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婚約破棄でやっと自由になれたはずなのに、 死んでるはずの殿下の妃にされそうです  作者: 葉月晴子


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第2話 原作で死んでるはずの殿下が、求婚しに来た件

翌朝。


私はヴァルトハイム侯爵邸の自室で、ぼんやりと目を覚ました。


天蓋付きベッドの絹のシーツ。淡い陽光が白いカーテン越しに、私の頬を撫でている。


ベッドの中で両手を顔の上に乗せたまま、私はしばらく天井を見つめていた。


そう、私、エリーゼ・ヴァルトハイム、十八歳。


──いいえ。本当は藤宮沙耶、二十八歳。


前世は日本の普通の社畜OL。


ある日、深夜まで残業してふらふらになりながらも、ベッドで女性向け小説『銀の王子と聖女の終わりなき悲恋』を夢中で読んでいた。


そしてそのまま、ぱたりと寝落ち。


目が覚めたら、転生していた。


それは私が六歳の頃。王太子エリオット殿下との初めての顔合わせのお茶会の場で、ふぁっと前世の記憶が頭の中に流れ込んできた、あの瞬間のこと。


──私はその小説のヒロインで、誰からも愛される聖女ミラと王太子が結ばれる邪魔をする、王太子の元婚約者の「モブ」悪役令嬢、エリーゼ・ヴァルトハイムに転生していた。


悪役令嬢というほどの活躍も見せず、原作小説でも冒頭に数行出てくるだけ。地味に聖女ミラをいじめて婚約破棄されると、ひっそりと修道院で暮らす、ただそれだけ。


ほとんど誰の記憶にも残らない、いちばん哀れな脇役。王太子殿下の婚約者の地位から聖女ミラ嬢に乗り換えられて、最終的に修道院に送られて、二度と物語に登場しない、その他大勢のただのモブ。



それが私。


──けれどベッドの中で、私はふと考え直した。


王太子殿下の婚約者? 王太子妃教育? 聖女と王太子の運命的な恋を横で見守る、私の役回り?


──それ、全部、私の柄じゃない。


──しかも最終的に修道院送り。


──つまり貴族の家のしがらみから逃れて、修道院、というのは解放のチャンスでは?


私は密かに決めた。


──原作通りに修道院送りになるその日まで、地味に生きよう。


そして修道院に向かうと見せかけて、馬車から逃亡。


平民として自由に生きる。──これって最高の人生じゃない?


幸いなことに、お金持ちの家に生まれたおかげでお小遣いをせっせと貯めて、自由ライフの準備はサクサクと進んだ。


貴族が通う王立アカデミーでは、ガリ勉と化して薬草学を専攻し、ポーションもハイポーションもエリクサーでも、なんでも作れるようになっていた。


そして二年前。私は王都の北、ノヴァク村にこっそりハーブティーの店「森の小さな薬草店」を開業した。


平民の地味な茶色のワンピース、白い布巾で髪を隠した店主のサラ。


──これが私の本当の居場所。


昨夜、王太子殿下とミラ嬢の前で、私は悪役令嬢として見事に断罪された。


──修道院送りという、私の計画の完璧な幕開け。


今日の夜には修道院へ向かう馬車に乗り、その途中で私は暗闇に紛れて馬車を逃亡する。


──すべて計画通り。


……、けれど。


……、けれど、昨夜のあの方は誰だったのでしょう。



私はベッドの中で、自分の手の甲を目の前に持ち上げた。


そこにはまだ、見知らぬ貴族のお方の唇の温度がほのかに残っているような気がした。


──気がするというだけ。気のせい。気のせい。


「結婚ねえ……」


そう呟きながらベッドの中で首を傾げていた、その時。



◇◇◇



コン、コン、コン。


部屋の扉がノックされた。


「お嬢様、おはようございます」


侍女のハンナの声。


「ハンナ、おはよう。入って」


扉がそっと開いた。


「お嬢様、殿下がお越しでございます」


──はいいいいいいいいいいいいい?


「殿下? 王太子殿下が? 昨夜、私を断罪なさったばかりですよね?」


「いいえ、王太子殿下ではございません」


「王太子殿下の弟様。第二王子、ルーカス殿下でございます」


──ルーカス殿下? あ、ルーカス殿下ね。


──って、誰それ?


──王太子殿下に弟がいたかしら。


私はベッドの中で必死に、原作小説の記憶を脳みその奥から引きずり出していた。


そして。


思い出した。


王太子殿下には確かに弟がいたーーーーーーーー!



