第十三章: 忘れたままにしておいたほうがいいものもある。
私たちは、放棄された神社の前で、沈黙のうちに立っていた。
風は、凪いでいた。木々は、静かだった。ただ聞こえるのは、私たちの呼吸だけだった。ゆっくりと、浅く。まるで、非常に長い間眠っていた何かを、妨げるのを恐れているかのように。
どちらも、話さなかった。
私たちの心は、まだ発見した全てを再生していた。新鮮な米の器。許しを求める風化した絵馬。苔の層の下に埋もれた、隠された注連縄。それぞれの物は、私たちが答えられない問いだった。それぞれの発見が、答えよりも多くの問いを投げかける。
もし、神社が本当に何世代にもわたって放棄されていたなら……
誰かが、密かにそれを維持していたのだ。
キリが、最初に沈黙を破った。
**「何か、持って行くべきだ」** 彼女は言った。**「証拠として。像の一つか。あるいは、絵馬。零香か、年長者に見せる何かを」**
首を振った。
**「いや」** 私は言った。**「これは、まだ誰かの聖なる場所だ。そこから物を持ち去るわけにはいかない」**
キリは、私を見た。その目は、悩んでいたが、彼女は反論しなかった。
**「そうだね」** 彼女は、静かに言った。**「あなたの言う通りだ」**
彼女は、再び神社を見た。小さな石像たちを。供え物の器を。
**「ただ、何の答えも得ずに去っていくように感じる」**
**「私たちは、問いを得て去る」** 私は言った。**「それは、無意味じゃない」**
彼女は、ゆっくりとうなずいた。それから、彼女は神社に向き直った。
**「すみません」** 彼女は言った。**「あなたの平穏を、乱してしまって」**
彼女が、神社に向かって言っているのか、あるいは、聞いているかもしれない何かに対して言っているのか、わからなかった。しかし、その衝動は、理解できた。
私は、お辞儀をした。
深く。敬意を込めて。最初の鳥居でした、あの同じお辞儀。
キリも、お辞儀をした。
それから、私たちは、向きを変え、下山を始めた。
---
道は、静かだった。
私たちが追ってきた跡は、まだそこにあった。土の中のかすかな足跡。神社へと続いている。しかし、私たちは、それらを追わなかった。私たちは、それらの脇を歩いた。これ以上、乱さないように注意しながら。
森は、依然として不自然なほど、静かだった。鳥も、虫もいない。ただ、磨り減った石の上での、私たちの足音の、柔らかな音だけ。
振り返らなかった。
キリも、振り返らなかった。
六つ目の鳥居を通過した。五つ目。四つ目。
下るにつれて、光は、より明るくなった。木々は、疎らになった。村の音――遠くの、普通の――が、沈黙を通して、聞こえ始めた。
ついに、私たちは、森を抜け、見慣れた道へと出た。
村が、私たちの前に広がっていた。平和的に。普通に。
まるで、何も起こらなかったかのように。
私は、木々の端で止まり、振り返った。
山は、まだそこにあった。門は、葉に隠れていた。神社は、ここからは、見えなかった。
しかし、それがそこにあることは、知っていた。
**待っている。**
キリは、私の隣に立っていた。
**「大丈夫?」** 彼女は尋ねた。
私は、山から目をそらした。
**「いいえ」** 私は言った。**「でも、そうなる」**
彼女は、詰め寄らなかった。
---
村に戻り、私たちは質問を始めた。
市場から始めた。米の商人は、私たちが近づくと、商品を並べていた。キリは、彼に神社について尋ねた。誰が建てたのか、いつ使われなくなったのか、誰かが訪れたことがあるのか。
彼は、間を置いた。その手は、穀物の上で、止まった。
**「神社?」** 彼は言った。その声は、平坦だった。**「そんなこと、何も知らない」**
**「あなたは、一生、ここに住んでいる」** キリは言った。**「きっと、聞いたことが……」**
**「そんなこと、何も知らない」** 彼は、繰り返した。彼は、米に戻った。**「隣の店に、聞いてみるといい」**
私たちは、去った。
---
店主は、最も直接的だった。
私たちが近づくと、彼女は店の前を掃いていた。小さな店。米と塩とマッチを売る、あの種類の。以前も来たことがあった。玉を買った。飾りを買った。
