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ガールズカルテット 作者:双色
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 その日、灰色の雲が空を覆っていた。
 本格的に冬へと移行した季節の下。先日の雨は満足に陽を浴びられず冷気となって漂っている。それがこの寒い季節をより冷たくしているようだった。
 冷えた空気の中、俺はため息をつく。
 最近ため息の数が妙に増えた気がする。最近と言っても今年の四月以来だから、既に半年が経過しているが。そんなことを今更になって自覚するのだから、俺はこの憂鬱な日常を無意識に受け入れていたのかもしれない。
 しかし今回のため息は特別だ。これまでとは質が違う。
 俺は一体何に首を突っ込んでいるのだろう、と自問しているようなそれだ。
 目立って大きな異常が無いから気がつかなかったが――俺の日常は既に歪んでいた。
 そのことを昨日にようやく理解したのだから、自身の危機感知能力を疑う。
 そんなことを考えていた日のこと。昼休みに入って、それまで姿を見せていなかった御桜流深がやってきた。
 昨日のこともあり、何となく今日は欠席だと予想していたのだが外れたらしい。
 流深は談笑していた女子達から歓迎の言葉を浴びつつ、笑顔でそれに応えて自らの席に辿りつく。愛想のいい笑顔が俺に向けられた。
「おはよ……ていうか、今はもうこんにちはだね」
 一人で言って一人で訂正してやがる。
 流深の笑顔は久しぶりに見る純粋な表情だった。
 どうやら今日は不完全な方の流深であるらしい。
 ここ何週間か見ていなかった、或る感情の無い御桜流深がそこにいる。本人さえもタイミングの掴めない、不定期な記憶の忘却が今日になって行われたらしい。
「何でまた。今日は遅刻なんだ?」
 思い返せば、流深は遅刻ぎりぎりに教室に入ることは多くても明らかな遅刻はしていなかった。大概の場合は担任が教室に入るよりも先に席についていた。
 鞄を机に引っ掛け、長い髪を揺らして椅子を引き、
「家でいろいろあってね」
 言葉に相応しくない笑顔でそう答えた。
「わたしの家ってさ、前から結構荒れてるんだよね。なんていうか、その、お父さんの仕事のこととか。……というよりも、お母さんの家系が特殊なのが原因かな。分家だけど、わたしのお母さんって旧い家系の出身なんだ。それで考え方とかが食い違ってて、よく喧嘩してるんだよ」
 困った困った、と髪を掻き揚げる。
 その動作と表情が場の雰囲気とも話ともまったく合っていないから、違和感がありすぎる。
 大したことはない、という風に語られるそれを俺は聞き流すことはできなかった。
 昨日と同じ場所、流深の細腕にはまだ包帯が巻かれたままだった。
「その腕……家で怪我したんだろ?」
 確信した上で問いかけているのに、肯定するようにそれを口にすることは出来なかった。
 俺の中で――その確信だけは間違っていて欲しいという願いが在ったから。
 勝手な予想を現実の言葉で否定してくれれば、俺はそれだけで安心できる。
 この最悪の想像が、間違いであったと安堵できるんだ。
「うん。あ、別に気にすること無いよ。こんなこと昔からよくあることだからさ」
 果たして。流深の返事は予想通りで、俺の期待とは違っていた。
 例えようの無い不安が思考を支配する。悪寒が全身を貫く。
 もしも、世界の中心に到達しえる人間がいたのならば――――
 この世界は、そのダレカの世界により塗り替えられる。
 望まぬ幸せも、望まぬ悲しみも、望まぬ希望も、望まぬ絶望も。その全てが意思に反して与えられる。そのダレカの感情を強制的に供給させられる。
「……どうかした?」
 抑揚の無い声が尋ねた。
「いや、別になんでもない」
 そう、なんでもない。
 こんなことは俺が悩んだ所でどうこうなる話ではない。
 少なくとも当事者でない俺が奔走するようなことは起きていない。全力を尽くして解決するほどのこともない。ならば、事の中心にいる人物がそれを処理するのを見守るしか俺には出来ないのだ。
 この先に何が起こるのかは解らない。知らない。
 だから見届けることにしよう。――――御桜流深が選ぶ答えの行く先を。


