第九章: 予期せぬ訪問者.
三日間、ひなたが私の戸口に来なかった。
初日は、彼女が忙しいのだと思った。子供には、家事がある。家族には、用事がある。村のリズムは、都会のリズムとは違う。私は、一貫性を期待しないことを学んでいた。
二日目、私は、自分が思っていたよりも頻繁に、道に目をやっていることに気づいた。箒は、壁にもたれかかっていた。米鍋は、使われずにいた。箒の毛先の擦れる音も、杓子の柔らかなトントンという音もない朝は、空っぽに感じられた。
三日目、私は、零香の家に行った。
彼女は、疲れた様子でドアを開けた。捜索の、骨の髄までの疲労ではない。もっと優しい何か。一晩中起きていた母親の、疲れ。
**「ひなたが、熱を出しているの」** 私が尋ねる前に、彼女は言った。**「ほとんど寝ているの。年長者たちは、ただの風邪だって言うけど……」** 彼女は首を振った。**「彼女は小さいから。こんな姿を見るのは、辛い」**
胸が締め付けられた。
**「会えますか?」** 私は尋ねた。**「キリと二人で。長くは居ません。ただ、何か持って行きたいんです」**
零香は、ためらった。それから、うなずいた。
**「彼女は、喜ぶわ」** 彼女は言った。**「あなたのことを、尋ねていたから」**
家に戻り、キリに話した。彼女は、私が話し終える前に、もう物資を集め始めていた。
**「米」** 彼女は言った。**「スープ。消化の良いもの。それと、アイデアがある」**
**「どんなアイデア?」**
彼女は、にやりとした。**「民間療法。私の祖母が、よく作ってくれた。いつも効くの」**
私は、尋ねなかった。ただ、彼女の荷造りを手伝った。
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私たちは、物資の籠を持って、零香の家へ歩いた。米、野菜、蜂蜜の瓶、そしてキリが持って来ることを主張した小さな食材の束。午後は、暖かく、空は晴れていた。村は、静かだった。
零香がドアを開け、私たちを中へ導いた。
ひなたは、小さな部屋にいた。薄い布団の下に潜り込んで。その顔は、紅潮していた。髪は、額に濡れていた。しかし、私たちを見ると、微笑んだ。
**「来てくれた」** 彼女は言った。声は、弱々しかったが、その目は、輝いていた。
**「もちろん来たよ」** 私は言った。私は、彼女の布団のそばにひざまずき、手の甲を彼女の額に当てた。温かい。温かすぎる。**「気分は、どう?」**
**「悪い」** 彼女は言った。**「でも、今は、まし」**
**「私たちが来たから、ましになったの?」**
**「うん。」** 彼女は間を置いた。**「それに、吐いた」**
キリが、笑った。**「それは、正直だね」**
**「私は、いつも正直」** ひなたは言った。**「それが、私の良いところ」**
私は、微笑み、彼女の顔から髪の束を払った。
**「何か持って来たんだ」** 私は言った。**「民間療法。キリの祖母のレシピ」**
ひなたの目が見開かれた。それから、細められた。
**「まずいの?」**
キリは、私の隣にひざまずき、その表情は、ふざけて真剣だった。
**「美味しくはないよ。嘘はつかない。でも、気分は良くなる」**
ひなたは、ため息をついた。長く、大げさなため息。
**「わかった」** 彼女は言った。**「試してみる」**
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キリは、零香の台所で、治療薬を準備した。
温かい湯。保存された塩レモン。茶色く、しわしわになった、何ヶ月も、おそらく何年も瓶の中に置かれていた種類のもの。彼女は、薄い一片を切り、カップに落とした。水が、わずかに濁った。鋭い、酸っぱい香りが、部屋に満ちた。
**「はい」** キリは言い、カップをひなたに運んだ。**「ゆっくり飲んで。強いから」**
ひなたは、起き上がった。彼女は、両手でカップを受け取った。その小さな指が、温かい陶器の周りに巻き付いた。彼女は、それを唇に運んだ。
匂いを嗅いだ。
その顔が、しわくちゃになった。
**「これ、何?」** 彼女は尋ねた。
**「薬」** キリは言った。**「飲んで」**
ひなたは、私を見た。私は、うなずいた。
彼女は、一口すする。
そして、もう一口。
その時、彼女の頬が膨らんだ。目が、きつく閉じられた。その顔全体が、純粋で、大げさな嫌悪の表情に歪んだ。まるで、個人的に自分を侮辱した何かをかじったかのように。
