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第二話 七瀬怪異譚 短編集「かくれんぼの縁」

プロローグ


「見ーつけた」


 健太は茉里に簡単に見つけられてしまった。


「ケンちゃん。最初に見つけたから次の鬼ね」


「また僕が一番目かよ」


「ケンちゃんが隠れるとこ分かりやすいから」


 茉里は笑いながら言った。



 物心つく前から、二人はずっと一緒だった。お互いにひとり親家庭ということもあって、保育園の頃から毎日のように互いの家を行き来してきた。


小学五年生になって、普段はそれぞれ同性の友達と遊ぶことが増えても、一番の友達と言えばお互いになる。



「マリが隠れるところだって直ぐわかるよ。」


「じゃあ、次一番に見つけてみて」


 二人は別に戯れあっているつもりは無くても、周りから見たらそう見えてしまうくらい仲が良かった。


「お前達、ホント仲良しだね」


「二人は結婚の約束してるんだぜ」


 タクとシュウが揶揄ってくる。いつもの決まりみたいな流れだ。


「別に仲良く無いよ」


 顔を真っ赤にして否定する健太。


「しかし、次はまたケンが鬼かよ」


「もう日暮れも近いし次が最後ね」



「一、二、三……」


 数えながら、健太はなんとなく考えていた。茉里がどこに隠れるのか、何となくだけどわかる。前は石畳のところに隠れていたから、次は神社の裏だろう。


「……百。もういいかーい」


「もういいよー」



 このまま、茉里を一番に見つけたら、きっとまた揶揄われる。茉里は最後にしよう。


「ユリちゃん、見ーつけた」


 健太は茉里を最後に残し、他の友達を探し始めた。

 日がどんどん傾いていく。


 春が終わり初夏に差し掛かった五月。夕日が赤くなって世界を包む。


「日が暮れかかって来た」


 健太は焦り始めた。茉里を最後にしようと決めたものの、他の友達が見つからない。


 ユリ、シュウ、ミカと見つけた。後は、タクとシンを見つければ茉里を見つけに行ける。


 でも……。夕日が出て来て焦っているのか、なかなか見つからない。


「どうしよう」


 先に茉里を探しに行くべきか、タクとシンを先にするべきか。神社の裏の方に三人ともいるんじゃないか。


 考えても、焦りが先走って考えが纏まらない。



 タクとシンを見つけた時にはもう日暮れ間近だった。


「よし後はマリだけだ」


 茉里のいる場所は最初から見当が付いている。


 後は見つけに行くだけ。


 そのはずだった……。


 神社の裏には茉里はいなかった。


「おかしな」健太は再び焦り始めた。「探して無いのはこの場所だけのはず」


 それなのに茉里はどこにもいない。


「ケン。もう終わりにしよーよ」


「マリちゃーん。もういいよー。出てきてー」


 暗くなって来て、かくれんぼは終わりにする事になった。



 どれだけ呼んでも、皆んなで探しても茉里は見つからなかった。


「誰か、マリちゃんどこに隠れたか知らない?」


「私、見てない」


「僕も知らない」


 誰も茉里の隠れた場所はわからなかった。


 日が暮れた。


 完全に夜になっても茉里は出てこなかった。


「どうしよう」


「もう家に帰ったんじゃない」


 健太にはわかっていた。


「それはないよ。マリは絶対に何も言わずに帰る事はしない」



 暗くなってからも、いくら探しても茉里は見つからなかった。


 茉里の家にも行ってみた。帰って来てはなかった。


 警察が来て、大人数で探しても茉里は見つからなかった。


 泣いている茉里の母親を見ると、健太は胸が痛んだ。


 その日、茉里は帰って来なかった。



 夜が明けても、茉里は見つからなかった。


 警察には色々聞かれた、親にも聞かれた。先生にも聞かれた。知らない大人にも沢山の人に聞かれた。


 学校に行っても授業は上の空だった。給食も味がしない。その日の一日どう過ごしたか覚えていない。


「ケンちょっといいか」


 放課後、ボーとしてる健太にタクやシュウ、シン、昨日かくれんぼをしたメンバーが声をかけて来た。


「俺たちで何とかしないと」


「うん……」


 頷く健太だが声は小さかった。


 ユリとミカも集まって来た。


「昨日の神社に行ってみない?」


 神社に行くと、大勢の大人たちがいて健太達、子供は入れて貰えなかった。



 