 ◇


 放課後の風景がいつもと少し違う。
 昨日までとは違ってホームルーム後は教室に残らないで直ぐに帰路に着いた。
 道を先行しているのは流深の方。
 それ故に俺は今の流深がどんな表情をしているのかは解らない。
 空は灰色の曇り色一色。
 今年最初の雪が街に落ちてきていた。
 そんな中で傘も差さずに歩く。気づけば場所はいつかの公園前。
 当然のように季節に従順な木々達は葉を落とし、公園の中心に(そびえる桜の木も一切の色を無くしていた。
 そこに、あの日の光景が浮かんで。
「――御桜」
 フラッシュバックした記憶の中に呼びかけるように、俺はそう呟いて脚を止めている。
 冬枯れした桜の木。雪が本降りになれば、白い桜が散っているようにも見えるかもしれない。
「もう止めにしないか」
 知らずそう呟く声が、他でもなく俺を驚かせた。
 歩く度に揺れていた黒い長髪がぴたりと止まる。その後姿を視界に収めて、俺は公園の桜の木に視線を流す。
 ――――思えば、この歪みの始まりはここだった。
 この場所で初めて彼女と出会い、初めて言葉を交わした。
 それが無ければ、今は無かったはずだ。
 夕焼け色の教室で語り合うことも無ければ、そこから始まるすれ違いも無し。何の変哲も無い日々の中に俺たちはいる。
 しかしそれはあくまで仮定でしかない。
 終わったことをいくら悔やんでも過去は取り戻せない。
 既に俺たちは出会ってしまい、日常は歪んでいる。
 それを受け入れずに否定すれば、今日までの全てを蔑ろにすることになる。
 どちらの方がよかったのかなんて解らない。どちらが正しかったのかなんて決められない。
 けれど既に終わったこと。幾つかの可能性の中で、今ここにある一つの筋書き。
 今在る日常を否定するわけにはいかない――だから、俺は言わなければならなかった。