**「すみません」** キリは言った。**「山の上の神社について、お尋ねしたいのですが……」**
店主の箒が、止まった。
**「そんなこと、何も知らない」** 彼女は言った。**「私は、一生ここに住んでいて、そんな神社のことは、聞いたことがない」**
キリは、瞬きした。**「一度も? 山の上にあります。そこから見えますよ……」**
**「聞いたことがない」** 店主は、繰り返した。その声は、平坦だった。**最終的**に。
彼女は、掃除に戻った。
---
誰も、怒らなかった。
誰も、尋ねるのを止めろとは言わなかった。
その代わりに、皆、単に答えることを避けた。その沈黙そのものが、疑わしかった。同じ反応が、何度も繰り返された。丁寧なそらし。話題の変更。突然、緊急にしなければならないことを思い出す。
決意して、私たちは村の年長者を訪ねた。
彼の家は、道から離れ、柳に半分隠れていた。以前訪ねた、あの同じ家。外で休む、同じ疲れた村人たち。
年長者は、私たちがノックする前に、戸を開けた。彼は、しばらく私たちを見つめ、それから、脇にどいた。
**「お入り」** 彼は言った。**「待っていた」**
私たちは、小さな、質素な部屋に座った。灯りが、揺れた。年長者は、茶を注いだ。ゆっくりと、意図的に。まるで、避けられないことを先延ばしにしようとしているかのように。
キリは、待たなかった。
**「誰が、神社を建てたのですか?」** 彼女は尋ねた。
年長者は、答えなかった。彼は、茶を注ぎ終え、急須を置き、テーブルに手を組んだ。
**「そこで祀られていた古代の神は、誰ですか?」** キリは、迫った。
再び、沈黙が、私たちの間に伸びた。
年長者は、自分の手を見た。茶を見た。揺れる灯りを見た。
それから、彼は言った。
**「忘れたままにしておいたほうがいいものもある」**
キリは、前に身を乗り出した。**「なぜですか?」**
年長者は、微笑んだ。悲しい微笑み。深い疲れの場所から来る、あの種類の。
**「なぜなら、それらを覚えていることは、悲しみしかもたらさないからだ」**
彼は、自分の茶碗に手を伸ばした。彼は、飲まなかった。ただ、それを抱え、温かさが掌に染み込むのを、感じさせた。
**「過去は、重い」** 彼は言った。**「ある重みは、負うべきではない」**
キリは、別の質問をするために口を開けた。その顔に、それが見えた。決意。そんな曖昧な答えを受け入れることを拒む、その決意。
しかし、年長者は、彼女が話す前に、話した。
**「市場で買った米は、良いですか? 品質が向上したと、聞いている」**
彼は、完全に話題を変えた。
キリは、私を見た。私は、年長者を見た。
会話は、どこにも行かなかった。
私たちは、答えなしに去った。
---
私たちは、静かな村を、家へと歩いた。
どちらも、話さなかった。
しかし、私たちは、どちらも、年長者が何を意味していたか、知っていた。
忘れたままにしておいたほうがいいものもある。
そして、それが、まさに、私たちが調べるのを止められない理由だった。
帰り道は、以前よりも、はるかに静かに感じられた。
村は、同じだった。同じ低い屋根。同じ薄い壁。同じ、畑を縫う道。しかし、全てが、今は違って見えた。家と家の間の沈黙が、より重く感じられた。通り過ぎる村人たちの視線が、より鋭く感じられた。
誰も、私たちを止めなかった。誰も、私たちに話しかけなかった。
しかし、彼らの目が、私たちの背中に注がれているのを、感じることができた。
キリは、私の隣を歩いた。手をポケットに入れて、その視線は、地面に固定されていた。彼女は、長い間、話さなかった。ついに話した時、その声は、平坦だった。
**「皆、何か知ってる」**
うなずいた。**「そうだ」**
彼女は、歩くのを止めた。私も、止まった。
**「でも、誰も、それを言いたがらない」**
私は、彼女を見た。その顔は、疲れ、苛立っていた。登れない壁にぶつかった時に来る、あの種類の苛立ち。
**「それに、ひなたは……」** 私は言った。
**「ひなた……?」** キリは尋ねた。**「彼女は、これと、何の関係があるの?」**
首を振った。**「わからない。でも、彼女は、三日間、行方不明になった。見つけた時、彼女は、私のことを覚えていなかった。彼女に属さない言葉を話していた」**
