↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
インディー幕末ゲームで、運営の想定外を探していますが無理な件〜幕末ゲームなのに、古参も運営も明治を目指さないんですが。海外ニキ達が困惑しています〜  作者: 天のまにまに
第1章:このゲーム、俺に返事をしてくれる

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
4/14

第4話:たかぎは ともだちが できた

 翌朝。

 俺は、田口村の外にいた。


 正確には追い出されたままだった。

 村の入口には昨日から追加された男が二人。


『帰れ』


 近づく。


『帰れ』


 もう一歩。


『帰れ』


「三回言われた」

「学習しなよ」

「確認は大事だ」

「昨日からずっとそれ言ってる」


 入れない。

 当然、店も使えない。

 当然、仕事もない。


〖所持金:十五文〗

〖住居:なし/後見人:なし〗

〖村内評判:敵対〗


「十五文あるじゃん」

「飯買えるかな」

「村に入れないけどね」

「⋯⋯」


 詰んでる。

 その時だった。


 ぐうぅぅぅ⋯⋯。


「⋯⋯」

「⋯⋯」


 美咲が俺を見る。


「今の、お兄ちゃん?」

「違う」


 もう一度。


 ぐうぅぅ⋯⋯。


 モニターを見ると。


《空腹》

《行動効率が低下しています》


「ゲームの音かよ! 間違えられるだろ?」

「びっくりした」

「すげえな。ここまでリアル再現」

「喜ぶところじゃないよ」


 キャラクターの動きが少し重い。

 走るとすぐ速度が落ちる。


 画面の端には、


《空腹度:高》


 まで出ている。


「寝れば回復するゲームじゃないのか」

「人間は寝たらお腹減るよ」

「正論やめろ」


 とにかく飯だ。

 村に入れない。

 外を歩く。

 街道沿い。

 畑の外れ。

 雑木林。


 何人かNPCを見つけて話しかけた。


『仕事? どこの者だ』


[田口です]

[旅の者です]

[仕事だけください]


 >[仕事だけください]


『紹介もなしじゃ無理だ』


 終了。


 別の男。


『信用できる奴なのか?』


[できます]

[たぶん]

[できません]


「三番」


「やめなよ」


 >[たぶん]


『帰れ』


「厳しい」

「お兄ちゃんのせいだよ」


 さらに歩く。

 腹が鳴る。


 ぐうぅぅ⋯⋯。


「うるさいな」

「さっきまで褒めてたじゃん」

「限度がある」


 その時、道の脇で一人の若い男が荷物を積んでいた。


〖仁助/人足/十八歳〗


 年齢は若いがリアルな俺より頑丈そうで大人っぽい。体は痩せているが、腕は太い。

 荷を縄で縛っていた仁助が、こっちを見る。


『お前、田口で追い出された奴だろ』


「⋯⋯」

「有名人じゃん」


 選択肢。


[違います]

[そうです]

[誰から聞いた]

[仕事を探しています]


 俺は迷わない。


 >[誰から聞いた]


『誰って⋯⋯みんな知ってるぞ』


「終わった」

「村社会こわいね」


 噂の伝播範囲、思ったより広い。

 仁助が俺を見る。


『薪売ったんだって?』


 返事の選択肢。


[売りました]

[誤解です]

[もう返せません]


 >[売りました]


『馬鹿だな』


「NPCに馬鹿って言われた」

「でも間違っていないよ」


 仁助は笑った。

 それだけだった。

 怒るでもない。

 追い払うでもない。


 そして。


 ぐうぅぅぅ⋯⋯。


 また腹が鳴った。

 それに反応したように仁助が止まる。


『腹減ってんのか?』


[大丈夫だ]

[食べ物が欲しい]

[仕事を探している]


 ここで食べ物を直接ねだるのも違うな。


 >[仕事を探している]


『仕事か』


 仁助が荷車を見る。

 少し考えた。


『これ運ぶの手伝え』


 画面に依頼が出る。


〖依頼:荷運びの手伝い〗

〖報酬:握り飯二個〗


「銭じゃない」

「いいじゃん。お腹減ってるんでしょ」

「ゲーム開始早々、俺、貨幣経済から脱落した」


 仁助が続ける。


『ただで飯やる気はねえ。働け』


[働く]

[断る]


「厳しいな」

「普通だよ」


 >[働く]


『よし』


 ◇◇◇◇


 仕事は単純だった。

 荷車に積んだ桶を、少し先の農家まで運ぶ。


 仁助が前。

 俺が後ろ。

 押す。

 重い。


〖空腹のため作業効率が低下しています〗


「細かいなあ」

「早く働きなよ」


 道の途中、仁助が大きく道を迂回した。


 前を見る。

 ぬかるみ。

 横を見る。

 畑の脇に細い道がある。


「こっち通れないのか?」


 もちろん仁助に聞いたわけじゃない。

 独り言だ。


 俺はキャラクターを細道へ向ける。

 通れそうだ。荷車もぎりぎり入る。


 仁助がこっちを見る。


『そっち行けるのか』


 そのままついてきた。


「お」

「なに?」

「ちゃんと見てる」


 決められた道へ戻されると思っていた。

 でも違う。

 俺が道を変えたら、仁助もそれを使った。


 農家へ到着。


〖依頼達成〗


 仁助が荷車の横から包みを出した。


『ほらよ』


〖握り飯を二個受け取りました〗


「来た」


 使用。


《空腹状態が解除されました》


 キャラクターが握り飯を食べる。


「うまそう」

「これ、VRじゃないよ」

「分かってる」


「よだれ出てない?」

「出てない」


 たぶん。


 仁助が荷車を直しながら言う。


『明日も仕事探してんのか?』


[探している]

[まだ分からない]

[もっと稼げる仕事がいい]


 これだ。


 >[もっと稼げる仕事がいい]


 仁助が少し考えた。


『分かった。なんか探しとく』


「⋯⋯」

「どうしたの?」

「いや」


 クエスト一覧が出ると思った。

 だがそうじゃない。


 こいつ、探しておくと言った。

 画面の上端に表示が出る。


《仁助との関係が深まりました》


 続けて、


《拡張機能の解放条件が進行しました》


「来た」

「何が?」

「昨日のやつ」

「拡張機能?」

「たぶん」


 詳細は、まだ開けない。


 仁助は普通に荷車を引いている。


 美咲が画面を見る。


「お兄ちゃん」

「ん?」


「ともだちできたね」

「NPCだろ」

「はいはい」


 俺はもう一度、仁助を見る。

 変なNPCだ。

 でも。明日の仕事は、できたらしい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。