 五月の半ばを過ぎたというのに、その日は妙に肌寒かった。


「今日さ、完全に服装間違えたよね」


 帰り支度をしながらみなみが横で待っている美咲に言う。


「寒いねー。昨日より八度も低いんだって」


「制服の中にもう一枚着てくれば良かった。」


 昨日まではもう初夏になろうとしてると思ってたほど暑かった。一日で気温がガラリと変わった。


「帰ろうか」



 校門を歩いていると、目の端に映る影があった。


 淡い色をした、煙のような、綿あめのような、ふわふわした物が漂っていた。


 見えるようになって数週間、みなみは幽世の存在にも色んなタイプがいる事を知った。見え始めた当初は、新しいものを見る度に、ハザマ洋品店に行き、七瀬に聞きにいった。


「何か見えるの?」


 みなみの視線が動いた事を察して美咲が聞いてきた。


 幽世の存在が見えるようになった事を、当初は美咲に隠していたが、慣れて来た時に全て話した。


 打ち明けた時は、驚くより表情が曇っていった。見えるだけでは特に害は無いこと。新たな世界が見れるようになった事は悪くない。そう伝えると曇った表情は戻っていった。


「うん。ふわふわ綿あめみたいのが浮かんでる」


「綿あめ?へ〜。害は無いんだよね?」


「悪意は感じないよ。七瀬さんによると妖はこちら側から干渉しなければ特に害は無いって」


 そう。こちら側から変に干渉しなければだ。前回、美咲が行ったおまじないで変に干渉してしまった。何気ない行いが幽世の世界に干渉してしまう事があるらしい。



 公園の横を歩いている時、みなみはブランコのところにいる子供達が何か気になった。何だかわからないが、靄がかかっているように見える。気のせいだろうか。


「どうしたの?」美咲も公園に視線を向ける「あれ。タクちゃん」


「知り合い?」


「うん。近所の子」


 公園のブランコに集まっている子供達。でも様子が変だ。ブランコで遊んでいるわけでもない。全員が暗い表情を浮かべている。


「何だろ」


「様子がおかしいね」



 子供達に近づいていくみなみ達に声が聞こえてくる。


「マリのこと、警察じゃ無理かもしれない」


「どういうこと」


「あの神社、昔から変な噂があるんだって。子供が消える話。神隠しっていうか。前にも同じことがあったって」


「……」


「こういうの、専門の人がいるって聞いたことがある。普通じゃない行方不明を解決する人」


「どこにいるんだよそんな人」



「タクちゃん、どうしたの?」


 美咲が知り合いの子供に声をかけた。


「美咲姉ちゃん。」


「誰?」


 子供達が警戒する表情をする。


「相談してみようか?」みなみが言う「ごめん。話聞こえちゃって」


「相談?誰に?」


「神隠しって聞こえて」みなみは続ける「そういうの詳しい人を知ってる。話を聞いて貰うだけでも、どう?」


 子供達は顔見合わせた。


「怪しくない……」


「でも他にどうすればいいんだよ」


「お願いしてみようよ。他にどうすればいいかわからないし」


「そうだね。僕等だけじゃどうしようもない」


「お願いします。紹介してください」


 お願いする事を決めた少年。この少年に淡い靄がかかって見える。目を凝らさないと見えないくらいの靄。



 霞がかかっている少年は健太。美咲の知り合いタク。他男の子はシュウ、シン。女の子はユリとミカと言うらしい。




 向かうは商店街の中にある古い衣料店。


 美咲が行ったおまじないで取り憑かれた妖を祓ってくれた人物がいるハザマ洋品店。


 ハザマ洋品店の看板を見たシュウ。


「ここ体操服を買いに来た事ある。」


「僕も」次々と言う。「私も」


 学校用品を扱っているハザマ洋品店は地元では馴染みの店だ。


「ここの叔母さん。話好きで地元の話題が集まって来るって聞いた事がある」


 ユリが言う。


「そうなの?」


 健太が眉根を寄せる。


 

