↑ページトップへ

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

潮待ちのレール ― 宿火の庭 ―

あらすじ
春の手前の岬で、相沢湊は“遠くの少し明るい海”を見た。
それは過去を越えるための光ではなく、過去を抱えたままでもなお目を向けてしまう、これから来る季節の気配だった。
第十二作『宿火の庭』では、その外で受けた風や明るさが、春口の宿の内側――とくに庭と火の気配の中で、どのように日々の生活へ馴染んでいくのかが描かれる。

宿には帳場、客室、玄関のように人を直接迎える場所がある。
だがその奥には、言葉にならないまま戻ってきたものを、急がせずに置いておける場所としての庭があった。
庭は景色のため半分、気持ちを置くため半分。
台所や火鉢から残る小さな火のぬくもり、雨のあとの湿り、縁側にたまるやわらかな遅さを通して、外で受けた風や重さを少しずつ宿の速度へ移していく場所だったのである。

篠原が集めた聞き書きや澄江の記録を辿るうちに、湊と汐里は、澄江が人を直接部屋へ収めるだけでなく、庭や火に先にその人の時間を受けさせていたことを知る。
灯りが位置を示すものだとすれば、火のぬくもりは“そこにいてよい時間”を示すものだった。
父もまた、霧のホームや港の岸壁だけではなく、庭の火の前で“まだ急がなくてよくなった人”として見え始める。
そして汐里は、母の庭を守るだけではなく、その日の風や光や客の気配に合わせて庭をひらき、火を置き、宿の遅さを分ける人へと変わり始める。

『宿火の庭』は、外で受けた季節や気持ちが、庭の遅さと火のぬくもりの中で少しずつ宿の時間へ移っていく過程を描く巻である。
橋や坂や待合や岬を経たあとで、ようやくそれらを日々の生活へ置き直す場所としての宿の核心が静かに明らかになる、第十二作である。
Nコード
N8030MC
シリーズ
潮待ちのレール
作者名
たむ
キーワード
現代
ジャンル
純文学〔文芸〕
掲載日
2026年 08月05日 15時00分
最終掲載日
2026年 08月13日 15時00分
感想
0件
レビュー
0件
ブックマーク登録
0件
総合評価
0pt
評価ポイント
0pt
感想受付
受け付ける
レビュー受付
受け付ける
※ログイン必須
誤字報告受付
受け付ける
※ログイン必須
開示設定
開示中
文字数
28,193文字
作品を読む
スマートフォンで読みたい方はQRコードから

同一作者の作品

N5999KQ| 作品情報| 連載(全347エピソード) | ホラー〔文芸〕
―人の闇に、妖(あやかし)は映る。だが、影を作るのは、いつも人間だ。 現代日本。 都市の片隅でひっそりと探偵業を営む男――城戸蓮司(きどれんじ)・35歳。 過去のある事件をきっかけに、“人には見えぬもの”にも目を向ける//
N9366LH| 作品情報| 連載(全265エピソード) | ハイファンタジー〔ファンタジー〕
灰が降っていた。 まるで天が、ひとつの名家の終焉を弔うように。 ヴァルステッド家の紋章は、炎の中で静かに崩れ落ちる。 罪は知らぬ。だが罰だけが与えられた。 まだ幼い少女の瞳に、赤い世界が焼き付く。 忠臣は断末の声を上//
N8480MM| 作品情報| 連載(全35エピソード) | ローファンタジー〔ファンタジー〕
王国の片隅で暮らす青年、レイン・アスターには、幼い頃から他人には見えないものが見えていた。 誰もいない墓地で話し続ける老人。 焼け落ちた屋敷の窓から、毎晩外を眺めている少女。 古戦場で、終わったはずの号令を繰り返す//
N8503LY| 作品情報| 連載(全42エピソード) | ハイファンタジー〔ファンタジー〕
専門学校を卒業した十九歳の佐藤翔太は、東京の小さなソフト開発会社に新人プログラマーとして入社する。 エラーに怯え、先輩のレビューに打ちのめされながらも、コードを書くことだけはやめられない。壊れたものを分解し、直す。その手//
N6430KV| 作品情報| 連載(全397エピソード) | ハイファンタジー〔ファンタジー〕
ピザ屋でバイトしていた青年・相川レンは、ある日、店の業務用オーブンに頭を突っ込んだ瞬間――異世界へ転移してしまった! 魔法とモンスターが当たり前のこの世界に、「ピザ」という料理は存在しなかった。 だが、食った者を虜にす//
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。