**「うっ…!」** 彼女は、むせた。
私たちの残りは、笑い声を爆発させた。
キリから始まった。鼻を鳴らし、くすくす笑い、そして抑えきれない大笑い。私も続いた。零香は、口を覆ったが、その肩は震えていた。ひなたでさえ、まだ舌に残る酸っぱい味にもかかわらず、微笑まずにはいられなかった。
**「ひどい」** 彼女は言った。その声は、手でくぐもっていた。**「すごく、すごくひどい」**
**「体にいいんだよ」** キリは、まだ笑いながら言った。
**「味は……」** ひなたは間を置き、適切な言葉を探した。**「諦めたレモンみたい」**
**「まさに、それだ」** キリは言った。
ひなたは、うめいた。しかし、彼女はカップを飲み干した。
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約一時間後、ひなたは布団から飛び起きた。
**「お手洗い!」** 彼女は宣言した。**「今すぐ!」**
誰も返事をする前に、彼女は部屋を飛び出した。引き戸が閉まる音が聞こえ、しばらくの沈黙、それから間違いなく水の流れる音。
キリが、私を見た。私は、零香を見た。
**「効いたみたいだね」** キリは言った。
零香は、手を胸に当てた。**「そうだといいけど」**
ひなたが戻ってきた時、彼女は違って見えた。頬の紅潮が、薄れていた。目は、より澄んでいた。午後中よりも、元気に歩いた。
**「ましになった?」** 私は尋ねた。
**「ましになった」** 彼女は言った。彼女は布団に座り、足を組んだ。**「薬は、ひどい。でも、気分は良くなった」**
彼女は間を置いた。
**「お手洗いに走った時、服を台無しにしそうだった」** 彼女は付け加えた。**「それは、無駄だっただろうな。この服、好きなんだ」**
皆が笑った。温かく、たやすい笑い。ユーモアよりも安堵から来る、あの種類の。
**「もう一作、作るよ」** 私は言った。**「もっと大きなの。そうすれば、あなたのお母さんが、必要な時にあげられる」**
ひなたの顔が、曇った。**「もう一作? あれの、もっと?」**
**「あれの、もっと」**
彼女は、ため息をついた。深く、大げさなため息。
**「わかった」** 彼女は言った。**「でも、今度は、笑わないから」**
彼女は、微笑んだ。
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一緒に、私たちは零香の台所に集まり、薬を作った。水を計った後、キリは塩を加えた。私は、レモンを洗った。零香は、きれいな瓶に、紙でラベルを貼った。
ひなたは、台に座って、見ていた。彼女は、まだ弱々しかったが、改善は明らかだった。顔色が戻っていた。目は、輝いていた。
**「本当に、この薬は好きじゃない」** 彼女は宣言した。彼女は、キリをまっすぐに見て、腕を組んでいた。**「今まで味わった中で、一番ひどい」**
キリは、厳かにうなずいた。**「それが、効くって証拠なんだよ」**
ひなたは、反論しようと口を開けた。それから、止まった。
**「お手洗いに走った時、服を台無しにしそうだった」** 彼女は、再び言った。今度は、微笑むのをこらえているようだった。**「それは、大惨事だっただろうな」**
キリは、笑った。私は、笑った。零香は、笑った。
ひなたは、微笑んだ。
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外で、日が沈み始めた。薬の瓶は、カウンターの上に置かれ、密封され、準備ができていた。零香は、ひなたが完全に回復するまで、毎日少量を与えると約束した。
私たちは、別れを告げた。
ひなたは、布団の上で手を振った。
**「明日も来てね」** 彼女は言った。**「もっと食べ物を持って来て。でも、薬は、持って来ないで」**
**「約束は、できない」** 私は言った。
彼女は、口をとがらせた。
私は、微笑んだ。
そして、私たちは、色あせる光の中を家へと歩いた。キリと私。村は、静かで、温かく、平和だった。
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翌朝、まだひなたのことを考えていた時、ノックが来た。
三回の小さな叩き。柔らかい。見慣れた。宣言する必要のない、あの種類のノック。
