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——パリーンッと、結界が壊れた後の祖国の姉たち。
「きゃあああ」
セシールはヴァルモント伯爵家の一階にいました。
外壁から入ってきた魔物に買ったばかりの嫁入り道具をめちゃくちゃに壊されていました。
「どうなっているの!? 魔物の侵入を許すなんて!! 外壁と魔法使い、警備隊は何をしているの!?」
セシールはこの国を守っていたのが妹のエミリアの結界だったことを知りません。
結界を設計した大魔道士が人々に知らせないように設計したからです。
人々に感謝されて、転生者としてのズレた見方が失われたら、結界の仕組みが壊れてしまいます。
でも、セシールは知っていてもエミリアを嫌いだったでしょう。
セシールにとっては、自分が一番弱く守られる存在でなくてはならないから、もっと弱い妹なんて目障りなだけなのです。
しかも、実際には結界を作ってこの国を守っているなんて知られたら、きっと怒り狂っていたでしょう。
不気味な離宮に住むひいお婆様と仲が良く、王子様のリヒャルトと仲がいいだけでも耐えられなかったのです。
いつの間にかエミリアがリヒャルトから距離を置かれるようになった時には胸がスーッとしました。
——そして、まさかリヒャルト私を選んで婚約するなんて!!
公爵子息と結婚した姉のマルグリッドにも勝てるなんて!
一緒に買い物をして、ちょっとした品を見つけるたびに『王子様の妃には地味かしら?』と聞いた時のマルグリッドの悔しそうな顔ったらなかったわ!
ちょっとやりすぎたかもしれないから、エミリアがみすぼらし旅の男なんかにわずかな持参金ごと拾われているのが見れて良かったわ。
エミリアがこれからどんな惨めな生活をするのかの話をする時には、マルグリッドとはとても気が合うんですもの——。
その嫁入り道具がめちゃくちゃになっていました。
セシールの方にも魔物の手が伸びた時に、警備隊がやってきて戦闘になりました。
セシールはその隙に屋敷の上階に逃げました。
ここまでは狭い階段もあって、魔物は登ってこれません。
セシールが魔物の難を逃れ、ホっと一時ついた時に、セシールとリヒャルトが結婚式をする予定だった教会が崩落しました。
土煙を上げる教会を見ながらセシールは悲鳴を上げました。
けれど、セシールはまだ知りません。
婚約者の王子様のリヒャルトが、すでに国からいなくなっていることを——。
長女のマルグリッドは妹が結婚式を挙げる予定の教会が崩落したのを見ました。
公爵家からは教会がよく見えて、妹が王子様と結婚すること思い出して、いつもハラワタが煮え繰り返っていました。
「ふふふ」
妻がこの状況で笑ったことに、心優しい公爵子息の夫は心を痛めました。
妻、マルグリッドをどうにか喜ばせて落ち着けたいと、妻が大好きな歌劇の本を妻の部屋の書棚から取り出しました。
はじめて手に取った夫は本から数通の手紙が落ちるのを見ました。
そこれは、公爵家の財産を餌に俳優たちと浮気する妻マルグリッドの姿がありました——。
ガチャンッ。
公爵家にもまた魔物は侵入してきます。
◇
私はシグルドと、王子だったリヒャルトを騎士にして、隣国に連れて行こうとしていました。
シグルドが先を歩きます。
私は、ゆっくりと祖国を振り返りながら隣国を目指していました。
時より姉たちの叫び声が聞こえる気がしました。
大きな建物が崩壊したような土煙が何度も見えました。
前を向くとリヒャルトが私を見ています。
やはり、祖国の崩壊を悲しまない私を、リヒャルトは複雑に見ているのかもしれません。
「……エミリアを女神にしなければ存続出来ない国などあってはいけなかったんだ……」
リヒャルトはそうつぶやいていました。
「女神にしてしまったのはお前だろう」
シグルドが言います。
リヒャルトは気まずそうに下を向いた後に、
「君が同じ轍を踏まないように俺が見張っていますよ」
シグルドに向かって言いました。
「ただ、俺はエミリアの幸せだけを考えている」