キリは、両手で顔を覆った。
**「ヒカル」** 彼女は言った。**「ここで、何が起こっているの?」**
答えは、なかった。
私たちは、再び歩き始めた。
村は、午後へと落ち着き始めていた。灯りが灯され、戸が閉められ、一日の緩やかな後退。
**「質問しても、真実は学べない」** 私は言った。**「彼らは、決して教えないだろう」**
キリは、ゆっくりとうなずいた。
**「ならば、別の方法を見つけなければならない」**
私たちは、沈黙のうちに、家へと歩いた。
しかし、初めて、私たちは、両方とも知っていた……
答えは、村人たちからは、来ないだろう。
それらは、山そのものから来なければならない。
---
翌朝、ひなたは、いつものように訪れた。
彼女のノックは、同じだった。三回の小さな叩き。柔らかく、見慣れた。ドアを開けると、彼女は階段の上に立っていた。その笑顔は、明るく、その頬は、歩いてきたことで、紅潮していた。柿色のリボンは、彼女の手首に結ばれていた。ほつれて、柔らかく。月の飾りは、彼女の鎖骨の上にあった。
**「おはようございます、ヒカルさん!」** 彼女は言った。それから、私を通り過ぎて覗き込みながら。**「キリさんは、いる?」**
**「中にいるよ」** 私は言った。**「おいで」**
ひなたは、私を通り過ぎ、裸足が床をパタパタと歩いた。彼女は、キリが床に座って本を手にしているのを見つけ、すぐに彼女の隣に腰を下ろした。
**「キリさん」** 彼女は言った。**「話したいことが、たくさんあるの」**
キリは、顔を上げた。疲れ、悩んでいたその顔は、微笑みに柔らかくなった。
**「全部、聞かせて」** 彼女は言った。
ひなたは、普通のことについて、嬉しそうにぺちゃくちゃと話した。
村の猫が、また市場から魚を盗んだこと。店主が箒で追いかけたが、猫は速すぎたこと。鳥が、彼女の窓の近くに巣を作っていて、彼女は、朝中、小枝を運ぶのを見ていたこと。村の年長の少年の一人が、西瓜はカボチャよりも大きくなると言ったが、彼女は、信じなかったこと。
**「カボチャは、すごく大きい」** 彼女は言った。**「大きいオレンジの岩みたいなの」**
**「西瓜も、結構大きくなることがあるよ」** キリは言った。
**「でも、カボチャの方が大きい。見たことがある。西瓜は丸いけど、カボチャは丸くて、**高い**」**
**「それは、とても良い指摘だ」**
ひなたは、満足そうにうなずいた。
しばらくの間、謎は、忘れられた。
会話は、自然に終わった。ひなたは、川の近くで見たカエルの話に移っていた。どうやってそれが岩の上に座って彼女を見つめ、彼女も見つめ返し、そして、彼らは、互いに別々の道を行くことを決めたか。
その時、彼女は、息を呑んだ。
**「あっ!」**
彼女は、肩に掛けた小さな鞄に手を入れた。その小さな手が、しばらく手探りし、それから、折りたたまれた封筒を取り出した。
**「キリさん」** 彼女は言った。**「忘れてた」**
彼女は、封筒を差し出した。その表情は、突然、申し訳なさそうに。
**「誰かが、今朝、これをあなたに渡してほしいって言ったの。訪問者。バス停で。すぐに持ってくるはずだったのに、でも、お母さんが野菜を手伝ってほしいって言って、それから、猫を見て、それから……」**
彼女は、頭を下げた。
**「ごめんなさい」**
キリは、微笑んだ。その声は、温かかった。
**「いいよ。持ってきてくれて、ありがとう」**
彼女は、封筒を受け取った。
ひなたは、再び明るくなった。その罪悪感は、忘れ去られて。**「開けないの?」**
**「すぐに」** キリは言った。**「まず、カエルの話の続きを聞かせて」**
ひなたは、別の話を始めた。
---
キリは、封筒を手に、長い間、抱えていた。
彼女の指は、紙の縁をなぞった。親指は、封蝋の上を走った。彼女は、宛名を見た。筆跡を見た。隅にエンボス加工された、彼女の会社の見慣れたロゴを見た。
ひなたは、まだ彼女を見ていた。好奇心に満ち、忍耐強く。カエルの話は、忘れられていた。
**「開けないの?」** ひなたは尋ねた。
キリは、微笑んだ。しかし、その目は、遠くにあった。