「――――流深、お前は何も忘れていない。昨日までと同じ、御桜流深なんだろ」

 白い結晶が冷たい風に乗って消える。
 振り返った少女の(カオ)は、儚くも哀しい色に満ちていた。


 ◇


「どういうこと?」
 哀しい笑顔で少女は問いかけた。
 本当に何も知らないような。間違っているのは俺だと思ってしまうような。
 素のままの笑顔が一瞬自らの考えを否定したが、それが確信を持ちえる原因とも成った。
 訝しむ流深を見据えて、俺は続ける。
「本当は朝からずっと――お前は一度も忘れていなかったはずだ」
「だから何が。忘れるってどういうこと?」
 混乱しつつも非難するではなく、流深はその瞳に俺の姿を収めていた。
 自分でもどうしてこんなことを言っているのか解らない。昼に決めたはずだった。このことは全て流深に任せよう、と。
 だというのに、何故。
 なのに、どうして。
 俺はこんなことを言っているのだろう。
「全部、無かったことにしようとしてるんだろ?」
 奇怪な人格の在り方も、それによって生まれてしまった歪みも。
 全て無かったことにして――自分を偽って贋物の平穏を創り出す。
 それが流深の選んだ答えなら、それを見届けると決めた。そのつもりだった。
 たとえそれが間違いでも、俺は受け入れることを決めたというのに。
「もしも世界の中心に到達する人間がいたのなら」
 言葉は意思による抑制を押しのけて外に出る。
 それは昨日流深が語ったことだった。
 もしも世界の中心に到達する人間がいたのなら。
 決められた運命の筋書きを逆行して、その原点に辿りつく。そうすれば世界の『これまで』も『これから』も自在に操ることが出来る。
 世界の中心。それがこの世全ての人間の意思ならば、そこに触れることで自らの感情で世界を満たすことが出来る。
「それは例え話なんかじゃない。お前は世界の中心に触れることが出来る人間だったんだ」
 そこには何の確証も無い。当て付けでしかないただの推測。
 それでも筋は通る。
 絶望という一つの感情が無い少女。
 忘却という手段で世界にそれを波及させず、今を保とうとする一つの決意。
 世界で唯一人――自分を犠牲にする代償として得た仮初の日常。
 それは本当に。
 それは本当は。
 哀しみの上に打ち建てられた、遠すぎる平穏。
 自分が記憶を失っているのには理由がある。
 彼女はそう言った。
 そうすることに意味があるのだと。
 自らを犠牲にして、誰からも理解されない孤独を背負い込む。――それだけが、御桜流深が自分の辿る道を否定する唯一の手段だった
「――――それで?」
 あっけらかんと、少女は白い息とその言葉を吐いた。
 言ったとおり。言の葉のとおり。
 それで、どうしたというのか。そう問いかけるようなイントネーション。
「それが間違っていなかったとして。それが本当のことだったとして。わたしには……あなたにはどうすることが出来るの? それがわかったから、なに?」
 淡々と語られる台詞には、一つの感情しかない。
 居直るでもなく、否定するのではなく。
 ただ決められた台本を捲り返しているような口調。
 けれどそこには感情が在った。唯一つだけ、それだけは当然のようにそこに在る。
「あなたにはわからない――人間には、人の心を見ることなんて出来ないから。他人の世界に干渉することなんて出来ないから。それはそれぞれが違う存在だからじゃない。孤立しながら、ヒトは世界の中心で繋がっている。だから孤独じゃない。自分以外の誰かと交わることで安心できる。同じ世界を持っていると、安心できる。……嗚呼、自分は独りじゃないんだって」
 少女の声と表情は泣いている様だった。
 既に諦めた夢を遠くから眺める様に。過ぎてしまった後悔を俯瞰する様に。
 それでも少女の瞳から涙は零れなかった。
 当然と言えば、それは当然。
 何故なら、今の少女に在る感情は一つだけなのだから。
「でもわたしにはそれがない。霊長の世界の中で確立するということは、つまり孤立して孤独になるということ。だからわたしには一つしか無い。たった一つ、この感情しかわたしには無い」
 生まれながらに孤立し、誰とも交われない孤独。
 生まれながらに持っていた、世界を染める禁忌。
 それ故に少女には一つしかない――――

「わたしに在るのは唯一つ。
 ――――あなたという絶望。絶望であるあなた」

 告げる。
 その言葉を、無抵抗に俺は受け入れた。
 受け入れるしか無かった。
 俺には流深が背負ってきたモノなど解らない。
 全て空想でしか理解できていない。
 それでも、この少女がここに在るということは――それだけで俺には遠い現象に思えた。
 だから何も言い返せずに、俺は少女を見据えることしか出来ない。
 何を見出そうとしているのかも、何の為にそうしているのかも解らないままで。
 気づけば俺は。
 遙瀬橙弥にとって、御桜流深という少女が何で在るのかさえ、解らなくなっていた。
 それはまるで暗示の様な、無意識下のすり込み。抗うことの出来ない『内面的な衝動』。外部からではなく、内側から湧き上がる矛盾した衝動。
 いつもそうだ。俺は一度でも御桜流深の言葉を疑わなかった。否、疑えなかった。
 それの真偽など関係ない。唯、御桜流深から語られる全ては意識の壁をすり抜けてきた。まるで初めから其処に在ったかの様に。当然のように、必然を装って。
 遙瀬橙弥の世界を簡単に染めてしまう言葉。
 白い破片が空間を埋める。降り頻るそれはまるで隔たりの様。
 其処に在るのに決して触れられない、在り得ない蜃気楼みたいな少女。
「また明日ね。遙瀬くん。
 全部、今日で終わるから。――――きっと、明日からは普通に話せるよ」
 泣きそうな笑顔が別れを告げる。
 疎らに視界を埋める雪が、まるで少女の姿を隠しているようだ。
 俺は自分に背を向けて去っていくその姿を、見送ることしか出来ないでいた。
 永遠の別れを告げているような後姿。まるで二人の出逢いそのものが間違いだったと、それが自らの後悔だと言うような足取り。その姿に俺は何と声を掛ければいいのだろうか。少女のことを理解しているつもりで、その実、上辺でしか見れていなかった俺に。
 十二月。冬。
 陽は短い。直に夜が来る。
 太陽が雲に隠された所為で弱々しい街頭の光だけが街を照らしている。
「嗚呼、そうか」
 今、ようやく解った。
 点滅する街頭がまるで自分の気持ちを代弁しているみたいだ。
「――――俺は、流深の事が好きだったんだ」
 このキモチにもしも名前が在るのなら。それはきっとその言葉の意味が当て嵌るのだろう。
 過ぎた後悔の念だけを残して。俺は白い闇に隠れる家路をただ辿っていった。



