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魔法で完璧にコントロールされた外壁の扉が開きます。
私はシグルドに連れられて外壁の門から街を出ました。
私だけが知っている、王都を覆う結界の膜に、私が通った瞬間に亀裂が入りました。
——ああ、全てが終わる合図だ。
この世界に生まれて、ヴァルモント伯爵家の三女になって、楽しかったこと、悲しかったことが溢れ出します。
悲しかったことの方が多いけれど、わずかな楽しいことで全てを守っていけると思っていたのに……。
——っ!
「崩れたのか?」
シグルドが私に聞きました。
思い出の男の子……ひいお婆様のもとにいたあなたなら結界のことを知っていても不思議ではありません。
「見えませんか? 結界の亀裂から、王都を満たしていた魔力が少しずつ空に漏れていきます」
「少しだけ流れているな」
シグルドには魔力の流れが分かるようでした。
結界自体は見えなくても、魔力の心得がある人なら流れ出て行く魔力は見えるはずですが、きっと誰も空を見ていないでしょう。
「まだ、この漏れは取り返しがつく段階です。私が戻れば亀裂は今ならまだ修復されていきます……」
でも、このままなら、完全に結界が崩れるのは後は時間の問題なだけでした。
「俺が連れて行くと決めたんだ、もう結界が修復されることはない」
シグルドの言葉は力強く響きました。
結界内にあった魔力がどのような役割を果たしていたのか人々は知りませんでした。
これで、外壁の門など、結界内に溜まっていた魔力で動いていた道具は徐々に止まり始めます。
きっと手動での動かし方は忘れてしまっているでしょう。
魔法使いを集めても、主要な道具を動かす魔力すら足りません。
魔物を寄せ付けない守護の結界でもあったから、周辺にはすぐに強力な魔物が集まってきて、今後は都市間の移動が大変になります。
「……急ぎましょうか、シグルド様」
私がいうとシグルドは冷たく微笑んだ。
「自分の国が滅ぶのに戻るつもりがないのか」
「もちろんです。捨てられた国になど未練はありません……」
言葉尻が弱くなりました。
私だけが未練を残しても、どうする事も出来ないことがあります。
「……あなたも、私を捨てるなら恨みませんから、お好きなように。ただ、この滅ぶ国から離れるまでは連れて行って欲しいですけど……」
「俺も、たとえこの国が滅んでもおまえを手放す気はない。いくら探しても代わりのいなかった国を守護する女神だからな」
私はシグルドに肩を強く抱かれました。
◇
——二人が通った後の外壁の門。
「そんな! 魔力が足りない!」
城門を守る魔道士が叫ぶ。
「たまにはそういうこともあるんじゃないのか?」
魔力について何も知らない衛兵が言う。
「……ああ、そうだな。たまには、あることだったな……すぐに戻るだろう……」
王都に充満した豊富な魔力で、この国は守られている。
まさか、魔力が戻らないことなどあるはずがない。
今まで、一度もなかったんだ……これからも、ずっとない。
嫌な予感は、ただの気のせいだ——。




