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M-373 先王のお后様にお願いできれば


 翌日。俺とアオイの2人、それに戦姫2機で具体的な国勢調査の方法を考える。

 先ずは王国の王族領から初めて、次に貴族領を確認する。1つの町にも思えるヤードはヤード単位とすれば良いし、聖職者達は各神殿毎に纏めれば良いだろう……。


「問題は,住居を持たない貧民達、それに海賊達だな。騎士団と傭兵団は王令で調査に応じてくれるだろうが、さすがに海賊は無理だろう。それに住家が不特定な貧民ともなると調査も難しそうだ」


「海賊はギルドを使うしかないだろうな。幸いにも海賊ギルドと王国は昔からの付き合いがあるとのことだ。海賊毎の構成人員、性別、年齢位は何とかして貰いたいね」


「貧民達は食料で釣るしかないだろうな。出来ればお金を渡したいところだが、あまり変わったことをすると貴族連中に上げ足を取られかねないからね」


 最初から王国の住人全てを国税調査の対象にするのは難しいかもしれない。

 だが9割以上の住人に対して調査が行われるなら十分に思える。

 対象に漏れた住人達については、次回の調査で参加できるように考えれば十分だろう。


俺達の志向を2機の戦姫が読み取って、調査の概要が作られて行く。

 基本はあるからね。問題はその方法と得られた情報の解析ということになる。

 

「王国民の調査はこれで良いとして、生産物の市場についても調査すべきだろうな。さすがに魔石は対象から外すとしても、農作物や海産物。それに鉱石の単価の流れは追う必要がありそうだ」


「鉱物の季節変動はないだろうが、精製後の単価も必要だろう。農産物や海産物は季節による変動が大きくなる。生産者の売値、市場の売値、さらには店頭価格も調査しないといけないからなぁ。それに都市部と農村部での根の違いもあるはずだ」


 同じ魚でも大きさで値が変動するけど、重さなら案外平均化するかもしれない。生産物は袋やタルで値が付けられているから、今でも重量での取引に近いように思える。

 取引に使われる単位で、売値の変動を調査してみるか。


「ついでに自治体単位の調査もしてみたいな。貴族のピンハネがかなりあるみたいだぞ」


「収入と支出ってことか? 個人収入がある程度分かるから税収がある程度明確になるってことだな。税は2割だが、その内の5割は町の運営、残り4割は領主で1割は王国に上納されるんだ。税収を偽って町と王国の取り分を少なく申請するのは多々あるらしいからなぁ」


 反対する貴族は多いだろうな。だが、国力を確認することは王国の務めに違いない。それを妨害するような貴族がいたなら、さっさと貴族の身分を剥奪すべきだろう。


「だけど、かなり膨大な資料になるぞ。これを解析するのは数人では無理だろうな。専門の部署を設けるべきだろう。その部局の中心となる人物も原潜しないといけないだろうな。せっかく情報を得られても、その解析結果を歪ませるような人物では本末転倒もいいところだ」


 高潔な人物ということかな?

 誰がやったとしても身びいきになりそうな気がするんだよなぁ。強いて言うなら、結果を一番知りたい人物に近い人物ということになるだろう。

 一番知りたい人物は国王陛下だろうから、それに近い人物で貴族の突き上げに屈しない者になるのかな……。王妃様達やトリスタンさん辺りが適任だけど、今でも忙しそうだからねぇ。

 待てよ……。先王のお后や先王に仕えた軍の高官ならば、案外暇に飽かせた暮らしをしているかもしれない。

 これはヒルダ様と調整した方が良さそうだな。


「公平で、現在重要な仕事をしていない高官ということになるだろうね。少し当てがあるからヒルダ様に確認してみるよ。解析はその人物の目に適った人物を集めて貰えば良いと思うんだよね」


「そんな人物がいるなら、是非ともそうすべきだろう。後は……、どうだろう。電脳を1台提供した方が良いよう思うんだが」


 膨大な解析を人力では出来ないという事だろう。アオイの言うことは理解できるんだが、この世界にある電脳は数が限られている。さすがにリバイアサンの生体電脳ならば余裕で解析が出来るだろうが、あれを外すことなど出来ないからなぁ……。


『初期の電算機を提供したらどうでしょうか? 私とアテナで作ることは容易ですよ』


 アリスが提言してくれたのは、LSIを使った初期の電算機らしい。プログラムも可能だし、出力はモニターそれにプリンターで出すことが出来るとのことだ。


「そんな品で役立つのかな?」


『個人情報をコード化することで、記憶容量を縮小できるでしょう。それに現地調査をその場でパンチカード化すれば、記録の漏洩と改ざんを防止できると推測します』


 アリスの言葉に、アオイがうんうんと頷いているんだよなぁ。

 確定ということなんだろうけど、そんな物を作ったら欲しがる人物がいるのが分からないのかな?


