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水鏡に咲く白き花 作者:水城ゆま

第一章 『 一蓮托生 』

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「 東雲 」

 
 
 
睡蓮(スイレン) ――― 本当にごめん!! 」


「 あの、お気になさらないでください…!この通り、私はもう回復しておりますから ――― 」


帰って来た白夜(ハクヤ)睡蓮(スイレン)に深々と頭を下げる様子を見て、
東雲(シノノメ)秋陽(しゅうよう)日葵(ひまり)がお茶を飲みながら野次(やじ)を飛ばし始める。


睡蓮(スイレン) 、もっと怒っても良いんだよ? 」

「 そうじゃ、睡蓮(スイレン)! 問題は其処(そこ)では無いぞ睡蓮(スイレン)! 」

「 に、しても " 睡蓮(スイレン) " なんて (いき)な事するようになったじゃない (ハク)ちゃん! 」


全員、睡蓮(スイレン)の名前の事で自分をからかっているなと 白夜(ハクヤ)は薄々気づいていたが
( ※特に無駄に二回言った親父で。 )今は目の前の睡蓮(スイレン)に 集中する事にした。



「 あの…白夜(ハクヤ)さん、本当に私 怒ってなんかいません。
  どうか、顔を上げてください…!
  紅炎(コウエン)の賢い所と、お部屋が見れて なんだか得した気分ですから大丈夫ですよ! 」

睡蓮(スイレン)…――― そう言ってくれると助かるんだけど、その理由は ちょっと苦しい物が…… 」

「 え…? 」

「 え? 本気で言ってたの!? 」


頭を上げた白夜(ハクヤ)が見た睡蓮(スイレン)の顔は、きょとんとした表情をしており、思わず白夜(ハクヤ)は吹き出してしまった。
笑顔の白夜(ハクヤ)を見て、睡蓮(スイレン)が嬉しそうに微笑んだので日葵(ひまり)以外の二人は白け始める。



桔梗(ききょう)さんには追いつけましたか? 」

「 ! ! ! ! 」

――― 睡蓮(スイレン)の口から 桔梗(ききょう)の名が出た瞬間、睡蓮(スイレン)以外の全員が同時に固まる。



現在、此処(ここ)に居合わせている睡蓮(スイレン)以外の全員が白夜(ハクヤ)睡蓮(スイレン)を助けた時の状況を知っている。
誰も その事を睡蓮(スイレン)に言わないでいるのは、白夜(ハクヤ)に" 自分で伝える "と言われたのと
言ってしまう事で、睡蓮(スイレン)が傷ついてしまったり 結婚を嫌がったり、白夜(ハクヤ)桔梗(ききょう)が引き裂かれてしまうという
三者とも得しない最悪の結末になるのを恐れているからでもあった。



「 う…うん、おかげで桔梗(ききょう)と話せたよ。 」

「 そうですか! それは良かったです。
 桔梗(ききょう)さんが作られた朝食(お料理)も とてもおいしかったですし
 私も あの(かた)にまたお会いできると()いのですが…… 」




(ちまた)で噂の " 修羅場 " ってやつか……
三人には悪いけど、本物をちょっと見てみたいな。 )

( うちの息子は どうしてこんなにモテるのじゃろう? )

( 両方 嫁にもらえば良いのに。(ハク)ちゃんならできると思うんだよね…… )

――― 東雲(シノノメ)秋陽(しゅうよう)日葵(ひまり)は心の中で野次を飛ばした。




睡蓮(スイレン)。 」

「 はい ――― 何でしょう? 」

「 俺は 君に話さなくてはならない事があるんだ。 」

「 ? 」


白夜(ハクヤ)がチラッと野次馬三名のほうを見ると、
東雲(シノノメ)秋陽(しゅうよう)日葵(ひまり)が瞳をキラキラと輝かせて自分と睡蓮(スイレン)のほうを見ていたので
( 皆、他人事だと思って……――― )と、げんなりとした表情で白夜(ハクヤ)は深い溜息(ためいき)を吐いた。



「 ……でも、ここじゃなんだし、それに俺 今日は帰れないから
 花蓮(カレン)様の即位式(そくいしき)が終わってからにしようかと思う。」

「 ? ――― わかりました。 」




「 宮廷に行くの? じゃあ、俺も行かないと! 」――― 東雲(シノノメ)が慌てた様子で椅子から立ち上がる。


()の 『 東雲(シノノメ) 』と云う男は墓守(はかもり)の家系に生まれ、年は二十六歳。
リエン国の墓守は、葬儀式の進行や葬儀に必要な(ひつぎ)や 花や香の手配など死者に関する事を専門的に何でも(おこな)っている。

秋陽(しゅうよう)の診療所では滅多に死者は出ないが、それでも東雲(シノノメ)達 親子に世話になる機会は多く
白夜(ハクヤ)東雲(シノノメ)幼馴染(おさななじみ)か 親戚 と 言っても良い程、昔から 家ぐるみで 付き合いがあるのだ。

東雲(シノノメ)は、先日の (ハチス) 王の葬儀にも(たずさ)わっており、今日も (ハチス) 王の法要の件で宮廷に呼ばれているので
白夜(ハクヤ)と一緒に行こうと思ってやって来ていた所、紅炎(コウエン)に引き摺られて行く 睡蓮(スイレン)の声に気づいて家屋の外に出て来たのだった。



「 何で 東雲(お前)と一緒に行かなきゃいけないんだよ……子供(ガキ)かよ! 」

「 だってさ~、あの階段 一人で(のぼ)るのしんどいじゃん? 」

「 ……言っとくけど、(しゃべ)りながら行くほうが疲れるぞ? 」

「 じゃあね!睡蓮(スイレン) ――― 俺は帰って来るから後でまた会おうね。先生も日葵(ひまり)も 行ってきま~す! 」


東雲(シノノメ)はニコニコと笑って、手を振りながら外に出て行った。
二人を見送るために睡蓮(スイレン)日葵(ひまり)も続く――― 。




白夜(ハクヤ) ――― ちょっと待て。 」

「 何? ――― 父さん 」

「 家移り( 引っ越し )の件じゃが、(わし)の分も申請しておけ ――― 。 」

「 え?何で!? ここはどうするんだ?睡蓮(彼女)の治療も…… 」


此処(ここ)(しばら)く、日葵(ひまり)達 夫婦に任せて残すつもりじゃから安心せい!
  宮廷には書院もあるし、医官(いかん)もおるじゃろ?
  あの(むすめ)の記憶を取り戻すための情報を集めたいんじゃ。
  おっと、そうそう あの睡蓮(あの子)の分も申請したほうが良かろう ――― 頼んだぞ!」


睡蓮(あの娘)も一緒に……? 」

桔梗(ききょう)は…どうしようかの?(わし)も助手が欲しいし、あの()の分も申請しとくか?
  桔梗(ききょう)が来れない時は…――― その分、住まいが広くなるだけじゃし別に良かろう? 」

「 ――― 俺に 桔梗と睡蓮(その状況)の中で暮らせと……? 」

「 なんじゃ?男なら喜ぶ所じゃろ!? 儂ゃ、どっちが嫁に来ても構わぬぞ?
 ほれ、東雲(シノノメ)が待ってるぞ!良いからさっさと行け! 」


――― 白夜(ハクヤ)は蒼白の表情で東雲(シノノメ)紅炎(コウエン)と宮廷に向かった。



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