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インディー幕末ゲームで、運営の想定外を探していますが無理な件〜幕末ゲームなのに、古参も運営も明治を目指さないんですが。海外ニキ達が困惑しています〜  作者: 天のまにまに
第2章:このゲーム、作ったやつもプレイするやつもおかしい

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8/14

第8話:第一回開発会議

第3話から大改稿いたしました。

早い話が、「あれ?選択肢メイキングってのが出た」という設定です。

よかったら見返してみてくださいませ。

 十年前。

 からくり堂、会議室。


 会議室のホワイトボード、中央には大きく、


【SILK GENESIS 企画会議】


 と書かれている。


司会「では、第一回開発会議を始めます」


 進行役が資料を開いた。


司会「まず、ゲームの基本コンセプトから決めたいと思います」


「はい」

「うい」

「うっす」

「YES Sir」

「ぶつぶつ」


 参加者がてんでんバラバラに返事をする。


 チーフプロデューサーが頷く。


司会「プレイヤーは何をするゲームですか?」

チーフP「好きなことをします」


司会者「⋯⋯もう少し具体的に」

チーフP「好きなことです」


司会者「そこを決める会議です」


 開始十秒。

 進行が止まった。


 企画担当が助け舟を出す。


企画「たとえば、農業をするゲームなのか、商売をするゲームなのか、戦争をするゲームなのか」

チーフP「全部できます」


司会「ではメインは?」

チーフP「ありません」


企画「ない?」

チーフP「はい」


 沈黙。


 プログラマーが眼鏡を押し上げた。


プログ「つまり、オープンワールド型の生活シミュレーション?」

チーフP「少し違います」


プログ「何が?」

チーフP「オープンワールドって、世界がプレイヤーを待ってますよね」


プログ「ゲームなので」

チーフP「待たなくていいです」


プログ「⋯⋯誰が?」

チーフP「世界が」


 プログラマーが資料を閉じかけた。


チーフP「NPCは、プレイヤーが来なくても働きます」

プログ「それはできます」


チーフP「結婚もします」

プログ「できます」


チーフP「商売もします」

プログ「まあ」


チーフP「勝手に失敗します」

司会「そこまで必要ですか?」


チーフP「必要です」

企画「なんで?」


チーフP「人間なので」

企画「NPCです」

チーフP「だから?」


 また止まった。


 経済担当が手を挙げた。


経済「では、市場システムについて」


司会「お願いします」


経済「村ごとに需要と供給を持たせますか?」

チーフP「はい」


経済「プレイヤーが安い村で買って、高い村で売る」

チーフP「いいですね」


経済「なら裁定取引が成立します」

チーフP「しますね」


経済「繰り返せば稼ぎ放題になります」

チーフP「NPCもやればいいんじゃないですか」


経済「⋯⋯何を?」

チーフP「同じことを」


経済「NPCも価格差を見て売買する?」

チーフP「人間ならしますよね」


経済「ゲームですよ」

チーフP「だから?」


 経済担当が天井を見た。


経済「すると、プレイヤーが見つけた稼ぎ方をNPCが真似して、市場価格が崩れます」

チーフP「素晴らしい」


企画「攻略法が潰れます」

チーフP「攻略法って、潰れないものなんですか?」

企画「普通は!」


 声が響いた。


 チーフPが首を傾げる。


チーフP「昨日の正解が、今日も正解って変じゃないですか?」

企画「ゲームですから!」


チーフP「でも市場ですよ?」

経済「ゲームの市場です!」

チーフP「市場ですよね?」


司会「⋯⋯次行きましょう」


 進行役が強引に流れを切った。


司会「NPCとの関係性について」


 AI担当が資料を出した。


AI担「まず好感度を設定して」

チーフP「それだけだと足りません」


AI担「では信頼度も」

チーフP「それでも足りません」


AI担「村内評判?」

チーフP「必要です」


AI担「信用度?」

