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「夜になると、子供たちは歌い出す」  作者: アンドリュー・チェン


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第十七章: 一夜を過ごした調査員。

私は、簡単なものを用意した。


米。味噌汁。数切れの漬物。大したものではなかったが、温かく、食べ応えがあった。茶碗を低いテーブルに置き、アイコの向かいに座った。


彼女は、心からの感謝を込めて、食べ物を見た。


「美味しそうですね」 彼女は言った。「泊めていただいて、ありがとうございます」


「泊まってくれて、ありがとうございます」


私たちは、しばらく、心地よい沈黙のうちに食事をした。夕方は、静かだった。灯りの光が、揺れた。外では、村は、いつもの夜の静けさに落ち着いていた。


アイコが、最初に沈黙を破った。


「都会での生活について、教えてください」 彼女は言った。「ここに来る前の」


私は、間を置いた。箸を口に運ぶ途中で。


「語ることは、あまりありません」 私は言った。「仕事があって、アパートがあって。いつもの日課です」


「何をされていたのですか?」


「事務仕事です。何も面白くはありません。机に座って、メールに返信し、会議に出席していました」 私は、肩をすくめた。「生活費には、なりました」


「それは、お好きでしたか?」


考えた。絶え間ない通知の流れ。次から次へと日々がぼやけ、区別がつかなくなる、その仕方。


「いいえ」** 私は言った。「好きではありませんでした」


アイコは、うなずいた。「わかります。時には、何かを置き去りにしなければ、探しているものを見つけられないこともあります」


「そして、あなたは、何を探しているのですか?」 私は尋ねた。


彼女は、微笑んだ。「それは、まだ、解明中です」


会話は、続いた。彼女は、私の日常生活について尋ねた。ここで何をしているのか、どうやって時間を過ごしているのか。私は、彼女に朝のこと、米のこと、掃除のことを話した。私は、彼女に静けさのことを、村が全てをゆっくりにする、その仕方を話した。


