異記録叢書
この世には、記録されなかった出来事がある。
誰にも語られなかった事件。存在を証明する者のいない怪異。焼失し散逸し、あるいは意図的に封じられた記録。
それらは長い年月の中で忘れ去られた。
――そう、忘れ去られたはずだった。
『異記録叢書』は、いつ、誰が、何のために記したのかさえ定かではない「異常な記録」を収めた叢書である。古い療養所に残された研究記録。死者の筆によって綴られた手記。存在しない人物の残した日記。何度写しても内容の変わる古文書。そして、読む者によって意味を変える一冊の本。
それらはすべて、ひとつの問いへと収束してゆく。
――記憶とは、いったい誰のものなのか。
人は記憶する。
記録する。
忘れる。
そして、忘れたはずのものを、誰かが代わりに覚えている。
『異記録叢書』が扱うのは、怪異そのものではない。
怪異を記録した「記録」。
記録を書いた「人間」。
そして、その記録を読む「あなた」。
その三者の境界が、いつ、どこで崩れたのか。
もしあなたが、この叢書を最後まで読み終えたなら。
最後の頁を閉じる前に、一度だけ考えてほしい。その物語を、あなたは本当に「読んだ」のだろうか。
それとも――
あなたの記憶が、そこに記録されていたのだろうか。
誰にも語られなかった事件。存在を証明する者のいない怪異。焼失し散逸し、あるいは意図的に封じられた記録。
それらは長い年月の中で忘れ去られた。
――そう、忘れ去られたはずだった。
『異記録叢書』は、いつ、誰が、何のために記したのかさえ定かではない「異常な記録」を収めた叢書である。古い療養所に残された研究記録。死者の筆によって綴られた手記。存在しない人物の残した日記。何度写しても内容の変わる古文書。そして、読む者によって意味を変える一冊の本。
それらはすべて、ひとつの問いへと収束してゆく。
――記憶とは、いったい誰のものなのか。
人は記憶する。
記録する。
忘れる。
そして、忘れたはずのものを、誰かが代わりに覚えている。
『異記録叢書』が扱うのは、怪異そのものではない。
怪異を記録した「記録」。
記録を書いた「人間」。
そして、その記録を読む「あなた」。
その三者の境界が、いつ、どこで崩れたのか。
もしあなたが、この叢書を最後まで読み終えたなら。
最後の頁を閉じる前に、一度だけ考えてほしい。その物語を、あなたは本当に「読んだ」のだろうか。
それとも――
あなたの記憶が、そこに記録されていたのだろうか。