ITエンジニアには感情描写は、多次元というより多層に見える
感情描写を整理するための「四層構造」
第一層 外兆候
第二層 情景
第三層 モノローグ
第四層 説明
最近、小説の感情描写を整理する時に使っている考え方があります。
別に理論というほど大げさなものではありません。
感情描写が今どの深さで書かれているかを確認するためのメモのようなものです。
意外と便利でした。
第一層:外兆候
まず読者が見えるもの。
身体の反応や仕草です。
例えば、
手が止まる
指を絡める
肩が跳ねる
足が震える
視線が逸れる
など。
『心の歩幅』のシーンでは、
ミナトの口角が一瞬だけ上がりかけて、戻る
があります。
感情は説明されません。
でも読者は、
「嬉しかったんだな」
を受け取れます。
また、
Aは笑う。笑いのまま言い切る。
言い切ったあと、指先が一度だけ握られて、ほどける。
これも同じです。
失恋とは書いていません。
でも、何かを飲み込んだことは伝わる。
第二層:情景描写
感情を直接書かない代わりに、
背景に滲ませる方法です。
例えば、
「長い秋。窓は明るいのに、谷に影が残って光が遅れて落ちる。」
や
「谷底へ降りるほど冷えが戻る。」
「音が遠くへ伸びない。」
など。
情景自体は感情ではありません。
でも、
緊張
寂しさ
距離感
もどかしさ
を補強しています。
第三層:モノローグ
本人が認識している感情です。
例えば、
「熱が無い感じ。」
「私に興味ない?のかな。」
あるいは、
「何これ、ダメ。」
「解らない。」
など。
ここで重要なのは、
本人もまだ整理できていないことです。
あるキャラのの場合なら、
「失恋ってさ、こんなに静かなんだね」
です。
説明はまだありません。
ただ、本人が感じていることだけがあります。
第四層:説明
因果を明示する層です。
例えば、
AがBを褒めなかった。
Bは、自分が悪かったのだと思った。
とか、
Aは、自分が最初からBの価値感の外にいたことを理解した。
みたいなものです。
感情の理由を説明する層。
評論や創作論では有効です。
私が面白いと思ったこと
分析していて気付いたのですが、
私の作品はだいたい第三層で止まっています。
第四層まで行くことは少ない。
つまり、
手が止まる
↓
冬が寒い
↓
苦しい
までは書く。
でも、
なぜ苦しいのか
までは書かない。
読者に委ねる。
なぜ第三層で止めるのか
理由はシンプルです。
余韻が残るから。
例えば、
失恋ってさ、こんなに静かなんだね
で終われば、
読者は考えます。
でも、
なぜなら私は恐怖の前で立ち止まり、
ミナトは進み、
その違いを理解したからだ
まで説明すると、
読者の仕事が消える。
漫画でも似ています。
『スラムダンク』も『NARUTO』も、
意外と第四層までは行きません。
第三層で止まります。
だから読者同士が、
あれってこういう意味だったんじゃない?
と語れる。
まとめ
感情描写を小説に実装しようと考えると、どうもこんな四層に整理すると都合がよさそうです
外兆候
情景描写
モノローグ
説明
そして私個人は、
第三層で止めることが多いようです。
その方がキャラクターが作者の分身ではなく、
物語世界で生きている人間として残る気がするからです。
感情を説明する技術より、
どこで説明をやめるか。
そちらの方が、小説では重要なのかもしれません。
…………なんとなく構造は見えた気がした。
でも、だからと言って、繊細な感情描写ができるとは思っていない。
感情を整理する方法と、
感情を読者へ届ける技術は、
たぶん別物だから。
いつか、繊細な感情描写。
極端な例で言えば、
「月がきれいですね」
の一言で、
「あなたが好きです」
を伝えられるような物書きになりたい。




