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 静謐な夜は煌々と輝く月の光を拒むことなく受け入れていた。深淵と称して差し支えないこの闇の中では、どれだけ弱々しくもそれが唯一の希望であるかの様に尊い。

 誰彼の声もなき静寂の闇の中。其所に不釣り合いなほど純白なる少女の姿が一つ、この場に注ぐ月光の全てを浴びるかの様にして立ち尽くしていた。

 虚ろな瞳は数刻前から虚空へと向けられている。ビルの狭間であるこの場所で見上げる空は小さく切り取られ、一枚の絵の様に思える。

 少女が見上げるのは、しかしその虚空という題の遠い絵では無かった。

 彼女が見上げるのは空よりも低い位置。先の比喩を用いるなら、その視線は絵を囲う額縁へ向けられている。

 程なくして、少女の視界は一つの人影を捉えた。

 遠目に、加えて月による逆光もあり表情など窺えない。判るのは、その亡者の様な立ち姿だけ。

 やがて、月夜を背景に立つそれは当然のように身を傾け――


 果たして、それは夢の通りだった。


 上空より落下してきたそれが、立ち尽くす少女の足下で横たわり、朱を流す。

 ――――御巫暦の今宵が、そのユメの瞬間と重なった。





「前から聞きたかったんだけどな。空、お前いっつも何読んでるんだ?」

 昼下がりは今日も今日とて、夏休みにも関わらず学校のとある一室に俺達は居た。

 暇を持て余しながら嫌々に夏休みの課題を広げつつもまるで進まない俺とは対照的に、空は涼しい顔で分厚い辞書のような書物を黙読していた。

 飾り気の無い地味な表紙には難解な英単語が並んでおり、その中で俺が和訳することの叶う単語は『dream』のたった一単語に過ぎない。それだけの手がかりで本の中身を知りえることができるなら、わざわざ空に質問したりはしまい。

「読んでみますか? 口で説明するよりは、そちらの方が早いと思いますけど」

「……いや、いい。解りにくくていいから、お前の口で伝えてくれ」

 空の解り難い説明とは自身が完璧ではないとみなした説明でしかなく、他者からすればそれは充分に解りやすい説明としてたるのだ。言ってしまえば、実は俺は既に空の発案を実行に移してある。が、タイトル同様にその中身は日本語外でつづられており、俺にその内容を理解することは出来なかった。

 そんな事情を知ってか知らずか、きっと知りながらにして空は本を差し出した。

 俺の懇願は、耳に届いていないらしい。

「…………」

 実に兄悩ませな妹である。

 俺は暫しの間理解不能な文書の上に視線を落としさも文面を吟味する体を装う。自分のこめかみに発汗を感じた。こんなものを長時間読み続け、その内容を頭の中にインプットしていく空は超人かその類で間違いない。

「冗談ですよ、兄さん」

 不意に、くすり、と小さな笑いが聞こえてくる。

 引っ込められた辞書の先を追っていくと白い指先に辿り着き、そこから視線を上げると口元を押さえて笑いを堪える空の顔があった。何が滑稽なのかと問うだけ無駄であろう。それは妹に理解出来る書物を読解出来ない兄に他ならないのだから。

「少し調べごとをしていただけですよ。他意はありません」

「……夢の仕組みについてか?」

「え……?」

 面喰ったのは空の方だった。

「なんだ、それくらいは理解の及ぶ範囲でしたか。少し兄さんを侮っていたようです。今後の認識を改めなければいけませんね」

 俺がどの程度の格付けを受けていたのかは気になるところだが、それを問うのは愚行だろう。

 空の言葉は隠しようも無く皮肉だった。原因はおそらく予想外な俺の発言に気を悪くしたことだと思う。俺が知る限り空が最も屈辱を感じるのは、まさに鳩が豆鉄砲を喰らう体験である。それは自らの虚を衝く相手の行動に対してどうしようもなく狭量になるという、短所といえば間違いなく短所。

「な、何が可笑しいっていうんですか!」

 可能な限り悟られぬようにとした笑いだったが、それは妹を欺ききれなかったようだった。それはそれで悪くもない、反省の必要はないだろう。

「いやさ、お前って人に隠し事が出来ない質なんだな、と思ったんだよ」

 普段が完璧な空は、それ故に意表を衝かれたときに見せる焦燥が滑稽だった。と言っても無論、俺の溢した笑いは嘲笑なんかの類いではない。それはどこか遠い、安堵のため息に似た心情吐露。

 指摘された空の顔が朱色を帯びていくのが窺えた。達磨のごとく顔全面を真っ赤に染めるでなく、髪を被る耳の部分だけを変色させる。残念ながら髪のカーテンも完全でないためにこの距離ならそれさえ視認できてしまうから皮肉な話だ。