「何台必要になるのかな?」


『各王国様に2台ずつ、それにカテリナさん達にも渡さないといけないかもしれません。10台作ればリオ達の授業にも役立ちますよ』


「それなら12台作って欲しい。パンチカード作成用の端末も数が欲しいところだな。各王国に5セットあれば十分だろうから、予備を含めて20セットだな」


『了解です。明日には形にします』


「ついでに使用マニュアルも作って欲しい。パンチカード作成者と解析者には別途使い方のレクチャーも必要だろう」


『了解です。併せて用意します』


 話が一段落ついたところで、アオイと顔を見合わせる。

 先ずは溜息が出るんだよね。

 次にすっかり冷めてしまったコーヒーを飲む。

 互いにタバコを取り出して、相手のタバコのライターで火を点ける。

 先ずは深く吸ったところで、もう1度溜息が漏れた。


「これでどうにか……、ってことだな。どんな結果になるのか。どんな横槍が入るのか……」


「最初から上手く行くとは思えないが、それなりの結果は出るだろう。上手く行かなければ次にその対策をすれば十分さ。最初から完璧を目指そうなんてことは無理だぞ。惑星の先行調査だって、かなりいい加減な連中がいたからなぁ。アテナと苦労が絶えなかったよ」


「調査漏れのせいで移民団に死傷者が出たなら大変だからなぁ。いつも見落としがないかアリスと何度も調査項目を確認したのがこの間のように思えるよ」


「それを考えれば、ここは天国だ。俺達だけではないからね。リオとアリスがいるし、住民は強力的だ」


 贅沢を言ったらキリがないということかな? 案外アオイは楽天的なところがあるんだが、行動する時は慎重なんだよなぁ。

 

 昼食ということで、とりあえず一段落することにした。

 ヒルダ様が用意してくれた昼食のテーブルには、ヒルダ様以外に数人の女性が席についていた。ヒルダ様の話では外交官夫人ということだが、この世界は女性が動かしていることが分かっているからね。外交の実務は夫人達が行っているに違いない。


「どうですか? 上手く調査を進めることが可能でしょうか」


「調査は国王陛下が軍を使って行うという事でしたから、問題はなさそうです。アオイと午前中に検討した中で1つ課題が出てきました。膨大な情報を正しく評価できる人物が是非とも必要です。必要な要件としては他者からの妨害に屈することなく物事を公平に見ることが出来ることになります。もし、可能であるならそのような要件を満たす人物として、先代のお后様がご存命であるなら是非ともその任について頂きたいと思うのですが……」


 俺の言葉に、お后様達が驚いているんだよなぁ。

 やはり、先王のお后様を担ぎ出すのは無理なのかな? それとも既に死去しているのかもしれないな。


「先王とエリオス様は崩御されましたが、エーオス様とセレーネ様お元気にお暮しです。国王陛下が助けを求められたなら直ぐに駆けつけるでしょう。でも、激務を私達に引き継いだお后様達を再び国政に戻すのは……」


 可能性は高いけど、できればこのままゆっくり暮らして欲しいということかな?

 そうなると、次は先王の右腕として働いた軍の筆頭になる。

 俺が口を開く前に、ヒルダ様が右腕として働いた将軍も既に世を去ったと教えてくれた。


「国王陛下に相談してみましょう。リオ殿達がセレーネ様達に任を任せたいということを伝えれば、それに代わる人物、もしくは本人に確認を取ってくれると思います」


「お願いします。調査の手段と調査項目については概要が纏まっています。昼食後にご説明いたします」


 30分ほどの時間が出来たから、昼食を言頂きながら整理しておこう。

 直ぐにアリスが説明資料を作ってくれたから、その資料を脳裏で追いながら食事を勧めることにした。

              ・

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              ・

 午後はアリス達が纏めてくれた調査方法について再調整を行った。

 夕食時に現れたヒルダ様達に、調査手段とその方法を調査マニュアルを仮想スクリーンに示しながら説明する。


「調査は家族単位で行うということですね。成人して家を出た者については個別で行うということですか……」


「家族単位の調査でも、基本は個人になりますね。これで王国の総人口を始めて知ることになるでしょう。まったく今まで調査をしていなかったということが悔やまれてなりません」


「調査項目は詳しければ詳しいほどに役立ちそうですが、集めた調査結果を解析するとなると大変な労力になりそうですよ。先のお后様方が了承して下さるかどうか……」


 自分達では無理だという事だろうな。

 さすがに集めた膨大な情報を解析するのは難しいだろう。やはり初期の電算機が必要なわけだ。


「数年毎に王国内を一斉に調査してえられた情報は膨大な量になります。その解析にも時間が掛かるでしょう。また大規模な調査ではなく、地域もしくは集団に対しての調査も治世に役立つことは確かです。どうでしょう。国王陛下の直属で調査局を設けるということは?」


「新たな部局ということですね、さぞかし貴族達が騒ぐでしょうけど……。そうなると、ますます先のお后様方にお任せしたいですね。場合によっては、その場で貴族の資格を剥奪するかもしれません」


 物騒な話をしながら目が笑っているんだよなぁ。

 今は王国の政治から一歩足を引いているとのことだけど、いつでも強権を発動できるってことなのかな?

 考えてみると、現国王陛下のお母さん達だからねぇ。国王陛下だって逆らえないだろうからなぁ。


「陛下が、『正気なのか?』と私に何度も確認したぐらいです。最後は天を見上げながら『行ってみるか……』と言われていましたから、明日には結果が分かると思います」


 確か3人いて1人は亡くなったと言っていた。残った2人は王国の何を担当していたんだろう?

 まさかとは思うんだが、軍事と財務なんてことはないだろうな?

 後でヒルダ様に確認しておかないと、俺達が糾弾されかねないぞ。


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