第十六章: 質問する女。
私は、低いテーブルに向かって手をかざした。
「どうぞ、お座りください。お茶を用意します」
アイコは、うなずき、床に座った。足を組み、ノートを脇に置いて。私が台所へ動くと、彼女は部屋の中を見回した。その目は、低いテーブル、閉め切ったカーテン、窓辺の木の鳥を捉えた。私は、目尻で彼女を観察した。
彼女は、好奇心旺盛だが、批判的ではないようだった。その視線は、一瞬、鳥に留まり、それから、先へと移った。
私は、やかんに水を入れ、コンロに置いた。台所の見慣れた音が、小さな空間を満たした。炎のシューッという音。陶器の茶碗の柔らかなカチカチという音。私は、茶葉を集めた。市場で買った、小さな缶。
アイコの声が、隣の部屋から聞こえた。
「素敵な家ですね」 彼女は言った。「とても、静かで」
「ありがとうございます」 私は、返した。「狭いですが、私には、合っています」
「ここに、長く住んでいるのですか?」
「数ヶ月です」
「村を知るには、十分な時間ですね?」
私は、間を置いた。「いくつかのことを知るには、十分な時間です」
やかんが、笛を鳴らし始めた。私は、茶葉の上に湯を注ぎ、盆を低いテーブルに運んだ。アイコの前に茶碗を置き、それから、彼女の向かいに座った。
彼女は、両手で茶碗を包み、温かさが掌に染み込むのを感じさせた。彼女は、一口すする。それから、感謝のうなずきをした。
「良いお茶ですね」 彼女は言った。
「ありがとうございます」
私たちは、しばらく、心地よい沈黙のうちに座った。外の夕方の光は、色あせ、床に長い影を落としていた。
その時、アイコが、再び話した。
「きちんと自己紹介をさせてください」 彼女は言った。「私は、松本アイコです。超常現象研究家です。この仕事を始めて、約五年になります」 彼女は、おぼろげに手をかざした。「小さなチームで、活動しています。タケシは、音響と映像機器を担当しています。ケンジは、電磁場測定と環境データを専門としています。私たちは、廃病院から、山の神社まで、あらゆるものを調査してきました」
うなずいた。「面白い仕事ですね」
「ええ。時々、退屈なこともあります。ただの静電気と古い建物ですから。しかし、時々……」 彼女は、間を置いた。「時々、説明のつかないものを見つけます」
私は、彼女を見た。彼女は、本物のように見えた。何か話を売り込もうとしている人ではなく、自分がしていることを心から信じている人のように。
「普段は、何を調査しているのですか?」 私は尋ねた。「どのようなものを?」
彼女は、首をかしげた。「あらゆるものです。主に、幽霊です。しかし、地域の伝説や民間伝承、説明のつかない現象も。私たちは、噂を追い、それがどこへ導くかを見ます。時々、どこにも導かないこともあります。時々、予期せぬ場所へ導くこともあります」
「そして、この村は?」 私は尋ねた。「何が、あなたをここに導いたのですか?」
彼女は、微笑んだ。「あの話です。神社、失踪事件、子供たちについての。あまりに詳細で、無視できませんでした。あまりに具体的でした」 彼女は、少し前に身を乗り出した。「それを読んだ時、来なければと思いました」
見慣れた胸の締め付けを感じた。彼女が説明している話を、私は知っていた。私も、それを読んだことがある。しかし、そのほとんどは、作り話だ。
しかし、私は、何も言わなかった。
アイコは、続けた。「私たちは、既にいくつかの場所を訪れました。焚き火の跡地。森の道。明日は、神社に行く予定です」
息が止まるのを感じた。「神社ですか?」
「はい。山の上の、あの古い神社です」 彼女は、私を見た。「行ったことがありますか?」
私は、答えなかった。その問いは、私たちの間の空気に漂った。
アイコの声が、柔らかくなった。「詮索しているわけではありません。ただ……あなたは、言っている以上に、何かを知っているように思うのです」
私は、彼女を見た。その開かれた顔を。その目の好奇心を。
神社のことを思った。隠された縄。新鮮な米。消えた足跡。
ひなたのことを思った。その目の空白。彼女が話した言葉。
そして、私は、わかった。全てを話すことはできない。まだ。
