59 至極(しごく)、真っ当(まっとう)な職業
59 至極、真っ当な職業
ミスリル鉱床の村 市役所前
「クシュンッ!」
「アイラ?風邪?」
とポスト商会を率いてきた
隊長ウーマが、副官の
元Aランク冒険者ナミルに
話しかけると
「??おかしいな??
ご主人様がくれた防寒着
ちゃんと着てるんだけどな・・・」
と少し鼻を抑えながら
不思議がってると
バサ!バサ!バササ!
「ただいま~!」
と同じく元Aランク冒険者だった
副官の鳥人のトリーが町の上空を
他のタダシの奴隷の鳥人たちと
偵察し、帰ってきた。
「どうだった?
闇ギルドの根城の城は?」
「それが~よくわかんない?
あの城の中も外も調べたけど
ベリー市長と変な石像たちが
仲良くしてはいたけど、
他に人はいなかったんだよね・・・」
「まあ、あの人があの城に居れば
いないでしょうね!
元々、あの人が町にいる時は
あのちょっと名前が売れてた
雷斧使いも静かにしてたしね!
それでベリー市長は何て?」
とウーマが聞くと
「何か懐かしい友達が帰って来て
あいつらは、この寒い時期に慌てて
どこかへ行ったらしいよ!」
と頭の後ろで手を組みながら
返事をするトリ―!
「どうする?アタイもそこで
ちょっと聞いたけど
もうご主人様は
アタイらの村へ行くからって
この町を出たらしいし、
町も全面的に協力するらしいから
基本、私たちはすることないよ!」
とアイラが隊長のウーマに尋ねると
「・・・村に行ったって・・・
タダシ様は何しに行ったのよ?」
「アタイの妹と結婚するんだって!」
「結婚?」
「そッ!獣人の村でね!
しかも人族の嫌うあの儀式も
するんだってさ!
凄いよね!?人族なのにさ!
凄くない?
んッ?って事は
ラムが月のモノの間は
アタイがするチャンスなのか・・・
あ~・・・早くアタイにも
回ってこないかな?春が・・・」
とまるで自分が結婚するかのように
自慢するアイラだが・・・
「なんで、そんな大事な事
隠してたのよ!
私はてっきりの公爵討伐に
出征するからかと
思ってたじゃない!
まだ、私の式も間に合うかしら」
とウーマが心配してるのを見た
トリーだが、渋い顔をして
「いや~・・・
・・・どうかな~?・・・
ベリーさんにも聞いた話だと
かなり早い魔道具で
移動してるらしいから
もう式には
間に合わないんじゃない?
それより、このまま王国へ
直接行った方が・・・」
バリバリ!
と鳥、特有のカラフルな毛色の右足で
左足を掻き(かき)ムシリながら
答えると
「そうね!
私とは王国で挙げて貰うわ!
そうと決まれば
こんな所に用はないわ!
ちょっと!そこのあなた!」
ビシっ!
とウーマは丁度、通りかかった
ポスト商会の者を呼び止めると
「はい!いかがされましたか?
お嬢様!」
「私たちは、すぐに王都へ向かうわ!」
「えッ?・・・
では、この町の・・・
解体・改修作業の指揮は・・・
・・・誰が・・・」
「ベリー市長に指示を仰ぎなさい!」
「は、はい!かしこまりました!」
すると、ウーマは手を上げ
「タダシ様の戦士集合!!!
タダシ様の後を追うわよ!」
深い森を抜け、開けた草原に
太い丸太が隙間なく
地面に打ち付けてある壁が
延々と続く村があった。
ラム達の出身の村 入口前
ブルルル~ン!
キキ~!(ブレーキ音)
バタンっ!
「ここか?」
軽トラを降りた俺の目の前に
丸太を組み合わせた大きな門があり
バササッ!
草原特有の風が門の上に横断幕を
揺らしていた。
「・・・祝・テン様
ラム モー・・・か・・・」
そう大きく書かれていた。
「ご主人様、いよいよ結婚式だね!」
とラムが風で髪が乱れるのを抑え
横に来たので
「ああ・・・そうだな・・・
いよいよだ!」
すると、風で長耳を揺らしながら
テンが
「いや~、着いたね!
どう?今の気持ちは?どう?どう?」
とかなり興奮しているが
「あッあ~・・・ちょっと・・・
緊張し・て・る・・・・かな?」
と返事をすると
フワっ!
と後ろから良い匂いのする
とても柔らかい物が
抱き着いてきて
「とにかく~入りましょう~
みんな待ってるし~」
とモーが急かしてきた!
