13.杖の選別
「では、今日の授業は終わりです」
先生がそういうと、教室内がざわついた。ようやく、長かった授業が終わった。この後の時間は自由時間。この自由時間を使って――。
「ルシア、行きましょう」
考え事をしていると、真っ先にティアリスがやってきた。その髪には昨日お揃いで買ったリボンが揺れていた。そして、私の髪にも……。
そのティアリスはとてもやる気に満ちていて、先週とは大違いだ。
やっぱり、町に出て息抜きが出来たからかな? だったら、あの選択は間違いではなかった。
「うん、行こうか」
カバンを手に持ち、教室を去ろうとすると、ローゼリアと取り巻きたちが近づいてきた。あぁ、なんだか面倒なことになりそうだ。
そう思っていると――グイッとティアリスに手を引かれた。そして、堂々とローゼリアの横を通り過ぎる。
「ちょっと、あなた!」
「忙しいので構わないでください」
ローゼリアが止めようとしたのだが、ティアリスが我関せずと素通りして教室から出てしまった。……凄い、あの一団を無視するなんて。まるで、以前のティアリスじゃないみたいだ。
ティアリスは私の手をひっぱり、中庭へと出てきた。そこに置いてある、テーブル席に腰かけた。
「さぁ、ルシア。杖選びをしましょう。私……今なら出来るような気がします!」
着いて早々、やる気に満ちた目でこちらを見た。今まで受け身だったのに、こんなに積極的になるなんて……。町遊びの力は凄い。
「ティアリスがやる気になってくれて良かったよ。じゃあ、杖選びをしよう」
カバンの中から三つの杖を取り出す。それをティアリスの目の前に置くと、準備完了だ。
「やり方の復習をするね。魔力は体中を巡っているから、その巡っている魔力を手に集中させるの。自分の意思で魔力を動かせるようになったら、杖に魔力が行き渡るよ」
「まずは魔力を感じます。……えっと、少しお手伝いしていただけますか?」
「もちろんだよ」
控えめにお願いしてくると、私はすぐに頷いた。ティアリスの手に自分の手を重ね、自分のありったけの魔力を手に集中させる。
体の中の魔力が手に集まってきた。この気配をティアリスが感じてくれれば……。
「……どう?」
「あともうちょっとで分かるような……。手を握ってもいいですか?」
「うん、いいよ」
ティアリスの手が裏返ると、私たちは指を絡めて手を握りしめた。伝わる心地よい体温。それを感じながら、魔力の気配を感じ取って欲しい。
黙って待っていると、ピクリとティアリスの手が動いた。
「あっ、今……何かを感じました。流れていくような気配です」
「それが魔力だよ。それを自分の体でも感じて。焦らないで、ゆっくりでいいから」
この感覚を感じ続けられるように、手を強く握りしめて魔力を動かしていく。ティアリスは目を閉じて、じっと体の魔力を感じていた。
しばらく無言が続く。私はティアリスを信じて、ずっと手を握って魔力を流していた。
すると――。
「ルシア、感じます。私の体の中の魔力が」
「本当!? ちゃんと流れも分る?」
「……はい、流れも分ります。そして、意識をすれば動かせるみたいです」
「その調子だよ! そのまま、杖を持って!」
ようやく、この時が来た! すぐに杖を持つように言うと、ティアリスが杖を握りしめる。それと同時に、私の手も握りしめた。
「……あの、手はこのままでいいですか? 感じながらやったほうが、出来そうな気がして」
「うん、いいよ。私も協力するから」
手を離さないようにギュッと握りしめると、ティアリスは一本ずつ杖に魔力を通していった。
私でも感じる、ティアリスの魔力。ようやく動き始めた魔力は進むべき道が分からないように、右往左往していた。
「ちょっと、触るよ」
もう片方の手で杖を握っていた手の甲を指先でなぞる。
「んっ! な、何をっ!?」
「ほら、こうすると魔力が流れが感覚で分かるんだよ。その通りに意識をすれば、魔力が杖に流れる」
「そ、そうですか……。分かりました、やってください」
戸惑った表情をしていたけれど、覚悟を決めたように引き締めた。片方の手の指先でティアリスの手をなぞる。そして、魔力がその通りに動き出した。
その魔力は杖へと行き渡っていくのが分かる。これは、上手くいっている。
「その調子だよ。他の杖も触ってみて」
「……はい」
他の杖に誘導すると、手が動く。そして、二本目、三本目と杖を握って、魔力を通していく。その中で魔力の通りが悪いものがあった。
「白色の杖は魔力の通りが悪かった。だから、白い杖は除外ね」
「私もそう思いました。残りは茶色と黒色の杖ですか……」
きっと白色の木の材質が、ティアリスの魔力と合わなかったのだろう。残りの二本をティアリスの前に置き、両方を握りしめてもらった。その上に、私の手を乗せた。
「じゃあ、どっちがいいか確かめるよ。集中して魔力を流して」
「はい」
そういうと、ティアリスは集中した。手から魔力が流れていくのが分かる。少しでも上手く流れるように、自分の魔力で誘導した。
そうして、一番良く魔力が通った杖を見つけた。
「ルシア、黒色の杖が一番魔力の通りが良かったです!」
「……うん。それが一番だった」
ようやく、ティアリスに合う杖が見つかった。ティアリスは杖を持ち、とても嬉しそうにしている。その姿を見て、ホッと気持ちになった。
すると、ティアリスが微笑みを向けてきた。その綺麗な顔に少しだけドキッとする。
「ルシアが親身になってくれたお陰です。そうじゃないと、私は諦めていました。私のことを考えてくれて嬉しかったです」
「私もティアリスの力になれてよかった。これで、古代魔法へ一歩近づいたね」
「はい。私……必ず古代魔法を使えるようになって、証明します。ルシアが正しいって、みんなに分からせます!」
思ってもみたい言葉が飛び出してきて驚いた。ティアリスに古代魔法を使えれるようにすることしか考えていなかったから、証明すると言われてむず痒い気持ちになった。
「これから古代魔法について、色々教えてくださいね!」
「うん。私のすべてをティアリスに賭けるよ」
大丈夫、ティアリスには必ず古代魔法を使えるようにするから。
―――――――――――――――――
第一章完。
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