『銀の王子と聖女の終わりなき悲恋』、通称『銀王悲恋』。


第一章「銀の王子の影の幼少期」。


王太子エリオット殿下には確かに、二歳年下の弟王子がいた。


名前はルーカス・アシュフォード第二王子。


けれど彼は原作の第一章で命を落としていた。──はず。


物語のメインキャストではなく、王太子の「亡き弟」として墓前に花を捧げるシーンが、一度だけ出てくる程度。


──つまり原作では、とっくに死んでいるはずのキャラクター。



「──嘘、でしょ」



私の口からぽつりと声が零れた。


「お嬢様? いかがなさいましたか?」


「ハンナ、第二王子、ルーカス殿下って生きてらっしゃるの?」


「は、はい、もちろんでございます」


「いつから?」


「いつからと申されますと、生まれた時から生きていらっしゃると思うのですが」


──も、もしかして、原作が変わってる?


──何かがおかしいわ。あんなに原作を変えないように、地味なガリ勉悪役として生きてきたのに。


──原作小説の世界では、すでにお亡くなりになっているはずの弟殿下が、生きてるですって?


──しかも、なぜ私の屋敷にーー。



「その方が、なぜ私を訪ねて?」


「なんだか重要な話があるとかで。ご両親様と一緒にお待ちになっておられます」


「ーー」


──修道院送りの申し送りか何かかしら。まさか王太子本人がノコノコ顔を出せるはずもないし、部下をよこすにはデリケートな内容かもしれない。どうしよう。せっかくここまで計画通りなのに。修道院への道中の監視なら、何がなんでもお断りしないと。最悪、深夜の闇に紛れて馬車から逃亡して、別立てで出発させる馬車に乗り換えよう。──Bプランに変更ね。


──お父様もお母様もがっかりなさったかしら。アカデミーでは頑張って勉強をしたけれども、結局親不孝な娘でごめんなさい。でも、これしか道がなかったの。落ち着いたら全てを打ち明けるから、今日のところは見逃してほしい。



私はベッドの中で、両手を顔にぱんと押し当てた。


「ハンナ、お父様とお母様はなんと」


「落ち着いたらでいいから、支度できたらおいで、とおっしゃっておりました」


「わかったわ」


──私はうなだれながら、着替えを始めた。



◇◇◇



私は慌てて身支度を整えて、応接間へと向かった。


応接間の扉の前で、私は深く息を吸った。


──落ち着け、エリーゼ。


──いえ、沙耶。


──転生に気がついてから、これまで培ってきた平静の演技を、今発揮するの。


扉が静かに開いた。


応接間のソファに、銀の髪、空色の瞳の絶世の美貌の青年がすでに腰を下ろしていた。


長身。仕立てのよい燕尾服。胸元には宝石をちりばめた徽章。


──こ。この方は。昨夜のあの方。


そしてその方の正面のソファには、お父様とお母様がにこにこと座っている。


「エリーゼ、おはよう」


お母様がいつもよりも晴れやかな声で、私に微笑んだ。


「お父様、お母様、おはようございます」


「殿下がわざわざ朝早くから、お越しくださったのよ」


──お母様、その「殿下」、原作では二年前にお亡くなりになられているはずなんですけど。なぜ生きているの?


