ITエンジニアが考える物語における感情の扱い方
感情実装技法という形でまとめてみました。
最近気が付いたんで、今までのエピソードには十分に取り込めていません。
現在公開を進めている アーク 『第一章第一部 準人類と武技大会編』にも十分に反映できていると言えません。
だから、また今の物語を良くするのに使いたいっていう輪の中に入っていってしまいました。
あははっ
さて、以前六紐理論というものを創作技術の一つとして提唱しました。
これは、人間関係を結ぶ紐に六種類の名前を付けて扱うと扱いやすいのではないかという仮説に基づき、整理したものでした。
今回、六紐理論における関係をキャラクター個人が持つ欲求に接続することで感情の表出を演出できる。そういう技法を自分なりに纏めました。
■理論
感情をエネルギーとしてではなく、
現象として扱う。
本技法では、
欲求をエネルギー源、
感情を欲求と出来事の相互作用によって発生する現象
として近似する。
欲求そのものは普段は潜在的に存在している。
そこへ、
・充足
・不足
・脅威
・喪失
・回復
などの出来事が作用すると、
感情が発現する。
欲求の充足
→ 安心・喜び・満足
欲求への脅威
→ 不安・怒り・恐怖
欲求の喪失
→ 悲しみ・虚無感
欲求の回復
→ 安堵・感謝・幸福
が発生する。
したがって、
感情を直接設計するのではなく、
欲求を設計する。
感情は、
欲求と出来事との相互作用による出力結果である。
■欲求の扱い
本技法の目的は、人間の欲求を正確に分類・定義することではない。
目的は、
キャラクターの欲求を設計することで、感情発生に説得力を与えること
である。
そのため本技法では、人間心理を厳密に扱わず、
創作で利用可能な近似モデルとして扱う。
実際の人間の欲求は、
生理的欲求
安全欲求
所属欲求
承認欲求
自己実現欲求
など複数の軸を持つ。
さらに、それらが複数階層で重なり合いながら存在していると考える。
しかし、
その全てを物語へ直接投入すると扱いづらい。
そのため本技法では、
実装のしやすさを優先し、一旦三階層へ圧縮する。
三階層は心理学的真実を表現するためのものではなく、
物語に実装しやすくするための作業用分類である。
そのため、
物語の性質によって、
二階層に減らしてもよいし、
四階層以上へ増やしてもよい。
根源欲求
人生観や存在理由、
価値観に関わる欲求。
長期アークや物語の核心と結びつきやすい。
例
居場所が欲しい
認められたい
自由でありたい
大切な人を守りたい
関係欲求
人間関係や所属の中で発生する欲求。
仲間、家族、恋愛、組織などとの関係に強く結びつく。
例
仲間でいたい
信頼されたい
頼られたい
失いたくない
現在欲求
その章、その場面で気にしていること。
日常回や短編では主にここを使用する。
例
今日の狩りを成功させたい
空気を良くしたい
褒められたい
あの服を買いたい
キャラクターは通常、
複数の欲求を同時に持つ。
また、
現在欲求は関係欲求から、
関係欲求は根源欲求から派生していることが多い。
■エピソード設計
まず物語構造を作る。
次に、
エピソードで使用する欲求層を選ぶ。
軽い日常回
→ 現在欲求
交流回
→ 関係欲求
山場
→ 根源欲求
その後、
起承転結に合わせて
・充足
・不足
・脅威
・喪失
・回復
を配置する。
すると感情が自然発生する。
しかし、増幅させる方法はまた別にある気がしている。
今は、物語の中に落とし込む技法をとして強度は問わず扱う。
■逆算
感情シーンから逆算も可能。
感情
↓
その時満たされたもの、
失われそうになったもの
↓
エピソード欲求
↓
関係欲求
↓
根源欲求
を推定できる。
■実践例
以下の構造を持ったエピソードを考えるとする。
装備が壊れた。
修理に行く。
修理するためには修理できるところに行く必要がある。
知り合いの所に行く。
知り合いとの掛け合い。
修理するための条件が出る。
条件を満たすための対応。
修理する。
また使えるようになる。
終わり
はい、構造としては割と綺麗です。でもなんだか味気ない。
そこで、
壊れた装備を持ち主の欲求とつなげる。
例えば、家の象徴(継承)、誰かの形見(愛着)、命を何度も救ってくれた相棒のような道具(信頼)
そうすると
装備が壊れた。→不安、心配が出てくる。
修理に行く。→不安、心配を解消する行動として見せられる。
修理するためには修理できるところに行く必要がある。→もしかしたら仲間を頼らないといけないかもしれない。
知り合いの所に行く。→不安を共有できる距離になるか、そうでないかでドラマが生まれる。
知り合いとの掛け合い。→不安を共有し、預けられると、ほっこりする。
修理するための条件が出る。→不安、心配の解消のために覚悟をするドラマ。
条件を満たすための対応。→覚悟を実現するための努力ドラマにできる。
修理する。→直っていく様を見る。じんわりと安心が広がる。
また使えるようになる。→ほっとする。知り合いが仲間になっているかもしれない。頼った仲間との絆が深まる。
終わり→明日を見れる。
おおおーーー、これすごくない……?
纏め
私には、感情の設計は向いていない。
だから、欲求に対する作用を設計として設計する。力学モデルの概念を応用する。
感情はその結果として発生させる。
私は感情を直接動かせない。それをやると絶対に物語を壊してしまう自信だけがなぜかある。
だけど、欲求の充足・不足・脅威・喪失・回復を配置するのは、出来る。出来る気がする。
だから、欲求を設計して、感情を発露として扱うっていう技法で、今日も物語を考える。




