↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/17

夏の合同合宿・パート2

登場人物


――夏の合同合宿・パート2「スイカ割り?」


神谷かみや 悠真ゆうま


1年生/左投げ左打ち/外野手


主人公。


軟式野球部で全国制覇を目指す。


真面目で努力家だが、意外と天然なところもある。


今回のスイカ割りでは、方向感覚を失って大苦戦。


しかし最後は合同合宿参加者全員で挑む巨大スイカ割りの代表に選ばれ、見事にスイカを割る。


美咲との距離も少しずつ縮まっている。


本人はまだ「付き合っていない」と思っているが、周囲から見るとかなりいい雰囲気。



高橋たかはし 美咲みさき


2年生/軟式野球部マネージャー


悠真を支えるマネージャー。


明るく優しく、選手たちからも信頼されている。


スイカ割りでは悠真の声を頼りに見事にスイカを割る。


最後の巨大スイカ割りでは、悠真に声をかけて成功へ導いた。


悠真との関係について周囲から、


「もう付き合ってるんじゃない?」


とからかわれることが増えている。


本人も悠真を特別な存在として意識し始めている。



黒田くろだ れん


2年生/右投げ右打ち/内野手


悠真の先輩であり、チームの強打者。


明るく面倒見がいい。


今回のスイカ割りでは、まさかの一発成功。


野球だけではなく、スイカ割りでも強さを見せる。


そして何より――。


悠真と美咲の関係を面白がっている。


「お前ら、もう付き合えよ」


と二人をからかうこともしばしば。


ただし、二人を応援している部分もある。



佐伯さえき 恒一こういち


3年生/主将/内野手


軟式野球部のキャプテン。


全国制覇を最後の夏の目標にしている。


今回のスイカ割りでは、選手たちが楽しむ姿を見ながらも、


「明日は練習試合だ」


と現実に引き戻す役割を果たす。


チームの精神的支柱。



神崎かんざき 隼人はやと


2年生/右投げ右打ち/投手


県大会優勝校のエース。


今回の合同合宿で悠真たちと知り合った。


スイカ割りでは驚異の一発成功。


運動能力の高さを見せつけた。


普段はクールだが、意外と冗談も言う。


悠真の実力にも興味を持っており、今後ライバルになる可能性が高い。



田村たむら 恒一こういち


1年生/内野手


別の軟式野球部から合同合宿に参加。


明るく、人付き合いが得意。


悠真とは同学年ということもあり、すぐに仲良くなった。


合同合宿を通して、悠真たちのチームと交流を深めている。



森下もりした りく


2年生/外野手


別の軟式野球部所属。


俊足の外野手。


守備範囲が広く、走塁も得意。


悠真とは外野手同士ということで意気投合している。



小林こばやし 大地だいち


1年生/捕手


別の軟式野球部から参加。


強肩の捕手。


体格がよく、力強いバッティングも持っている。


口数は少ないが、内心では今回の合同合宿をかなり楽しんでいる。



水野みずの 莉子りこ


2年生/ソフトボール部


今回の合同合宿に参加しているソフトボール部員。


身体能力が高く、特にバッティングが得意。


明るく活発な性格で、合同合宿のムードメーカー。


悠真たちともすぐに打ち解けた。


スイカ割りでは、野球部員たちをからかいながら楽しんでいた。



山本やまもと あや


2年生/強豪校マネージャー


神崎の所属する強豪校のマネージャー。


仕事が早く、しっかり者。


美咲と合同合宿を通して仲良くなった。


選手たちの体調管理や道具管理にも厳しい。



小川おがわ 由奈ゆな


1年生/マネージャー


今回が初めての合同合宿。


少し天然な性格。


スイカ割りでは選手たち以上に盛り上がっていた。


美咲を先輩として慕っている。



田中先生


軟式野球部顧問


悠真たちの顧問。


厳しい指導者だが、選手たちが楽しむ時間も大切にしている。


今回のスイカ割りを企画した張本人。


理由はシンプル。


「夏だから」


というだけ。


しかし、本当は他校の選手たちと交流してほしいという狙いがある。


そして翌日――。


楽しいスイカ割りから一転。


合同合宿最大の本番、


強豪校との練習試合


が始まる。

第七話 夏の合同合宿・パート2――野球部なのにスイカ割り?


