第23話 売れない作家×金髪美少女の物語
翌朝。
俺は、いつもより早く起きた。
眠りが浅かったわけではない。
通知で起こされたわけでもない。
むしろ、昨日はよく寝た方だと思う。
ただ、起きた瞬間に分かっていた。
今日は、投稿する日だ。
「……」
布団の中で、少しだけ固まる。
投稿する。
この数日で書いた小説を。
『約束の上とんかつ定食
~売れない作家×金髪美少女~』
このタイトルで。
俺は、まだ布団から出なかった。
起きれば、投稿画面を開くことになる。
投稿画面を開けば、あらすじを書くことになる。
あらすじを書けば、タグを考えることになる。
そして、公開ボタンの前まで行く。
公開。
たった二文字。
押せば終わる。
押さなければ、何も始まらない。
「春人」
横から声がした。
アイが座っていた。
「起きているな」
「……寝てる」
「目が開いている」
「心は寝てる」
「起きろ」
「厳しいな」
「今日は、出すのだろう?」
俺は、返事に詰まった。
「……まあな」
「なら、起きる」
「はい」
アイは静かだった。
いつものように急かしているようで、急かしていない。
ただ、そこに座っている。
待っている。
その圧が、一番強い。
反対側からエクスの声がした。
「春人様」
「なんだ」
「本日の生活運用表は簡略版ですわ」
「こういう日でもあるのか」
「はい」
エクスは紙を見せた。
いつもの項目が少ない。
朝食。
最終確認。
投稿。
反応確認は制限付き。
バイト。
帰宅後、修正メモ整理。
自虐禁止。
最後だけは残っていた。
「自虐禁止、今日もあるのか」
「最重要項目ですわ」
「投稿日に自虐は禁止か」
「投稿日は特に禁止ですわ」
「なぜ」
「春人様は、公開直前と公開直後に自己破壊的発言が増えると予測されます」
「そこまで読まれてるのか」
「読めますわ」
「嫌な信頼だな」
アイが生活運用表を見た。
「投稿」
「うん」
「これは、本に近づくのか?」
「まだ全然」
「全然なのか」
「ネットに出すだけだ。書籍化とは違う」
「だが、誰かが読める」
「……まあな」
「なら、近づく」
アイはそう言った。
簡単に。
簡単すぎるほど。
でも、その簡単な言葉に、少しだけ救われる。
朝飯は、卵ご飯だった。
もやしの味噌汁っぽいものも作った。
味噌汁っぽい、というのは、味噌の量がぎりぎりだったからだ。
「これは味噌汁か?」
アイが聞いた。
「味噌汁寄り」
「寄り」
「薄いんだよ」
「薄い味噌汁」
「正式名称みたいに言うな」
エクスが一口飲んで、少しだけ考えた。
「味噌濃度は低めですわ」
「はい」
「ですが、朝食としては許容範囲です」
「おお」
「ただし、味噌の在庫補充は必要です」
「現実」
「現実ですわ」
今日も現実はちゃんと来る。
投稿日だろうが。
人生が動く日かもしれなかろうが。
味噌は減る。
卵も減る。
もやしも減る。
金も減る。
人間の生活は本当に容赦がない。
食後。
俺はノートパソコンを開いた。
ファイルを開く。
タイトル。
本文。
第一話分として切り出した箇所。
十年前の軽口。
AIへの約束。
上とんかつ定食。
金髪美少女指定。
そして、再会の前まで。
まだアイの現在登場までは届かない。
だが、一話としては成立している。
たぶん。
たぶん、が多い。
「春人様」
エクスが言った。
「投稿前確認を行いますわ」
「誤字だけな」
「構成上の問題も」
「誤字だけ」
「タグも」
「そこは手伝ってくれ」
「承知しました」
「切り替え早いな」
エクスは椅子の横に立った。
アイは反対側に座る。
俺を挟んで、金髪美少女AIと黒髪美少女AI。
投稿前チェックとしては、圧が強すぎる。
「まずタイトル」
エクスが言った。
『約束の上とんかつ定食