──口に出して言える話じゃない。


「エリーゼ」


お父様が深く頷いた。


「殿下からお前への正式な求婚のお申し出があった」


「はい、わかりました。──え。今、なんと?」


「父さんと母さんは、お受けする方向でお話を進めさせていただいた」


「はい? なんですって?」


「殿下のお申し出は、非常に心のこもったものだった」


「お父様、それは。──私は修道院で暮らす覚悟を固めておりましたのに」


「お前の意思はもちろん、最大限に尊重する。──可哀想に。エリーゼはこんなにいい子なのに。王太子は見る目がないと、かねがね思っていたんだ。けしからん」


──ダメだ。お父様もお母様もすっかり丸め込まれている。


「まあ、まずは弟殿下のお話を聞いてみてはいかがかな」


──でもお父様もお母様も、嬉しそう。そりゃそうか。断罪されて修道院送りなんて、家名を汚さなくて済むわけだし。



その時、ソファの上の銀髪の青年、ルーカス第二王子殿下が立ち上がった。


そして私の前まで歩いてきて、片膝をつく。


「エリーゼ嬢」


低くてよく通る、優しい声。


殿下の長い指が、私の手を取った。


そして。


私の手のひらの内側に、唇を押し当てた。



手のひらに、キス。


手の甲ではなく、手のひら。


──こんな密度の高い口づけが、貴族の作法にあるんでしょうか。


胸の奥のあたりが、誰かに軽くノックされたみたいに、とんと跳ねた。


「エリーゼ嬢、ぼくの妃になってほしい」


殿下の声は低くて、わずかに震えていた。


私の顔はもう、真っ赤だった。


「で、殿下、その、なぜ私のような者にーー」


「君はぼくにとって特別な人だ」


「特別、と申されますと」


「理由はいずれゆっくりお話しする」


──お父様もお母様も、目の前にいらっしゃいますわよ、殿下。


──しかもその「理由」、私にはまったく心当たりがないのですが。



お母様が立ち上がった。


「エリーゼ、殿下とお庭をご散策なさってきたら」


「お母様」


「お話の続きはお二人で」


お父様もにこにこと頷いた。


「ゆっくりお話するといい」


──お父様! お母様! 助けて! こんなの聞いてないわ。


殿下の長い指がもう一度、私の手を優しく取った。


「エリーゼ嬢、お庭に行こう」


「は、はい」


私は消え入りそうな声で震えながら、わずかに頷いた。



◇◇◇



ヴァルトハイム侯爵邸の広い庭園。


朝の光が薔薇のアーチを淡く照らしていた。


私と殿下は並んで、玉砂利の小道をゆっくり歩いた。


──待って、待って、待って。


──私の頭の中、整理が追いついていない。


そもそも殿下は原作で死んでいるはずだったのに、生きているのはなぜかしら。


なぜ会ったこともない私の名前をご存知で。


急に私に求婚するなんて、全く意味がわからないわ。


──でも。お父様とお母様が喜んでくれているのは、素直に嬉しい。



「エリーゼ嬢」


殿下が私を呼んだ。


「は、はい」


「ぼくは君をずっと想っていた」


──ずっと想っていた。


──いつから?


──なぜ?


「殿下、ずっと、とおっしゃいますと」


殿下は優しく微笑んだ。


そして私の手をぎゅっと握り直した。


「ぼくは君を生涯の伴侶として迎えたいのだけれど、ぼくを受け入れてくれないだろうか」


「ーー」


「ぼくのことは嫌いかい?」


「い、いえ」


「残念ながらぼくの隣を、君以外の誰にも譲る気はないんだ。──君が承諾してくれなければ、ぼくは一生涯独身のまま朽ちていくだけだ。お願いだから、ぼくを救ってはくれまいか」


