- あらすじ
- 春口の冬を経て、相沢湊は再び港町へ戻る。
三崎汐里の母・澄江が、島の名と春口の名のあいだで生きた人だったことを知ったあと、二人の視線は自然と、澄江が長く守ってきた宿そのものへ向かい始める。
宿〈三崎〉は、港と駅を結ぶ坂の途中に建ち、昔から旅人、出稼ぎに向かう者、島へ帰る者、帰れなくなった者たちを迎えてきた。
帳場の古い宿帳、残された鍵、閉じられた離れの部屋、そして港側の増築にまつわる記録を辿るうち、湊と汐里は、この宿が単なる家業ではなく、「途中の人」を一晩引き受けるために受け継がれてきた場所だったことを知る。
そこには、澄江が春口で生きることを選んだ理由だけでなく、汐里自身が町を出ずに宿を守っている理由も深く結びついていた。
一方、宿にはある冬の日、一人の年老いた客が現れる。
その男は、かつてこの宿に泊まり、翌朝“迎えに行くはずだった人”を迎えに行けなかった過去を持っていた。
男の再訪をきっかけに、宿に残る記録と澄江の沈黙とが再び交差し、湊は「宿に泊まる」という行為そのものが、このシリーズにおけるもう一つの待合であることに気づく。
『凪の宿』は、瀬戸内の港町に建つ小さな宿を通して、去ることも帰ることも一度では済まない人々の人生を描く、シリーズ第四作である。
海が荒れない日にも、人の心には波が残る。
その波がひと晩だけ静まる場所として、宿は今日も灯りを残している。 - Nコード
- N3202MC
- シリーズ
- 潮待ちのレール
- 作者名
- たむ
- キーワード
- 現代
- ジャンル
- 純文学〔文芸〕
- 掲載日
- 2026年 05月18日 15時00分
- 最新掲載日
- 2026年 05月28日 15時00分
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- 40,831文字
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潮待ちのレール ― 凪の宿 ―
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