すぐにそれとわかった。
急いでドアに行き、開けた。
ひなたが、階段の上に立っていた。その顔は、朝の日差しで輝いていた。柿色のリボンは、彼女の手首に結ばれていた。ほつれて、柔らかく。月の飾りは、彼女の鎖骨の上にあった。その頬は、色づいていた。病気の青白い熱の赤みではなく、よく眠り、一日への準備ができて目覚めた子供の、健康的な桃色。
**「おはようございます、ヒカルさん」** 彼女は、嬉しそうに言った。
私は、彼女を見た。私の顔の笑みは、自然に、努力せずに、浮かんだ。
**「おはよう」** 私は言った。**「もう、すっかり良くなったんだね」**
**「うん」** 彼女は言った。**「朝露のように、さっぱりしてる」**
私は、脇にどき、彼女を中に入れた。
彼女は、私を通り過ぎ、裸足が木の床を柔らかくパタパタと鳴らした。彼女は、いつもの好奇心で部屋を見回した。低いテーブル、閉め切ったカーテン、米鍋が待っている小さな台所。
**「キリさん?」** 彼女は呼んだ。**「キリさん、いる?」**
**「まだ寝てる」** 私は言った。**「昨夜、遅くまで起きてたから」**
ひなたは、うなずいた。彼女は、その答えに満足したようだった。彼女は、床に座り込んだ。足を組み、手を膝の上に置いて。
**「待ってる」** 彼女は言った。
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朝の光は、柔らかく、カーテンの隙間から差し込んでいた。私は、部屋の中を動き回り、昨日の午後のカップと皿を集めた。茶道具は、低いテーブルの上に散らばっていた。数個の煎餅の屑が、床に落ちていた。
それは、普通の作業だった。地に足のついた作業。
低いテーブルを片付けていた時、私は、キリが隅っこに漫画を持って座っているのに気づいた。彼女は、足を組み、壁に背を向け、その顔は、見慣れた安らぎを見つけた者の、静かな没頭で輝いていた。
私は、微笑み、片付けに戻った。
ひなたも、気づいた。
彼女は、忍び寄った。裸足が、木の床で音を立てずに。そして、キリの肩の上で、立ち止まった。その目は、ページに固定されていた。
**「キリさん」** 彼女は言い、挿絵を指さした。**「あの子供たちは、何で遊んでるの?」**
キリは、顔を上げた。それから、ページを見下ろした。その微笑みが、広がった。
**「動的独楽っていうんだ」** 彼女は言った。**「特別なんだ。回すと、地面の上を浮かぶんだよ」**
私は、カップを手に持ったまま、止まった。
**「それは、ありえない」** 私は言った。
キリは、笑った。**「漫画の中だけだよ。現実では、磁石か何かが必要だろうね。でも、この物語では、ただ……浮くんだ」**
ひなたは、より近づいた。その顔は、ページから数センチのところに。その目は、見開かれ、輝いていた。
**「欲しいな」** 彼女は言った。**「浮く独楽。回したら、魔法みたいに、そこに浮かんでる」**
**「それは、魔法だよ」** キリは言った。**「それが、ポイントなんだ」**
ひなたは、ゆっくりと、うなずいた。その指が、挿絵の輪郭をなぞった。小さな独楽。子供の開かれた掌の上に、浮かんでいる。
**「回して、ずっと見てる」** 彼女は言った。
キリは、彼女を見た。何か柔らかいものが、その顔を横切った。
**「いつか、かもしれないね」** 彼女は言った。**「誰かが、発明するかもしれない」**
ひなたは、彼女を見上げた。
**「そう思う?」**
**「何でもあり得ると思う」**
それは、静かで、親密で、自然な瞬間だった。夢見る子供。彼女を甘やかす友人。現実世界から、本のページへの、短い逃避。
私は、微笑み、片付けに戻った。
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平穏な午後は、ノックの音で中断された。
柔らかいノックではない。ひなたの見慣れた三回の叩きでも、零香の優しいタップでもない。これは、**緊急**だった。鋭い。知らせを運ぶ、あの種類のノック。
ドアを開けた。
一人の村人が立っていた。市場で見覚えのある女性。その顔は、青白く、目は、赤かった。彼女は、私を見、それからキリを見、それからひなたを見た。
**「訃報です」** 彼女は言った。**「田中家です。末娘が。今朝、亡くなりました」**
その言葉は、空気の中に漂った。
