57 結納品贈呈
57 結納品贈呈
エルフの里 里長の屋敷
観葉植物温室テラス
カチャッ!
一人の美しいエルフが
紅茶のTカップを
皿に戻した。
「・・・つまり・・・
里中で今日の昼から
再び、歩き始めた木々の原因も
・・・私の娘の行方も・・・
まったく、わからないのね?」
「は、はい!申し訳ありません!
リルー様!」
里長の娘であり、次の里長確定の
リルーは自身の娘がもう4日も
里を離れているのが
心配でならなかった。
「ダンジョンには?」
「そ、それが、3日前は
かなりの人間が見ているのですが
それからが・・・」
それを聞いたリル―は悩ましく
椅子に、のけ反ると
「ふ~・・・ホントにあの子ったら
どこに行ったのかしら?」
と透き通るような手を
軽く額に当てると
知らせに来た守備兵が
気まずそうに
「・・・それと・・・
なぜ、100年ほど前、
突然、止まった歩く木が
今、再び動きだしたのかは・・・
まったく、わかりません・・・
ですが、前回と一緒で里に
実害はありませんし・・・
放っておいて問題はないかと・・・」
と守備兵は下を向いてしまうが
報告を受けているリル―は
突然、思いついたように
「はッ!まさか・・・」
と200年以上前の
自身が結婚した日
そうあの、忌まわしい日の事件を
思い出していた。
「もしや・・・もしや・・・
私のルーが・・・」
と自分にソックリの娘が魔物に
恥辱の限りを尽くされているのを
想像し、それが、
忘れたくても忘れられない
忌まわしい思い出と
非常に強く重なり
高価な樫の椅子のひじ掛けを
ギュ―っと掴み
天を仰ぐと自然と
美しく幸せな顔に
なりながら
「ハー!ハー!・・・」と
息が荒くなっている。
突然、様子が変になった
リル―を見ていた守備隊の男は
「・・・?あ、あの?・・・
・・・リル―様?・・・」
「えッ?・・・
はッ!ち、違います!
オークの事など・・・」
「えッ?お、オーク?」
「も、もうよい!
下がりなさい!」
「は、はいッ!引き続き
探して参ります!」
と男は逃げるように
その場を立ち去ると
リル―はゆっくりと立ち上がり
「ま、まったく・・・
これだから、男は頼りない!
そう!そうよ!
役に立たない!
男は役に立たない!
あの日もそうだったわ!
男は・・・男どもは、
魔物が攻めてきたにも
関わらず、
魔人のオークのメスが裸で
近づいてくると
魅了されたとか、ホザいて
武器も服も脱ぎ捨て
されるがままになり
新婦の私が・・・
・・・私が・・・
あれだけ悲鳴を上げてるのに
主人は・・・
・・・あの人は・・・
・・・あの女と・・・
・・・犯される私を見て・・・
ハー!ハー!・・・って違う!
違うわ!リルー!
あれは悪夢!忌まわしい悪夢よ!
忌まわしい記憶なのよ!(大声)」
と今や日課になっている
忌まわしくない記憶を
忌まわしい記憶と
自分に言い聞かせ
なんとか平静を保っていた。
すると
「り、リル―様!」
と今度は別の守備兵が
息を切らして現れた!
「何事です!騒々しい!」
「ルー様が・・・ルー様が
お戻りになられました。」
「ルーが?無事なのね?」
と安堵した様子で聞くが
守備兵はバツが悪そうに
「そ、その・・・お体は・・・
ご無事のようですが
・・・そ、その・・・」
その様子を見たリル―は
「・・・どういう事?・・・」
エルフの里 入口
「ルー!私のルー!」
リル―は叫びながら
わが子に抱きつくも
ヘソの下にしっかりと
浮き出ている
奴隷紋を見て
「お前が!お前がやったのか!
え~い!弓隊構えよ!
アヤツを殺せ!」
と娘の奴隷紋と繋がっている
見るからにイヤらしそうな
タダシとかいう男を
射殺そうとするが
「お、お待ちください!
お母さま!」
とルーが体を
盾にして皆を止めた!
「なぜ?なぜ止めるのです?
ルー!」
そこで、里の者たちの前で
ルーが事の顛末をすべて話すと
「・・・え、エクサリ―・・・
・・・ですって・・・」
と今だ信じられない単語に
かなり困惑していた。
リル―はしばらく親指の爪を噛み
「・・・くッ!・・・
エクサリ―は伝説級・・・
さすがに・・・
それを使ってまで
娘を助けた男を・・・
殺すのは・・・
でも、このままでは・・・
私のルーが・・・
私のルーが・・・」
と一人ブツブツを言っていると
そこへ
「では、どうかの?
試してみては・・・」
とリル―の父の里長が現れた!