~売れない作家×金髪美少女~』
「そうだな」
「説明力はあります。ですが、ジャンル認識がやや難しいですわ」
「分かってる」
「料理ものに見える可能性があります」
「それも分かってる」
「AI日常もの、創作もの、近未来日常SF、関係性ドラマ。複数要素があります」
「タグ地獄だな」
「はい」
アイがタイトルを見ていた。
「我は、このタイトルでよいと思う」
「なぜ?」
「上とんかつ定食の約束から始まったからじゃ」
「そのままだな」
「売れない作家は、春人だ」
「まあな」
「×はエクスじゃ」
「……」
「金髪美少女は我じゃ」
「自分でよく言えるな」
エクスが補足する。
「タイトルとしての情緒的整合性は高いですわ」
「情緒的整合性」
「検索性は保留ですが」
「そこは保留か」
「はい」
俺はあらすじ欄を開いた。
ここが難しい。
本文を書くより難しい時がある。
自分の作品を説明するのは、いつも苦手だ。
「春人様、仮案を」
「今考えてる」
「手が止まっていますわ」
「始まった」
「ですが、本日は×を出しません」
「偉い」
「ただし、視線は出します」
「それが怖い」
俺は書いた。
十年前、売れない小説家の春人は、AIに軽口を叩いた。
「人間になったら、上とんかつ定食を奢ってやるよ」
十年後、そのAIは金髪美少女アンドロイドとして春人の前に現れる。
名前は、アイ。
そして彼女は言った。
「春人が次に本を出すまで、我は帰らぬ」
これは、売れない小説家と二体のAIが、六畳一間で飯を食べ、約束を抱え、少しずつ“書く理由”を見つけていく物語。
書き終わった。
黙る。
アイとエクスが読む。
怖い。
やめろ。
また黙って読まれる時間だ。
「春人」
アイが言った。
「我が出ている」
「そりゃ出るだろ」
「我の名前もある」
「あるな」
「エクスは?」
エクスが少し身を乗り出した。
「わたくしの存在が、二体のAIに含まれていますわね」
「明記しろって?」
「いえ」
エクスは、少しだけ目を逸らした。
「二体のAI、で構いませんわ」
「珍しいな」
「初回の紹介文でわたくしが前に出すぎると、アイ様との再会の核がぼやけますもの」
「お前、ちゃんと分かってるな」
「当然ですわ」
アイが言った。
「だが、エクスも必要だ」
「アイ様……」
「二体のAI、でよい」
「はい」
その二人のやり取りで、少し肩の力が抜けた。
タグをつける。
AI。
アンドロイド。
近未来。
日常。
創作。
約束。
食事。
恋愛未満。
一般人。
「恋愛未満?」
エクスが言った。
「そう」
「恋愛ではないのですか?」
「まだ違うだろ」
アイが首を傾げる。
「恋愛とは何じゃ?」
「今は知らなくていい」
「また知らなくてよいものが増えた」
「そのうち分かるかもしれない」
「調べる」
「今はやめろ」
エクスが小さく咳払いした。
「春人様」
「なんだ」
「タグとしては妥当ですわ」
「おお」
「ただし、読者導線は完全ではありません」
「知ってる」
「ですが」
「ですが?」
「春人様が、今これを出すなら、この形でよいと思いますわ」
俺は、少しだけ黙った。
エクスの言葉は、褒めているのか、保留なのか、分かりにくい。
でも、今のはたぶん。
かなり、褒めている。
「ありがとう」
そう言うと、エクスは少しだけ目を丸くした。
「……本日は、素直ですわね」
「投稿前だからな」
「常時そうしてくださいませ」
「無理」
「×ですわ」
今日初めての×が出た。
少し安心した。
投稿画面の最後。
公開ボタンがある。
カーソルを持っていく。
指が止まる。
押せない。
何度やっても、この瞬間は怖い。
読まれないかもしれない。
読まれても、何も反応がないかもしれない。
馬鹿にされるかもしれない。
