56 あ~・・・市長
56 あ―・・・市長!
ザ!ザ!ザ!
俺は雪深い道を南東に進みながら
「え~と・・・こっち・・・
・・・で良いん・・・だよな?
・・・っていうか・・・
・・・なんだこの石像郡?」
市役所からちょっと離れてから
家や人がいなくなり、
もうこの辺りでは
森の中を一人
歩いているような感覚に
なって少し不安に
なっていたのだが
雪が積もる道の両サイドの
森の中に
遠目に見ても、
デカい銅像やら石像が
放置されている・・・
しかも、大量にだ!
(あれは・・・なんか・・・
神話の女神像みたいだし・・・
こっちは・・・象に・・・城?)
ちょっと離れた山の上には
日本城の天守閣のような物が
見えている。
そして、何故か
そのすべてが雪のように
真っ白である!
「・・・なんで、あんな・・・
離れた所に・・・んッ?」
俺は不気味な像エリアを
突き進んでいたら、
雪で埋もれては、いるものの
前方に日本で見慣れた
真四角の墓石の上だけが
見えてきた!
ミスリル鉱床 酒場
ガヤガヤッ!
この町はミスリル鉱床に加え、
ダンジョンに温泉まであるため
ちょっとした
観光スポットでもあるので
町唯一の酒場は、
それなりに人気があるが
「あッ!いたいた!」
とラムがみんなのいるテーブルに
近づいてきた。
「おーい!」
とマーンが手を振るが
タダシの姿が見えないため
「ご主人様は~
どうしたんですか~?」
とモーが、かなり大きめの鍋から
みんなの器に注いでいる!
「ちょっと用事だって!
そんな事より誰よ!
こんな大量に注文したの!
30人分以上はあるじゃない!」
とラムがテーブルに、
はみ出る位
並んだ料理の数々に
驚いていると
「確かに多いかなとは思ったけど
ルーも増えたし、
いいかな?と思って
なんか、みんなで
メニュー見て適当に頼もう!
ってなったら、結果的に
こうなったんだよね!」
とテンがメニュー表を
ラムに渡す横で
ルーが恥ずかしそうに下を
向いている。
そんな様子を見ていたのか
「お飲み物はどうなさいますか?」
と近くにいた店員の
女の子がメモを片手に
聞いてくるので
「・・・今日は寒いから・・・
温かいのって何があるの?」
とラムがマントを脱ぎながら聞くと
店員は笑顔で
「暖かいのはホットエールに
ホット割り、
ファイアーアイス・ロック
名物はアツカンです!」
「??ファイアーアイス・・・
・・・ロックって何?
・・・まあ、いいわ・・・
じゃあ・・・
いつものホットエールで!」
「はい!ただいま!
・・・はい!ホットエール(大声)
一丁入りました~!!!(大声)」
「「「「「はい!
ホットエール一丁!⤴」」」」
日本の居酒屋のように
スタッフ一同の
掛け声も人気の一つである。
町の南東の
ザスッ!ザスッ!ザスッ!
俺は、雪に埋もれた墓石を
何とか掘り起こし
「・・・これだけ、
まんま日本だな・・・」
と雪が深々と降る中、
俺は静かに手を合わせた。
そして、静かに
石碑に目をやると
南無阿弥陀仏
故 広瀬 国近
(ひろせ くにちか)
と日本語で刻まれていた。
「・・・これって生前に
自分で掘ったのかな?」
と思って、
ふとッ下の台座に目をやると
異世界の文字で
何か掘られていた。
王国歴 1400年没
広瀬様の功績を、ここに称える!
帝国で、ドワーフが故か
農奴の如く迫害を受け
耐え切れなくなり、泣く泣く
逃げてきた我々だったが、
王国内でも、
我々が難民であったためか
人々の扱い酷く
我々を見る目は、
非常に冷たい・・・
子供がどんなに
泣いていようとも
どんなに腹を
空かせていようとも
誰も助けようとしない
罵声を浴び、石を投げられ、
町にも入れず、
魔物に追い回され
この北の極寒の
山の中に追いやられ
ただ、死を待つだけだった
そんな、我々を・・・
・・・いや、
片足を無くした私を
この場所へ
背負って運んで下さった、
唯一人の御方である事をここに
記しておく!