 ……



 /Fate preface


 その夜。本来闇色の世界は白い破片に埋め尽くされていた。
 黒という夜のイロは一変。白という雪のイロに染められている。
 冬の夜を天空から舞い落ちる雪は一層冷たいモノにしていた。
 その中で。
 少年は一人、そんな白い夜を歩いていた。
 初めから決められた道筋を辿るかのようにその足取りに迷いは無い。
 遙瀬橙弥という一人の少年。彼は夕方の出来事を清算する為に或る場所へ向かっていた。
 そこへ行けば目的の相手と会える確証がある訳ではない。予め待ち合わせている訳でもなく、橙弥はほんのついさっき思い立って家を出たのだ。
 何となく、そこへ行けば会える気がしていた。
 ……初めて出会った夜と同じ時間、同じ場所。彼女は今日もそこにいるだろう、と。予感だけを信じて。
 白い雪は行く手を阻んでいるように思えた。一歩踏み出すごとに沈む足が到達を拒んでいるように感じた。
 けれど彼は一度も立ち止まることなく其処へ辿り着いた。
 辿り着いてしまった。
 錆びれた遊具しかない小さな公園。そこは一面が積もった雪の絨毯で白く塗り固められている。
 目立ったものが何も無い寂れたその場所に少女は佇んでいた。
 白い地面の上で屹立する桜の木。その下で、少女はぼんやりと空を眺めている。
 街は何年か振りの大雪。それだというのに少女は傘も持っていない。
 その手には、傘の代わりとなる物が握られていた。
 その姿を見つけて橙弥は公園に入る。
 自分以外の人間の気配を感じて、少女はゆっくりと首を動かしてそちらに目を向ける。
 ――――その時点で、ようやく橙弥は気づくのだった。
「……流深…………?」
 目の前の異常な光景。遙瀬橙弥は相手の名前を呼ぶことしか出来ず、次の句を発せずに居た。
「お前……なに――――」
 言葉半ばにして、橙弥は直ぐにその場を飛び退いた。
 しゅん、と鋭利な風切り音だけが闇の中に流れる。
 闇に引かれた銀光は――少女が持つナイフが通った軌跡。
「……遙瀬くん」
 その声は全てを無くしてしまったように空虚な響き。
 御桜流深という少女の姿は異常だった。
 着ている服は橙弥と同じ中学の制服。紺色のブレザーにはたくさんの染みがある。暗闇であることや紺色の布地であることから橙弥はそれに気づかなかった。
 故に、橙弥が少女から離れたのは別に理由がある。
 染みがあったのは少女の服だけではなかったのだ。振り向いた少女の白い顔に飛び散ったそれは、まだ乾き切っていない赤い液体。
 頬を伝うもの。髪を滴るもの。場所は様々。
 それがまだ新鮮であると知らせるような異臭。
 鼻を突くその臭いで、橙弥は飛び退いたのだ。
 別段認識があった訳ではない。ただ彼の本能が告げていた。
 ――――少女の体中に飛び散った赤いそれが、人間の血であると。
 流深が一歩前に出る。
 自分を見上げる橙弥の顔を見下ろしながら、感情の無い空っぽの笑顔を浮かべて。
「お前……なにしてるんだ……」
 常套句しか口に出来ない。
 ナイフを持った血塗れの同級生。そんなモノを見せられた少年の理性は既に崩壊寸前まで追い込まれていた。
 少女は答えない。
 無言のまま絶望を湛えたその瞳が、再びナイフを振り下ろす。
「――――ッ!?」
 橙弥は震える足で地面を蹴った。その勢いで体は雪の上を転がり、結果としてナイフの切っ先は空を切って地面に突き立てられる。
 二人の距離が開いた。
 荒い呼吸で白い息を吐き出す。そうしながら橙弥は少女を見据えた。
 ふらり。流深の体が起き上がる。白い足元は少女から落ちた血で赤く濡れている。
 亡霊のような虚無感を伴って、流深は橙弥へ振り返った。
「ごめんね……遙瀬くん……」
 泣いているような呟き。
 その言葉に橙弥は答えない。
 倒れた橙弥へ歩み寄る。少年はその姿をただ見つめることしか出来ない。
 赤い斑点を雪に落としながら近づいてくるクラスメイトを、橙弥は受け入れた。
「ごめんね……遙瀬くん」
 足元から崩れ落ちるように、少女が膝をついた。
「やっぱりわたしはそっちに居られない。あなたとは、やっぱり違うモノだった……」
 頬を伝う赤い血は、いつしか無色の涙に変わっている。
 凍えた吐息と共に零れる言葉の全ては紛れも無く彼女の本音。
「それでも――今日までわたしといてくれて、ありがとう」
 握ったナイフを逆手に持って。大切な宝物を持つように両手で柄を握って。
「――――わたしにはあなたは殺せない。わたしの絶望を、わたしは捨てられない」
 最後、少女はそう言って握ったナイフを振り上げた。
 銀色の切っ先は真っ直ぐに少女の喉下へ落とされる。