 店の中に入るとみなみは店主に声をかけた。


「七瀬さんいますか?」


 カウンターで店主は電話で話をしていた。


「あら、みなみちゃん。今日は大勢ね」


「ちょっと、事情があって。」


「待ってね。今呼ぶから」


 店主は電話を置き立ち上がった。奥に向かって呼ぶ。


「七瀬ー」


 返事はなかった。


「七瀬ーたらっ」


「聞こえてるよ」


 奥から出て来たのは、首から勾玉をぶら下げている髪の男性だった。


 年齢はよくわからない。若く見えるけど、どこか落ち着きすぎていて、歳をとっているようにも思える。


「七瀬さん。この子達の話を聞いてあげてください。」


 みなみは七瀬に頭を下げつつ、子供達を促す。


 カウンターの椅子にそれぞれ座り、店主がお茶を出した。


「詳しく話して」


 顔を見合わせていた子供達の中から、健太が前に出て来て説明した。


「僕が説明します」


 神社でかくれんぼをした事。茉里を見つけられず、暗くなってたので終わろうと呼んだけど返事が無かった事。みんなで探しても見つからなかった事。


 説明をする健太は辿々しく、話も途切れ途切れになったが必死に伝えようとしていた。


 最後に健太は何かを言おうとしたが口を噤んだ。七瀬はその事について何も追求しなかった。


 みなみは健太に霞がかかっている事を改めて確認し、七瀬を見た。七瀬も気付いているはずだ。


「黄昏時、昼と夜の境界か」


 七瀬がポツリと言った。


「消えた理由に心辺りはあるか?」


 健太が息を呑む。


「僕、マリを見つけるのをやめたんです。隠れてる場所わかってたけど、最後にしようと後回しにした」健太は震える声で続ける。「そうしたら、どこにもいなくなっていて……」


「かくれんぼは、鬼が『見つけた』と言って相手を現世に引き戻す儀式。見つけて貰えなかったら隠れたままだ」


 七瀬が静かにいう。


「君が『見つけない』と決めた瞬間、彼女はこの世界にとって『いないもの』として確定しかけた」


「……どういうことですか」


「隠れるという行為は、一時的に幽世に身を寄せることになる。見つけたという宣言が、幽世から現世への縁を繋ぎ直す。お前がそれをしなかった。黄昏時、現世と幽世の隙間が開く時間に、縁が切れかかった。黄昏時、時間も悪かった。いくつもの要素が重なって幽世の扉が開いてしまった」


「マリ見つけられますか?」


 健太が目に涙を貯めて言った。


「神社に急ごう」


「え?」


「黄昏時に動かないといけない。時間が経つほど隙間が閉じる」


 七瀬は立ち上がった。


「今、神社は警察がいて入れないんです」


 七瀬は、考える素振りを見せ、みなみに向かって行った。


「みなみ。手伝ってくれ。それとかくれんぼの鬼をした君。他は来なくて良い」


「私?」


「必要になる」



 心配そうに見送る、美咲と子供達を残して神社に向かう。




 神社にはまだ警察がいた。


 七瀬はみなみと健太を残し警察に話をしに行く。


 しばらくすると、来いと手を振って来た。


 神社に入り、七瀬は今度は神主の元に向かった。


 社の前で待っている間。


「大丈夫かな……マリ見つかるかな」


 不安そうに言う健太にみなみは。


「大丈夫。七瀬さんに任せればきっと見つかる」


 力強く答えた。


 健太は少し安心したようだが、その表情にはまだ不安が色濃く残っていた。


 七瀬が戻って来た。


「黄昏時にはまだ時間がある。しばらく待とう」


「あの…」


 声をかけるみなみを遮って七瀬が言う。


「神主とは話を付けた。警察も今日は、もうすぐ引き上げるそうだ」


 みなみは、七瀬が神主とどんな会話をしたのか気になった。何を言って納得させたのだろう。今からどうやって茉里ちゃんを助けるのだろう。そして私が必要ってどうしてなんだろう。


