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魔力1令嬢と欠陥王女は魔法が使いたい! ~誰も使えない古代魔法で人生逆転します~  作者: 鳥助
第一章

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7.隠した本音

「「ごちそうさまでした」」


 空になった食器に向かって手を合わせ、二人で挨拶をする。目の前にある焚火が暗がりの森を照らし、温かみを分け与えてくれる。


「ルシア! とても美味しかったです! ルシアは貴族なのに、自分で料理とか出来るんですね」


「気に入ってもらえて良かったよ。結構簡単な料理だから、ティアリスにも出来るかもよ。やってみる?」


 何気なく言った言葉だったけど、ティアリスの表情が曇っていくのが分かった。まるで、昔の傷を抉られた時のような。


 これ以上、踏み込んではいけないような、でも踏み込まないと進まないような……そんな気がした。どっちが正しいかなんて分からないけれど、少しだけ言葉をかけた。


「出来るようになると楽しいよ。そしたら、もっと上手くなろうって思うから」


 大変だったけど、出来た時の喜びはひとしおだった。その気持ちを知って欲しくて伝えたのだけれど、ティアリスの表情は曇ったままだ。


「……私も昔は楽しかったです。魔法を習うのが」


 ぽつりと話し始めたティアリス。そこには、弱弱しい様子で昔を思い出す姿があった。


「でも、やる度に期待を裏切ってしまって、失望されて。どんどん、周りの目が冷たくなっていくのが分かって、でもどうしようもなくて……」


 痛いほどティアリスの気持ちが伝わってくる。それがどれだけ辛いことか、私には分かる。


 周りの期待を裏切ってしまうのは怖かった。冷たくなっていくのが怖かった。でも、自分にはどうしようも出来なくて、ただその感情に当てられていた。


 私にはお父様がいたから、前向きに生きてこられた。だけど、ティアリスにはそんな人はいなかったってこと? それを思うと、胸が張り裂けそうになる。


「周りに人がいるのに、孤独でした。誰にも認められていないと思うほどに、孤独が強くなって……。誰かが一緒にいてくればいいって、ずっと思ってました。そしたら――」


 その言葉でティアリスはこちらを向いた。そして、優しく笑いかけてくれる。


「ルシアが現れてくれました。孤独だった私の前に現れてくれた。初めてでした……手を差し伸べてくれて。それが、どれだけ嬉しかったか……分かりますか?」


 どれだけなんて、私には分からない。ティアリスの気持ちは推し量れないけれど、その重い気持ちだけは伝わってくる。


「だから、離れないって言ってくれたのが……凄く嬉しかったです。約束もしてくれて、心がこんなに軽くなったのは初めてです。誰かが一緒に居てくれるって、こんなにも心強いことなんですね」


 表情が曇っていたのに、今は明るい笑顔を見せてくれる。それが、何よりも安心した。これって、もしかして……少しは信用してくれているってことかな?


 まだ杖を作る段階だけど、少しでも私に希望を寄せてくれている。ということは、ティアリスは魔法を使うことに前向きになってくれたということだ。


「……すいません、少し弱気な発言をしてしまって。夜も遅いですし、もう寝ましょう」


 慌てたように立ち上がり、テントの中に入って行ってしまった。私は焚火を消すと、その中に魔物除けのお香を入れて、同じようにテントに入った。


 ティアリスはすでに毛布を被り、外側を向いて眠っていた。どれだけ早く寝たかったんだ? と、ちょっと可笑しい気持ちになる。


 小さく笑うと、私も同じように横になり、毛布をかぶって目を閉じた。すると、静けさがテントの中に広がった。


 さっきの話が頭から離れない。ティアリスの孤独、それを埋めた私の行動。そして、信用してくれたこと。一気に感情が動いて、眠気がどこかにいってしまった。


 目を開けたまま、暗い天井を見つめる。隣から返事はない。もう眠っているのかもしれないし、聞いているのかもしれない。


 だけど、不思議と話したくなった。


「……私もね、結構怖かったんだよ。魔力1なのにさ、魔法学者になって……周りから散々言われたよ。魔法が使えないのに無駄だって」


 静かな声がテントの中に溶けていく。


「魔法が使えない奴が魔法を研究するなんておかしいって言われたし、何度も笑われた。後ろ指をさされることもあったよ」


 思い出すのは幼い頃のこと。好奇心のままに魔法を調べていた私を見て、呆れたような顔をする人たち。


 期待ではなく、諦めの目を向ける人たち。そんな光景はいくらでも思い出せた。


「誰も信じてくれなかった。魔力1が何を言っているんだって。そんなこと出来るわけがないって」


 言われるたびに辛かった。本当にそうかもと、何度も思うたびに折れそうになった。でも、結局は折れなかった。


「頑張って考えた仮説が間違っていたり、何日もかけた実験が失敗したり、もう少しで分かりそうなのに答えに届かなかったり。それでも、諦めきれなかった」


 そんなことばかりだった。それでも続けられた理由は一つしかない。


「でも、私は恵まれていたんだと思う。お父様がいたから」


 自然と頬が緩む。いつも応援してくれたお父様の言葉は、いつも勇気をくれた


「どんなに失敗しても、お父様だけは笑わなかった。どんなに馬鹿にされても、信じてくれた。私が出来るって言ったら、出来ると信じてくれた」


 誰も信じてくれなくても、世界中が否定しても、お父様だけは味方でいてくれた。


「だから、頑張れたんだと思う」


 誰かが信じてくれるって、それだけで勇気になる、力になる、自分を信じれる。


「私もティアリスの前では、そんな存在になりたい。支えたいって思うよ。魔法を使える日まで、ずっと支えるから。だから、私を信じて」


 そう言って、顔を向けると――肩がピクリと動いた気がした。聞いてくれていたら、嬉しい。私はティアリスの支えになりたいから。


「……じゃあ、おやすみ」


 私もティアリスに背を向けて、目を閉じた。自分の気持ちを喋ったせいか、自然と眠気が襲ってきた。

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