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インディー幕末ゲームで、運営の想定外を探していますが無理な件〜幕末ゲームなのに、古参も運営も明治を目指さないんですが。海外ニキ達が困惑しています〜  作者: 天のまにまに
第1章:このゲーム、俺に返事をしてくれる

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第3話:ゲームが返事をしてきた!

 ゲーム開始後、一秒で俺の人生は見事なまでに終わっていた。


〖所持金:三文/住居:なし/後見人:なし〗

〖村内信用度:最低/村内評判:警戒〗


「⋯⋯ひどいな」

「自分で選んだんでしょ」


「これはお世辞だ」

「ひねくれてるね」


 画面には上州の小さな村。

 田んぼ、畑、雑木林、茅葺き屋根。


「⋯⋯地味だ」

「さっきから何回目?」

「大事なことだから何回でも言う」


 ただ、作り込みは細かい。

 近くの村人に話しかけた。


〖与平/百姓/四十二歳〗


『見ねえ顔だな。どこから来た』


[旅の途中です]

[仕事を探しています]

[腹が減りました]

[答えたくありません]


「選択肢を使ったRPGか。小学生以来だな。これで想定を越えるのはムズいぞ」

 そう言いつつも、俺は挑戦するのが誇りだ。


 >[答えたくありません]


「なんで初対面から喧嘩売るの」

「反応を見る」


『そうかい』


 会話終了。


「⋯⋯終わった」

「そりゃ終わるよ」

「これだけか?」


 まだ分からない。

 問題は、この先だ。

 村を歩く。


〖お熊/百姓/五十六歳〗


〖新吉/小作人/二十九歳〗

〖妻:お峰/長男:伊助/長女:お花〗


「全員名前付きか」

「すごいの?」

「設定だけなら普通。大事なのは、こいつらが本当に動くかどうかだ」


 しばらくすると、老人から声をかけられた。


〖清兵衛/百姓/六十八歳〗


『お前さん、仕事を探してるのか』


[はい]

[いいえ]

[食べ物をください]


 >[はい]


『なら、この薪を庄屋の家まで運んでくれ』


〖依頼:薪を届ける/報酬:十五文〗


「普通のお使いクエストだね」


 足元の薪を持ち上げる。

 庄屋へのマーカー。

 俺は薪を見る。


「⋯⋯お兄ちゃん」

「この薪、売れるかな」

「届けなさい!」


 村の商店へ向かう。


〖売却:薪の束/十二文〗


「依頼品なのに売れる」

「売っちゃ駄目でしょ」


 売却。

 依頼欄は消えない。


 だが店を見ると、


〖薪の束/三十文〗


「収益がエグっ」

「十二文で売ったやつだよね?」

「江戸時代の資本主義が殴ってきた」


 買い戻せない。

 仕方なく清兵衛のところへ戻る。


『薪はどうした』


[まだです]

[なくしました]

[売りました]


「[売りました]があるぞ」

「やめなよ」


 >[売りました]


『売った? お前さん、わしの薪を?』


《清兵衛の好感度が大きく低下しました》

《村内評価が低下しました》


 待つ。

 何も起きない。


「⋯⋯普通だったね」


 拍子抜けした。

 その後、仕事を探すが、


『悪いが、よそ者には任せられねえ』

『誰の紹介だ?』


 仕事なし。

 宿にも泊まれない。


[野宿しますか?]


 >[野宿します]


 ◇◇◇◇


 翌朝。


 村外れで起き上がった直後、一人のNPCが走ってきた。


「ん?」


 清兵衛だ。


『いたぞ、この野郎!』


「⋯⋯」

「さっきのおじいさん?」


 美咲が吹き出した。


『昨日は逃げやがったな! わしの薪を売った金、返せ!』


「覚えてる!」

「そりゃ覚えてるんじゃない?」

「違う。一晩経ってる。しかも俺は村外れだぞ」


 さらに後ろから二人。


〖与平〗

〖新吉〗


『清兵衛さん、こいつか』

『とんでもねえ野郎だな』


《村内評判:不審者》


「増えた!」

「怒ってる人が?」

「関係者だよ!」


 清兵衛が話した。


 それを聞いた二人まで俺を知った?


「噂が伝わってる?」

「お兄ちゃん、顔が怖い」


 選択肢。


[金を返す]

[謝る]

[逃げる]


 俺は迷わず決めた。


「逃げる」

「なんで!?」

「次を見たい」


 >[逃げる]


『待ちやがれ!』


 三人が追ってくる。


「来た!」

「来てるよ!」

「ゲームが返事してきた!」


 俺が薪を売った。

 清兵衛が怒った。

 誰かに話した。

 別の村人まで俺を知った。

 俺が逃げたから、追ってくる。


 昨日の行動が、今日までつながっている。

 俺の馬鹿な行動に、この世界が本気で付き合ってきている。


「これ、当たりかもしれん」

「開始早々、村人三人に追われてる人が言う台詞じゃないよ」


 村の出口まで逃げ切った。


《村から追放されました》

《始まりの村への立ち入りが制限されました》


「⋯⋯」

「詰んだね」


 戻ろうとすると、入口には昨日までいなかった男が二人立っていた。


『帰れ』


「門番まで配置された」

「お兄ちゃん対策じゃん」

「俺のせいで村の警備体制が強化されたぞ」

「誇るな」


 俺は笑った。


 ラスボスにパンを投げても、酒を投げても、聖剣を渡そうとしても何も返してこなかったゲームとは違う。


 こいつは、本気で返してくる。


「最高だな、このゲーム」

「頭おかしいよ」


 その時、画面の隅に表示が出た。


《特殊行動パターンを確認しました》


「ん?」


《拡張機能の解放条件を一部満たしました》


「拡張機能?」


 詳細を開く前に消えた。


「何かあるぞ」


 面白くなってきた。


 ◇◇◇◇


 群馬県の小さな葬儀場。

 黒い礼服姿の男が家族葬の部屋を出たところで、女性秘書が小走りに近づいた。

 耳打ちされ、男の表情が変わる。


「なんだと?」

「はい。JS-2026が脱走しました」


 男はすぐにスマホを取り出した。


「私だ。状況を報告してくれ」


 返答を聞き、眉間に皺を寄せる。


「どこに接触したかを全部洗え。所在の特定を最優先。封鎖手順も開始しろ」


 電話を切り、黒塗りの車へ向かう。

 乗り込む直前、一度だけ葬儀場を振り返った。


「あの爺さん。最後まで俺たちに問題を押し付けてくれる⋯⋯。出してくれ」


 からっ風の中、車が走り出す。


 百年前、群馬県で生まれた一人の男の、波乱万丈な人生が終わった。

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