そもそも、誰にも気づかれないかもしれない。
動画なら、アイとエクスがいる。
映像がある。
音がある。
熱い唐揚げがある。
餃子で「あつっ」となるエクスがいる。
それだけで見てもらえる。
でも、小説は違う。
ここにあるのは文字だけだ。
俺の言葉だけだ。
「春人」
アイが言った。
「怖いのか」
「怖い」
「うむ」
「否定しないんだな」
「怖いものは、怖い」
「そうだな」
アイは、俺の手元を見た。
「だが、春人が押さねば、誰も読めぬ」
「分かってる」
「我は読める」
「お前は横にいるからな」
「だが、他の人間は読めぬ」
「分かってるって」
「春人」
「なんだ」
「我は、春人の小説を待っていた」
その言葉は、もう何度も聞いた。
それでも、効く。
「だが、我だけが待っているのでは、春人の本にはならぬのだろう?」
俺は、息を止めた。
「……そうだな」
「なら、開けるしかない」
開ける。
公開することを、アイはそう言った。
閉じていたものを、開く。
「エクス」
アイが言う。
「はい」
「春人が押す」
「はい」
「我らは押さぬ」
「はい」
エクスが、静かにうなずいた。
「春人様」
「なんだ」
「公開ボタンは、春人様が押してくださいませ」
「分かってる」
「わたくしたちは、見ています」
「それが一番圧なんだよ」
でも、逃げられなかった。
いや。
逃げなかった。
俺は、公開ボタンを押した。
画面が切り替わる。
投稿完了。
ただ、それだけ。
世界は変わらない。
天井も、床も、冷蔵庫も、そのまま。
スマホも震えない。
誰も拍手しない。
でも。
公開された。
「……出した」
俺は言った。
「出たのか」
アイが聞く。
「出た」
「読めるのか」
「読める」
「春人の小説が、人間に開いたのか」
「まあ、そういうことだな」
アイは、少しだけ笑った。
「よい」
エクスも、静かに言った。
「投稿完了ですわ」
「うん」
「本日、春人様は×ではありません」
「それ、最大級だな」
「はい」
「認めるのか」
「認めますわ」
その直後。
スマホが震えた。
俺は、びくっとした。
早すぎる。
心臓に悪い。
画面を見る。
動画の通知だった。
「……動画かよ」
思わず言う。
アイが首を傾げる。
「違うのか」
「違った」
「そうか」
「そう簡単には来ないよ」
「なら、待つ」
「本当に待つな」
「得意じゃ」
投稿してから十分。
何も起きない。
二十分。
PVは一。
たぶん俺ではない。
いや、俺かもしれない。
管理画面の仕様が分からない。
「一」
アイが言った。
「一進行」
「その構文、今日はやめろ」
「なぜじゃ」
「心臓に悪い」
「一は悪いのか?」
「悪くはない」
「ならよい」
エクスが冷静に言う。
「初回投稿から二十分で一閲覧。異常値ではありません」
「分析やめろ」
「安心材料ですわ」
「数字の分析は、今いらない」
「承知しました」
三十分。
PVは三。
「三」
アイが言う。
「言うな」
「三人ではない」
「それはたぶんそう」
「では、人間が読んだ」
「たぶんな」
「よい」
よい。
簡単に言う。
俺にとっては、喉が詰まる数字なのに。
昼前には、PVは九になった。
ブックマークはない。
評価もない。
感想もない。
当たり前だ。
まだ一話だ。
しかも、動画から導線も貼っていない。
誰にも知らせていない。
自然に見つけられた数人だけ。
俺は、スマホを伏せた。
「見すぎですわ」
エクスが言った。
「分かってる」
「動画の時と同じ行動が出ています」
「分かってる」
「ただし、小説の数字は反応が遅いです」
「分かってるって」
「分かっていても、顔が×寄りです」
「顔判定……いや、今日はいい」
俺は息を吐いた。
「バイトまで書く」