合同合宿二日目。


朝から俺たちは地獄のような練習をしていた。


五時起床。


ランニング。


ストレッチ。


キャッチボール。


守備練習。


打撃練習。


そして、昼食。


普通ならここで少し休める。


――はずだった。


「午後から何するんですか?」


俺が先生に聞く。


先生は何でもないように答えた。


「レクリエーションだ」


「……レクリエーション?」


「そうだ」


黒田が嫌な予感がすると言わんばかりの顔をする。


「まさか、また走るんですか?」


「違う」


「じゃあ筋トレ?」


「違う」


「練習試合?」


「それも違う」


先生はニヤッと笑った。


「スイカ割りだ」


「…………」


全員が固まった。


「え?」


俺が聞き返す。


「スイカ割り?」


「そう」


「野球部の合宿ですよね?」


「そうだ」


「……何で?」


先生は腕を組んだ。


「夏だから」


「理由が雑!」


周囲から笑い声が上がった。



午後二時。


俺たちは宿泊施設の広場に集まった。


そこには――。


巨大なスイカが十個ほど並んでいた。


「多くない?」


黒田が呟く。


「参加者百人以上だからね」


美咲先輩が答える。


「なるほど……」


俺はスイカを見る。


午前中は野球。


午後はスイカ割り。


なんだ、この合宿。


全国制覇を目指しているはずなのに。


「神谷くん」


美咲先輩が声をかける。


「はい?」


「楽しそうだね」


「……ちょっとだけ」


「ふふっ」


美咲先輩が笑う。


「私も楽しみ」


「先輩もやるんですか?」


「もちろん」


「マネージャーなのに?」


「マネージャーだって夏を楽しんでいいでしょ」


「それはそうですね」


俺も笑った。



まずは学校ごとにチームを作ることになった。


ところが――。


「学校対抗ではありません」


主催者が言った。


「今回も混合チームです」


「また混合!?」


黒田が叫ぶ。


どうやらこの合宿。


とにかく学校同士を混ぜたいらしい。


選手もマネージャーも関係ない。


完全にランダム。


俺のチームには――。


俺。


黒田。


神崎。


田村。


水野。


そして美咲先輩。


「……」


俺はメンバーを見た。


「強すぎません?」


神崎が笑う。


「何が?」


「投手、強打者、外野手、ソフトボール部、マネージャー……」


黒田が言う。


「バランスはいいな」


水野が笑う。


「スイカ割りにバランスも何もないでしょ」


「いや、ある」


黒田が真顔で答える。


「スイカとの戦いだからな」


「何それ」


みんなが笑った。



最初の競技。


目隠しをする。


その場で五回転。


そして、仲間の声だけを頼りにスイカを目指す。


「簡単そうですね」


俺が言った。


黒田が笑う。


「やってみろ」


「はい」


俺は目隠しをされた。


「右!」


「左!」


「前!」


「止まれ!」


「え?」


「もう少し右!」


「どっち!?」


声が飛び交う。


俺は完全に混乱した。


「神谷くん、左!」


美咲先輩の声が聞こえた。


俺はその声だけを頼りに進む。


「前!」


一歩。


「右!」


一歩。


「そのまま!」


俺は棒を構える。


「今!」


「えいっ!」


バンッ!


「……?」


周囲が静かになった。


俺は目隠しを外す。


スイカを見る。


「当たった?」


棒はスイカの横。


地面に突き刺さっていた。


「惜しい!」


「惜しくないだろ!」


黒田が笑う。


「全然違うぞ!」


「先輩!」


「方向音痴すぎる!」


美咲先輩が笑いながら近づく。


「神谷くん、面白かった」


「恥ずかしいです……」


「でも、ちゃんと声を聞いてたね」


「はい」


「私の声?」


「……はい」


美咲先輩が少し照れた。


黒田がそれを見逃さない。


「おーい」


「何ですか?」


「お前ら二人だけで何か始まってないか?」


「始まってません!」


また笑い声が起きた。



次は黒田。


目隠しをする。


五回転。


「準備できた?」


「いつでも」


「行け!」


「右!」


「左!」


「前!」


「違う!」


「どっちだよ!」


黒田も混乱する。


しかし――。


「そこ!」


黒田が振り下ろす。


バンッ!