「そんなことは……ありません。撤回しなさい、兄さん」

 拗ねるような口調で、空は僅かな上目遣いに睨み付けてくる。

 この様子を空の同級生達に見せてやりたい。気丈な振る舞いのお嬢様が持つ意外な一面に、もしかするとファンクラブなんてものが発生するかもしれない。流石に妄想の域を出ないことでしかないが。

「ああ。そうだな、撤回するよ。空、お前は秘密の隠匿には抜かりが無い人間だよ」

「ッ……!!」

 今度こそ、空の顔が赤く燃え上がった。

 ただしそれは羞恥からではなく憤怒によるものであるらしく、日本茶入りのマグカップが中身を盛大に弾ませるほどの衝撃が机に振り落とされた。

「アンタのその――兄さんの飄々としたところが気に食わないと言ってんのよ――!」

「や、はい! わかった! わかったゴメン! 俺が悪かった、兎に角落ち着いてくれ!」

 空の口調が滅茶苦茶になっていた。激情に乗せられた咆哮は窓ガラスをもぶち破らんとする波動。轟、と迫り来るそれに俺はじっと耐えるしかない。

 場を治めようとした俺の謝罪は、明らかな逆効果となり逆鱗を更に逆撫でするぐらいの効果になってしまったらしい。空は今にも火炎を噴き出さん勢いで怒髪する。

「この際だから言わせて貰います。兄さん、もう少し言動というものに気を遣ってはどうですか? 貴方のその軽薄な言葉がどれだけ周囲を不快にさせているか……少しは考えなさいって言ってるの!」

 語尾まで普段の口調を保つ余裕は無かった様子。どうやら俺は心底空を憤慨させてしまったようだ……。

「兄さんは勝手すぎるんです。これ以上、わたしに要らない悩み事なんてさせないでよ……兄さん」

 声調に穏やかさが戻る。空は小さく俯いていた。

「……悪い。その、お前の気を煩わせてたなんて……知らなかった」

「いいえ。――忘れてください、ただの妄言です。記憶に留めるだけ脳細胞が無駄ですよ」

 心底バツが悪そうに言い捨てて、空は席を立った。後ろ姿を呼び止めて再び腰を落ち着かせろというには、少々ならず無理がある。

 ばたむ。こうして室内に残されたのは後味の悪い静寂と憐れな男子生徒一人だけ。

 なんてこった。これじゃあ悪戯を咎められた子供だ。性質の悪いことに相手は妹で、その妹の怒髪に天を衝かせたのは間違いなく俺だ。悪戯にしては度が過ぎた。

「これじゃ、朔夜さんのことは言えねえな……」

 なまじ、俺が悪行を働いたのは実の妹だ。ともすればあの変人教師より性質が悪いかもしれない。

 自嘲気味に呟いてみる。言葉にしてみるとそれは思考よりも素直に呑み込めた。

「私がどうかしたのか、遙瀬?」

 出来すぎた偶然にもはや呆れることさえも忘れてしまう。

 気配すら感じさせず、或いは俺が余程放心していたのか――おそらく後者――背後に立った朱空朔夜は先の自嘲を聞いてしまったらしい。

 今更動揺することもしないで振り向く。朔夜さんは素知らぬ顔でそこに立ち、複雑な心境の男子生徒を無関心に見下ろしていた。

 感情無き両眼は朔夜さんが状況を理解していないことの証明であり、俺にとっての救いでもあった。この慈悲とは無縁の冷酷な変人は、あろうことか他人の窮地において蜜を舐める思いをするのだ。

「なんでも無いですよ。……で、ずいぶん長い昼食でしたね。自分の部屋に生徒を監禁してたことも忘れて、食欲の限りを尽くしていたんですか?」

「監禁とは心外だな。私は私の留守中、君に在室を強制していたつもりは無いぞ」

 確かにそれはそうである。だがしかし、休みであるのにも拘わらず生徒を学校に呼びつけ――朔夜さんの言い分を借りるなら――自らの在室中の時間を束縛するのは監禁と変わらないのではないか。よって、朔夜さんの理屈は詭弁に過ぎない。