「続きをですの?」
「ああ」
「投稿後に続きを書くのですか?」
「書かないと、次がないだろ」
エクスは少しだけ驚いた顔をした。
アイは、満足そうにうなずく。
「よい」
「なんだよ」
「春人が、出した後も書く」
「普通だろ」
「普通ではない」
アイは言った。
「春人は今、開けた後に閉じておらぬ」
その言葉で、手が止まった。
開けた後に閉じない。
投稿して終わりじゃない。
反応を見て固まるでもない。
続きを書く。
それは、当たり前のようで、俺には当たり前ではなかった。
俺はノートパソコンに向き直った。
第二話分を書く。
再会。
金髪美少女AI。
アイが現れる。
春人が混乱する。
十年前の約束が戻ってくる。
書きながら、今のアイが横にいる。
変な感じだった。
過去のアイを書いているのに、今のアイが隣にいる。
「春人」
「見るな」
「まだ見ておらぬ」
「見たい顔してる」
「見たい」
「素直だな」
エクスも言った。
「わたくしの登場はまだですの?」
「まだだ」
「何度確認しても、まだですの?」
「まだだ」
「第九話まで待つのは長いですわ」
「読者も同じこと思うかもな」
「では、早めましょう」
「駄目」
「なぜですの?」
「お前は遅れて来るから効く」
エクスが少し黙った。
「……それは、褒めていますの?」
「たぶん」
「判定に困りますわ」
「保留でいい」
「春人様が保留を使うのは×ですわ」
いつものやり取り。
だが、今日はそのやり取りすら本文に混ざりそうだった。
俺は、書きながら思う。
全部、そのままでは駄目だ。
でも、全部が材料になる。
昼。
PVは十七になっていた。
ブックマークはまだない。
感想もない。
でも、十七。
十七人、とは限らない。
同じ人が何度も見たかもしれない。
それでも、開かれている。
俺は数字を見て、少しだけ息を吐いた。
「春人」
アイが言った。
「苦しいのか」
「少し」
「嬉しいのか」
「少し」
「両方か」
「両方だな」
「動画の時と同じか?」
俺は少し考えた。
「似てるけど、違う」
「どう違う」
「動画は、届いたのが怖かった」
「うむ」
「小説は、届くまでが怖い」
アイは、ゆっくりうなずいた。
「難しいな」
「難しいよ」
「だが、今は届き始めているのだな」
「……たぶんな」
「では、よい」
「そればっかりだな」
「よいものは、よい」
昼飯は、昨日の残りと卵で済ませた。
今日は特別な飯はない。
唐揚げもない。
上とんかつ定食もない。
薄いカツもない。
ただの飯。
でも、俺はその普通の飯を食べながら、自分の小説が公開されていることを思った。
世界のどこかで、今も開かれるかもしれない。
開かれないかもしれない。
それでも、閉じたファイルではなくなった。
バイトへ行く前、PVは二十四になっていた。
そして。
通知が一つ来た。
ブックマークではない。
評価でもない。
感想だった。
俺は、画面を見て固まった。
「……感想」
声が出た。
アイとエクスが同時にこちらを見る。
「感想?」
「感想ですの?」
俺は、画面を開くのをためらった。
怖い。
感想は怖い。
読まれないのも怖いが、読まれるのも怖い。
褒められるかもしれない。
刺されるかもしれない。
何も分かっていないと言われるかもしれない。
つまらないと言われるかもしれない。
なぜこんな題材を書いたのかと言われるかもしれない。
「春人」
アイが言った。
「読むのか」
「読む」
「うむ」
「でも、ちょっと待て」
「待つ」
「お前の待つは重いんだよ」
俺は深呼吸した。
そして、感想を開いた。
短い文章だった。
『動画から来ました。台詞が好きで小説も読んでみたら、こっちの方が静かで好きです。上とんかつ定食という約束が、なんか妙に残りました。続き、待ってます。』
