『碧の章』第11話:入領審査
「いやまさか、遺物の持ち込みって、あそこまで時間かかるとは思わなかったんだ。」
「まぁ、ほぼ半日かかったもんね。」
マギニアの門に辿りついたのが、昼過ぎだったが、今はもう夜である。
しかも、まだ調査は完全に終わっておらず、ひとまず個人証明書を作成し、明日改めて学園「イメラルディオ」で検査を受けることとなったのだ。
「入管から宿の手配はしてもらってるってことだし、ひとまずリオを案内するよ。」
「ん、よろしくお願いします。」
「はいはーい。」
クーネアに連れられて、入管から指定されたホテルへと案内される。フロントで話をして、クーネアは部屋の鍵を受け取った。
「ここ、この街でかなり評価の高いお勧めなの。」
すでにホテルの方に話は通っていたようで、話はスムーズに進んだようだ。中々に値段が高いらしく、クーネアは初めて訪れたという。
「じゃあ、クーネアもここに泊まれて結構嬉しい感じ?」
「え?」
「……え?」
「まさか。お客様はリオだけだからね。私はこのあと学園寮に戻るよ。」
ちょっと泊まってみたかったけどね、とクーネアは少しだけ苦そうな笑い。一緒に眠る、そんなイベントかと思ったのだけれど。
「じゃあ、一緒にこの部屋に泊まっていく?」
そう言えぬまま部屋までの案内を終わて帰っていたクーネアの背をみながら、利緒は心の中で少しだけ泣いた。
◇
利緒の訪れはマギニアにとって、大事であり、入管は大きな騒ぎとなった。遺跡から発見された生体遺物は希少価値が高く、持ち込みの際には厳重な検査が必要となったのだ。
クーネアは、遺跡内でのやりとりを始め、利緒と出会ってからの一連の内容について事細かに報告をした。「魂写す翡翠の眼」による解析ができなかったことや、現在は失われた魔法を使うこと、扱う魔法の効果が著しく高いことなど、多くの特異性が認められより一層の注目を浴びることとなってしまった。
怪しげな機器を通して、様々な検証が行われた。
専属の魔道鑑定士も要請され、「魂写す翡翠の眼」「渦巻く真理の泉」による解析が行われた。カードゲームにおいて、「魂写す翡翠の眼」は相手の手札を確認する効果、「渦巻く真理の泉」はカードを3枚引く効果であるが、この世界では対象の状態を確認することに使われるようだ。
これらの魔法による鑑定では、クーネアの報告の通り利緒について結果が出ずに終わる。過去の遺物について、魔法を弾く効果を持ったものがあり、同等の性質を持っているものと判断された。
魔法の効果を無効化する魔法も存在するが、利緒自体そのような魔法を使った覚えはない。「鋼砕く狂鬼の纏」を始めとする人に影響を与える魔法は、数値として表れる。このため、利緒から検出された魔力量により、解析向こうの魔法の使用はマギニア側から否定されている。
また、魔法量の計測について、利緒の新しい特異性が新たになった。
マギニアでは、魔法の威力に応じて消費量が決まる。
魔法の仕組みにより魔力量の最低値や対効果の効率が変わるものの、例えば破壊力のみを求めて一発の「影貫く蛇の弓弩」に魔力を全て込める、といった運用が可能である。魔力の回復については、休息することで回復し、睡眠が最も効率が良いとされる。そして、上限は生まれつきの優劣はあるが、その後のトレーニングにより上限を増やしていくことが可能だ。
対して、利緒は魔法を回数制で捉えており、魔法の効果は一定である。
検査では、「影貫く蛇の弓弩」を4回使用し魔法が使えなくなった。その魔法に込められた魔力量は、最低限の威力に対し、およそ200倍程度であると計測された。4発はいずれもほとんど同等の値を取っており、利緒が意識して威力を変更することはできなかった。
遺跡で魔法が使えなくなったことも報告されており、ここまでに4発分しか回復出来ていないものと見られ、後日改めて最大魔力量の測定を行うこととなった。
一般的に、魔力を使い切った場合、魔力欠乏症という症状が現れる。
主に意識の混濁や、魔法が不安定になる、また免疫力が低下するなど不調が確認される。そのため、利緒は魔力を使い切っておらず、魔法が使えなくなるという状態は魔力欠乏症に対する無意識のストッパーであると想定された。
生体的な検査では、いずれも人間と同等の反応を示しているが、過去の生体遺物にも人間とほぼ変わらない機能を持ったものがあった。そして、他とあまりに異なる魔導的な計測結果は、明らかに異常である。
ひとまず利緒が協力的であったこと、クーネアが身元保証人となることで、マギニアへの仮入領が許可された。利緒の生体遺物としての検証は翌日へと持ち越されたのだった。
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