 学校の一室であり、あまつさえ準備室の名目で宛がわれている部屋を自室と呼称したことに異論が唱えられないのは、既に気に掛けるところでない。

「それに、私は今までひたすら食を貪っていた訳じゃない」

 心外だ、とばかりに鼻を鳴らす。何が気に障るのかと思案して、俺はあくまで朱空朔夜という人物が女性であるという事実に思い至った。

「あれ、それじゃ本当に何してたんですか?」

 当然辿り着く疑問を口にする。

 朔夜さんは立ち話もなんだから、と体現して定位置のデスクへ歩み進める。胸ポケットから取り出した煙草に火を着けるあたり、話は短くて済まないようだ。

「昔の友人と話し込んでいてな。丁度近くに来ていると言うから、近隣の喫茶店へ出向いていた」

 昔の友人と称される人物は朔夜さんの口からよく聞かされていた。その誰かが同一人物なのか否かは定かではない。

「そうですか」

 抵抗無く受け入れられる。ここで朔夜さんが、職員室で夏休み明けの課題テストを製作していた、なんて言うようなことがあればそれこそ信じられない。

「それで、なんの話をしてきたんですか? まさか学生時代の想い出に花を咲かせてた、なんてことはないですよね」

「共有する学徒の頃の想い出があるならそれも一興だな。残念ながら今日の話し相手は仕事仲の友人だよ。話は、半ば相談のようなものだった。以前空が持ってきた話題についてどうしても引っ掛かっていたものでな……そういえば空はどうした?」

 問う側と問われる側が逆転し、一瞬焦燥が過る。内心の焦りを悟られぬように言った。

「帰りましたよ。体調が優れないとか言ってましたけど、気にすることはないですよ。明日には万全に戻ってると思います」

「そうか。まあ、いいだろう。話し合いの成果を報告するならお前で事足りるし、むしろ空よりも相応しいくらいだ」

 紫煙の向こうから聞こえる不可解な言葉の意味するところは、その真意を煙の中に隠していた。



 ◇



 ぼんやりと窓の外を眺めながら、遙瀬空は深く息を吐き出した。

 透明の隔たりは快晴の元ではその向こうを何ら拒むことなく映し出し、校舎内の廊下に開放感を齎している。そんな本来ならば清々しいはずの天候はしかし、今の彼女には都合が悪い。

 特にそう考えて脚を止めたわけではないが、硝子が今の自分の表情を映し出さないことに期待を裏切られたような気分になる。それは結果として空の陰鬱な心持を増長させることになり、元を質せば何気ない自らの行動が墓穴を掘ることとなっていた。

 重ねてため息が出る。

 窓を鏡にするという、そんな目論見があったわけではないにしろ、そうあって欲しいと思った自分は確かにいる。先のことも含めて空回りし続ける自分の行動に空は嘆息した。

 どうも上手くいかない。

 今回のことに限定した感想ではない。

 大抵のことなら何でもそつなくこなしてしまう空だったが、それでも苦手分野が無いわけではない。ことそれは兄である橙弥に対しては非常にはっきりと表に出てしまう。

 どうにも自分の気持ちを上手く伝えられない。伝えたい思いと、出てくる言葉が相反してしまう。

 現状、空にとってそれが一番の悩みの種であり、昔のある経験から遙背空という人物に付属された特性であり短所だった

 かぶりを振って、弱気を取り払う。過ぎたことを気にしているようでは埒が明かない。

「さて。これからどうするかな……」

 時刻を確認してそんなことを呟く。

“やっぱり、戻った方がいいかな……”

 でもどんな風に接すればいいのだろう。どんな風に声を掛ければいいのだろう。どんな言葉を口にすればいいのだろう。どんな顔をしてそれを言えばいいのだろう。どうすれば、どんな風に――

「――――……」

 混乱しかかった迷いも半ば、取り敢えず空はその考えを一度念頭の題目から排除した。

 取り留めのない思考の果てに仮初の答えを見つけた訳でもない。ここで意識を切り替えなければならない理由は偏に――視界に入ってきた一人の少女でしかかった。

「暦?」

 その名を口にする。

 空の視線を先には紛れもなく見誤ることなきクラスメイトの姿があった。

 どこか挙動不審な姿はまだ遠く、丁度教室四つ分は離れているだろう。一年の教室がある一棟の向かいにあるこの二棟は、本来ならば一年が足を踏み入れることはない。

 御巫暦の小さな体躯もまた、空の存在に気が付いて振り向いた。

「空……さん」

 その声は距離という不可視の壁に阻まれて空には届かなかった。会話をするには両者の距離は少し遠すぎる。

 空の脚が動いた。

 休日の校舎で友人と会ったことの些細な歓喜も勿論あるのだろうが、それよりも今の彼女の中には名伏し難い焦燥と不安があった。どうにも暦の様子が可笑しい。以前帰宅途中に遭遇したときよりも明らかに。

「どうしたの、こんな所で」

 会話するに支障のない距離まで来て、空が問いかける。依然歩みは止めないで。

 両者の距離は教室二つ分。

 空は改めて違和感を感じた。

 夏休みであっても学校の中で生徒に会うことは何も不思議な話ではない。空にしても御巫暦という友人が弓道部に入っているということは知っている。だが、この状況は――ならばこそ、空の目に映る暦の姿には違和感を感じざるを得ないのだ。