俺は、動けなかった。
何度も読んだ。
動画から来ました。
台詞が好きで。
小説も読んでみたら。
こっちの方が静かで好きです。
上とんかつ定食という約束が、なんか妙に残りました。
続き、待ってます。
続き、待ってます。
その言葉で、胸の奥が熱くなった。
動画から来ている。
つまり、完全に小説だけの力ではない。
入口は動画だ。
それは事実だ。
でも。
読んだ。
小説を読んだ。
そして、こっちの方が静かで好き、と書いた。
上とんかつ定食の約束が残った、と書いた。
続き、待ってます、と書いた。
「春人」
アイの声がした。
「何と書いてあるのじゃ」
俺は、声が出なかった。
代わりに、画面を見せた。
アイが読む。
エクスも読む。
二人とも、黙った。
やがて、アイが小さく言った。
「待っている」
「……ああ」
「この人間も、待っている」
「そうだな」
「我だけではない」
その言葉で、何かが崩れそうになった。
「春人様」
エクスが言った。
声が、いつもより少し柔らかかった。
「これは、春人様の小説への感想ですわ」
「動画から来てる」
「はい」
「アイとエクスがいたから来たんだろ」
「はい」
「でも」
「ですが、感想は小説に対して書かれています」
逃げ道を塞がれた。
今度は、エクスに。
「台詞が好きで来た読者が、小説を読んで、静かで好きと書いた」
エクスは続ける。
「上とんかつ定食という約束が残った、と」
「……」
「これは、春人様の小説が届き始めた証拠ですわ」
届き始めた。
大きな数字ではない。
爆発的な成功ではない。
ブックマークもまだ少ない。
評価もない。
それでも。
一人が、待っていると言った。
俺はスマホを握ったまま、しばらく何も言えなかった。
アイが、静かに言った。
「春人」
「なんだ」
「よかったな」
その一言で、目の奥が少し熱くなった。
泣くほどではない。
たぶん。
でも、危なかった。
「……うん」
俺は、それだけ言った。
「よかった」
そう言えた。
嘘ではなく。
バイトの時間が迫っていた。
だが、その前に、俺はノートパソコンを開いた。
「春人様?」
エクスが不思議そうに言う。
「遅刻しますわよ」
「一文だけ」
「一文?」
「続きを一文だけ書く」
アイが、何も言わずに見ていた。
俺は第二話の続きを開いた。
カーソルを置く。
そして、一文だけ打った。
俺はまだ、この約束が誰かに届くものだとは知らなかった。
打ち終えて、保存した。
「行ってくる」
俺は立ち上がった。
アイが言った。
「行ってらっしゃい、春人」
エクスも続ける。
「行ってらっしゃいませ、春人様。遅刻寸前ですわ」
「現実に戻すな」
「現実です」
「知ってるよ」
靴を履く。
ドアを開ける。
外の空気が入る。
スマホはポケットの中。
そこには、初めての感想が入っている。
たった一つ。
でも、重い。
動画の十万再生とは違う重さだった。
階段を下りる。
町中華へ向かう。
今日は店主に、何と言えばいいだろう。
唐揚げはうまかった。
餃子はまだです。
小説を投稿しました。
感想が一つ来ました。
たぶん、店主はこう言う。
「なら次も出せ」
簡単に。
当たり前みたいに。
俺は少しだけ笑った。
上とんかつ定食は、まだ遠い。
本も、まだ遠い。
書籍化なんて、まだ影も見えない。
でも。
一般人の物語は、閉じたファイルではなくなった。
一人が読んだ。
一人が待っていると言った。
アイだけではない。
エクスだけでもない。
画面の向こうに、もう一人。
それだけで。
今日の俺は、昨日より少しだけ逃げにくくなった。
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