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嘘斬り姫と不死の怪物 作者:Hiro

偽りの救世主

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第二章 二話c

「オデ様は…、オデ様は……」
 トールが長い夢から目覚める。
 そこは屋敷ではなく屋外だった。トールの回復力を高めるため、スミが魔力の集まりやすい場所へと彼を運んだのだ。
 風化した瓦礫の転がるその場所で、トールは今はなき塔を見上げる。
「夢をみた」
「そうか……」
 トールの呟きにスミは短く応える。なんの夢かは確認はしない。聞かずともそれを想像することは難しくなかった。
「スミ、もっかいやるぞ」
 トールは立ち上がると、身についた汚れをはたき落とす。
「しかし、これまでも何度も失敗しているんだぞ」
 森から出ようとするのだと勘違いしたスミは難色を示した。だが、トールはそうではないと否定する。
「オデ様は今まで自分の罪を忘れ、ここから逃げようとしていた。だが、今回はちがう。取り戻すためにもう一度やり直すんだ」
「なにをだ?」
 トールの意図がつかめず、スミが質問をする。
「戦争だよ戦争」
「戦争だと?」
「そうだ、戦争を起こす。オデ様から民を奪ったあのクソ餓鬼をぶん殴って、アヴェニールを取り返すんだ。兵隊はいねぇがそんなもんはどうでもいい。オデ様がいれば主人公補正で勝利は確定だ。オデ様は未だかつて戦場で負けたことはねぇ。この国にまた戦争をもって利益をもたらす」
 集められた瓦礫の上によじ登り、森に向かって宣言をする。
「オデ様はここから逃げ出すんじゃねぇ、奪われたもんを奪い返す為に戦いに行くんだ。勝利の暁には必ず凱旋を果たす!」
 それは詭弁でしかない。
 されどトールを物理的に拘束する力はないのだ。その意識の楔さえ外れれば、森の外へ出ることはできるのではないか。スミはそれを期待した。
「我こそは魔術王トール。いまひとたび遠征へと向かう。民は我が帰りを信じて待て!」
 ズボンから槍状の魔具を引き抜き、瓦礫の上に突き立てる。槍を中心に大地に紋が広がる。すると瓦礫が集まり人型を形成する。トールよりもさらに大きな岩人形クレイゴーレムができあがる。
 産み落とされたばかりの下僕に、トールは威厳をもって命令する。
「この森に侵入する者をすべて叩き出せ! オデ様の留守を守るんだ!」
『ぼっ』
 岩人形は目を明滅させて主命を受諾する。するとさっそく森の外周付近へと見回りに行った。
「これで防御は万全だ。いくぞ!」
 トールが絨毯型の魔具を取り出すとそれに乗り込む。
 絨毯は宙に浮かび上がるもののトールの体重を支えきれず地面を引きずった。それでも森の外へと勢いよく動き出す。
「全軍出発!」
 スミだけを脇に控えさせ、咆吼をあげる。
 しかし、その勢いはものの十秒もせずに泣き言へと変わるのだった。
「……やっぱ無理」
 魔具は森の外を目指し自動的に進むものの、トールの顔は青ざめている。
 その情けない様子に憤慨したスミがトールの尻を突きさし無理やり前進させる。
「とっとと、進まんか!」
「ほんぎゃらが~!」
 こうしてかつて、かつての大陸の覇者は一〇〇年ぶりに森の外へと出たのであった。
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