『碧の章』第10話:ようこそマギニアへ
学術都市「マギニア」は、ミラリオの南に位置し、多くの偉大なる魔法使いを排出してきた大型都市である。学園「イメラルディオ」を中心に、多くの才能ある魔法使いが集まり発展してきた歴史ある街だ。
人の増加に従って乱雑に増築を繰り返された街並みは自然の迷路となっており、煉瓦や鉄で出来た家々と合わさって「迷宮都市」と呼ばれることもある。
そのためマギニアでは、自分の位置を把握するために、霊晶地図:製品名「マギア」は生活必需品と言われている。マギニアに入領する際に、通行量の支払い、身分登録をすれば無料で貸し出される。(出領する際に回収される。)
不法入領した者は、2度と出ることが出来ない、というジョークがある。確かに、中央から離れるると場所によっては治安の悪い地域はあり、違法建築により定期的に地形の変わる場所もあるが、少々特殊なケースといえよう。
都市の運営は、評議会により行われている。これは、納税者の中から4年単位の任期で選出された代表によって運営されている。評議会議員は名誉職に近く、議員報酬は過去4年の「マギニア」の平均給与と定められている。
◇
アグロギアを見つけたクーネアと利緒は、遺跡を離れ、マギニアへと向かって歩いていた。
結局《巨壁》から見つかった以外にアグロギアを発見することは出来なかった。
より奥へと探索を続けるか、という話もあったが、クーネアは一応の当初の目的が叶ったこともあり、戻ることを選んだ。
利緒としても、こんな遺跡に取り残される方が辛いため、二つ返事で着いていくことを決めた。
「……これ読めない。」
「んー、読めないか。遺跡からみつかった遺物って、ミラリオの文字を読めるのが多いんだけど、時々そうじゃないのもあるらしいの。なんでも古い型のが特にそういう傾向が強いらしいけど、リオ見たいにほとんど人間と変わらないのって珍しいんだ。」
「へー、そうなんだ。」
リオの発見は、ちょっとした事件よ、とキラキラした目で話しているクーネアに、利緒は空返事をするばかりだった。
(……確か、カードのイラストにこんな記号みたいなのあったな)
いま利緒が読もうとしている冊子は、マギニア評議会で発行している観光用のパンフレットらしい。内容について軽くクーネアに少し読んでもらったが、それほど面白いものでもなく、移動しながら見て見てよと冊子ごと渡された。
パラパラとめくって見たのだが、内容がさっぱりわからなかった。
碧の関連カードは、魔法がテーマになっているため、魔道書のようなものがイラストに登場することがあった。それらの文字は、適当な記号が書かれていると思っていたのだが、実際に扱われる言語のようだ。
(言葉が通じるなら、文字も読めればいいのに。)
地味な不便さがあるが、このモヤモヤは何処へぶつけていいか分からない利緒。そもそも、ここにどうしているのかもわからないまま、森を歩いている現状がある。もはやどこから夢で、どこまで現実なのか、とリオの頭の中には疑問符がいっぱい並んでいた。
「リオ、あれ。あれ見て。」
「あれ?」
色々と考えていた利緒の肩を、クーネアが叩いた。クーネアが指す先は、森がひらけて、固められた道があった。
「道があるね。」
「いえ、そうではなく。あれです、そこ、上にある青い屋根。あれ竜車の駅なんですよ。」
「竜車?」
竜車とは、定期的にマギニア周辺の道を回っている移動手段である。一定の金額で、マギニア発、マギニア着まで乗ることができる便利な乗り物なのだとクーネアは言う。
「この辺りは、遺跡もあるから、それなりの間隔で動いてるよ。」
これもマギニア評議会が運営を行なっており、1時間に1度、竜車が走ってくるらしい。次の竜車は、だいたい15分くらいだと、時刻表を見て答えるクーネア。利緒はこの世界が24時間60分制でありそうだと言うことを知った。
それから、20分ほど経って、竜車がやって来る。どうもこの世界は日本ほど正確な時間で運用されていないようだった。
クーネアが手を振って、竜車を止める。利緒にその場で待っているよう、言って運転手と何やらはし始めた。しばらく話した後、お金を手渡して、利緒の方へと戻ってきた。
「リオは遺物だから無料でいいか聞いてきたんだけど、嘘言うなって怒られちゃった。」
本当なんだけどなー、と何やら納得がいっていないようだったが、どこかで踏ん切りを付けたのだろう、とにかく乗ろうと利緒の手を引っ張った。
利緒は手を引かれながら、自分、人間なんですよ、と何度目かになるか分からない訂正を、いままでどおり心の中で呟いた。
◇
他に客が増えることなく、2人貸切で竜車に揺られているうち、大分時間が経った頃、石壁が目に入ってきた。森が開け、整備された草原が広がっており、灰色のそれ何にも遮られることなく、何処まで続いていた。遠くからは石壁であったが、近づくにつれ、見上げねばならないほどの相当の高さであることがわかった。
「あれは、マギニアを囲っている領壁、凄いよね。初めて見た人はみんな驚くみたい。遺跡の技術を使っているんだけど、リオも驚くってことは相当凄いってことだね。」
クーネアは、どこか自慢げだった。更にこの壁は、内部の拡張に合わせて、魔法で移動したりする、と利緒は後から知った。
あまりのスケールに驚く利緒をそのままに、竜車は橋を渡っていった。
門の下をくぐってから、クーネアは利緒にと顔を向ける。クーネアの動きに合わせるように、利緒もクーネアの方を向いた。2人の目があってから、クーネアは笑って歓迎の言葉を口にした。
「リオ、ようこそマギニアへ。」
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2017/08/12 学園名が誤っていたため修正。
2017/09/04 レイアウトの調整