「よし!結婚しよう!」
俺たちは村へと入っていった。
すると
「おッ!ラムだ!」
「あッホントだ!」
「おおッ!テン様!」
「あッモーお姉ちゃんだ!」
「よう!予定通りだな!」
と結婚式の式場なのだろうか
白いテーブルや、食べ物が
遠目にもわかる位
鮮やかな会場から
人々が集まってきた。
もうワラワラと人々が
集まって来た。
ざわざわざわ!
もう、数百人単位だ!
「うわッ!凄い人だな!」
と揉みくちゃにされながら
ラムの言うと
「そりゃあ、
人族との結婚だからね!
みんな期待に胸が
膨らんでるんだよ!」
そんな話をしていると
あっと言う間に
「あなたがタダシさん?」
「ホントだ!人族だ!」
と色んな獣人の女の子、
数十人に囲まれた。
しかも、どの子も可愛い!
「あ、いや・・・
ちょ、ちょっと
変なトコ触らないで貰える?」
とこんな人数にモテたのは
生まれて初めてで
タジろいでいると、後ろで
「ル、ルーさんじゃないですか?」
「ホントだ!ルーさんだ!」
「こ、こ、こ、この村に来た
という事は、アレですよね?
以前、良かったらとお願いした
僕との結婚をしに来たんですね?
じゃあ、明日しましょう!
大丈夫です!安心してください!
すぐに今の彼女とは別れますから!」
と訳のわからん男たちに
ルーとマーンが囲まれ始めた。
(これ、結婚式する前に
一悶着ありそうだな・・・)
と俺が腹をくくって
ルーを助けに行こうと
したちょうど、その時
パンパン!
とテンがモーに肩車されながら
手を叩き、みんなの注目を
集めると
「はい!みんな聞いて~!
式も祭りも夕方からだよ!
全員散らばって~!
はい!散らばる!
散らばって~!
はい!そこ!
ご主人様の尻を触らない!
はい、そこ!
彼氏の胸倉、掴まない!
口から泡、吹いてるよ!
ほら、式場班も
引き続きよろしく!
頼んだよ!本番!
後、そこのルーとマーンを
囲んでる男連中!
ルーは嫁に貰われたから諦めな!
エルフの女は基本、夫以外には
淫らな事はさせないよ!
はい!みんな散って!散って~!」
パンパンとなぜか慣れた手順で
みんなを誘導していた。
俺の横のラムが
「さすが、慣れてるな!テンは!
じゃあ、行こうか!ご主人様!
アタイの家でお母さんが
待ってるんだ!」
「えッ?他のみんなは?」
「テンの家だよ!
ウチより広いし、
しっかりしてるし・・・
夕方まで時間あるから
花嫁は家族と過ごすんだよ!」
と俺とラムはみんなと別れ
ラムの実家へと向かった!
道すがら聞いたら、
モーのお母さんもお父さんも
テンの家で働いているらしい!
しばらく歩くが
(・・・畑ばっかりだな・・・)
なぜか
村の中の人気のない
畑ばかりの薄暗い場所に
連れていかれると
薄汚れたセメント製の箱のような
倉庫の前にたどり着いた。
(なんで倉庫なんかに?・・・
しかも、入口に紫色のランプが・・・)
と思っていると
「ここだよ!ただいま~!」
と入口のワラで出来た
ボロボロのゴザをめくり
ラムが入っていった。
「えッ?あッここ?」
と俺も慌てて
続けて入っていくと
(・・・く、暗い・・・)
中は小さな小窓があるだけで
ほかには何もないのだが
(何の匂いだ?)
さらに奥にある部屋から
なにやら、リラックスできそうな
お香の香りがしてくる。
すると
「・・・ラム?・・・」
とラムが年を取ったら
間違いなくこんな感じに
なるであろう
セクシー熟女が
少しこちらを、伺うようにして
現れた!
「お母さん!ただいま!」
「ラム!ラム!」
と親子2人で絆を確かめるように
抱き締め合っていたが
俺はそれを見て
(親子の感動の再開か~・・・
何にもなければ
素晴らしいんだろうが・・・
あ~・・・なんて
言えばいいんだよ!
娘さんにはいつも、お世話に・・・
いや、違うな・・・
僕はいつも娘さんをお世話して
いや違うな・・・)
と何て言えば良いか
悩んでいると
お母さんは俺を見て
「・・・それで・・・
この人がラムの?」
「そッ!アタイのご主人様で
今夜アタイを引いてくれる人!」
「あ、あの
・・・初めまして・・・
タダシと言います!