 ――さようなら、ありがとう。
 そんな言葉を橙弥は聞いた気がした。

 公園を埋め尽くした雪の上。白い絨毯に鮮血が飛び散った。


 ……


 あの夜から流深は一週間眠り続けた。
 俺はたまたま公園で倒れている流深を見つけたということになっている。あの日にあった事は誰にも話していない。それまでに流深と語ったことも。その奇怪な人格の在り方も。
 これは後から聞いた話になる。
 流深の家族は全員、あの夜に死んでいたらしい。
 昔から家族仲は崩壊していたという流深の話を聞いていた俺は、父親が一家心中をはかろうとしたという話を疑わなかった。……正直に言うと、疑いたくなかったというのが正しい。そうであって欲しいとさえ思ったくらいだ。
 俺はどこかで自分に責任を感じていた。もしかすると御桜流深を追い込んだのは俺だったのではないか、と。
 俺には何故家族の中で流深だけが生き残ったのかは解らない。
 どうして、流深がナイフを持ってあの公園に居たのかも解らない。
 あれから二年が過ぎ、俺達はまた日常の中にいる。
 結局、それ以来流深が無くした記憶を取り戻すことは無かった。

 過ぎ去った過去に残留する想い。
 今こうして在る平穏な日常。
 或いは。
 この日常も、二年前から決められていた筋書きなのだろうか。
 そうだとしても。それが解るのは唯一人だけ。
 その一人にもしも俺がその事を問いかけたら。彼女は答えてくれるのか。

 ――――流深、これはお前が書いた筋書きなのか? 

 その問いに答える声も今は無い。



(Fate preface/了)
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