**「すぐに」** 彼女は言った。
彼女は、封筒を裏返した。注意深く開けた。破らず、急がず。物事を変えるとわかっているものを開ける、その仕方。
彼女は、手紙を広げた。
私は、彼女の顔を見た。
その目は、ページの上を動いた。彼女の頬から、血の気が引いた。確かだった彼女の手は、わずかに震え始めた。
**「ひなた」** 彼女は言った。その声は、静かだった。制御されて。**「この手紙をくれた人は、誰?」**
ひなたは、顔を上げた。その眉は、ひそめられた。
**「女の人」** 彼女は言った。**「名前は、知らない。あなたの友達だって言ってた。あなたに渡してほしいって」**
キリは、手紙を凝視した。
**「他に、何か言ってた?」**
**「ううん。ただ、あなたに渡してって」** ひなたは、首をかしげた。**「何か、あったの?」**
キリは、手紙を注意深く折った。袖にしまった。
**「いいえ」** 彼女は言った。その声は、確かだったが、私は、彼女の顎の緊張を見ることができた。**「全て、順調だよ」**
彼女は、ひなたに微笑んだ。本物の微笑み、あるいは、それに近いもの。
**「持ってきてくれて、ありがとう」**
ひなたは、満足そうにうなずいた。
私は、キリを見た。彼女は、私の目に合わなかった。
手紙は、彼女の袖の中に、重く、沈黙して、座っていた。
---
部屋は、静かになった。
キリは、動かずに座っていた。手紙は、まだ彼女の手の中に。その顔は、青白かった。その目は、ページに固定され、再び言葉を読んでいた。まるで、それらが変わることを願って。
ひなたは、私たちの間を見た。その眉は、ひそめられて。
**「キリ?」** 私は、静かに尋ねた。**「どうしたの?」**
キリは、すぐには答えなかった。彼女は、手紙を注意深く折った。その動きは、ゆっくりと、意図的だった。顔を上げた時、その微笑みは、こわばっていた。
**「会社からだ」** 彼女は言った。**「緊急事態が発生した。戻る必要がある」**
ひなたは、瞬きした。**「戻る? 都会に?」**
**「そう」**
**「でも……」** ひなたの声は、小さかった。**「来たばかりじゃない」**
キリの微笑みが、柔らかくなった。**「わかってる。ごめんね」**
私は、二人を見た。その瞬間の重みが、私にのしかかった。
キリは、ここに来て、ほんの短い間だった。しかし、彼女は、私の日々のリズムの一部になっていた。彼女の笑い声。彼女の温かさ。彼女の確かな存在。彼女が去るという考えは、家が突然、空っぽに感じさせた。
しかし、私は、理解していた。
**「仕事が、あなたを必要としている」** 私は言った。**「行かなければ」**
キリは、ゆっくりとうなずいた。**「明日、出発しなければならない」**
ひなたの肩が、落ちた。
**「もう?」** 彼女は尋ねた。その声は、かすかなささやきだった。
キリは、彼女の身長に合わせて、ひざまずいた。彼女は、ひなたの小さな肩に手を置いた。
**「今は、ね」** 彼女は、優しく言った。**「また、必ず、訪ねるから。事態が落ち着いたら、すぐに戻ってくる」**
ひなたは、彼女を見た。その暗い目は、見開かれ、探っていた。彼女は、何も言わなかった。ただ、うなずいた。
部屋は、再び静かになった。外では、午後の光が、色あせ始めていた。
キリは、手紙を再び折り、袖にしまった。
私は、彼女を見た。
**「本当に、そんなに早く、出発しなければならないの?」** 私は尋ねた。**「もしかしたら……」**
**「いいえ」** 彼女は、静かに言った。**「できない。私は、いつでも対応できると約束した。これが、私の仕事だ。私の責任だ」**
うなずいた。理解した。
たとえ、そうしたくなかったとしても。
---
ひなたは、床に座っていた。膝を抱え、手を膝の上で組んで。彼女は、いつになく静かだった。すねているわけでも、文句を言っているわけでもない。ただ、自分を動かずに保っていた。どれだけ傷ついているか、見せたくない時の、子供のするように。
キリが、気づいた。
**「ひなた」** 彼女は言った。**「私は、まだいなくならないよ。今日は、まだある。特別な日にしよう」**
ひなたは、顔を上げた。その目は、輝いていたが、彼女は、泣かなかった。
