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インディー幕末ゲームで、運営の想定外を探していますが無理な件〜幕末ゲームなのに、古参も運営も明治を目指さないんですが。海外ニキ達が困惑しています〜  作者: 天のまにまに
第2章:このゲーム、作ったやつもプレイするやつもおかしい

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第9話:選択肢が生えるんだが

 柿三個から村の冬季産業が生えた。


 だったら今度は、まったく逆方向へ振ってみたい。


「今日は善人になる」

「⋯⋯どうしたの?」


 美咲が露骨に警戒した。


「昨日は人の柿を取ろうとして仁助に役人を呼ばれそうになった。今日は逆だ。困ってる奴を片っ端から助ける」

「反省したわけじゃないんだね」


「ふぁははは。村中を俺の善意で制圧してやる」

「善人プレイで軍事用語使わないで」


 俺は善人に進化したのだ。


 ログインすると、はじまりの村はまだ柿に占領されていた。

 見ろ、柿さえ軍事行動をしているではないか。

 軒下にも、物干しにも干し柿が並んでいる。


 村を歩いていると、薪の束を抱えようとしている爺さんがいた。

 ちょうどいい。


【薪を運ぶのを手伝う】


 +[薪を運ぶのを手伝う]

 を作った。


 >[薪を運ぶのを手伝う]


『おお、すまんな。腰が痛くてよ』


 家まで運ぶ。


《村人との関係が少し変化しました》


「一人目」

「数えるんだ⋯⋯」

「データの切り分けは大事だ」


 次は井戸。

 水桶を二つ抱えた女がいる。


 +[水桶を運ぶのを手伝う]


 その次は、道端で荷車の車輪をぬかるみに取られている男。


 +[荷車を押すのを手伝う]


 転んだ子供も起こす。

 道の真ん中に落ちている石もどけた。


「ふぁははは。俺の善意から逃げられると思うなよ」

「善意ってミサイルっぽく追いかけるものだっけ?」


 順調だ。

 しかも五人目くらいから、俺が作っていないものまで混ざり始めた。


[畑仕事を手伝う]

[壊れた柵を直す]

[迷子を家まで送る]


「来た」

「また増えた?」

「今度は善人用の選択肢が勝手に生えてる」


 柿と同じだ。

 一つ二つ試すと、ゲーム側が続きを考え始める。


 なら全部やってやる。


 畑仕事を手伝い、柵を直し、迷子まで送り届けたところで、向こうから仁助が歩いてきた。


 俺を見る。

 直した柵を見る。

 水桶を運んでもらった女を見る。

 もう一度俺を見る。


『お前、何やってんだ?』


 >[今日は村の人を助けて回っている]


 仁助が黙った。


『なんで?』


「お。聞いてきたぞ」

「そこ喜ぶところ?」


 答えも作れる。


 >[何が起こるか試している]


 仁助は俺の顔をしばらく見た。


『気味わりぃな』


「なんでだよ!」


 美咲が吹き出した。


「昨日まで柿盗もうとしてた人が、急に村中助けて回ってるんだよ。怖いよ」


『何か企んでんのか?』


「信用ないな、俺」

「ちゃんと昨日のこと覚えてる証拠じゃん」


 なるほど。

 善いことをしたから、それ以前の行動が消えるわけではないらしい。

 ならもっとやろう。


「見てろ。明日には俺を見る村人全員が拝むようになるぞ」

「目的変わってるよ」


 ◇◇◇◇


 翌日。

 ログインすると、泊めてもらっている仁助の家の前に野菜が置かれていた。


 大根二本。

 芋。

 薪。

 そして柿。


『⋯⋯またお前か』


「柿に罪はない」


 昨日薪を運んだ爺さんが、俺を見つけて近づいてきた。


『昨日は助かった。これ持ってけ』


《大根を二本受け取りました》


 井戸の女も来る。


『今度、人手が欲しい時は声かけな。うちの倅くらいなら貸すよ』


 荷車を押した男は別の話を持ってきた。


『兄ちゃん、荷運びやってるんだろ? 頼みたい荷があるんだが』


 さらに知らない男まで寄ってくる。


『あんた、困ってる奴を助けてくれるんだって?』


「⋯⋯誰だよ」


 俺は昨日、この男を助けていない。

 だが向こうは俺を知っている。

 画面を見る。


[村人に仕事を紹介してもらう]

[農具を借りる]

[人手を頼む]

[余った食料を分けてもらう]

[困っている人を紹介してもらう]


「増えすぎだろ」

「村、制圧できたね」

「⋯⋯できてしまった」


 老人を助けた。

 その老人が俺を覚えた。

 話が他へ伝わった。

 知らない人間まで、俺なら頼めると思い始めた。


 善行ポイントが貯まったわけじゃない。

 人間関係そのものが増えている。


「これ、好感度じゃないな」

「普通に信用じゃない?」

「ゲームなら数字で見せてくれ。分かりづらい」


『何が?』


 いつの間にか仁助が後ろにいた。


>昨日のやつ。やったことが村中に広がってる


『そりゃ広がるだろ。村なんだから』


「さらっと言うな」


 仁助は家の前に置かれた大根を見つけた。

 一本持ち上げる。


 >それ俺のだぞ


『二本あるだろ』


 >だからなんだ


『一本もらう』


 >ダメだ


 仁助が大根を抱えたまま、こっちを見る。


『昨日はあれだけ人にやってたじゃねえか』


>善意は昨日で売り切れた


『気味わりぃ善人だな』


>善人にも所有権はある!


 美咲が腹を抱えて笑っている。


「村中は善意で制圧できたのに、大根一本は譲らないんだ」

「当然だ。これは俺がもらった大根だ」


 仁助は少し考えたあと、大根を元の場所へ戻した。


『じゃあ今日の飯、お前の分だけ少なくするか』


>待て。それとこれとは話が別だろ


『俺んちだぞ』


「⋯⋯」


 強い。

 善意で村は制圧できても、家主だけは制圧できなかった。

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