ご自分の発見した
ダンジョンを条件に
国と交渉すると
森を切り開き、村を作り
徐々に村が大きくなってくると
今度は水道や下水等、
およそ、見たことも聞いた事もない
画期的なインフラ整備に
町の法律の整備!
しかも、それだけには留まらず
自ら率先して
ダンジョンを磁石一つで戦い抜き
鉱床を開拓し
地底湖の発見後は
観光産業の発展としても
ご尽力され、我々にパンと仕事
そして、かつて我々が手放し、
もう得ることもないだろうと
諦めていた幸せと財産を
用意して下さった。
我々の感謝は永遠に
尽きる事はない!
・・・だが、どうしてもここに
書き記しておきたい!
町が今の形になり始めてから
30年後ほどの事だ・・・
最初は、
物忘れやロウソクのつけっ放し
何度も昼飯を要求される
程度のボケが始まった・・・
最初は私も笑って手を
貸していたが
その内、どんどん奇怪な行動に
エスカレートしていった。
奇妙な器具や装置を
作っては暴走させ
ダンジョン内でも
ゴーレムが暴れて
落盤事故も
よく起こし始めた!
この頃には、
町人も怒り始めるが
何とかそれらを、
ナダめつつも
対策を迫られ、
かつて広瀬様が
就職していた錬金ギルドに
相談に伺わせて頂くと
「あたしゃ、
介護は出来ないよ!
奴隷にでもやらせな!」
と大変有難い、
ご助言を頂いた。
「・・・・・・・・・・」
しかし、
女性奴隷だと、
変な拘束器具を
娼婦達に試して、
仕返しに殴られ
金を持ち逃げされた事件が
あったばかりだったので
介護経験のある男性奴隷を
購入してきたが
何と、それにも、
あの奇妙な器具を試し
奴隷の男は完全に頭が
イってしまっていた。
「・・・・・・・・」
ほとほと困り果て
結局、
誰も世話をしたがらないので
私が世話をする
羽目になったが
その頃から、
ボケはさらに酷くなってきた。
誰も頼んでいない装置を
「頼まれた!」
と、ほざいては
同じ装置を何度も作るし
訳の分からん巨像は
もう、町のそこら中に作るし
いよいよ、めんどくさい性格に
なってくると
自分で隠した鉱石を忘れ、
私のせいにしたり
深夜に町を徘徊し、
行方不明になると
町中の皆に頼んで
探しては捕まえた・・・
だが、
アイツが国の
外へ逃げ出した時は
本当に膝から崩れ落ちたのを、
今でも夢で思い出す!
選挙により、
魔法契約で決まった町の代表が
外で問題を起こすのだ!
飛ばっちりが来ない訳がない!
周辺の領主は勿論、
エルフの里に、
大陸の外の島国
挙句の果てに魔王領からも
苦情の手紙が届いた!
何でも重要な施設に勝手に
壊せもしない巨像を立て、
大変な事になったそうだ!
その後、
しばらくどこからも
苦情は来なかったが
最終的には、
帝国で暴れて死んだと
なんと私の実の弟から連絡があり、
王国に事情を説明させて頂くと
二度と戻れないだろうと
思っていた帝国へ
王国の使いとして
戻る事ができた!
実家で弟にいきさつを聞いてみると
偶然にも、
私の母が大事にしていた
私の名前の由来でもある
実がなる木を守ろうと
帝国兵どもを相手に
数週間かけて
戦い抜いた後
その場で息絶えたようだ!
ここに遺灰を持ち帰り
遺言通り広瀬様の専用の
マジックアイテムと共に
ここにお眠り頂く!