**「どんな特別なの?」** 彼女は尋ねた。
キリは、微笑んだ。手紙を開けて以来、初めての、本当の微笑み。
**「最高のやつ」** 彼女は言った。**「おにぎりを作ろう。三人で」**
ひなたの唇が、わずかに震えた。しかし、彼女は、うなずいた。
**「うん」** 彼女は言った。**「できるよ」**
私は、二人を見た。
午後は、温かく、普通だった。今、夕方の重みが、のしかかっていた。何か良いものが、滑り落ちていくという知識。明日は、家がより静かになるということ。笑い声が、消えるということ。
しかし、今日は、まだここにある。
私たちは、まだ今日を持っている。
---
その夕方、三人は、縁側に一緒に座った。
太陽は、沈み、空を橙色と紫色の色合いに染めていた。空気は、冷たく、土と乾いた草のかすかな香りを運んでいた。村は、静かだった。夕方の、普通の静けさ。皆が、中に引っ込み、世界が静けさに落ち着く、その時。
キリは、膝の上に小さなノートを開いていた。彼女は、バスの時刻表、時間、乗り継ぎを書き留めていた。彼女は、指で線をなぞった。その眉は、集中して、ひそめられていた。
**「朝の八時に、バスがある」** 彼女は言った。**「それに乗れば、正午には、都会への乗り継ぎに間に合う」**
うなずいた。**「バス停まで、送っていく」**
ひなたは、キリの隣に静かに座っていたが、突然、背筋を伸ばした。
**「私も、行きたい」** 彼女は言った。**「お別れを言いたい」**
キリは、微笑んだ。**「もちろん、一緒に行けるよ」**
ひなたは、満足そうにうなずいた。しかし、その肩は、まだ緊張し、その手は、膝の上で、固く組まれていた。
会話は、より軽い話題へと移った。
キリは、初めての仕事の話をした。間違った人にメールを送ってしまい、一日中謝罪して過ごした話。ひなたは、笑った。その声は、明るく、本物だった。私は、微笑んだ。心は、それに入っていなかったが。
夜は、より暗くなった。星々が、小さな灯りのように、空に散らばった。
しかし、言えない感情が、表面の下に漂っていた。
調査は、止まっていた。
問いは、答えられないまま。
神社は、まだ山の上に座っていた。その秘密を隠して。
子供たちは、まだ夜に歌っていた。その声は、闇を漂って。
私は、キリを見た。その見慣れた顔。その温かい笑顔。その確かな存在。彼女は、こんなに短い間しかいなかったが、予期していなかった方法で、私の人生の一部になっていた。
明日、彼女は、いなくなる。
そして、私は、再び、一人になる。
ひなたが、あくびをした。その目は、重くなっていた。
**「寝る時間だよ」** キリは、優しく言った。
**「やだ」** ひなたは、呟いたが、その抗議は、弱々しかった。**「疲れてない」**
**「疲れてるよ」**
**「疲れて……」**
彼女は、再びあくびをした。キリは、優しく笑った。
**「さあ」** 彼女は言った。**「家まで、送っていく」**
ひなたは、しぶしぶ立ち上がった。彼女は、私に向き直った。その小さな顔は、灯りで青白く。
**「おやすみなさい、ヒカルさん」** 彼女は言った。
**「おやすみ、ひなた」**
彼女は、ためらった。それから、彼女は、前に進み、私を抱きしめた。素早く、きつく。その小さな腕が、私の腰を包み込んだ。
胸が、締め付けられるのを感じた。
彼女は、離れた。キリのそばへ歩いていった。
私は、縁側に立ち、彼らが道の向こうに消えるのを見た。
夕方の空気は、肌に冷たかった。村は、いつもの静けさに落ち着き、一日の音が、夜の柔らかなハミングへと消えていった。
動かなかった。
ただ、そこに立って、空っぽの道を見つめ、夕方の重みが、のしかかるのを感じた。
その時、気づいた。
**てるてる坊主**が、まだ窓の外に吊るされていた。
小さな白い人形が、夕方のそよ風に優しく揺れていた。その紐は、鉤に当たって、柔らかくきしんでいた。布は、雨で湿り、縁は、わずかにカールしていた。私が描いた顔、笑顔、小さなえくぼは、天候で色あせ、ぼやけていた。
それは、風に一度、揺れた。
小さな、孤独な動き。
私は、長い間、それを見つめた。
そして、私は、次に何をするか、決めなければならなかった。
次に何が起こるのか。。。
次回、同じ時間に、同じ場所で。