茶を一口すする。それから、茶碗を置いた。
「どうやって、この村のことを知ったのですか?」 私は尋ねた。「あなたが言及した噂は、どこから始まったのですか?」
アイコは、タブレットに手を伸ばし、アプリを開き、それを私の方に向けた。画面には、動画プラットフォームがあった。私も知っているものだ。チャンネル名も、見覚えがあった。
「これが、私たちのチャンネルです」 彼女は言った。「ここに、私たちの調査結果を投稿しています。普段は、数千回の再生数で、大したことにはなりません。しかし、数週間前、私たちの動画の一つが、拡散されました」
彼女は、スクロールダウンした。動画のサムネイルは、暗い建物、森、そしてタイトルが表示されていた。「廃村:山で見つけたもの」。
私は、それを見た。その場所は、見覚えがなかった。しかし、その形式は、見慣れたものだった。オンラインで急速に広がる、あの種類のコンテンツ。注目と憶測を集める、あの種類。
「誰かが、この村について何かを書きました」 アイコは続けた。「私たちは、それを読むまで、ウブモレスのことを知りませんでした」
彼女は、別のページを開いた。リスト。彼女は、それから読み上げた。
「ここで、子供たちが行方不明になった」
「子供たちが、原因不明で、時々亡くなった」
「人々は、夜に子供たちの歌を聞いた」
「山の上に、放棄された神社があった」
「焚き火の周りで、奇妙なことが起こった」
私は、静かに聞いた。
いくつかの主張は、真実だった。
子供たちは、行方不明になった。ひなたは、三日間、いなくなった。夜の歌は、本物だった。私自身、聞いたことがある。神社は、存在した。焚き火の跡地も、存在した。
しかし、他の主張は、大げさに誇張されていた。
呪いや憑依や幽霊のようなものについて、言及した者はいなかった。村が、これらの話がしばしば示唆する劇的な方法で、取り憑かれていると主張した者もいなかった。噂は、歪められていた。インターネットによって、現実よりも大きく、より恐ろしいものに、形作られていた。
「その投稿は、噂を始めたものですが」 私は、注意深く言った。「誰が書いたか、ご存知ですか?」
アイコは、首を振った。「匿名で投稿されました。クレジットも、情報もありません。ただの投稿です」 彼女は、間を置いた。「村を訪れ、他の人々に警告したいと思った誰かのようでした」
胸が、締め付けられるのを感じた。
誰が投稿したか、知っていた。
キリ。
彼女は、いつも、質問を放っておけなかった。
彼女は、何かがおかしいと知るのに、十分なものを見た。
そして、今、彼女は、村に見知らぬ人々を連れてきた。
そして、私は、それをアイコに話すことができなかった。
まだ。
「なるほど」 私は言った。その声は、穏やかで、制御されていた。「では、主張を検証するために、ここに来たのですね」
アイコは、うなずいた。「私たちは、真実を見つけるために来ました。その真実が何であれ」
彼女は、私を見た。その目は、誠実で、好奇心に満ちていた。
「あなたは、どう思いますか?」 彼女は尋ねた。「この村の真実は、何だと思いますか?」
私は、彼女を見た。
神社のことを思った。隠された縄。新鮮な米。消えた足跡。
ひなたのことを思った。その空白の目。彼女が話した言葉。山で、まるで私が他人であるかのように、彼女が私に微笑んだ、その仕草。
風化した絵馬の上の、許しの嘆願。
茶碗を置いた。
「わかりません」 私は言った。「私は、ここに来たばかりです」
アイコは、しばらく、私を観察した。それから、彼女は、うなずいた。
「ならば、お互いに助け合えるかもしれません」 彼女は言った。「私たちが、見つけたものを共有します。あなたは、知っていることを、教えてください」
ためらった。
それから、うなずいた。
「わかりました」 私は言った。「考えさせてください」
会話は、今は、より容易になっていた。夕方は、静かだった。そして、アイコの存在は、どういうわけか、落ち着かせた。彼女は、答えを要求せずに質問し、裁かずに聞いた。
好奇心が、勝った。
「幽霊を、実際に見たことがあるのですか?」 私は尋ねた。