ミスリル鉱床の町
元避難民代表
ホワイト・ベリー・ノルンデン
俺は全文を読んで
同じギルドの先輩の最後を知り
「・・・大変だったんだな・・・
広瀬さんも、この人も・・・」
とその刻まれた文章の下に
ココ押して!
と日本語で書かれたスイッチが
ミスリル鉱床の町 酒場
音楽と人々の歓声が聞こえる
賑やかな店の中で
「ヒック!ヒック!」
マーンが
もう20杯以上になろうか
店員が運んできたばかりの
小さいグラスに
氷が浮いたお酒を手に取ると
店員の女の子を見て
「ヒック!・・・お願い・・・」
とグラスを向けると
店員は、
そのまま詠唱を行い、
魔力を込める。
すると
ボワワッ!
と天井まで届く位の炎を上げた!
それを見たテンが
「凄いよね!それ!
しかも、一気に・・・飲むし・・・」
と驚いていると
カンッ!
飲み干したグラスをテーブルに置き
マーンは
バタンッ!
「・・・もう・・・一杯・・・」
とだけ言い、
テーブルに突っ伏した。
「いや、もう一杯って?
ってそれより、テン!
何でスープをお皿
半分しか食べてないのよ!
大量に余っちゃうじゃん!」
とラムがテンを注意するが
「しょうがないじゃん!
他のでお腹一杯なの!!
唐揚げに肉ポテトに焼きそば!
見ろ!このお腹!
妊婦みたいなんだぞ!ポンポン!」
とテンは自身の膨らんだ腹を
叩いて見せてくる。
ラムはおタマを手に取り
子供のビニールプール位ある
スープ鍋から残りを取ろうと
「もう!いいわよ!
アタイが頑張って食べるから・・・
・・・あれ?もうないじゃん?
・・・なんで?」
とキョロキョロし出し
「ねー?マーンは何杯食べた?」
とテーブルに突っ伏しいたままの
マーンに聞くと
マーンは突っ伏したまま、
指を2本上げた。
「モーは?」
「5杯位ですかね~!
そういえば、他のお料理も~
もうすぐ無くなりそうですね~」
とみんながルーに目をやると
ルーは自分の顔と
同じ位の大きさの
Tボーンステーキを
まるで、小振りの手羽のように
チュルンッ!
と骨だけ残し飲み込むと
美しい顔を、
恥ずかしそうに横に向け
「・・・さ、38杯です・・・」
「「「「・・・・・・・・」」」」
南東 広瀬の墓場前
「ふん~ん!」
ズッズズ!!
俺はバカみたいに
重い墓石をずらし
「はー!はー!重いなこれ!
なんで、スイッチ押して
開けるのは手動なんだよ!」
と愚痴りながら、
墓の中を覚えたての
ライトの魔法で照らすと
ピカッ!
中には
・骨が入ってるであろうの骨壺
・ちょっと手から
はみ出る位のU字磁石
そして、一枚の紙が・・・
ピラッ!
おめでとう!
見つけたね!
これは他の日本人でも試したから、
君でも使えると思うよ!
使い方は以下の通りです。
マジカルU字磁石
普通の磁石としても使えるが
どんな物質でも、液体でも
引き寄せたり、
跳ね除けたりする事が
可能であり、
接触さえすれば、一切の物を
好きな物質に変換・操作でき
好きなアプリを
インストールできる。
注:僕のスマホは
かなり前に壊れました!
「・・・アプリ?・・・」
ズッ!ズッ!ズッ!
俺は来た道を
引き返すように帰ると
「ポーションを
作る時と一緒だな・・・」
と磁石を握りしめ石像に向けた。
すると
ズゴゴゴゴゴッ!!
「おおおおおッ!
確かに動く!」
先程まで、
大量のただの巨大な石像に
囲まれた世界だったが
俺が魔力を磁石に込めた瞬間
それぞれが動き出し
目の前の岩だと思っていたのが
巨人の頭だったのか、
大きな顔が
遥か上へと上がって
あッという間に立ち上がった。
ズシーン!ズシーン!