チーフP「必要です」


AI担「他に?」

チーフP「噂も」


AI担「多くないですか?」

チーフP「人間関係って一個の数字ですか?」

AI担「だから、それを数字にするのが我々なんです!」


 チーフPは少し考えた。


チーフP「じゃあ、数字は持たせましょう」


司会「ようやく話が進んだ」


チーフP「ただし、数字そのものを行動理由にはしないでください」


「「「「⋯⋯はい?」」」」


チーフP「好感度が八十だから助ける、ではなくて」


 チーフPは立ち上がりホワイトボードに書く。


【なぜ、その人を助けるのか】


チーフP「理由を持たせたいんです」

企画「それを全部?」

チーフP「全部」


プログ「何人?」

チーフP「できるだけ多く」


プログ「サーバー燃えますよ」

チーフP「そこは技術班に」


技術「急に丸投げ!」


 技術担当から悲鳴が上がった。


 企画担当が咳払いする。


企画「イベントはどうします?」

チーフP「イベント?」


企画「たとえば飢饉、祭り、恋愛、喧嘩、盗難、結婚、逃散」

チーフP「ああ」


 チーフPが頷いた。


チーフP「イベントを開発室で起こす必要はありません」

企画「では?」

チーフP「NPCに理由さえあれば、勝手に起きます」


 全員が黙った。


チーフP「イベントを作るのではありません」


 ホワイトボードにもう一行。


【イベントが起きる条件を作る】


企画「⋯⋯それ、何パターン作るんです?」

チーフP「パターン?」


企画「イベントの」

チーフP「作りません」


企画「さっきから何を言ってるんですか!」

チーフP「条件です」


企画「だから条件を何個!」

チーフP「必要なだけ」


企画「必要なだけって何個!」

チーフP「そこをこれから」

企画「今日の会議で決めるんですよ!」


 議事録担当の手が止まった。


【仕様:未定】


 と入力した。


 戦闘担当が恐る恐る手を挙げる。


戦闘「戦闘はどうしましょう」

チーフP「必要ですね」


戦闘「敵は?」

チーフP「人間です」


戦闘「盗賊とか?」

チーフP「場合によっては」


戦闘「外国軍?」

チーフP「場合によっては」


戦闘「幕府軍?」

チーフP「場合によっては」


戦闘「海戦も?」

チーフP「場合によっては」


戦闘「村人?」

チーフP「場合によっては」


戦闘「誰でも敵になるじゃないですか」

チーフP「誰でも味方にもなります」


戦闘「⋯⋯どうやって決めるんです?」

チーフP「それまでの関係で」


 AI担当が机に突っ伏した。


 チーフPは続ける。


チーフP「ただ、戦闘そのものは中心にしたくないです」

企画「では何が中心なんです?」


チーフP「選択です」

企画「選択肢?」


チーフP「違います」

企画「⋯⋯違う?」


チーフP「選択肢を押すことじゃなくて、何をするかを選ぶことです」


企画「それ同じでは?」

チーフP「全然違います」


 誰も質問しなくなった。


 進行役が最後の力を振り絞る。


司会「では確認します」


チーフP「はい」


司会「このゲームで、プレイヤーに何をさせたいんですか?」


 チーフPは少し考えた。


チーフP「別に、何も」

司会「⋯⋯何も?」

チーフP「はい」


企画「では我々は何を作るんです?」


 チーフPはホワイトボードを見る。


 市場。

 信用。

 噂。

 家族。

 労働。

 戦争。

 飢饉。

 商売。

 人間関係。


 そして、その全部を丸で囲んだ。


チーフP「プレイヤーが何かした時に」


 ペンを置く。


チーフP「ちゃんと返事が返ってくる世界です」


 沈黙。


 議事録担当が入力する。


【基本コンセプト:プレイヤーの行動に世界が返事をする】


議事「⋯⋯これでいいですか?」


チーフP「いいですね」


司会「じゃあ次回までの宿題は?」


 チーフPが答える。


チーフP「世界を作る」


「「「「「範囲が広い!」」」」」


【第一回開発会議 終了】


【決定事項:ほぼなし】


【次回までの宿題:世界を作る】

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