「私は、何をすれば良いんですか?」


「俺は幽世の扉を開く。みなみには道標になって貰いたい。」


「どうするんですか?」


「いずれわかる」


 七瀬はそう言うと、持って来ていた文庫本を読み始めた。それ以上は何も聞けなかった。やり方は教えて貰えなかった。道標。どうやればいいのだろうか。



 健太は体育座りで膝を抱えていた。


「大丈夫。七瀬さんに任せればきっと帰ってくる」


 みなみは自分の不安を打ち消すように言う。


「僕とマリは赤ちゃんの頃から一緒で、お互いが片親で、よく互いの家に預けられてたんだ」


 健太は膝を抱える手にギュッと力を入れた。


「でも、大きくなるにつれて余り一緒に遊ばなくなってて……。昨日は久しぶりに一緒に遊んだ。でもみんなから揶揄われて。マリを見つけるのを躊躇った」


 みなみは黙って聞いていた。七瀬は表情を変えず文庫本を読んでいた。


「ホントは直ぐに見つけたかった。隠れた場所はわかってたから」



 夕焼けが境内を染めていた。


 黄昏時。昼と夜の境界線。逢魔が時「魔に逢う時間」ともいう。日が沈んで夜になって来ると、どこか寂しさが漂う不思議な時間。春の夕日はどこか朧げで柔らかな光を降り注いでくれる。