バキ!バキ!バキ!
周りでもそうだが、
遠くでも凄い音がするので
振り返ると
ドスン!ドスン!ドスン!と
巨大なサルたちが日本武者の恰好で
「「「「ウキキキ―――ッ!」」」」と
先程の城へ、
我先にと猛ダッシュしている。
そんなもの凄い光景の俺の横を
「へッ!へッ!へッ!」
と体はワニで頭が犬の
石像が通り過ぎていく。
「・・・なんなんだ?・・・」
と一人唖然としていると
いきなり、辺りが暗くなり
ふとッ空を見上げると
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!
巨大駆逐艦が空を悠々と飛んでいた。
「・・・あんなのボケ老人が
バカみたいに量産したら、
そりゃ、怒られるか・・・」
そんな感じで
周りの石像を軽く操作しながら
歩いていくと
「ご主人様~!」
市役所の前に無断駐車した
軽トラの前でみんなが
待っていてくれていた!
「おー!ラム~!」
そして、俺が近づいていくと
「ご、ご主人様・・・これ!
か、軽めですが・・・」
とルーがバスケボール位の
何かの付け合わせの
野菜のような物を
挟んだパンをくれた。
「これ・・・ルーが自分で
作ってくれたのか?」
「は、はい!」
「ありがとう!うれしいよ!」
と喜んで食べようとしていると
ガチャッ!
市役所の扉が開き
「やはり、広瀬様と
同じ世界から
来られたのですね!」
と階段の上から片足が義足を
ズボンの裾から覗かせた
市長が出てきた!
すると
テンが
「あッ!ベリー市長だ!」
俺はそれを聞いて
「・・・市長~!!!!」
反国王派 軍営地
本営テント
豪華な公爵邸から少し離れた
草原に、大小様々なテントがあった
柵に囲まれた伝令用の馬が走り
各諸将の旗が風に棚引く!!
バタバタバタ!
そんな
軍営地の中で一際、大きい
本営テントの中では
反国王派の総督は険しい顔で
伝令の部下たちに
説明を受けていた。
「現在、ここ、それにここの準備が
まだです。柵を作らせていますが
なかなか、進んでおりません!」
「そこは、確か、農民と奴隷を
多く徴用してきた者の所だな?」
「はい!そうです!
皆、重税だった為か
やせ衰えた者ばかりでした。
あれでホントに
戦えるかどうか・・・」
「そうか・・・だが、今は
それで行くしかあるまい・・・
こっちはどうだ?」
「そこは堀が終わりました!
ですが・・・」
「似たようなモノか・・・
・・・・・・・・・・・
いいか!この地は確かに
攻めにくい地だ!
入口は3か所だけで後は、
険しい山に囲まれている!
戦闘が始まれば、
間違いなく、守りにやすい
我らに分があるが
問題がいくつもある!
味方の中で、
守りやすい道や
ここから補給受けやすい地を
競って取り合ったり
している・・・が
一番の問題は食料だ!
我が方は、人員こそ王国の正規軍と
ほぼ互角だが、錬金ギルドに
闇ギルドと領地を持たない者どもも
多い!
それに、まだ来てはいないが
あの例の盗賊団も来るとの話だ!
良い土産を持ってくるらしいが
・・・・・・・・・・・・・
あれが、我が物顔で食糧庫を
食い散らかし始めた日には
一気に崩壊しかねん!
殺さぬなら、殴る事も許可する!
厳しく配給しろ!」
「はッ!ですが、確か・・・
あの盗賊団の主力の一つが
エンロ―近くで
冒険者に捕まったとか
調べたら、かなり悪さを働いていた
らしいですし・・・
ホントに良いのでしょうか?
あんな奴らを味方と思っても・・・」
とその場にいた全員が
不安に思っていると
ガバッ!とテントの幕が上がり
「ハー!ハー!
き、来ました・・・」
「来たか?!ルーチン盗賊団が?」
「・・・は、はい・・・」