アイコは、微笑んだ。「それは、誰もが尋ねる質問です」 彼女は、間を置き、考えた。「説明のつかないものを見たことがあります。何もないのに動く影。空っぽの部屋から聞こえてくるように見える声。理由もなく現れたり消えたりする、冷たい場所」
「しかし、幽霊を、実際に見たことはありますか? 本物の?」
彼女は、首をかしげた。「説明のつかないものを見たことがあります」 彼女は、繰り返した。「それらが幽霊だったかどうか……わかりません。誰にも、本当のところは、わからないと思います」
私は、前に身を乗り出した。「呪いは、本物ですか?」
彼女の微笑みが、広がった。「あなたは、今夜は、質問でいっぱいですね」
「好奇心があるんです」
「わかります」 彼女は、茶碗を置いた。「呪いが本物かどうか、わかりません。人々が呪いと呼ぶものを見たことがあります。偶然とは思えないほど、意図的なパターンを見たことがあります。しかし、ただの普通の不運であるものを、呪いだと自分に思い込ませる人々も、見たことがあります」
「憑依されたことがあるのですか?」
彼女は、笑った。「いいえ。そして、本当に憑依された人を見たこともありません。自分が憑依されていると信じている人々は、見たことがあります。説明のつかない行動をする人々は、見たことがあります。しかし、憑依は……」 彼女は、首を振った。「それは、重い言葉です。軽々しくは、使いません」
「幽霊を、カメラで撮影したことはありますか?」
「撮影?」 彼女は、再び笑った。「説明のつかない画像を、撮影したことはあります。光球。影。普通の霧とは違う動きをする霧。しかし、証拠は?」 彼女は、肩をすくめた。「証拠は、より難しい。カメラは、騙されることがある。私たちの目も」
私は、しばらく黙っていた。それから、尋ねた。「未確認飛行物体については、どうですか?」
アイコは、大笑いした。「私の分野ではありません。私たちは、地面に留まります」
私は、微笑んだ。どうしようもなかった。
彼女は、続けた。「私たちのチームは、多くの異常な主張を調査します。しかし、出会ったものを、自動的に信じるわけではありません。私たちには、哲学があります。最初に調査する。何が起こったかを、後で決める」
うなずいた。「理にかなっています」
「それによって、私たちは、正直でいられます」** 彼女は言った。**「そして、騙されることを防ぎます」
私は、彼女を見た。彼女は、本物のように見えた。何か話を売り込もうとしている人ではなく、自分がしていることを心から信じている人のように。
「有名な心霊スポットを、訪れたことはありますか?」 私は尋ねた。
アイコは、うなずいた。「いくつか。廃病院、古い刑務所、山の神社、そして、城も一、二か所」
「そして、何を見つけましたか?」
彼女は、肩をすくめた。「場合によります。ある場所は、本当に不気味でした。真っ昼間でも、空気がおかしく感じられる、あの種類の場所。ある場所は、精巧な偽装でした。誰かが、その場所を幽霊が出るように見せるために、仕掛けをしていた」
「残りは?」
彼女は、間を置いた。「あるものには、完全に普通の説明がありました。隙間風の窓。きしむ床。壁の中の動物。よく見るまでは、超自然的に見えるもの」
「そうでなかったものは?」
彼女は、私の目を見た。「いくつかの出来事は、説明のつかないままでした。何が原因か、全くわかりませんでした。全く説明がありませんでした」
背筋を、悪寒が走った。
「テレビ局と、仕事をしたことはありますか?」 私は尋ねた。「スポンサーは、いるのですか?」
彼女は、笑った。「あまりありません。時々、番組に出演します。時々、彼らから連絡があります。しかし、私たちは、専属のテレビ関係者ではありません。他の方法で、お金を稼いでいます」
彼女は、指を折りながら数えた。「プラットフォームでの動画収入。いくつかの機器会社からのスポンサーシップ。私たちの活動をフォローしてくれる人々からの寄付」 彼女は、間を置いた。「そして、時々、有料の調査。特定の何かを調べてほしいという、個人のクライアント」
「個人のクライアント?」
「自分の家が幽霊が出ると思っている家族。地域の伝説を検証したい事業主。何が本物で、何がそうでないかを知りたい人々」