「父上!」
「おじい様!」
「別にもう良いではないか・・・
もう一度、嫁に出しても
人族など、精々50年ほどじゃ!」
それを聞いたリル―は
「父上は前回もそう言って
勝手に縁談を持ってきましたが
50年処か、1年すら、
持たなかったではないですか?」
「それは、
致し方がないじゃろう・・・
あれほど、
ルーのお披露目はダメじゃと
あの年配の貴族には、
念を押しといたのに
あの公爵とかいうのが
ルーにゾッコンになり
結局、家ごと無くなって
しまったじゃろ?」
「こ、この男もそうかも
知れないではないですか?」
「この男は逆じゃよ!
むしろ、ルーを人に見せたがらず
自分一人で無茶苦茶に
したいタイプじゃよ!」
それを聞いたルーが
「お、おじい様・・・
そ、そんな・・・
・・・無茶苦茶になんて・・・」
とクネクネと体を揺らしながら
嬉しそうに恥ずかしがるが
リル―は
「そ、そんな羨まし・・・くない!
男に大事なルーを嫁にはやれません!」
と断固として拒否した!
「じゃが、このまま、
ただ里に置いといては
ルーが可哀そうじゃろ?
ルーの友だった者は皆、
他の貴族や豪商に嫁ぎに出て
沢山の子を成し、育て
しかも、その中の一人は
勇者として魔王軍と戦い、
見事に王国から北へ追い返し
最近では、その子まで子を孕んだと
この新聞には書いてあるぞ!
大体、お前!
どうやって
エクサリ―と同等の対価なぞ
払うのじゃ?
ルーは嘘を言っとらんぞ!
その真実の鈴が一回も
鳴っておらんからの!」
と一人の守備兵が持つ
銀色の鈴を指差す。
「・・・くッ・・・
そ、それは・・・」
とリル―は一人悩んでいると
「お母さま!」
とルーが重むろに話し始めた。
「何ですか?
あなたは何も分かってないのです。
今は忙し・・・」
「お母さま!
・・・私は・・・私は
もう分かっているんです。」
「わ、分かっているって・・・」
「私はお父様の・・・
・・・実の子ではない事を・・・」
「な、何をバカな事を言って・・・」
「いいえ、お母さま!
おバカな事ではありません!
私は他のエルフの方と違います。
豊満で食欲旺盛で
そして極めて違うのは
殿方に興味深々過ぎるな所です。」
とルーは生まれて初めて母親に
逆らうような言動をするので
「な、な、な、・・・・」
とリル―は言葉にならず
一歩ずつ後ろに下がっていく。
「最初、
殿方を壊してしまうほどに
惹かれてしまうのは
お変態なお母さまに似てしまい
食欲旺盛なのは、
昔、狩りの名手だったお父様が
狩りの後、お肉をたくさん
お食べになられていたのに
似たのかと思っていました。」
「わ、私が・・・へ、変態?!」
「そうです!
お母さまは、お変態です!
お父様がお亡くなりになられて
からというもの
毎晩!毎晩!
私が横で寝ていますのに
一人であんなに、
お乱れてになられて
お眠りになられてからも
ず―――――――と!
オークの!オークの!と
お叫びになられながら
あん!あん!言い放っなしでは
ないですか?」
「お、お、お、オークなんて
言っては・・・いませ・・・」
「いいえ!毎晩聞いております。
これはメイドの方々もおじい様も
勿論、私も、お悩みの種です!
毎朝、重くて私しか
持ち上げられないような
ずぶ濡れのマットとシーツを変える
切ない娘の身にもお成りになって!」
「そ、そんな・・・
あ、あれは・・・
か、勝手に乾いていたのでは・・・」
とリル―が衝撃の事実を知ると
里中が無言で首を横に振った。
だが娘のルーは続けて
「そして、最後に
このお胸とお尻は
完全にお母さまのお血筋とは
無縁の物です。」
とルーは自分の大きいお尻と胸を
持ち上げると
「がはッ!」
ばたッ!
とリル―は止めを刺された
ショックで
吐血したまま、地面に倒れた。
倒れたリルーにしばらく
誰も近づかなかったが
里長だけが近づいて行き
「の~・・・リル―・・・
ルーを嫁にくれてやろう・・・
お主にもその方が良いはずじゃ!
子離れが出来れば・・・
自然と再婚の道も
着くかもしれんし・・・」
と娘を心配してか、
優しく声をかけるが
「・・・ふふふ・・・
・・・ふははははははッ!」
と突然リル―は
何か思いついたように半笑いで
体を起こし
「ふはははッ!
父上!
ふはははっはは!
父上は先程、嫁にくれるではなく
やるといいましたな?」
と里長の前に立ちはだかるように
立つと
「・・・やる?・・・ああ
・・・言うたな・・・」
「エルフは知恵を尊びます!」
「・・・それが、なんじゃ?・・・」
「里の掟では、
エルフを嫁にやる際は
その者が、それに見合うだけの
知恵の持っていなければ
嫁には、やれない決り!」
それを聞いたルーは
地獄に落ちたような顔で
「そ、そんなお母さま・・・」
「つまり、
この男がエルフの結納の儀を
知っているかどうかで・・・
・・・それを・・・
・・・決め・・・」
と里長を始め、
里中が見守る中
熱弁を振るうリル―の前に
無言のまま、
ミスリルの袋から
松ぼっくりを手にした
タダシを目にし
リル―は
「おい!マジかよ?