いつも、娘さんのお尻で
僕の息子を挟んでまして・・・」
とつい、トチ狂った事を
言ってしまったが
「そうですか!
いつもありがとうございます!」
とラムのお母さんは
綺麗な笑みを浮かべていた。
「い、いえ・・・こちらこそ!」
「狭い家で、何もないですけど
式までゆっくりしていって下さい!
飲み物は川の水を好きなだけ
飲んで頂いて結構ですから!」
「か、川の水?」
と俺が驚いていると
ラムが
「そう!近くに美味しい
農業用水があるんだ!」
「えッ?農業用水?」
と俺がちょっと
ビックリしていると
バサッ!と
入口のゴザが上がり
「す、すいません!」
と犬の鼻と耳が生えた
中学生位の男の子が
腕一杯にリンゴを抱え
立っていた。
俺は
(???りんご???)
とさらに、訳分からん事に
なっていると
「あら、いらっしゃい!
今日は一人?」
とお母さんが聞くと
「は、はい!
今日は・・・今日は・・・
僕一人だけです!」
と何かかなり緊張しつつも
意を決したような男の子に
「・・・そう!
じゃ、行きましょうか!」
とお母さんは何か美味しそうな物が
来たかのような笑みを浮かべ
そのまま男の子を
奥の部屋へと連れていった。
「じゃあ、ご主人様!
仕事の邪魔だし、川へ行こうか!」
と今度はラムが俺を外へと
引いていこうとするので
「えッ?どういう事?」
と、とにかく不思議がっていると
奥の部屋から
「今日は他の3人のお友達は
どうしたの?」
「と、友達はみんな・・・
す、好きな人の所に・・・
だ、だから・・・だから・・・
・・・僕も・・・」
「まあ、うれしい!
じゃあ、今日は2回目だし、
僕がオバサンの服を
脱がしてみる?」
と聞こえてきて
「お、お、お願いします・・・」
そんな会話を聞きながら
俺とラムは家の外へと出て
「え~と・・・つまり・・・
ラムさんのお母様のご職業は・・・」
「そッ!至極、真っ当な娼婦!
村の男の子には大人気なんだ!
人数が多い日は
アタイもお姉ちゃんも
手伝ってたけどね」
とかなり自慢気なラムさんであった。
そして、
それを聞いて
聞いて
オイラは納得しただ!
(道理で上手な訳だ~!!!)
村長の屋敷 テンの実家
大リビング
「わははははッ!
いや、さすがは我が孫娘!
人族と結婚とは!
わはははははは!」
とテンの祖父にして
村長のウサギ人が
コの字型になったソファーの
中央に座り、両手にテン、モーを
侍らせている。
「村長~、今回は娘もテン様と
一緒に式を上げさせて頂き~
ありがと~ございます~」
とモーの近くに控える
メイド長の女性が村長に
挨拶をした。
「いやいや、なんの?
こちらこそじゃ!
そなた達、夫婦は長い事
我が家に仕えてくれ
大した事もしてやれなかったのに
まさか、人族の男子と結婚する話
を成してくるとは
お主の娘の発案なのじゃろ?
いや、礼を言うのは
こっちじゃよ!」
すると
テンの所に別のメイドさんが来て
「あのテン様、失礼ながら
一つお聞きした事が
あるのですが・・・」
「何?」
「別に材料で困るとかそういう
訳ではないのですが
お連れのエルフのお方が
先程から※パンケーキタワーを
もう5皿ほどお食べに
なられておりますが、
その宜しいのでしょうか?
横の・・・その・・・
隣にお座りになっている
魔族の方もかなり、
引いていらっしゃるので・・・」
※パンケーキタワー
フワフワパンケーキを
10段重ねにして、
上にアイスと蜂蜜と
チョコチップをかけたお菓子
とドン引きのマーンと
ルーのお腹を心配している
メイドさんだったが
「あの子は大丈夫!
いつもだから!
それと、隣の魔族の子には
キッツいお酒でも出しといて!」
「か、かしこまりました・・・」
とメイドさんは自身のスカートの
両端を上げ、軽く頭を下げると
小走りで厨房に向かっていった。
そこで
「ところで、
後一人今夜結婚するはずだが
誰であったかの?」
と村長の祖父が聞くので
横のモーが
「ラムさんですわ~!
アエラさんの娘の~!」
と返事をすると
パタン!
「えッ?アエラ様の?」
と夫婦そろって学者の恰好の
テンの父の方が
本を読むのを止め、
少し呆然としていた。