スイカが割れた。


「おおおお!」


歓声。


「すげえ!」


黒田が目隠しを外す。


「……当たった?」


「ど真ん中!」


「マジか」


「さすが強打者!」


俺が叫ぶ。


黒田は笑った。


「バットならもっと飛ばしてるけどな」


「スイカを飛ばすな!」


水野が突っ込む。



次は神崎。


県大会優勝校のエース。


「これは投球より簡単だな」


神崎が自信満々に言った。


「じゃあお願いします」


目隠し。


五回転。


「行け!」


「右!」


「前!」


「左!」


「そのまま!」


神崎はゆっくり歩く。


「そこだ!」


バンッ!


一発。


「……」


全員が黙った。


「また一発?」


俺が呟く。


神崎は目隠しを外す。


「簡単じゃん」


黒田が言う。


「お前、野球だけじゃなくスイカ割りまで強いのかよ」


神崎が笑う。


「まあな」


「悔しい……」


俺は本気で悔しかった。


「スイカ割りで負けるとは……」


美咲先輩が笑う。


「神谷くん、勝負するところ違うよ」


「でも!」


「じゃあ次、私がやる」


「え?」


美咲先輩が棒を持った。


「頑張ってください!」


俺が声をかける。


「神谷くん、ちゃんと誘導してね」


「任せてください!」


目隠し。


五回転。


「よし……」


美咲先輩がふらふらする。


「大丈夫ですか?」


「ちょっと回りすぎた……」


「右です!」


「右?」


「はい!」


「前?」


「はい!」


「もう少し?」


「はい!」


美咲先輩が歩く。


俺は必死に声を出す。


「そこです!」


「今?」


「まだです!」


「どこ?」


「一歩前!」


美咲先輩が一歩進む。


「今!」


「えいっ!」


バンッ!


スイカが割れた。


「おお!」


俺が叫ぶ。


美咲先輩が目隠しを外す。


「当たった?」


「当たりました!」


「やった!」


美咲先輩が嬉しそうに笑う。


その笑顔を見た瞬間。


俺も嬉しくなった。


「先輩、すごいです!」


「神谷くんの誘導が良かったから」


「いや、先輩が上手かったです」


二人で笑う。


その瞬間――。


「はいはい」


黒田が割って入った。


「そこ、青春ストップ」


「何ですか!」


「次の競技行くぞ」


「はい……」


美咲先輩も笑った。



そして――。


最後のスイカ。


巨大だった。


主催者が言う。


「これは全員で割ってもらいます」


「全員?」


「そう」


参加者全員で力を合わせる。


目隠しをするのは代表者一人。


代表者は――。


なぜか俺になった。


「俺?」


「はい」


「なんで?」


黒田が肩を叩く。


「主人公だから」


「そんな理由!?」


全員が笑う。


目隠しをする。


棒を持つ。


そして――。


「スタート!」


「神谷、右!」


「もっと左!」


「前!」


「違う!」


「戻れ!」


「どっちだよ!」


声が飛び交う。


俺は混乱する。


でも、その中で――。


一つだけ、はっきり聞こえる声があった。


「悠真!」


美咲先輩。


俺はその声を聞く。


「そのまま!」


一歩。


「あと少し!」


一歩。


「今!」


俺は思い切り棒を振った。


バンッ!


巨大なスイカに亀裂が入る。


「おおおおお!」


「もう一回!」


俺はもう一度振った。


バキッ!


スイカが真っ二つに割れた。


「うおおおおお!」


大歓声。


目隠しを外す。


俺は驚いた。


「割れた……」


美咲先輩が走ってくる。


「やったね!」


「はい!」


ハイタッチ。


パチン!