「そろそろ時間だ」


 七瀬が文庫本を閉じた。


「彼女が隠れていた場所に案内しろ。わかるよな」


「うん」健太は返事をして神社の裏に向かう「こっち」


 七瀬と共にみなみは健太に付いて行く。


「この辺りだと思う」



 七瀬は胸に下げている勾玉を外し、勾玉を握り短い言葉を吐いた。


 すると勾玉が淡い光を帯びる。みなみに向かって問いかけた。


「見えるか」


「うん」


「今から幽世の扉を開く。幽世側からは顕界は見えない。迷わず戻れるように勾玉で照らしてくれ。」


 勾玉をみなみに渡し、健太の方を向く。


「健太。君がマリを見つけるんだ。」


「僕が……?」


「かくれんぼの切れた縁を、君が結び直すんだ。君にしかできない」


「うん!」


 不安そうな顔をしながらも、強く頷く。



 七瀬は青銅でできた小さな鈴を取り出し、鳴らした。


 リーン。リーン。リーン。


 鈴の音と共に呪文を唱えた。リズミカルな音の羅列、素朴かつ力強い響き。なのにどこか懐かしさのある不思議な言葉だ。


 七瀬の周りに波紋が生じ、渦巻き文様と、弥生調の尖った三角の連続したギザギザの幾何学模様が空間に鮮やかに浮かび上がった。


 夕焼けの光を浴びた草がざわめきだした。


 目の前の空間が歪み始めた。ここでは無い、どこか別の世界に繋がったような気がする。


 夕焼けとは違う。淡い黒色の世界が広がっていた。


真夜中の闇とは違う。目を凝らせば景色は見えるくらい。でも、少し気を抜けば、すぐに境界を見失ってしまいそうだった。


 七瀬の発する不思議な言葉に反応するように、勾玉の光が強くなって来た。


 みなみは慌てて光を歪んだ空間に向けた。灯台の光のように一筋の光になって光の道が出来た。


 光の中に小さな人影が浮かび上がってきた。


「健太くん」


 みなみは健太に合図した。


「え……どこ?マリどこにいるんですか?」


「光の先」


「光?夕日の事?」


 健太には勾玉の光が見えていないようだった。


 みなみは焦った。目の前の小さな影が徐々に遠ざかっていくように感じた。


 七瀬が短く言う。


「だからみなみが必要だ。道標になれ」


「健太くん。もっと右。そこの先」


「え?え?」


 健太は焦りだした。


 微かに見えていた茉里の姿が消えた。



 七瀬が再び銅鈴を鳴らした。鈴の音に呼応するように勾玉の光が増す。


 茉里の姿が再び浮かび上がった。


「健太くん。前っ」


 みなみは必死に叫んだ。健太には何も見えていないはずだった。けれど、彼は迷わずに一歩を踏み出し、みなみが示した方向を真っ直ぐに見据えた。


「マリ」健太が大きな声で、ハッキリと名前を呼び叫ぶ「見つけた!」


 すると、小さな人影が徐々に少女の姿になった。


「ケンちゃん?」


「マリ。こっちだ。こっち来て」


 健太がマリを呼び込んだ。


 茉里は、ぼんやりした顔で歩いて来た。髪が乱れていたが、怪我はない。目をこすって、健太を見た。


 健太が走り寄って茉里の手を掴む。


 勾玉の光が徐々に消えていった。七瀬の紋様も波紋となってほどけた。空間の歪みも閉じていく。次第に夕日の真っ赤な光を浴びた草むらに戻っていった。



 茉里は、まだぼんやり顔をして立っていた。


「私……」


「どこにいたんだよ!」


「かくれんぼで隠れてて、気が付いたら知らない場所にいた。きれいな場所で、ずっとひとり。でも不思議と怖くはなかったの」七瀬やみなみを見ながら続ける「不思議な鈴の音が聞こえて光が見えた。寄っていったらケンちゃんが見つけてくれた」


 茉里は辺りを見回して、首を傾げた。


「あの人達は?」


「助けてくれた人」


「日が暮れる。帰ろう」


 七瀬の表情は変わらないが、とても優しい声で言った。



 

 境内に戻ると神主が待っていた。


 鳥居のところにはハザマ洋品店で別れた、美咲や子供達が待っていた。


 健太と茉里が、手を繋いで歩いているのをみると寄ってきた。


「おーい」


「マリちゃん」


「見つかったんだね」


 健太は皆が集まってくるのに気が付いたが、茉里と繋いだ手は離さなかった。


「みんな。来てたんだ」


 子供達の誰も揶揄う事は無かった。


「もう。心配したよ」


「良かった……」


 みんなの表情を見た茉里は。


「心配かけてごめんね」


 子供達の喜ぶ姿を見て、みなみは心の底から安堵した。ホントに良かった。


 日が沈む直前の夕日が、最後の力を振り絞るように子供達の影を長く伸ばしていた。


 

エピローグ


 みなみはハザマ洋品店にいた。


「七瀬さんいますかっ」


 みなみは入るなり大声で七瀬を呼んだ。


「みなみちゃん。いらっしゃい。今日も元気ね」


 店主がにこにこしながら迎える。七瀬が奥から出てくのを待ってみなみは言う。


「もっと幽世の事を知りたいです。七瀬さんの元に通っても良いですか?」


「駄目だ。余り深く関わらない方がいい」


「私にも、幽世の存在が見えるんです。昨日も健太くんに靄がかかって見えました」みなみは段々声が小さくなっていった。意を決して再び声を張り上げ続けた「それで異変に気付いたんです。知ったからには放っておけません」


七瀬は目を見て、穏やかな優しい口調で話す。


「自分から関わりに行く事はない。何かに気付いたら俺に言ってくれれば良い」


「……」


 二人のやり取りを聞いていた店主がにこやかに言った。


「みなみちゃん、ここでバイトしない?」

「バイト?」


「衣料店の手伝い、ちょうど人手が足りなかったの」


「はい。バイトさせて下さい」


 店主はにこにこした顔のまま、七瀬を見た、

「好きにしろ」


 店主がみなみを見てウインクした。みなみは笑顔で答えた。

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