うなずいた。それは、彼らを、神秘的な超常現象の専門家ではなく、仕事をしている普通の人々のように、感じさせた。
「あなたを納得させた何かを見つけたことはありますか?」 私は尋ねた。「あなたに、信じさせる何かは?」
アイコは、長い間、黙っていた。
「はい」** 彼女は言った。「一度だけ。数年前です。私たちは、山の中の古い家を調査していました。子供の声が聞こえました。はっきりと。私たちは、録音機を回していました。それを録音しました。その声は、家の中の誰にも聞こえませんでした。他には、誰もいませんでした」
彼女は、私を見た。
「それが何なのか、今もわかりません。しかし、自分が聞いたものは、わかっています」
私は、何も言わなかった。
会話は、軽かったが、夕方の重みが、のしかかるのを感じた。お茶は、茶碗の中で冷めていた。影は、より長くなっていた。そして、私が抑えていた問いが、ついに表面に浮かび上がった。
茶碗を置いた。
「あなたは、この村に、実際に何を求めているのですか?」
アイコの表情が、変わった。その明るさが、彼女の顔から消えた。彼女は、ゆっくりとノートを閉じ、指を表紙の上に置いた。
彼女は、私を見た。
「私たちは、ここで何が起こったのか、知りたいのです」
私は、待った。
彼女は、続けた。その声は、今は、より静かだった。「私たちは、幽霊だけに興味があるわけではありません。私たちは、パターンに興味があるのです。子供たちの失踪。子供たちの死。人々が夜に声を聞くこと。そして、山の上の放棄された神社」
最後の言葉で、息が止まるのを感じた。
私の表情が、変わったに違いない。アイコの目が、鋭くなったから。
「あなたは、神社について、何か知っているのですね」 彼女は言った。
問いではなかった。
私は、目をそらした。
「行ったことがあります」 私は、静かに言った。「そこで、いくつかを見ました」
アイコは、前に身を乗り出した。「どのようなものですか?」
隠された縄のことを思った。散らばった紙垂。供え物の器の新鮮な米。固い石の上で消えた足跡。色あせた嘆願の、風化した絵馬。
「説明のつかないもの」 私は言った。「村人たちが、話そうとしないもの」
アイコは、しばらく黙っていた。それから、彼女は、ゆっくりとうなずいた。
「それが、私たちがここにいる理由です」 彼女は言った。「誰かを怖がらせるためではありません。村を利用するためでもありません。私たちは、パターンを理解したいのです。なぜ、これらのことが起こり続けるのか、知りたいのです」
彼女は、間を置いた。
「そして、あなたは、私たちを助けられるかもしれないと思います」
私は、彼女を見た。その誠実な顔を。閉じたノートを。彼女が抑えた質問を。
調査員は、背筋を伸ばした。その目は、確かで、瞬きもせずに。
「なぜ、村の秘密を隠そうとしているのですか?」
その問いは、私を不意を突いた。肩が緊張するのを感じた。
「何も隠していません」 私は言った。「私は、最近ここに来ただけです。この村の歴史を知りません。ここで何が起こったのか、知りません」
アイコは、注意深く、私を見た。彼女は、私が嘘をついているとは、責めなかった。その表情は、穏やかで、好奇心に満ちていた。人を読むことに慣れている者の表情。
「だからこそ、尋ねているのです」 彼女は言った。
私は、沈黙した。
彼女は、続けた。「あなたは、ここ出身ではありません。村の評判を守るための、利害関係はありません。それなのに……」 彼女は、間を置いた。「あなたは、私に全てを話していません。あなたの顔に、それが見えます。あなたは、言っている以上に、知っています」
私は、目をそらした。閉め切ったカーテン。床の影。
「何も隠そうとしているわけではありません」 私は、再び言った。「ただ、何を信じればいいのか、わからないだけです」
アイコは、ゆっくりとうなずいた。
「それは、公平です」 彼女は言った。「しかし、もしあなたが、ここで何が起こっているのかを、私に理解させたいなら、私に正直になってほしい」
私は、彼女の目を見た。
「努力します」 私は言った。
彼女は、微笑んだ。小さな微笑みだったが、本物だった。