俺たちは笑った。


その瞬間。


黒田が言った。


「お前ら、もう付き合えよ」


「ええ!?」


美咲先輩の顔が真っ赤になる。


「黒田くん!」


俺も顔が熱くなる。


「先輩、違いますから!」


「何が違うんだ?」


「全部です!」


「ほう」


黒田がニヤニヤする。


神崎まで笑っている。


「仲いいな」


「もういいです!」


俺は逃げるようにスイカのところへ向かった。



その後。


割ったスイカは全員で食べることになった。


「うまい!」


「甘い!」


「最高!」


暑い夏の日。


練習の疲れ。


汗だくの身体。


そこに冷たいスイカ。


最高だった。


俺はスイカを食べながら、美咲先輩を見る。


美咲先輩もこちらを見る。


目が合う。


二人とも笑った。


それだけだった。


でも――。


なぜか、それだけで嬉しかった。



夜。


食堂で夕食を食べていると、先生が突然言った。


「明日は練習試合だ」


全員が静かになる。


「今日遊んだ分、明日は本気でやれ」


「はい!」


俺は箸を握った。


楽しい時間は終わり。


明日は野球。


強豪校との試合。


そして――。


俺たちの本当の実力が試される。


美咲先輩が小さく言った。


「頑張ってね、悠真」


「はい」


俺は頷いた。


「絶対、打ちます」


「期待してる」


その言葉だけで、胸が熱くなった。


合同合宿。


野球だけじゃない。


仲間ができた。


ライバルができた。


そして――。


大切な人との距離も、少し近づいた。


だけど。


翌朝。


俺たちを待っていたのは――。


想像以上に厳しい試合だった。

後書き


――スイカ割り?


今回の第七話は、少し野球から離れて――。


「スイカ割り?」


でした。


「全国制覇を目指す野球小説なのに、なんでスイカ割り?」


そう思った方もいるかもしれません。


でも、夏の合宿だからこそ、こういうイベントがあってもいい。


ずっと練習、練習、練習では選手たちも疲れてしまいます。


合同合宿には、技術を高めるだけではなく、他校の選手と仲良くなるという目的もあります。


だからこそ、今回は学校も関係なく、選手もマネージャーも関係なく、みんなでスイカ割り。


普段は試合で敵になる選手たちが、一緒に笑う。


強豪校のエースも。


軟式野球部の選手も。


ソフトボール部の選手も。


マネージャーも。


全員が同じスイカを目指して声を出す。


こういう時間も、合同合宿の大切な一部なのかもしれません。


そして、今回一番大きかったのは――。


悠真と美咲の距離


二人の関係も、少しずつ変わってきました。


悠真が美咲の声を頼りにスイカを割る。


美咲が悠真に声をかける。


そして最後には二人でハイタッチ。


周囲から見れば、もうかなりいい雰囲気です。


黒田からも、


「お前ら、もう付き合えよ」


と言われてしまいました。


しかし――。


まだ二人は付き合っていません。


ここが大事です。


まだ「恋人」ではない。


でも、普通の先輩と後輩でもない。


少しずつ、お互いを特別な存在として意識し始めています。


果たして二人は、いつ「付き合う」という一歩を踏み出すのか。


そして、その恋が野球にどんな影響を与えるのか。


今後も少しずつ描いていきたいと思います。



そして、もう一つ。


今回のスイカ割りで、神崎隼人の実力が少しだけ見えました。


まさかの一発成功。


野球だけではなくスイカ割りまで強い。


「こいつ何でもできるのか?」


という感じですが、もちろん本番はスイカではありません。


野球です。


翌日は、いよいよ合同合宿の本格的な練習試合。


悠真たち軟式野球部が、強豪校の選手たちとグラウンドで対戦します。


今までの練習試合とは違います。


相手には県大会優勝校の選手もいる。


全国を目指す選手たちもいる。


そんな相手に、悠真がどこまで通用するのか。


左投げ左打ちの悠真。


中学時代は目立たなかった。


名門高校からの誘いもなかった。


硬式野球部ではなく、軟式野球部を選んだ。


でも――。


「軟式野球だっていいじゃないか」


その気持ちは変わらない。


むしろ、今回の合同合宿を通して、悠真は少しずつ確信し始めています。


軟式だから全国に行けない?


無名校だから勝てない?


そんなことはまだ分からない。


だからこそ、やってみる。


そして――。


全国制覇を目指す。


スイカ割りで笑った夏。


美咲との距離が近づいた夏。


強豪校の選手と仲間になった夏。


そのすべてが、これからの悠真たちの力になっていきます。


そして次回。


いよいよ――。


「夏の合同合宿・パート3――強豪校との練習試合」


です。


楽しかったスイカ割りから一転。


グラウンドでは、笑顔では済まされない真剣勝負が始まります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。