「ここは、違うと感じます」 私は言った。「よりゆっくりで、より穏やかで。まるで、再び呼吸ができるように」


アイコは、聞いた。その目は、温かく、好奇心に満ちていた。


「あなたが、ここに留まった理由が、わかります」 彼女は言った。


やがて、アイコは、箸を置いた。


「一つ、尋ねてもいいですか?」


私は、彼女を見た。


「なぜ、私に泊まるように言ったのですか?」


ためらった。


その問いは、私たちの間の空気に漂った。真実を話すことを考えた。歌のこと、子供たちのこと。暗闇で動くもののこと。


しかし、できなかった。


まだ。


「ここでは、人々は、日が暮れた後に、外に出ません」 私は言った。「ただの、村の習慣です」


アイコの目が、わずかに細められた。彼女は、今、興味を持っていた。


「なぜですか?」


私は、彼女の目を避けた。茶碗の中のご飯、味噌汁から立ち上る湯気に、集中した。


「ただの、村の習慣です」 私は、繰り返した。「村人たちは、迷信深いのです。彼らは、夜は、中にいる方が安全だと、信じています」


アイコは、しばらく、私を観察した。彼女の視線が、私の顔に注がれているのを感じた。私の言葉を、秤にかけて。


「それは、奇妙な習慣ですね」 彼女は言った。


私は、小さな微笑みを浮かべた。


「どの村にも、奇妙な習慣はあります」


彼女は、詰め寄らなかった。しかし、彼女が好奇心を持っていることは、わかった。彼女の目は、もう少しの間、私に留まり、それから、彼女は、自分の茶碗を見下ろした。


「夕食を、ありがとうございました」 彼女は言った。「そして、泊めていただき、ありがとうございます」


「どういたしまして」 私は言った。


夜は、続いた。会話は、より軽い話題へと移った。彼女の仕事、彼女の旅、彼女が見た場所。


しかし、私は、彼女が私の答えを忘れていないことを、知っていた。


そして、彼女が、再びそれについて尋ねることを、知っていた。


---


夕食後、私は、アイコのために、布団を準備した。


彼女が寝られる場所を示した。キリが使った、あの同じ場所。同じ薄いマットレス。同じ折りたたまれた毛布。彼女は、鞄を置き、私に感謝した。


「これは、本当に親切ですね」 彼女は言った。「お邪魔したくないのですが」


「お邪魔ではありません」 私は言った。「この方が、良いのです」


彼女は、窓の方を見た。外では、村は、完全に暗かった。家々の向こうには、灯りはなかった。歩く人影もない。動きもない。通りは、空っぽで、その静けさは、絶対的だった。


「本当に、皆、中にいるのですね」 彼女は、静かに言った。


私は、答えなかった。


彼女は、私に向き直った。その表情は、好奇心に満ちていた。


「あなたは、いつも、その習慣に従っているのですか?」


ためらった。「従うことを、学びました」


彼女は、もっと待った。私は、それ以上、与えなかった。


「おやすみなさい、アイコさん」 私は言った。「ゆっくりお休みください」


彼女は、ゆっくりとうなずいた。「おやすみなさい、ヒカルさん」


私は、自分の布団へ歩いた。横になった。天井を見つめた。


夜は、静かだった。


しかし、眠れなかった。


---


朝が、来た。


日差しが、カーテンの隙間から差し込んでいた。鳥たちが、さえずっていた。村が、目覚めていた。私は、数時間の落ち着かない睡眠をとったが、夜の重みが、まだまぶたに押し付けられていた。


