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グラウンドは

前書き


第二話「グラウンドはサッカー部とジャンケン?」です。


第一話では、主人公・神谷悠真が、名門高校ではなく軟式野球部のある高校を選び、全国制覇という大きな夢を抱いて野球を始めました。


そして第二話では、いよいよ高校生活と軟式野球部の日常が始まります。


……と言っても、最初から順調に練習できるわけではありません。


グラウンドはサッカー部や他の部活動と共有。


「今日はサッカー部」


「明日は陸上部」


「じゃあ野球部はどこで練習する?」


そんな状態です。


全国制覇を目指しているのに、まずは練習場所の確保から始まる。


これが、この野球部の現実です。


それでも選手たちは文句を言いながらも、限られた場所で練習します。


そして主人公・悠真は、外野守備で少しずつ自分の存在感を見せ始めます。


中学時代は目立たなかった。


特別な選手ではなかった。


それでも、努力すれば誰かが見てくれる。


そのことを悠真は少しずつ実感していきます。


さらに最後には、謎の男子が登場しました。


中学時代、県大会で四番を打っていた選手。


しかし、現在は野球部に所属していません。


なぜ彼は野球をやめたのか。


なぜ、今も野球ボールを握っているのか。


そして、彼は再び野球部に戻ってくるのか。


ここから、軟式野球部の物語は大きく動き始めます。


まだ部員も少ない。


まだ実力もない。


まだ誰にも期待されていない。


それでも――。


全国制覇という夢だけは、誰にも負けない。


次回、悠真たちの前に新たな選手が現れます。


軟式野球部は、さらに大きな一歩を踏み出します。

第二話 グラウンドはサッカー部とジャンケン?


「全国制覇を目指す」


その言葉を聞いた瞬間、俺は胸の奥が熱くなった。


でも――。


現実は、そんなに甘くなかった。


入部して三日目。


俺たちはグラウンドに集まっていた。


いや。


正確には、グラウンドの隅に立っていた。


中央ではサッカー部が練習している。


笛の音。


ボールを蹴る音。


「走れ!」


「もっと声出せ!」


サッカー部の声がグラウンドいっぱいに響いている。


俺たちはその横で、野球道具を抱えていた。


「……今日、野球できるんですか?」


俺が聞くと、三年の佐伯先輩が苦笑した。


「できると思う?」


「……できないんですか?」


「見ての通り」


「ですよね……」


俺はため息をついた。


昨日は体育館裏。


一昨日はグラウンドの端。


今日はサッカー部。


明日はどこだろう。


「野球部なのに、野球する場所がないってどういうことですか?」


一年の俺が思わず言うと、隣にいた二年の選手が笑った。


「それが俺たちの日常だよ」


「慣れてるんですか?」


「慣れたくはないけどな」


すると顧問の先生がやってきた。


「お前ら、集まれ」


全員が集まる。


先生は腕を組んで言った。


「今日のグラウンド使用は?」


佐伯先輩が答える。


「サッカー部です」


「明日は?」


「陸上部」


「明後日は?」


「……まだ未定です」


先生は頭を抱えた。


「野球部なのに、野球をする場所がないな」


部員たちが笑った。


俺も笑った。


すると先生が突然言った。


「よし」


「?」


「サッカー部とジャンケンしてこい」


「えええええ!?」


全員が叫んだ。


「冗談だ」


先生は笑った。


「そんなわけないだろ」


「先生、今ちょっと本気でしたよね?」


「気のせいだ」


そんな会話をしていると、サッカー部のキャプテンがこちらに歩いてきた。


「野球部、今日も端っこ使う?」


佐伯先輩が答える。


「いいのか?」


「まあ、こっちも端は使わないから」


「ありがとう」


「ただし――」


サッカー部のキャプテンが俺たちを見る。


「ボール飛ばすなよ」


「分かってるよ」


俺たちはグラウンドの端に移動した。


そして、ようやく練習が始まった。


キャッチボール。


内野ノック。


外野ノック。


バッティング。


限られた場所。


限られた時間。


それでも俺は楽しかった。


ボールを投げる。


打つ。


走る。


声を出す。


それだけで嬉しかった。


「神谷!」


突然、佐伯先輩が叫んだ。


「はい!」


「外野!」


「分かりました!」


俺はグラブを持って走った。


左投げ。


左打ち。


中学時代から守ってきた外野。


ノックが始まる。


「行くぞ!」


打球が飛んできた。


俺は一歩目を踏み出す。


右。


左。


さらに一歩。


打球は思ったより伸びていた。


「くっ!」


俺は走る。


そして――。


パシッ!