なんで知ってんだよ!」
魔王領 魔鉱石採掘場
魔王領の収入の70%以上を占める
この場所で、
ドズガ―――――ン!!!
「ぎゃー!」
「逃げろー!なんで突然
・・・ぐわーーーーーッ!」
ズゴ―――――ン!
「ぐわぁ―――!」
「ああああ~!」
「・・・な、なぜ、100年も
動かなかった像が・・・」
同じ場所
100年程前のこと
魔王領の北にある広大な採掘場で
魔人たちがいつものように
単純で退屈な肉体労働を
していると
少し上った小高い丘の上に
ガサッ!カラカラ~ン!
(硬い岩が崩れ転がる音)
突如、ダウンジングを持った
人族の老人が現れたのだ!
「何だ?あいつは?」
「人?こんな所に?」と
魔人たちは口々に
遠くから見ていると
単純作業に嫌気が刺していた
一人のカブトムシのような魔人が
「さては転移で迷ったな!
可哀そうに、ふふふッ!
だが安心しろ!
今度は迷わないようにしてやる!」
ズシン!ズシン!
と近づいて行き、
老人の体を自分の陰で覆うほどに
近づくと
昆虫の甲羅でできた拳を
ギチチチッ!と力強く圧縮し
「潰れろ!」
と虫でも殺すかのように
老人の頭目掛け
ブワーン!
高く振り上げた拳を
高速で殴りつけようとするが
パシーンッ!!
魔人の指よりも細い腕で
老人はそれを、
難なく受け止めた!
そして
その老人は、
魔人の拳を抑えたまま
突然
「こ・こ・じゃ~!(大声)」
グワワワワ~~~ン!!!
と振動で大地が裂けるかと
思うほどの大声で叫ぶと
腕を掴まれた魔人は
一瞬で鼓膜を破られ
パニックになるも
一旦、距離を取ろうとしているが
自分の腕が吸い寄せられるように
老人から離れない為
「くッ!・・・は、離せ!」
と老人ごと引っ張る勢いで引くが
腕は愚か、老人さえも
ビクともしない!
まるで、大地と一体になっている
ような感覚に襲われる魔人だが
耳から何やら紫色の物が
止めどなく流れ出てしまい
もはや、自分に
何が起こっているのかさえも
分からない状態の魔人だったが
一つだけ理解出来たのは
その老人から発せられる
魔力でも腕力でもない
異様なまでの吸着力と
今まで感じたことのない
腹の底から這い上がってくる
死への恐怖だけだった。
そして
フワっ!フワっ!
恐怖に怯え、
震える魔人の立つ位置から
左右に少し離れた
場所で30メートル級の硬い大岩が
音も立てず、静かに宙に浮くのを
魔人は気づいていたが
どうする事もできず
「・・・・・た、たす・・・」
ビュビュ―――――グシャッ!
ポタッ!ポタッ!
と硬さを誇る魔人であったが
まるで茹でた芋でも潰れたかように
大岩に挟まれ
一瞬でグチャグチャに
なってしまった。
しかし、老人はそのまま
何事もなかったかのように
「とりゃあ!!」
ガンッ!
と手に持ったU字型磁石を
地面に叩きつけた!
すると
ゴゴゴゴゴゴゴ!!!
どがっががががががっががが!
「「「「うわわわああああああ」」」」
と老人を中心に
魔人たちの立つ地面ごと
まるで大地震でも
あったかのように
ゴゴゴゴゴゴゴ!!!
ズガガガがガガ!!!
一気に遥か上まで
何かが隆起させた!
そして
空を覆う分厚い雷雲よりデカい
全身硬い岩石で一つ目の
巨像が現れたのだ!
だが、そんな巨像も
100年程前から動かなかった
のだが・・・
今日の昼頃から
突然、石像巨人に
命が吹き込まれたかのように
振り上げられたままだった棍棒が
ズドシ―――――――ン!
ズズシ―――――ン!!!
「ぎゃーーーーー!!」
「ぐあああああ!!」
再び、振り回され始めたのだ!
ドズガガガ――――ッ!
「ぐあ~!」
「ぎゃあぁ」
ドガガガ―ン!
ドガガ―ン!
まるで、魔人も岩石も
虫かゴミ位にしか
考えていないような
粉砕作業を延々と繰り返し
粗方、地面を粉々にすると
今度は、
ドドシ―ン!
と石像巨人は地面に正座をし
体の半分もありそうな棍棒で
地面に散らばる魔族も岩石も
まるでパンでも練るように
ゴロ!ゴロ!ゴロ!
「♪~♪~!」
と鼻歌交じりで
粉ね繰り回して
何かしようとしている。
「・・・ま、不味い・・・
このままでは・・・
魔王様に報告しなくては・・・」