その時、それを聞いた。


三回の柔らかいノック。


起き上がった。見慣れたリズムは、間違いようがなかった。


アイコが、布団から起き上がり、朝の光の中で、瞬きした。


「誰か、来たのですか?」 彼女は尋ねた。


うなずいた。立ち上がり、ドアへ歩いた。開けた。


ひなたが、いつものように、外に立っていた。


その草履は、朝の露で濡れていた。その浴衣は、少し大きすぎた。ほつれた柿色のリボンが、彼女の手首に結ばれていた。その笑顔は、明るかった。


「おはようございます、ヒカルさん!」 彼女は言った。


その時、彼女は、アイコに気づいた。


その目が見開かれた。頭が、かしげられた。彼女は、調査員を見、それから、再び私を見た。


「誰、この人?」 彼女は尋ねた。


「アイコさんだよ」 私は言った。「前に会ったことがあるだろう? 覚えてる?」


ひなたの眉が、ひそめられた。「調査員? ああ……市場で会った人」


「そうだよ」 私は言った。


ひなたは、新しい目で、アイコを見た。好奇心に満ち、慎重に、興味を持って。彼女は、長い間、彼女を観察した。


それから、彼女は、私に向き直った。


「どうして、私も泊めてくれなかったの?」 彼女は尋ねた。


その問いは、私を不意を突いた。私は、止められずに笑った。


「だって、あなたが泊まりたいって、知らなかったから」


ひなたは、口をとがらせた。「私は、いつも泊まりたいの」


アイコが、前に進み出た。彼女は、ひなたの身長に合わせて、しゃがみ込んだ。その微笑みは、温かく、開かれていた。


「あなたが、ひなたさんですね」 彼女は言った。「あなたのことは、よく聞いています」


ひなたの目が、輝いた。「そうなの?」


「ええ。ヒカルさんが、昨夜、あなたのことを話してくれました。あなたが、お米を手伝ってくれると。それに、道を掃いてくれると」


ひなたは、誇らしげにうなずいた。「私は、掃除がとても上手です」


「それは、わかります」 アイコは言った。


ひなたは、にっこり笑った。朝の日差しが、彼女の顔を捉えた。温かく、金色に。


一瞬、村は、普通に感じられた。


謎は、まだそこにあった。待っている。神社。歌。闇。しかし、その瞬間、ひなたの笑い声と、朝の光の温かさと共に、私は、ほとんど忘れることができた。


ほとんど。


---


朝は、静かに過ぎた。


アイコは、機材を集めた。ノート。録音機。私の知らない装置が入った小さな袋。彼女は、訓練された効率で動いた。各項目を確認してから、しまった。


私は、ドアのそばに立ち、彼女を見ていた。


彼女は、敷居のところで止まり、私に向き直った。


「今日、山に登ります」 彼女は言った。「神社へ」


うなずいた。予想していたことだった。


彼女は、しばらく、私を観察した。それから、彼女は尋ねた。


「一緒に来ますか?」


その問いは、空気の中に漂った。


すぐに、首を振った。「やることがあります」


アイコの表情は、変わらなかった。彼女は、うなずき、私の答えを受け入れた。


「わかりました」 彼女は言った。


しかし、彼女は、私に、何かを知っているような目を向けた。私が望む以上に、彼女が理解していると言う、その目。


「また、今度」 彼女は言った。


彼女は、外へ出た。朝の光が、彼女の顔を捉えた。温かく、金色に。


「さようなら、ヒカルさん」


「さようなら、アイコさん」


彼女は、道を歩いていった。私は、彼女が去るのを見た。


他の調査員たちは、村の端で待っていた。タケシは、カメラを持っていた。ケンジは、装置を持っていた。彼らは、彼女を見ると、向きを変えた。その顔は、期待に満ちていた。


アイコは、彼らに何かを言った。彼らは、うなずいた。それから、三人は、山の方へ向きを変えた。


私は、ドアに立ち、彼らが消えるのを見た。


しかし、彼らと一緒に行くべきだったという感覚を、振り払えなかった。


---


向きを変え、中に入った。その時、台所から物音が聞こえた。


鍋の柔らかなカチカチという音。布の擦れる音。小さな足が、木の床をパタパタと歩く、見慣れた音。


私は、微笑んだ。


ひなたは、もう朝食の準備を始めていた。


彼女は、自分の台に立っていた。いつも使っている、あの同じ台。その小さな手は、米鍋に伸びていた。彼女は、もう米を計り、研ぎ、火にかけていた。水は、煮立ち始めていた。


私は、歩いて行き、彼女に加わった。


彼女は、振り返らなかった。その注意は、鍋に集中していた。「お腹が空いてると思ったの。昨日、あまり食べてなかったから」


「お腹が空いてなかったんだ」


「あなたは、いつも、お腹が空いてない」 彼女は言った。「だから、私が手伝わなきゃいけないの」


私は、優しく笑った。「そうかもしれないね」


私たちは、一緒に働いた。


私は、野菜を準備した。彼女は、米をかき混ぜた。朝の日差しが、台所を満たした。温かく、金色に。小さな空間は、私たちの動きのリズムで、生きているように感じられた。


ひなたは、働きながら、嬉しそうに話した。彼女は、再び猫の話をした。また魚を盗んだ、今度は別の店から。彼女は、鳥の巣の話をした。卵が孵ったこと。親鳥が、絶えず雛に食べ物を運んでいること。彼女は、見た夢の話をした。山の上を飛ぶ夢。全てを上から見る夢。


私は、聞いた。微笑んだ。彼女の声で、空っぽの空間を埋めた。


その時、突然、彼女は、間を置いた。


「ヒカルさん……」


「うん?」


彼女は、米鍋を見た。その小さな手は、まだ杓子を握っていた。


「あの人たちは、この村に、何を求めているの?」


私は、手を止めた。


手の中の包丁が、まな板の上で、止まった。私は、彼女を見た。


彼女の問いは、単純だった。無邪気だった。子供が、見慣れないものについて尋ねる、あの種類の問い。


しかし、私は、何かに気づいた。


ひなたは、調査員たちを、見ていた。彼らが村の中を歩くのを、見ていた。囁き、質問、不安なざわめきを、聞いていた。彼女は、彼らが何かを探していることを、知っていた。


包丁を置いた。


「どうして、そう思うの?」 私は、注意深く言った。


彼女は、肩をすくめた。小さな、何気ない動き。


「わからない」


彼女は、米をかき混ぜるのに戻った。


私は、静かに、彼女を見つめた。


その顔は、穏やかで、普通だった。何ヶ月もの間、毎朝見てきた、あの同じ顔。私に微笑み、私の冗談で笑い、世界について果てしない質問をした、あの同じ顔。


しかし、その問いの何かが、残った。


彼女は、調査員たちに気づいていた。彼女は、なぜ彼らがここにいるのか、疑問に思っていた。彼女は、他の誰でもなく、私に尋ねた。


何と言えばいいのか、わからなかった。


外、遠くのどこかで、鐘が鳴った。


その音は、かすかで、朝のそよ風に乗って。今まで、聞いたことがなかった。


窓の方を見た。


山は、まだそこにあった。霧が、晴れ始めていた。


私は、ひなたに向き直った。


「彼らは、答えを探しているんだ」


ひなたは、ゆっくりとうなずいた。


「彼らは、それを見つけるの?」 彼女は尋ねた。


私は、しばらく黙っていた。


「わからない」 私は言った。


ひなたは、私を見た。その暗い目は、読めなかった。


それから、彼女は、微笑んだ。


「あなたは、物を見つけるのが上手だよね」 彼女は言った。「私を見つけたじゃない」


胸の奥で、何かが締め付けられるのを感じた。


「そうだね」 私は言った。「見つけたよ」


私は、野菜に戻った。


ひなたは、米に戻った。


朝は、続いた。


しかし、問いは、残った。


そして、私は、答えを見つけなければならないことを、知っていた。


彼女のために。

村のために。

自分のために。

次に何が起こるのか...


次回、同じ時間に、同じ場所で。

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