「よかった」 彼女は言った。「それだけを、お願いします」
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アイコは、しばらく黙っていた。それから、彼女は尋ねた。
「なぜ、ここに来たのですか?」
ためらった。
その問いは、単純だった。しかし、答えは、複雑だった。
「逃れるために、ここに来ました」 私は、ゆっくりと言った。「都会から。騒音から。プレッシャーから。どこか静かな場所が必要でした。息ができる場所が」
「そして、ここで、それを見つけましたか?」
考えた。静かな朝。米鍋。石畳の道での、ひなたの箒の音。
「はい」** 私は言った。「ここで、それを見つけました」
「何が、ここに留まりたいと思わせたのですか?」
ひなたのことを思った。米をかき混ぜる、その小さな手。私の膝の上で丸くなり、眠りに落ちた、その仕草。彼女の存在の温かさ。彼女が、私の日々の空っぽの空間を、埋めてくれた、その仕方。
村のことを思った。朝、畑から霧が晴れる、その仕方。夕方、光が山々に降り注ぐ、その仕方。静けさが、重みではなく、毛布のように感じられる、その仕方。
キリのことを思った。彼女の笑い声。彼女の温かさ。彼女が、家を家のように感じさせてくれた、その仕方。
全てを明かしたわけではなかった。できなかった。しかし、彼女に、十分なものを与えた。
「一人の少女がいます」 私は言った。「ひなたです。彼女は、毎朝、私の家に来るようになりました。米を手伝ってくれました。道を掃いてくれました。私を、あまり一人ぼっちに感じさせなくしてくれました」
アイコは、聞いた。
「村そのものも」 私は続けた。「奇妙です。しかし、平和的でもあります。そこには、理解していなくても、留まりたいと思わせる何かがあります」
間を置いた。
「私は……長い間、逃げ続けてきたのだと思います。止まるまで、それに気づきませんでした」
アイコは、長い間、私を観察した。
それから、彼女は、うなずいた。
「わかります」 彼女は言った。「あなたが思うよりも」
彼女は、それ以上、詰め寄らなかった。
彼女は、ただ、沈黙を、私たちの間に置いた。
そして、久しぶりに、誰かが理解してくれたように感じられた。
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会話は、夕方まで続いた。
ついに、アイコが、立ち上がった。
「そろそろ、行かなくては」 彼女は言った。「遅くなりましたし、他の者たちと合わなければなりません」
私は、窓の方を見た。
空は、暗くなっていた。村は、いつもの夜の静けさに落ち着いていた。灯りは、まだ灯されていなかった。
見慣れた不安が、胸に沈んだ。
アイコが、気づいた。彼女は、間を置いた。鞄を肩に半分掛けたまま。
「何か、ありましたか?」
私は、首を振った。それから、言った。
「今夜は、ここに泊まるべきです」
彼女は、瞬きした。「ここですか?」
うなずいた。「安全です」
彼女は、私を見た。その眉は、ひそめられて。彼女は、理解していなかった。どうして、理解できるだろう? 彼女は、私が見たものを見ていなかった。彼女は、歌を聞いていなかった。彼女は、老人のこと、子供たちのこと、暗闇で動くもののことを、知らなかった。
私は、説明しなかった。
人々は、日が暮れた後に、外に出るべきではないとは、言わなかった。子供たちの歌、警告のように夜を漂う声については、言わなかった。老人と、彼の肌に押し付けられた手については、言わなかった。神社で見たものについては、言わなかった。
その代わりに、ただ言った。
「安全です」
アイコは、長い間、私を見つめた。その目は、私の顔を探った。私には名付けられない何かを、探して。
それから、ゆっくりと、彼女は鞄を下ろした。
「わかりました」 彼女は言った。「泊まります」
彼女は、再び床に座った。
夜が、私たちの周りに落ち着いた。
そして、私は、彼女に泊まるように頼んだ本当の理由を、言わなかった。
私は、怖いとは、言わなかった。
自分のためではなく。
彼女のため。
次に何が起こるのか...
次回、同じ時間に、同じ場所で。