部屋から温かさが消えるのを感じた。
**「何があったのですか?」** 私は尋ねた。**「事故ですか? 病気ですか……」**
女性は、首を振った。**「わかりません。家族は、何も言っていません。私たちも、さっき聞いたばかりです」**
私は、向きを変えた。キリは、今は立っていた。漫画は、脇に置かれていた。その顔は、読めなかった。
**「行くべきだ」** 私は言った。**「お悔やみを」**
キリは、うなずいた。
ひなたは、まだ床に座っていた。彼女は、私を見上げた。その目は、見開かれていた。
**「誰か、死んだの?」** 彼女は尋ねた。**「誰?」**
私は、彼女のそばにひざまずいた。どう答えればいいのか、わからなかった。
**「まだ、わからない」** 私は言った。**「でも、行かなきゃ。あなたのお母さんと一緒に、ここで待ってる?」**
彼女は首を振った。**「行きたい」**
私は、キリを見た。彼女は、うなずいた。
**「いいよ」** 私は言った。
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私たちは、沈黙のうちに、村を歩いた。
通りは、空っぽだった。いつもの音――鳥、子供たち、遠くの仕事の音――が、消えていた。空気は、重かった。光でさえ、より暗く見えた。まるで、空そのものが、悲しんでいるかのように。
家は、簡単に見つかった。田中家は、村の家々と同じように、小さかった。しかし、それは、人で満たされていた。隣人たち。友人たち。家族。彼らは、群れになって立って、ひそひそ声で話していた。子供たちは、壁に沿って座り、その顔は、衝撃で無表情だった。大人たちは、互いに抱き合っていた。
空気は、悲しみで、濃かった。
私は、その家族をよく知らなかった。市場で見かけたことがある。父親と頷き合い、娘に一度か二度、微笑んだことがある。しかし、誰かを失うことが何を意味するか、知っていた。あの沈黙の重みを知っていた。
私たちは、お悔やみを述べた。お辞儀をした。他の人たちと一緒に、静かに立った。
キリは、話さなかった。ただ、見た。その目は、部屋の中を動き、顔、囁かれる言葉、皆が悲しみの周りを注意深く動く、その仕方を捉えた。まるで、それが壊れやすい何かであるかのように。
私は、その少女のことを思った。名前は、ユキ。九歳だった。つい数日前、川の近くで遊んでいた。
今、彼女は、いない。
ひなたのことを思った。
山のことを思った。
そして、私は、暗闇の中で思った。この村は、他に何を隠しているのだろう、と。
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夕方が、村に落ちていた。
光は、深い紫色に色あせていた。本当の闇が来る前に来る、あの種類の。空気は、冷たかった。昼間の音は、静まっていた。鳥も、声もない。ただ、葉の柔らかな擦れる音と、川の遠くのせせらぎだけ。
キリは、まだ田中家の中にいた。悲しむ母親の肩に手を置き、その声は、柔らかく、確かだった。私は、彼女たちをしばらく見ていた。彼女が身を乗り出す、その仕草。彼女が聞く、その仕草。何も見返りを求めずに、慰めを提供する、その仕草。
彼女は、それが得意だった。
何か食べようと提案しようとした時、何でもいいから、ただ何かをするために、ノックが来た。
三回の叩き。ゆっくりと。意図的に。誰かが手を上げる前に、長い間考えていたことを意味する、あの種類のノック。
立ち上がった。ドアへ歩いた。開けた。
外に立っていた男は、年老いていた。
その服は、擦り切れていた。暗い浴衣。肩のところが繕われている。生地は、何年もの日差しと洗濯で色あせていた。その顔には、しわが刻まれていた。その肌は、数え切れない季節に、風化していた。その髪は、白く、薄く、簡素な結び目にまとめられていた。
その目は、暗かった。深かった。あまりにも多くを見てきたため、何にも驚かない、あの種類の目。
数秒間、彼は、ただ私を見つめた。
それから、彼は尋ねた。
**「中に入ってもいいですか?」**
その声は、静かだった。荒い。あまり話さず、言葉を注意深く選ぶ者の声。
うなずいた。
**「はい」** 私は言った。**「どうぞ」**
彼は、頭を下げた。
彼は、私を通り過ぎて、家の中へと足を踏み入れた。
この老人は誰なのか...
そして、なぜ今、彼が現れたのか?
次回、同じ時間に、同じ場所で。




