく、静かに、ひなた。
彼女は、一桶の水を運んでいた。私が雨の夜に使った、あの同じ桶。
誰も、彼女に頼まなかった。
誰も、彼らの誰にも、頼まなかった。
彼らは、ただ現れた。雨が現れたように。交渉なしに。
**「ヒカルさん」**
金槌の女が言った。彼女は一度うなずいた。ここの人々がするように。
**「屋根に来ました」**
**「私は……」**
私は言いかけた。
**「零香さんにだけ頼んだのですが……」**
**「零香が教えてくれた」**
若者が言った。彼はもう家の周りを歩き、軒先を調べていた。
**「この屋根は、古い。遅かれ早かれ、漏れることになっていた」**
**「早かった」**
年老いた女が付け加えた。彼女はバッグを下ろし、道具を引き出し始めた。鑿、木槌、そして一巻きの縄。
**「数年に一度は、そうなる。どの場所が先にやられるか、私たちは知っている」**
彼らは**知っていた**。もちろん。彼らは何世代にもわたってこの村に住み、同じ雨の中で、同じ家の同じ屋根を修理してきた。私は、私が到着するずっと前から漏れていた部屋の、最新の居住者に過ぎなかった。
私は、自分の戸口に立った。役立たずで。
**「私に、何かできることはありますか?」**
私は尋ねた。
金槌の女が、私を見た。その顔は、不親切ではなかった。
**「お茶」**
彼女は言った。
**「お茶を淹れて」**
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お茶を淹れた。
小さな鍋で湯を沸かした。三人分の茶碗を見つけた。三人分では、全く足りなかった。盆に載せて外に運んだ。愚かに感じ、感謝を感じ、名付けられない何かを感じた。
村人たちは、既に分担していた。二人は屋根の上で、瓦と竹を渡しながら。一人は中にいた、彼女が入っていくのに気づかなかった、染みから私の家具を動かしていた。大工は下に立ち、小さな仕草で指示を出していた。その震える手は、それでも確かだった。
若者が、茶碗を受け取った。立ったまま飲んだ。返した。
**「ありがとう」**
彼は言った。
それだけだった。
金槌の女は、飲むために作業を止めなかった。私は、彼女の茶碗を、彼女の手が届く岩の上に置いた。彼女は、それに手を伸ばさなかった。する必要はなかった。彼女は、これを以前にやったことがあった。いつ休むべきか、いつ続けるべきかを、知っていた。
私は、そこに立った。盆を抱えて。彼らが働くのを見ていた。
彼らは、私を必要としていなかった。
しかし、それでも彼らは来た。
---
私は、やがて仕事を見つけた。お茶ではない……
誰か別の者がやかんを引き継いでいた。十五歳くらいの少女。彼女は、以前にも来たことがあるかのように、私の台所を動き回っていた。その代わりに、私は、屋根から落ちた古い屋根板を集め、薪の山の脇に積んだ。小さな仕事。考えないでできる仕事。
それは、役立った。
太陽は、さらに高く昇った。霧は、晴れた。村人たちは、騒がず、儀式もなく働き、命令のように聞こえるが、会話のように感じられる短い文で、互いに呼びかけ合った。
「これは、腐ってる。」
「新しい板を。」
「それじゃない、杉のを。」
「縁に気をつけろ。見た目より傾斜がきつい。」
ひなたが、ある時、私の隣に現れた。彼女は、水桶を下ろし、今は小さな釘の籠を運んでいた。彼女の柿色のリボンは、まだ彼女の手首に結ばれていた。以前にも増して、ほつれて。
**「はい」**
彼女は言った。籠を差し出した。
私は、それを受け取った。彼女は、動かなかった。
**「手伝ってるのね」**
私は言った。
**「屋根は、大事」**
彼女は言った。
**「もし漏れたら、あなたの物が濡れる。そして、カビる。それで、捨てなきゃならなくなる」**
**「とても、現実的ね」**
彼女は、私を見上げた。その目は、暗く、穏やかだった。
**「私は、現実的よ」**
彼女は言った。
信じた。
---
作業は、何時間も続いた。