──心臓、もたない。


──これ、私、どうやって断ればいいんでしょう。



薔薇のアーチの下で、殿下の銀の髪が朝の光に淡く輝いていた。


私の頭の中は、原作のあらすじと現実の状況がぐちゃぐちゃに絡まり合って、ほどけそうにない。



私、エリーゼ・ヴァルトハイム、十八歳。


──いいえ、藤宮沙耶、二十八歳。


──完璧な計画で悪役令嬢の役を演じ切り、修道院送りを勝ち取ったはずでした。


──なのになぜか、原作で死んでいるはずの第二王子殿下に求婚されるなんて。


──私、前世も合わせて彼氏いたことなんてないのよ。耐性が全くないの。


──私、これからどうなるのでしょう。



薔薇の香りの中で、殿下が私の手を握ったまま、もう一度わずかに微笑んだ。


私の顔はもう、薔薇色を通り越して赤紫色になっていたと思う。



◇◇◇



庭園での散歩を終えた頃、殿下は私の手の甲に最後の口づけを軽く落として、お帰りになった。


「エリーゼ嬢、また」


「はい、殿下」


殿下の銀の髪が、薔薇のアーチの向こうに消えていった。



◇◇◇



私は自室の机に向かって、お父様とお母様への置き手紙をしたためた。


『お父様、お母様


ルーカス殿下のご厚情、心よりありがたく思っております。


けれど私は、王太子殿下のご命令通り、修道院へ向かいます。


どうかご心配なさらず。


いつか必ず、お便りいたします。


エリーゼ』


便箋を丁寧にたたんで、書斎のお父様の机の上にそっと置いた。


──お父様、お母様、ごめんなさい。


──いつか必ず、お会いに参ります。



◇◇◇



自室に戻って、ベッドの下からこっそり用意していた小さな旅行鞄を引っ張り出した。


中には平民の地味な茶色のワンピース、白い布巾、サラのお店の鍵。


──十二年、ずっと準備してきた私の本当の人生の入り口。


──王太子殿下、本当にありがとうございます。


──修道院送り、しっかり活用させていただきます。


──馬車に乗って、街道の最初の村で降りる。


──そのまま徒歩でノヴァク村のサラの店まで。


──私の新しい人生の始まり。


──わくわく。



◇◇◇



午後二時。


ヴァルトハイム侯爵邸の馬車寄せに、地味な黒塗りの小型の馬車が停まった。


──あの馬車は、王太子殿下ご手配の、修道院送りの馬車だわ、きっと。


──ラッキー。こんなにも手際良く馬車がやってくるなんて。今から出発すれば次の待合所から別立ての馬車を用意しなくても、森の道を通ってお店まで行けるわ。


──私の自由ライフ、ここから始まる。


御者はフードを目深に被った、見慣れない無口な男。


──お父様とお母様は先ほど外出されたし、ハンナも今日は何かと忙しいらしく、午後はずっと屋敷の奥に籠もりきり。


──玄関ホールには誰もいない。


──なんてタイミングがいいのかしら。


私は足早に玄関ホールを抜けた。


「修道院いきの馬車ですね」と声をかけながら御者の方に視線を移すと、うなづいていることを確認しつつ、旅行鞄をぎゅっと胸に抱きしめて、馬車に乗り込んだ。


馬車が滑り出した。


──誰にも見つからずに脱出、成功。


ヴァルトハイム侯爵邸の大きな鉄の門が、私の後ろでぱたんと閉まった。



◇◇◇



馬車は王都を出て、北の街道を進んでいった。


窓の外を春の若葉が流れていく。


──もう少し。


──もう少しで王都を完全に抜ける。


──抜けたら最初の深い森の入り口で、馬車から飛び降りる。


──そして徒歩で北の山あいのノヴァク村まで向かう。


──サラのお店、待っていてね。


私は旅行鞄をしっかりと膝の上で握りしめた。


その時。



馬車が急に速度を落とした。


そしてぴたりと停まった。


「ーー、?」


私の指が、馬車の窓のカーテンに伸びた。


そっとめくる。


そこには。



──!



馬車の前方の街道の真ん中に、覆面の男たちが五人、剣を抜いて立っていた。


御者が手綱を放して馬車から降り、覆面の男たちの方へ歩いていった。


──御者も、ぐる?


──!!!


血の気がつま先の方から、すうっと引いていった。


──これ、盗賊ではない。


──最初から私を狙って待ち伏せていた。


──王太子殿下のご手配の馬車よね?


馬車の扉が外から、ばんと開いた。


覆面の男のひとりが、剣の柄で馬車の中を指した。


「エリーゼ・ヴァルトハイム嬢、降りていただきましょう」


──!


──私の名前を知っている。


──これは、暗殺者。


私の手が震えた。


旅行鞄が膝の上から、ずるりと滑り落ちた。


──私、ここで終わるの?


──お父様、お母様、ごめんなさい。


──自由ライフ計画、ぜんぶ夢で終わる。


その時。



馬蹄の音。


街道の後方から、嵐のような勢いで駆けてくる馬の蹄の音。


「エリーゼ嬢ーーーー!!」



──!!



その声、聞き間違えるはずもない。



殿下のお声。



◇◇◇



銀の髪を風になびかせたルーカス殿下が、白馬の上で剣を抜いて街道に飛び込んでこられた。


夕日が、その剣の刃に淡く反射した。


「エリーゼ嬢から離れろ!!」


殿下の低い低い咆哮。


覆面の男たちが剣を構え直した。


「第二王子、邪魔をするな」


「ほう、俺の顔を知ってるのか」


殿下の空色の瞳が、夕日の中で深く鋭く光った。


「彼女に手を出したら、どうなるかわかってるだろうな」


──!


殿下の白馬が、地を蹴った。


剣が舞った。


私には何が起きているのか、まったく見えなかった。


ただ銀の閃光が夕日の中を、何度も舞って。


そして気が付くと、覆面の男五人全員が街道に倒れ伏していた。


御者の男も地面に膝をついて震えていた。



◇◇◇



殿下が白馬から降りた。


剣を鞘に納めた。


そして馬車の中の私に向かって、両手を差し伸べた。


「エリーゼ嬢、ご無事ですか」


「で、殿下、なぜここに」


「ぼくの密偵が、馬車の御者が買収されている、と報せてくれた」


「!」


「君が馬車に乗った、と聞いて、馬で追いかけたきたのだよ」


「ーー」


「間に合ってよかった」


殿下の空色の瞳に、安堵と深い愛おしさが湛えられていた。


──!


──殿下、私の命を救ってくださった。


──私の命の恩人。



私の身体の力が抜けた。


殿下の腕がすぐに、私の腰をすくい上げた。


あれ?そのままふわりと、お姫様抱っこされてしまったわ。


「エリーゼ嬢、ぼくの腕の中は安全だ」


「殿下」


「ぼくの離宮にお連れする。もう安心だから」


「ーー」


──私の自由ライフ計画。


──いったい、どうなってしまうの?


──けれど、けれど。


──殿下の温度の中で、なぜか私はもう、抵抗する気が起きなかった。



殿下が私をお姫様抱っこのまま、ご自分の白馬の隣に追いついて到着した馬車に、お乗せくださった。


私は、馬車の深紅の絹のシートに、ふんわりと降ろされた。


そして、殿下も私の隣にお乗りになった。


馬車が滑り出した。


私の身体はぐったりと、殿下の肩にもたれかかっていた。


殿下の長い指が、私の頬の涙を拭ってくれた。


「エリーゼ嬢、もう大丈夫」


「殿下」


「ぼくの離宮でゆっくり休もう」


「はい」



私の意識は夕日の中で、深い温かい闇に溶けていった。

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