 暦が身に纏っているのは、空と同じ制服。

 両者の距離が教室半分くらいの空白に縮まったところで、空は脚を止めた。会話が滞りなく進む距離ではあるが、空自身がそうと判断して前進を中断したのなら問題ない。

「暦……?」

 もしそうだとしたら、遙瀬空はこんな困惑に囚われた表情はしないだろう。

 有り体に言えば、御巫暦の様子は異常だった。

 確かに空の姿はその瞳に捉えているようだが、確実に焦点が合っていない。暦が見ているのは空でありながら空ではない何かの様な、そんな虚ろな瞳をしている。まるで話し相手が今ここにいない、白昼夢的存在であるかの様な――遠い視線。

「なにしてるの、暦」

 怪訝な表情が一層その色を濃厚にする。

 今、空は確信した。目の前にいる友人が異常だと。

 不安はあったのだ。言い表せない不安。けれどそれは杞憂に過ぎないのかもしれない、と思えてしまうほどに瑣末な不安が。取り越し苦労ならば何も問題はない。しかしそれは今、確かに形を伴ってここに異常を成している。

 体は動いてくれない。その神経が働かない。

 空は思う。――今、ここにいる少女は一体誰なのかと。

 姿形は間違いなく既知の友人のそれと見て間違いない。けれど肌で感じるその人物は断じて自分の知る友人ではない。或いは、夢を見ているのは自分なのではないか。虚ろな瞳に映る遙瀬空という人物こそが、ここでは夢想の産物なのでは――――

 そうして永遠と思えるほどの一瞬は流れる水のように滞りなく過ぎ去り、呼吸さえも忘れてしまいそうな空白が終わる。

 やがて、

「空、さん。わたし、人を殺しました」

 そう、焦点の合わない瞳が口にする。

 意識を覚醒させていながら未だ心は夢想の中に在るかのように、或いは自分がいる場所が在り得ない蜃気楼の中であるような矛盾した存在。

 御巫暦という一人の少女は、此処に在りながら其処に無い。

 人形ににも似た空っぽの黒瞳が続ける。

「夢を見るんです。誰かが死ぬ夢を。――確かめるのは怖かったけど、やっぱりそうだった。みんな、わたしの所為で死んでしまうんです。わたしが……みんなわたしが殺したんです。でも、誰もわたしを咎めてくれない……誰も、わたしが殺したなんて知らない……。わたしは、どうしたらいいの……? ねえ、空……わたしはどうやって償えばいいのかな?」

 初めて敬称の付かない呼び名で、親友の名を口にする。

 感情の伴わない口調に涙が落ちた。

 片目から流れ落ちる雫は、まだ僅かでも御巫暦という少女に己が残留しているという証拠。

 放心状態でその告白を、それこそ夢現に聞いていた空がようやく自我を取り戻す。掌には知らず汗が滲んでいた。手だけではなく、額にも。不安は確かな懸念となり、少女の胸中を蝕んでいく。

「ごめんなさい」

 掠れる声。消えてしまいそうな瞳の光。

 何故、自分は一度疑ってしまったのか。自らの名を呼んだ少女は確かに御巫暦という、自身の親友ではないか。間違いなど無い。その少女が今、自分に求めていることは何なのか。常識で考えれば信じられない告白も、今は思考の隅にすらない。

 暦は確かに、助けを求めているのではないか? 

 目の前にある全てを認めて、空の脚が動いた。

「暦――アンタ――――ッ」

 数字にすれば二人の間は二十メートルもないだろう。

 空の脚ならこの距離を詰めるのに次の句を発するほどの時間さえ必要にならない。

 後一歩踏み出せば空の体は急加速して即座に空白を埋めることが出来る。後一歩。後一度、その脚が廊下を踏み切ることが出来たなら。――しかしそれは飽くまで過程の域を出ない事実だった。

「――――ッ!!」

 右脳に激痛が走る。

 何かに、音も立てずに皹が入る。電圧に耐え切れなくなった回路がショートするみたいに呆気無く。それは何の予兆も無く訪れた。

 堪らず倒れ込む。次の一歩に踏み出した脚は脆くも膝から力が抜け、踏ん張りが利かず前のめりに倒れこむ始末。それでも空は倒れこむ体の勢いを殺しきれず転倒。廊下との衝突よりも今は頭痛の方が激しい。空は手を突いて体を庇うこともせず、一心に頭を抑えて激痛に耐える。涙目になりながらも、その視界に親友の姿を見失わぬように顔を上げて。

「……コヨミ……ッ……!」

 痛みに耐える空の姿は、果たして暦の目にどう映っていたのか。

 或いはその悲痛な姿さえも彼女にすれば夢の光景なのかもしれない。

 空は亡霊の様にそこに立ち、自身の姿を遠く眺めていた――けれど今は其処にいない親友を想いながら痛みに悶絶する。

 やがて一瞬閃光のような光景が過ぎり、それに伴って痛みが止む。

 跡に残ったのは、友を呼ぶ叫びとそれに小さな波紋を作る涙の溜りだけ。

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