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インディー幕末ゲームで、運営の想定外を探していますが無理な件〜幕末ゲームなのに、古参も運営も明治を目指さないんですが。海外ニキ達が困惑しています〜  作者: 天のまにまに
第2章:このゲーム、作ったやつもプレイするやつもおかしい

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第10話:夜間配送需要が生えた

 善意で村を制圧した翌日。


 俺は仕事を探していた。

 最近はこっちから探さなくても声をかけられることが増えたが、今日は妙に荷運びが少ない。


>今日は暇か?


 仁助に聞いてみた。


『昼からならな』


 仁助はそう答えて、荷車の車輪を確認している。

 そこへ、一人の男が駆けてきた。


『おい、荷運びできる奴はいねえか』


 できる。

 というか、今まさに暇だ。

 男が持ってきたのは、前橋まで運ぶ荷だった。


〖依頼:荷物を前橋まで運ぶ〗

〖報酬:三十文〗


「普通だな」

「仕事なんだから普通でいいでしょ」


 美咲の言う通りだが、最近ゲームの方が普通じゃなくなってきたので感覚がおかしくなっている。


 ところが男は続けた。


『明日の朝までに届けてくれるなら、九十文出す』


「三倍かよ」


 思わず声が出た。

 仁助は荷を見る。

 それから空を見る。


『無理だ』


「早いな」


『今から出たら帰りは夜だ』


 そこは俺も分かっている。

 だからこそ試したくなる。


 >[今夜のうちに運ぶ]


『とんでもねえ』


「即答かよ」


『暗い。道も悪い。盗人も出る』


 >でも三倍だぞ


『死んだらゼロだ』


「正論で殴るな。俺の嫌いな攻撃だ」

「仁助さん、今日もまともだね」


 俺は黙って荷を見る。


 三倍。

 魅力的だ。

 問題は夜道。

 だったら、夜道がどの程度危ないのか確かめればいい。


「ちょっと行ってくる」

「どこに?」

「夜道」


「今から?」

「運ばない。見るだけ」

「そういう人が一番危ないんだけど」


 ◇◇◇◇


 夕方。

 俺は一人で村を出た。

 提灯を持っているので、まったく見えないわけではない。

 ただし見える範囲が狭い。


「暗っ」


 道の先が分からない。

 少し外れると、草むら。


 戻る。

 また外れる。


「これ、普通に迷うな」


 前から犬が吠えた。


「うわっ」


 驚いて横へ避けたら、今度は足元の溝に落ちかけた。


「⋯⋯仁助が正しかった」

「帰ろうよ」


 美咲が当然のことを言う。

 だが少し歩くと、完全な闇ではないことにも気づいた。


 家の明かり。

 遠くに提灯。

 道を歩く人間もいる。


 しばらくすると、向こうから走ってくる男とすれ違った。

 背負っているのは荷物だ。


「夜でも運んでる奴いるじゃん」

「飛脚じゃない?」

「じゃあ不可能じゃない」

「その結論になるんだ。お兄ちゃんらしい」


 さらに進む。

 途中には休めそうな家もある。

 道の悪い場所も分かった。


 危険なのは間違いない。

 でも、何も分からないまま突っ込むのとは違う。

 その日は村へ戻った。


 ◇◇◇◇


 翌朝。

 昨日の男がまだいた。


『頼めねえか。どうしても朝までに届けたいんだ』


 荷はそのまま。

 報酬は百文に値上がりしていた。


 俺は仁助を見る。


>途中まで道を見てきた


『夜に?』


>昨日


 仁助の顔が露骨に嫌そうになった。


『お前、馬鹿か』


「NPCに馬鹿って言われた」

「今回は仕方ないと思う」


>道の悪い場所は分かった。途中に休める家もある


 仁助は少し黙った。


 昨日なら即座に断った。


 今日は違う。


 荷を見る。


 男を見る。


 空を見る。


『しょうがねえな』


「お?」


『だったらこうする』


 仁助が荷を指差した。


『全部一緒に持ってかねえ。急ぎの分だけ先に出す』


 >残りは明日?


『そうだ。あと一人雇う』


 さらに道の途中まで明るいうちに進み、危ない場所を日没前に抜ける。

 夜になってから無理に急がない。

 提灯も増やす。


「なるほど」


 無茶をやめたわけではない。

 無茶の中身を削っている。


「じゃあ、それで行こう」


 ◇◇◇◇


 夕方。

 三人で出発した。

 荷は昨日の半分以下。


 最初のうちは明るい。

 仁助の言った通り、道の悪いところを先に抜けた。

 日が落ちてからは、歩く速さを落とす。


 途中で雇った男がぼやいた。


『こんな仕事、二度とやらねえぞ』


>報酬はいつもの倍だぞ


『また声かけてくれ』


「変わり身、早つ!」


 美咲が笑った。


「お兄ちゃんと同じだよ」

「俺は金だけじゃない」

「三倍って聞いた瞬間、目の色変わってたけど」


 否定できない。


 途中で別の荷運びとすれ違った。

 向こうも提灯を持っている。

 少し進むと、画面に新しい選択肢が出た。


[途中の荷もまとめて運ぶ]

[夜間だけ料金を上げる]

[人足を途中で交代させる]


「また増えた」

「もう夜の商売になってるね」

「まだ一回目だぞ」


 しかも、まだ前橋にも着いていない。


 ◇◇◇◇


 夜明け前。

 無事に荷を届けた。


《急ぎ荷を予定時刻までに届けました》

《夜間輸送の実績が記録されました》

《新しい依頼形式が利用可能になりました》


「実績って?」


『百文だ』


 仁助は報酬を受け取ると、俺の方を見る。


『割に合わねえ』


「三倍以上だぞ」


『疲れる』


「そこか」


 帰りは普通に昼になった。


 ◇◇◇◇


 翌日。

 ログインした俺は、仁助の家から外へ出ると知らないNPCが待っていた。


 三人いる。

 全員、荷主らしい。


『夜でも運べるって聞いたんだが』

『急ぎで頼みたい』

『金なら出す』


 誰かが噂を広めたか。


『昨日運んだだろ』


 >一回だけだぞ


『一回できりゃ、できるってことだろ』


 画面を見る。


[夜間割増で引き受ける]

[夜明け前指定便を作る]

[途中で人足を交代させる]

[急ぎ荷だけをまとめる]


「⋯⋯増えてる」


 美咲が俺の肩越しに画面を見る。


「お兄ちゃん、今度は夜勤作ったね」

「作ってない」


《夜間急送の需要が発生しました》


「作ってないって!」


 仁助はそんな俺を無視して、荷主の一人と話を始めた。


『先に金の話しようぜ』


>お前、もうやる気じゃねえか


『九十文だったからな』


>割に合わないって言ってただろ!


『もっと取ればいい』



「⋯⋯学習してやがる」

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