村人たちは、一度に全員ではなく、交代制で来たり去ったりした。一人が去り、もう一人が到着する。誰かが、葉っぱで包んだおにぎりを持ってきた。誰か別の人が、漬物の瓶を持ってきた。彼らは、階段に座って食べた。**私の**階段に。まるで、それが皆のもののように。
私は、彼らと一緒に座った。
誰も、私に何も尋ねなかった。誰も、焚き火のことも、子供たちのことも、口にしなかった。誰も、なぜ私がウブモレスに来たのか、あるいは、何から逃げているのか、尋ねなかった。
しかし、彼らは、私の屋根を直した。
二度言われなくても、直した。
これが、ウブモレスの中心部の**矛盾**だった。**本物の優しさ**と、**本物の沈黙**が、並存している。彼らは、私に食べ物を与え、私の家を修理するだろう。しかし、彼らは、私の問いには答えない。答えるべき問いが存在することさえ、認めようとしない。
彼らは、何かを**隠している**のではない、と思った。
彼らは、何かを**守っている**のだ。
そして、彼らは決して、それが何かを、私に教えないだろう。
---
屋根は、夕方遅くに完成した。
金槌の女――私は、決して彼女の名前を聞かなかった――は、一歩下がり、作業を確認した。彼女は、一度うなずいた。
**「持つだろう」**
彼女は言った。
**「ありがとうございました」**
私は言った。何度も言いすぎた。他にどう言えばいいのか、わからなかった。
村人たちは、道具を集めた。台所の女は、カウンターを拭き、窓際に小さな薬草の束を置いた。若者は、残りの竹を担いだ。一人、また一人と、彼らは道を、村へと歩いて戻っていった。
ひなたが、最後に行く者だった。
彼女は、階段の上に立っていた。修理された屋根を見上げている。夕日が、彼女の頬の縁を捉えた。
**「もう、漏れない」**
彼女は言った。
**「うん」**
私は言った。
**「漏れない」**
彼女は、私に向き直った。一瞬、彼女は、焚き火や、村がそう見えるほど静かではない夜について、何か別のことを言うかもしれないと思った。
言わなかった。
**「明日」**
彼女は言った。
**「早く来る。お米」**
**「明日ね」**
私は同意した。
彼女は歩き去った。曲がり角に消えるまで、見送った。
それから、中に入った。
茶道具は洗われ、積まれていた。床は、乾いていた。天井は、完全だった。
**屋根は、直った。**
寝る準備をしながら、自分に言い聞かせた。漏れは、消えた。天井は、乾いた。村人たちは、来て、去り、家は、今、何かが違って感じられた。空虚、ではない、正確には。**訪れた**。慣れているよりも多くの人を抱えたことのある部屋のように。
一つだけ灯りを灯した。低い炎。物の輪郭が見える程度に。
外は、夕方、静かだった。風もなく、声もない。長い一日の後、虫たちでさえ疲れてしまった時に訪れる、あの種類の静けさ。
布団は、もう敷いてあった。その端に座り、灯りに手を伸ばした……
そして、止まった。
**動き。**
視界の端。窓の外。あるいは、カーテンの隙間のすぐ向こう。私がいつも開けておく、布と枠の間の、指一本分の隙間。
何も見えなかった。本当は。人影もなければ、顔もない。音もない。
しかし、何かが通り過ぎた**印象**があった。それを投じる者が誰もいないのに、影が動くように。ちらつき。**示唆**。目が捉え、脳が次の一秒を費やして説明しようとする、あの種類のもの。
*カーテンが動いた*、と思った。
*猫。*
*自分の疲れた目。*
向きを変えて見なかった。
灯りに視線を固定したまま。小さな炎に。
その印象は、消えた。
部屋は、動かなかった。
カーテンに手を伸ばし、引いて閉めた。全て。隙間なく。指一本分の空間もなく。
それから、灯りを吹き消した。
**暗闇。**
横になった。毛布を顎まで引き上げた。自分の呼吸に耳を澄ました。
しかし、目を閉じながら、あの影を思い出した。何も動かしていないのに動いた、あの仕草。心が追いつく前に、肌がピリピリした、あの感じ。
自分に言い聞かせた。*何でもない*、と。
信じた。
どんな恐怖がヒカルを待ち受けるのか...
次回以降、同じ時間に、同じ場所で。