グラブにボールが収まった。


「ナイス!」


声が飛んできた。


俺は振り返った。


佐伯先輩が笑っている。


「今のいいぞ!」


「ありがとうございます!」


胸が熱くなった。


中学時代。


俺はあまり褒められなかった。


「普通の選手」


それが自分の評価だった。


でも、ここでは違う。


少なくとも俺のプレーを見てくれる人がいる。


俺はもっと上手くなりたいと思った。


もっと打ちたい。


もっと守りたい。


もっと速く走りたい。


そして――。


全国大会に行きたい。


練習が終わるころには、空がオレンジ色に染まっていた。


俺たちは道具を片付ける。


そのときだった。


「神谷くん」


声をかけてきたのは、マネージャーだった。


「はい?」


「今日の守備、すごかったね」


「いや、たまたまだよ」


「たまたまでも、あれだけ走れたらすごいよ」


彼女は笑った。


「全国制覇するんでしょ?」


「……うん」


「じゃあ、頑張らないとね」


「もちろん」


俺は笑った。


そのとき――。


遠くから一人の男子がこちらを見ていた。


制服姿。


野球部の練習には参加していない。


だが、手には野球ボールが握られている。


俺と目が合う。


彼は何も言わず、ボールを握り直した。


そして去っていった。


「……誰だ?」


俺が呟くと、佐伯先輩の表情が変わった。


「……あいつか」


「知ってるんですか?」


「ああ」


佐伯先輩は少し黙った。


「去年まで、この学校の野球部にいた」


「じゃあ、野球部の先輩?」


「違う」


「え?」


佐伯先輩は遠ざかっていく背中を見つめた。


「中学時代、県大会で四番を打ってた選手だ」


俺は驚いた。


「そんな選手が、どうして?」


佐伯先輩は答えなかった。


ただ一言。


「……あいつが戻ってくれば、俺たちは変わるかもしれない」


そう言った。


俺は、その背中を見つめた。


まだ知らなかった。


彼との出会いが、俺たちのチームを大きく変えることを。


そして――。


全国制覇という夢に向かうための、最初の大きな壁になることを。


俺たちの戦いは、まだ始まったばかりだった。

後書き


第二話を最後まで読んでいただき、ありがとうございました。


今回は、この作品の軟式野球部がどんなチームなのかを少し掘り下げました。


強豪校なら、野球部専用のグラウンドがあり、毎日思う存分練習できる。


そんな環境を想像する人も多いと思います。


しかし、このチームには専用グラウンドがありません。


サッカー部。


陸上部。


その他の部活動。


いろいろな部活と場所を譲り合いながら練習しています。


「全国制覇を目指す」と言っているのに、まずはグラウンドの確保から。


ちょっと笑ってしまうような状況ですが、これも彼らの大切な日常です。


環境が整っていないから弱い。


設備がないから勝てない。


部員が少ないから全国には行けない。


本当にそうなのか。


この物語では、そこにも挑戦していきたいと思っています。


主人公・神谷悠真も、まだまだ普通の選手です。


中学時代は目立たなかった。


硬式経験もない。


名門校から評価された選手でもない。


それでも、左投げ左打ちという自分の武器を磨いていきます。


そして今回、外野守備で見せた一つのプレー。


ほんの一つのファインプレーかもしれません。


しかし、悠真にとっては大きな一歩です。


「自分にもできるかもしれない」


そう思える瞬間が、選手を成長させていく。


これから悠真がどんな選手になっていくのか。


そこにも注目していただければと思います。


そして最後に登場した謎の男子。


彼は、この物語の重要人物になります。


中学時代に県大会で四番を打った実力者。


そんな選手が、なぜ高校で野球をやめているのか。


何があったのか。


そして、もう一度グラウンドに戻ることがあるのか。


彼の存在が、弱小だった軟式野球部を大きく変えていくことになります。


もちろん、簡単には戻ってきません。


悠真たちが全国制覇を目指すなら、それだけの覚悟が必要になります。


「全国制覇」


今はまだ、夢を口にしているだけ。


でも、夢は口にしなければ始まりません。


小さなグラウンド。


少ない部員。


限られた練習時間。


そんな環境から、本当に全国まで行けるのか。


その答えを、彼ら自身が証明していきます。


軟式野球部だっていいじゃないか。


強豪校じゃなくてもいい。


無名校でもいい。


最初は弱くてもいい。


大切なのは――。


諦めないこと。


次の一球を投げること。


次の一球を打つこと。


そして、仲間と一緒に走り続けること。


次回から、いよいよチームの運命を変える人物が動き始めます。


全国制覇への道は、まだ始まったばかりです。

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